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破滅シナリオ論者はなぜマスコミに出演し続けられるのか?
黄金時代(5)
2016年08月15日(月)塚崎公義 (久留米大学商学部教授)
前回、『世の中の情報には悲観的バイアスがかかっている』を記しましたが、今回はその極端な例についてです。
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評論家の中には、破滅シナリオを予言し続ける人がいます。誰が見ても変だ、と思われる超悲観論を述べ続けるのです。素人にも「本当にこの人は専門家なのか?」と思われるような人が、どうして専門家として食べていけるのでしょうか? 実は、彼等は意外と合理的な行動をとっていて、充分に食べていけるのです。筆者は、彼等の戦略を「止まった時計戦略」と呼んでいます。今回は、その戦略について考えてみましょう。
固定客をしっかり掴み、討論会でも活躍できる
世の中には、ネクラな人、ネアカな人が一定割合でいます。そうした人々は、景気がどうであれ、「今後は悪くなる」と思いたい人は、専門家の悲観的な話を聞きたがり、「今後は良くなる」と思いたい人は、専門家の楽観的な話を聞きたがります。つまり、暗い話にも明るい話にも、常に一定程度の需要はあるのです。固定客です。
討論会のたびに呼ばれることにも
ところが、バブル期のように景気が絶好調の時には、ほとんどの評論家(景気予測を仕事としているエコノミスト、市場予測を仕事としているマーケット・エコノミスト等々を含みます)が楽観論を唱えるので、ネクラな人は行き場がありません。彼等の需要を独占するのが悲観派の「止まった時計」(以下悲観時計と呼びます)なのです。反対に、リーマン・ショック時のように皆が悲観論を述べる時には、楽観派の「止まった時計」(以下楽観時計と呼びます)が固定客を独占することになります。
彼等のメリットは、固定客が独占できることだけではありません。バブル期に景気討論会を開こうとすると、評論家が楽観派ばかりなので、討論にならないのです。そこで、悲観時計が討論会のたびに呼ばれることになり、出演料を稼いだ上に名前も有名になります。リーマン・ショック時の楽観時計も同様です。
今一つ、メリットがあります。「止まった時計は1日2回正しい時を指す」というわけで、景気はいつかは必ず悪くなったり良くなったりします。その時に時計たちは「景気は、私が何年も前から正しく予想していた通りになりました」と勝ち誇った顔をすれば良いのです。経済初心者の中には尊敬してくれる人も出てくるでしょうし、「固定客」が「信者」になってくれるかも知れませんよ(笑)。
“時計”たちは、予測ではなくストーリーを語る
時計たちは、景気を予想(あるいは予測)するのではなく、結論を決めておいて、そうなるようにストーリーを組み立てて語るのです。そうなると、悲観時計の方が圧倒的に楽です。「幸せな予想は一様に幸せであるが、不幸な予想はそれぞれに不幸である」ため、話の面白さが全く異なるのです。
楽観時計は、「悲観時計が100個の破滅シナリオを唱えているが、いずれも可能性は非常に低い。よって、何も起きないであろう」と言うだけですから、聞いていて面白くありません。固定客はともかくとして、一般の人は話を聞きたいと思わないでしょう。
一方、悲観時計は、あらゆる可能性を考えてストーリーを組み立てることができます。ドイツ銀行が破綻する、中国のバブルが崩壊する、英国のEU離脱でリーマン・ショック並みの不況が来る、日銀が債務超過に陥る、日本国債が暴落する、等々です。それぞれに、様々な尾ひれをつければ、面白い話がいくらでも作れますから、固定客でなくても話を聞いてみようと思うかも知れません。
悲観時計は賢く見える
悲観時計は、問題点や懸念材料、リスクシナリオなどを数多く並べるので、賢く見えます。一方で、楽観時計は「大丈夫です」と言うだけですから、賢く見えません。「これほど多くの問題が山積しているのに、それに気づかないのか」と思われてしまいかねません。
しかも、シナリオが外れても怒られません。悲観時計の予測が外れた時は、人々がハッピーなので、悲観時計のことなど忘れています。万が一非難されても、「私はリスクを指摘しただけですよ。実現しなくて良かったですね」と言っていれば良いのです。
一方で、楽観時計の予測が外れた時は、人々が苛々しているので、批判されることも多いでしょう。もっとも、楽観時計の予言は、人々も予測ではなく予言として聞いているから、目くじらを立てる人はいないかもしれませんが(笑)。
楽観時計が不利な点は、まだあります。悲観時計が1000個の悪化ストーリーを語っていたとします。それぞれについて楽観時計が「確率は0.1%以下だから心配ない」と語ったとしても、どれかが起きる確率は結構高いかも知れません。
たとえば過去10年で悲観時計が語ったストーリーは1000個ほどあったでしょうが、本当に大きな打撃になったのはリーマン・ショックだけでした。その意味では楽観時計は999勝1敗だったのですが、悲観時計の方が遥かに勝ち誇った顔をしていますよね。
国民もマスコミも悲観論がお好き
熱烈な固定客を別とすれば、日本国民の多くは悲観論を楽観論より好みます。まして、悲観論の方が様々なストーリーが語れて話が面白いとなれば、マスコミも悲観論者を多用します。
そうした事を総合的に考えると、楽観時計よりも悲観時計の方が、はるかに合理的な戦略だと思われます。経済予測に限らず、悲観時計は様々な世界でそれなりの固定客を掴み、しっかりと活躍しています。
情報の受け手としては、彼等の提供しているものが「予測」ではなく「ストーリー」であり、「予言」であるということをしっかり認識した上で、娯楽としてストーリーを楽しむようにしたいものです。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7401
地球温暖化のウソ」に日本人はいつまで騙され続けるのか? 志葉玲 | フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和) - 軽毛 2016/8/15 21:14:33 (0)
http://www.asyura2.com/16/hihyo15/msg/216.html
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