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子どもの貧困 当事者の声 あきらめないために必要なもの
湯浅誠 | 社会活動家・法政大学教授
2016年8月11日 8時47分配信
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(写真:アフロ)
高校生の声
まずは、この動画を見てほしい。
https://www.youtube.com/watch?v=6pNndzh3w3E
何に気づいただろうか。
生活の苦しさとともに、追い込まれていく気持ちに気づかれたことと思う。
「自分が早くじりつできたらと なんどもふさぎこんだ」
「手をさしのべられると、ふりはらってしまう自分がいる。私は、こんな自分を好きになれないでいる」
「塾に行くことを諦めなければいけませんでした」
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yuasamakoto/20160803-00060561/
「金額をみてあきらめたりすることが多い」
「けれど誰にも話せない。誰もわかってくれない」
「こういうふうに考えてしまう自分が、嫌いです」
「いつも一人でいる。学校でも一人ぼっちでいる」
「生きたいのかもわからない。自分のことがわからない」
「家族みんなが悲しい気持ちになる」
「何もそんなふうに思わなくても」と、私も思う。
「生きていれば、きっといいことがあるよ」と。
しかし問題は、私がそう思うか、そう言うかどうかではない。
本人たちがそう思うか、思えるかどうかだ。
どうすれば、それが可能になるだろうか。
努力するエンジンがない
久波孝典(くば・たかのり)という若者がいる。現在23歳の大学4年生。
東洋大学の夜間部に通い、現在就活中だ。まだ決まっていない。
彼は小学校5年から高校3年生までを児童養護施設で過ごした。
その彼が、先日開催された「公益財団法人子どもの貧困対策センター・あすのば 一周年の集い」で、興味深いスピーチをした。
「自分には『努力をする』というエンジンが備わっていない」と言うのだ。
彼のスピーチはこうだった。
自分はそもそも「努力をする」というエンジンが備わっていない人間だと思いながら過ごしています。
ずっとその答えを探していましたが、先日ある文献に出会いました。
みなさんは、人間はなぜ努力するのだと思いますか。
その文献には、努力の向こうに、勝利や成功などの対価を得た経験があるからだと書かれていました。
そういった経験があるからその後も努力を積み重ねることができて、そうした良いサイクルに入れる。
私にはあまりそのエンジンが乗っかっていないと思います。
私にそのエンジンが乗っていないのは紛れもなく私自身の責任です。それは言うまでもありません。
ただ、本当は助けてほしかったです。
本当は、同じ学校のクラスメイトのように、こうした社会問題の存在を意識せずに生活したかった。
「進学したい、何かになりたい、あれをやりたい」、そんな純粋な気持ちをまるっきりそのままだけで叶えられるような生活をしたかっ た。
私にそれができなかったのは、ただただ私の責任で、情けないことこの上ないだけのお話なのですが、この「努力できない人間」を、「頑張ることで成功体験を得られなかった人間」を、どうか再生産させないでください。
初めから報われる可能性がないと思い込んでいるから、努力することを思いつきすらしないだけなんです。
私は恥ずかしながら、ただそれだけの想いのために活動に参画させていただいております。
自分は幸せになりたいとか、生きる希望を持つことができれば、それが努力の糧になると思うので、些細な幸せでもいいから、子どもたちがただ純粋に何かを目指そうとすることのできる社会を作っていけたらと思います。
