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もうけ過ぎたJR東海が自己資金で無理に進めたはずの「リニア中央新幹線計画」。それにいつの間にか国がほぼ無利子で「投融資」と称して資金援助をすることにいつの間にか決めてしまった。選挙前には全く論議も無く閣議決定されたこの『投資』。建費拡大や赤字経営となれば血税を削る不良債権と化す事になる。
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リニア「大阪開業8年前倒し」は本当に必要か/自己負担での計画を国が支援するのはアリ?
http://toyokeizai.net/articles/-/131519
小島 好己 :東京神谷町綜合法律事務所弁護士 2016年08月14日
「リニア「大阪開業8年前倒し」は本当に必要か 自己負担での計画を国が支援するのはアリ? | 法律で見える鉄道のウラ側 - 東洋経済オンライン」
*山梨リニア実験線を走るL0系車両。リニア中央新幹線の品川〜名古屋間は2027年の開業を予定している(撮影:尾形文繋)*画像略
今から11年後の2027(平成39)年、中央新幹線の品川・名古屋間が開業する。異次元の超電導磁気浮上式鉄道(いわゆるリニアモーターカー)による新幹線であり、どのようなものになるか期待が膨らむところである。将来的にはさらに大阪まで開業する予定となっているが、こちらは29年後の2045(平成57)年が開業予定とされており、はるか彼方の未来ということになる。
ところが、中央新幹線の建設・営業主体であるJR東海に対し、国が財政投融資を実施し、大阪までの開業時期を8年ほど前倒しさせる方針を示したという報道があった。一部ではこの方針についてJR東海でも歓迎をする意見があるとも聞く。
JR東海は全額自己負担で中央新幹線全線を建設する意向を示し、第一段階として品川から名古屋まで開業をし、その後体力を回復させて大阪まで開業するという計画を立てていた。これに対して国がJR東海を支援して大阪開業を前倒しさせるということのようである。
□早期の大阪開業実現には有効
財政投融資とは、「税負担に拠ることなく、国債の一種である財投債の発行などにより調達した資金を財源として、政策的な必要性があるものの、民間では対応が困難な長期・低利の資金供給や大規模・超長期プロジェクトの実施を可能とするための投融資活動」と説明されている(財務省HP)。
その活動分野の一つとして、社会資本の整備も対象となっている。中央新幹線もその役割や大阪開業までにかかる建設費が9兆円と見込まれていることを考えると、対象としては相応しい。2011(平成23)年5月12日の交通政策審議会中央新幹線小委員会答申においても「大阪までの早期開業方策を継続的に検討すべき」という答申がなされており、大阪開業の前倒し実現のために税負担によらない財政投融資を活用するというのは一つの選択肢である。
ここで中央新幹線の成り立ちを確認しておく。
中央新幹線は、全国新幹線鉄道整備法(以下「全幹法」)に基づき1973(昭和48)年11月に基本計画が定められた。
全幹法の目的は、「高速輸送体系の形成が国土の総合的かつ普遍的開発に果たす役割の重要性にかんがみ、新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もって国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資することを目的とする」とされている(第1条)。
この目的を達成するために、「国土交通大臣は、鉄道輸送の需要の動向、国土開発の重点的な方向その他の新幹線鉄道の効果的な整備を図るため必要な事項を考慮し、政令で定めるところにより、建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画を決定しなければならない」(第4条)とされている。新幹線鉄道はまさに国家の事業というべき存在である。
□国が関与することに問題はない
中央新幹線もこの趣旨にのっとって基本計画が定められているが、全幹法第14条の2に基づく交通政策審議会中央新幹線小委員会答申ではリニア中央新幹線の意義が具体的に次の通り掲げられている(国交省HP)。
1:三大都市圏間の高速かつ安定的な旅客輸送を中長期的に維持・強化するものであり極めて重要。東日本大震災の経験により、大動脈の二重系化の重要性は更に高まっている。
2:三大都市圏以外の沿線地域においても、地域活性化方策とあいまって地域振興に寄与。
3:「ひかり」、「こだま」の増加により、東海道新幹線沿線都市群の再発展をもたらす可能性。
4:三大都市圏間が約1時間で直結され、国土構造の変革、国際競争力の向上をもたらす可能性。
5:我が国が独自に開発してきた高速鉄道技術を世界的に発信。
これを見ると、中央新幹線は全幹法の趣旨に合致し、沿線地域のみならず国全体への寄与が期待される新幹線鉄道であるといえる。国が中央新幹線に対して何らかの形で関与することは直ちに否定されるものではない。
一方、JR東海は、その国家プロジェクトともいうべき中央新幹線の建設主体と営業主体になぜ名乗りを挙げ、指名を受けたのだろうか。
これについてはJR東海のHPに掲げられた中央新幹線の建設の目的や趣旨が参考になる。
当社は、自らの使命であり経営の生命線である首都圏〜中京圏〜近畿圏を結ぶ高速鉄道の運営を持続するとともに、企業としての存立基盤を将来にわたり確保していくため、超電導リニアによる中央新幹線計画を全国新幹線鉄道整備法(以下、「全幹法」という。)に基づき、進めています。
現在、この大動脈輸送を担う東海道新幹線は、開業から50年以上が経過し、鉄道路線の建設・実現に長い期間を要することを踏まえれば、将来の経年劣化や大規模災害に対する抜本的な備えを考えなければなりません。また、東日本大震災を踏まえ、大動脈輸送の二重系化により災害リスクに備える重要性がさらに高まっています。このため、その役割を代替する中央新幹線について、自己負担を前提に、当社が開発してきた超電導リニアにより可及的速やかに実現し、東海道新幹線と一元的に経営していくこととしています。
(中略)その上で、まずは東京都・名古屋市間を実現し、さらに、経営体力を回復させたうえで、速やかに大阪市まで実現することとしています。
□計画への介入は回避したい?