私は野球が好きで、この前イチローがヒットの世界記録を更新した時なんかは、池袋に号外の新聞をもらいに行ったほどなんですけれども、そんな偉業を成し遂げたイチローは以前、こんな言葉を口にしました。
「小さいことを積み重ねるのが、とんでもない所へたどり着くただ一つの道です」。
私はこの言葉がすごく好きなのですが、でも正直、私もそうしたかった。
純粋に好きなことだけを追いかけていたかった。
イチローの言葉をこんな形で拝借するのは申し訳ないのですが、努力を積み重ねていくそのことだけで、子どもたちが報われていく社会を目指したいと思います。
ご清聴ありがとうございました。
「『努力をする』というエンジンが備わっていない」――興味深い表現だ。
児童養護施設出身者向けの給付型奨学金をかき集め、アルバイトと学業を両立し、自分で学費と生活費をまかなっている久波君に努力するエンジンが備わっていないとは思えない。
それでも、彼から彼自身がどう見えているのか、貧困の子どもたちがどう見えているのかは知りたくなった。
努力するエンジン、やる気スイッチ、あきらめない力…貧困家庭に限らず、多くの親たち大人たちが探し求めているものだ。
子どもの貧困対策を1ミリでも進めるヒントが、彼から得られるかもしれない。
そう思って、改めて時間をとってもらい、教えを乞うた。
久波君
久波君
何かに興味をもつということがない子どもがいる…
「子どもたちに機会の平等が必要だということ、その合意はもう社会的にとれている。でもそれでは足りないと思うんです」と久波君は切り出した。
久波君が見てきた児童養護施設の子どもたちの中には、そもそも何かに興味を持つということがない子どもがいる。
仮に機会が平等にあっても、その与えられた機会を生かそうと思うこと自体ができない。
児童養護施設には、さまざまな子どもたちが入所してくる。
親が育児をできなくなって、親の同意の下で入所してくる子たちもいれば(同意入所)、親の虐待から命からがら逃れてきた子たちもいる(措置入所)。
あまりにも凄惨な人生を送ってくると、何かを目指そうとする気力が生まれなくなる。
学習支援は重要だが、進学を目指す意欲以前の問題を抱えている子がいて、その子たちに学習支援は届かないし、響かない。
苛烈ではない教育熱心さ
どうすればいいのか。
久波君の答えはこうだ。
「僕の母をマイルドにしたような人が必要なのではないか」。
久波君の母親は、いわゆる教育ママだった。
家族は完結しており、親戚づきあいもない。周囲から孤立した核家族だった。両親の仲は悪く、専業主婦の母親の情熱は、一人息子の久波君の教育に向けられていた。
さらに小学校2年のときに父親が自殺。残された母親のエネルギーは久波君に一身に注がれ、彼の言動が気に入らないと暴力をふるうようになった。
小学生の彼は、その母親から逃れるため家出を繰り返し、保護されて児童養護施設に入所した。
その母親を「マイルドにする」とは?
自分の母親のような苛烈さではない教育熱心さだと、久波君は言う。
たとえば、幼いころからキャンプや習い事はもちろん、キッザニアに連れて行ったり、こども議会に参加させたり。
子どもは何に反応するかわからない。
わからないからこそ、さまざまな体験をさせる。
しかし、単発ではダメだ。
そこにずっと寄り添って、その子が何に引っかかるか、何にこだわりを持つか、それを見極め、後押しし、伸びていく方向性を一緒に探してくれるような大人が必要だ、と。
その子が何に引っかかるか、何にこだわりを持つか、それを見極める大人が必要(写真提供:NPO豊島子どもWAKUWAKUネットワーク)
その子が何に引っかかるか、何にこだわりを持つか、それを見極める大人が必要(写真提供:NPO豊島子どもWAKUWAKUネットワーク)
施設職員にはできない?