JR東海からすれば、中央新幹線は自己の経営基盤の確立を図るためのプロジェクトでもある。東海道新幹線がJR東海の収益の柱になっていることを考えると、そのバイパスである中央新幹線の事業の成否は自身の存亡と将来の発展にかかわる極めて重大なものである。不要な介入を受けず、自身の中長期的な計画の下、資金を含めて慎重かつ入念に計画を立てるべき存在といえる。
そのJR東海にとって、全幹法に基づく第三者の行為制限(第10条、11条、12条)など中央新幹線建設への環境整備の点で国や地方公共団体その他の支援を受けるのであればともかく、計画そのものに他者が積極的に介入をするということは回避したいところであろう。たとえば、東京と大阪の速達性を図ることに優先順位を置いているのに、計画線を北に動かして京都へも寄れ、ということがあれば受け入れがたいところであろう。
実際にJR東海のHPには次のような記載もある。
全幹法の適用により経営の自由や投資の自主性等民間企業としての原則が阻害されることがないことを確認するため、法律の適用にかかる基本的な事項を国土交通省に照会し、平成20(2008)年1月にその旨の回答を得ています
中間駅の設置についても、地元から駅建設費の全額地元負担について難色を示されるや、JR東海は、2011(平成23)年11月に、駅構造を極めて簡略化することを前提にJR東海が建設費を自己負担すると発表をしている。いくら簡略化したとしても当然億単位の負担増が見込まれる。
*リニア中央新幹線・南アルプストンネル山梨工区の工事現場(写真:小佐野景寿)*画像略
JR東海はそこまでしてでも、自分たちの使命や経営基盤確立のために中央新幹線を早期に建設し開業させたいということである。民間企業としてのこのJR東海の本気度は、その評価はともかくとして十分認識しておくべきであろう。
また、中央新幹線が国家プロジェクト的な意味をも有するとはいっても、平成28年3月期の連結売上高が1兆7300億円、連結営業利益が5000億円を超えるJR東海が自分たちの負担で建設すると言っているのに、国が資金を投入する必要はあるのかという疑問もある。
□開業前倒しなら慎重な計画を
確かに、交通政策審議会の答申でも大阪開業の前倒しを継続して検討するべきとされてはいるものの、前倒しとなるとJR東海単体では厳しいであろう。しかし、国の資金調達能力にも当然限界もある。ないものねだりはできない。
さらにJR東海を中央新幹線の建設主体と営業主体に指名し、整備計画の決定と建設指示をするにあたっては、国においても当然工期や資金繰りなども吟味したはずである。国が後になって金を出すのは抑制的になるべきであろう。金を出せばやはり合わせて口が出る。
それでも地域や日本の発展にどうしても中央新幹線大阪開業の前倒しが必要というのならば、中央新幹線に対する国とJR東海の目的をすり合わせ、共通の認識とビジョンを具体的に示し、前倒しのための資金調達方法とその経済効果の積算、国やJR東海に過度な財政負担が生じないように慎重に計画を立てていくことが必要であろう。
かつて日本では、鉄道路線の建設が乱発され、その経営負担を国鉄が負わされ、国鉄の破綻につながった。中央新幹線を巡る問題が、国鉄の債務を引き継ぎつつ曲がりなりにも国鉄破綻後30年で確立されてきたJR東海の経営の基盤と自由を、そして国の財政規律を歪めないことを願っている。
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・関連:
■リニア中央新幹線 大阪延伸、最大8年前倒し JR東海社長(国に負担掛けない、とは社長の二枚舌?!)
- リニア新幹線に関する質問主意書と答弁書(投融資前に検証できるのか?) 戦争とはこういう物 2016/8/16 18:44:12
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