児童養護施設の職員に、それはできないのか。
「難しい」と久波君は言う。
職員の仕事は本来それだろうと言うことはできる。親代わり。
しかし実際は、あまりにも凄惨な体験をしてきた子どもたちと向き合っている結果として、「食べられればよい」「暮らしていければよい」とハードルが下がってしまう。
教育・養育の質にまで目が向かない。
そして、そうした問題意識をもっている職員も、社会福祉的な養成しか受けていないので、社会経験や人脈が不十分で、多角的な体験を提供できない人もいる。
だからといって、養子縁組して家族になってもらうことで問題解決すればいい、とも思えない。
それでは結局「家族以外は誰もやってくれない」という現状と、根本的には変わらないんじゃないか。
家族と他人の間に、そのようにして子どもに寄り添ってくれる人の存在する余地はないのか。
ーー久波君の話しはこのようなものだった。
「アニキ」とか「オヤッさん」とか
ある、と私は思う。
その人たちはかつて「アニキ」とか「オヤッさん」とか「センパイ」とか呼ばれていた。
「面倒みてくれる」人たち。
面倒見ながら、一緒にふざけたり、バカやったりしながら関係と信頼ができ、だからその人の「おまえ、それ結構向いてるんじゃない?」が強い影響力をもった。
特に珍しくもない、ごくありふれた、どこにでもある関係だった。
ただ、それはいろいろとややこしいしがらみと背中合わせでもあった。
「イヤなのに、どうして無理に付き合わなきゃいけないんスか」と言われると、それでもと強要するのが難しい性質のものだった。
一歩間違うと「あの子たちとはあまり深く付き合わない方がいい」と言われるような関係に転化するかもしれないものだった。
また、ごくありふれたものだったからこそ、私たちはあまり作り方を意識してこなかった。
そういう関係が、あちこちで勝手につくられているときはよかった。
勝手につくられなくなると、さて、どうやったらつくれるものなのか、誰もみんなを納得させる答えは持っていないのだった。
家族と他人の間のどこに位置づけられるべきものなのか、
地域の人々によって担われるものなのか、専門家の有給のお仕事として担われるべきものなのかも、
人によって意見が分かれる。
一人で背負い込むには重すぎるだろう。
だからといって、どのようなチームが望ましいのか、わかりやすい正解があるわけでもない。
誰かに「よろしく」と頼んで済むことではない。
ナナメの関係
ただ、その関係が重要なことは認識され「メンター」とか「ナナメの関係」とか言われるようになっている。
欧米では、このような関係を取り結ぶ若者たちが「ユースワーカー」として、社会福祉の中に位置付けられてもいる。
それも参考にしつつ、日本でどのような仕組みと体制が望ましく、そして現実的なのか、多くの人たちが試行錯誤を繰り返している。
機会の平等の確保は必要で、重要なことだ。
その上で、さらにそこに手が届かない子どもたちに手を伸ばす試みも積み重ねられていくべきで、積み重ねられている。
しんどい思いをしている子どもや若者のメンターとなり、ナナメの関係を切り結んでいくのは、私かもしれないし、あなたかもしれない。
「昔には戻れない現在という地点において、未来へ向けて新たな“場”を創り出していこう」と以前に書いた。
「1ミリでも進める」とはそういうことだろう、と。
その努力を一人ひとりが積み重ねていくことが「あきらめない力」を育むだろう。
大人たちがあきらめない社会でこそ、あきらめない子どもたちが育っていくはずだ。
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湯浅誠
社会活動家・法政大学教授
1969年東京都生まれ。日本の貧困問題に携わる。2008年末の年越し派遣村村長を経て、2009年から足掛け3年間内閣府参与に就任。政策決定の現場に携わったことで、官民協働とともに、日本社会を前に進めるために民主主義の成熟が重要と痛感する。現在、法政大学現代福祉学部教授の他、NHK第一ラジオ「マイあさラジオ」、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」レギュラーコメンテーター他。著書に『ヒーローを待っていても世界は変わらない』(朝日文庫)、『反貧困』(岩波新書、第8回大佛次郎論壇賞、第14回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞)など多数。
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4億円を寄付した男の“危機感”
湯浅誠 | 社会活動家・法政大学教授
2016年8月3日 6時57分配信
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河野経夫・第一住宅株式会社代表取締役会長(写真はすべて筆者)
7月14日の朝刊各紙の首相面会人一覧に、見慣れぬ名前が載った。
「河野経夫」。
第一住宅という会社の代表取締役会長。
この人が首相官邸を訪れたのは、政府が主導する「子供の未来応援基金」に対する巨額寄付が理由だった。
その額、4億円。
「あるところにはあるもんだなあ」と思った人もいるもしれない。
しかし、河野さんの寄付行為は強い危機感に裏付けられた、より切迫したものだった。
その危機感とは何か。
埼玉県川越市にある第一住宅本社にて、お話をうかがった。
寄付は1分で決めた
――4億円もの寄付を即決されたと聞きましたが、本当ですか?
本当にあっさり決めたんです。
家内が「おとうさん寄付したら?」というから、私が「いいね」と。
1分で決めました(笑)。
実は、私の会社は同族会社でしてね。会社の純資産は90億円なんですが、息子も継ぎませんので、そのうち20億円で持ち株会をつくって、みんなの会社にしようと。
そういう趣旨で株を処分したので、それで寄付しようと決めたんです。
税金を払いながらコツコツ貯めたお金を寄付したわけじゃないんです。
そこまでのお金はない。臨時収入ですよ(笑)。
私たちの会社がここまで来られたのは社会のおかげです。
社会のおせわになったわけだから、社会のお役に立ちたい、と。
笑顔がチャーミングな河野会長
笑顔がチャーミングな河野会長
「子供の未来応援基金」に決めたワケ
――にわかには信じられませんね(笑)
本当ですよ(笑)。
ただ、どこに寄付するかは、かなり慎重に調べました。
名前を出すのは控えますが、よく知られているところでも、ダメなところはいっぱいあります。寄付を集めるべき団体が政治家に寄付したりとかね。
調べているうちに出会ったのが「子供の未来応援基金」です。
これは、基金すべてを子どもの福祉のために使います、と。
事務費は、すべて事務局が負担します、と。
これならいいかな、と思ったんですね。
ところが、政府が提唱して始めたものだけど、半年で2億円しか集まっていない、と。
個人・団体から寄付を募って、経団連にも一生懸命営業しているらしいんですけどね。
寄付すると、自社広告に子供の未来応援基金のステッカーが貼れる。それでもそれしか集まっていない。
内閣府の方が来られたので、聞いたんですよ。そしたら「目標は2億5000万円です」と。
でも、トヨタの利益は2兆3000億円ですよ(笑)。
いや、他人のことはどうでもいいんですが、それで私、少しでも起爆剤になればと思いましてね。
それでも心配ですからね。
お金の分配を決める委員の方たちの顔ぶれが決まるまで待った。
審議委員には、企業の人が5人、行政から2人、学識経験者が2人。これなら大丈夫かな、と思いましてね。
それで決めました。
自分なりに精査したつもりです。
私だって中小企業のオヤジですからね。個人で4億円出すのは容易なことじゃないんですよ(笑)。
河野さんが確認した審査委員会名簿
河野さんが確認した審査委員会名簿
不労所得が増えてもロクなことはない
――臨時収入とおっしゃいましたけど、それでも会社を育て、積み上げてきた末の4億円ですよね。
それはそうですけどね。
でも、私も今年で75歳。もうそんなに先も長くないですからね(笑)。
永遠に生きるなら、寄付もしなかったかもしれませんけど(笑)。
使う分だけあればいいんで、使えないほど持っていてもしょうがない。
死に仕舞いをしなきゃいけません(笑)。
河野さんが一代で築いた第一住宅本社ビル(川越駅より撮影)
河野さんが一代で築いた第一住宅本社ビル(川越駅より撮影)
――お子さん、お孫さんに譲ろうとは思わなかったんですか。
息子が1人、娘が2人、孫が1人おりますけどね。子どもたちも賛成してくれましたよ。
子どもたちにまったく残してないわけじゃないんです。それなりに計画的に株を譲ってきました。
でも、必要以上に譲ってもね。いかに我が子とはいえ、不労所得が増えすぎたらロクなことはありませんよ(笑)。
おなかくらい満たしてあげたい
――「子供の未来応援基金」に決めたのは、やはり子どもですか。
子どもは未来の宝です。
じいさんばあさんばかりになっては、地球は崩壊するでしょ(笑)。
子どもを増やすべきです。
でも今は6人に1人の子どもがプア(貧困)だと言うんでしょ。
勉強のできる子どもばかりが宝じゃないが、それでも高校とか大学とか、行けるなら行かせてあげたいですよね。
ひもじい子どももいるんでしょ。そういう子どもたちにご飯を食べさせる「こども食堂」もあるとか。300円とかで食べさせるらしいですね。
私にはできないが、そうやって社会貢献している人たちがいっぱいいる。
その人たちの力になれればいいな、と。
ひもじい思いをしているなら、おなかくらい満たしてあげたいじゃないですか。
「ひもじい思いをしているなら、おなかくらい満たしてあげたい」
「ひもじい思いをしているなら、おなかくらい満たしてあげたい」
4億円を寄付した男の危機感
――でもそれは、国が税金でやるべき仕事だという人もいますよね。
これは安倍総理にお会いしたときにも申し上げたんですけどね。
厚労省の外郭団体によれば、日本の人口は2110年に4286万人まで減ると言っていますね(国立社会保障・人口問題研究所中位推計)。
このままいったら、この国は大変ですよ。終わりますよ。
人口減少で未来がないとなれば、円の信認も下がるかもしれない。
国債が暴落するかもしれない。
このままいったら、デフォルトになるとか、預金封鎖があるとか、そういうことがありえると私は危惧しているんです。
そういう危機的状況なのに、57兆円の収入で97兆円の生活をしている。持続可能性がないですよ。
学者さんの中には、大丈夫だって言う人もいますけどね。私は心配です。
それなのに、消費増税を2年半延期してしまった。
選挙に勝つためでしょうが、どうしてこういうことをやるのか。
安倍総理には力があるんだから、任期を伸ばしてでもやってほしい、と申し上げました。
そもそも日本の総理は短命にすぎます。
サミット(主要国首脳会議)は1975年以来これまで42回開かれていますが、フランス大統領は5人、ドイツ首相は4人、アメリカ大統領は7人です。それに対して日本の首相は20人です。
これではいい仕事はできません。
アメリカの自動車会社GMが経営破綻したのは、経営者が一期ごとの利益に汲々としすぎたからですよ。
日本の自動車会社は、より長期的にものづくりを磨き、力を蓄えていった。
アメリカはそれを恐れています。
でも、政治はその反対です。すぐに変わってしまう。
安倍さんだって、借金を減らしたわけじゃない。国債の増発を減らしただけです。
政治は、もっと長期的な見通しをもって、もっとまっすぐに進むべきものだと思うんです。
でも、政治の力だけでは、それはできません。
その意味では、安倍さんも悪いが、国民も悪い。
「政治には、もっと長期的な視点が必要」
「政治には、もっと長期的な視点が必要」
子どもは放っておけば育つんだと言う人もいます。
でも、誰がプア(貧困)にしたのか。政府の責任です。
中流層がものすごい勢いで減っています。
これってまさに、小泉構造改革がまずかったと思うんです。
でも、小泉構造改革をやったから、日本のモノづくりががんばれた。
悪いことも、良いこともあった。
でも、悪い面の手当てが十分なされていません。
だから政府の責任でフォローすべきです。
でも1100兆円の借金があります。政府だけではできません。
それには、私たち国民にも責任があったと思うんです。
国民による運動が必要だと思います。でも、私にそんな力はありません。
私にできることは、せめて寄付をすることぐらいです。
「私にできることは、せめて寄付ぐらい」
「私にできることは、せめて寄付ぐらい」
寄付の連鎖に期待
――河野会長の周りには、そのような思いを抱いている方が多いんですか。
多くはないですね。
私はどこでも、このままいったら大ごとだ、と言っています。
みんな「そうだな」と言ってくれるんですが、なかなか行動は起こしてくれません。
このままでは大変だ、そのためには子育てだ、と言っているんですが、広がらない。
私に説得力がないんでしょう。
でも、こんな話もありました。
ウチの社員が行っている病院の医師が「おたくの会長は立派なことをやられた。私もやろうかと思っている」と言ったというんです。
そういう人もいます。
だから、広がっていくことに対する期待を捨ててはいません。
アメリカに行ったとき、テキサスである家族に会いました。
親子で3Dプリンターを作る小さい会社をやっている。子どもの教材やおもちゃに使いたいと言っていました。
3Dプリンターなんて、もう世界中で普及してしまっている。それでもその家族には1億円の資金が集まったというんですね。
アメリカにはそういう文化があります。
日本にはそういう文化がありません。それを変えていく必要があると思います。
できたら、私の寄付が呼び水になって、連鎖が広がってくれるといいですね。
また言っちゃいますが、トヨタの利益は2兆3000億円ですからね。
4億円なんて、トヨタから見れば私の1円くらいでしょう(笑)。
経団連がその気になれば、すぐに数十億円くらい集まると思うんですよね。
だいたい企業がやれば経費ですから。私みたいな個人はそうはいかない(笑)。
「経団連がその気になれば、数十億円くらい集まるはず」
「経団連がその気になれば、数十億円くらい集まるはず」
立派なことなど言えないが
――最後に、今の子どもたちに一声かけるとしたら。
立派なことなんて、言えませんねえ。
でもやっぱり、がんばったら未来は開けるよ、と言いたいですね。
できたら、横道にそれず、前向きに努力してほしい。
素朴にそう思いますね。
そのために、私のお金が少しでも生きてくれれば、ありがたいです。
画像
(8月3日18:41誤字修正:「子供未来応援基金」→「子供の未来応援基金」)
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湯浅誠
社会活動家・法政大学教授
1969年東京都生まれ。日本の貧困問題に携わる。2008年末の年越し派遣村村長を経て、2009年から足掛け3年間内閣府参与に就任。政策決定の現場に携わったことで、官民協働とともに、日本社会を前に進めるために民主主義の成熟が重要と痛感する。現在、法政大学現代福祉学部教授の他、NHK第一ラジオ「マイあさラジオ」、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」レギュラーコメンテーター他。著書に『ヒーローを待っていても世界は変わらない』(朝日文庫)、『反貧困』(岩波新書、第8回大佛次郎論壇賞、第14回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞)など多数。
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http://bylines.news.yahoo.co.jp/yuasamakoto/20160811-00059572/
子どもの貧困 当事者の声 あきらめないために必要なもの
貧困は、お金がないだけでなく、精神的にも追いつめられる。しかし、お金がなくても、あきらめない強さをもつ子どもたちはいる。彼ら彼女らの「支え」は何だったのか。子どもの貧困当事者の声から考える。
2016年8月11日(木) 8時47分
4億円を寄付した男の“危機感”
河野経夫氏。第一住宅株式会社の代表取締役会長。政府が主導する「子供の未来応援基金」に対する4億円の寄付で、安倍総理から感謝状を受けた。河野さんの寄付行為は強い危機感にもとづく。その危機感とは?
2016年8月3日(水) 6時57分
「教育県から学習県へ」 長野県・阿部守一知事のビジョンと子どもの貧困対策
自然豊かな信州・長野は、同時に「教育県」として知られる。しかし阿部守一知事は「教育県から学習県へ」のパラダイムシフトを念頭におく。そのビジョンと子どもの貧困対策の位置づけを聞いた。
2016年7月29日(金) 17時48分
名づけ親が言う 「こども食堂」は「こどもの食堂」ではない
こども食堂が急増している。とっつきやすさに加えて、ネーミングの力も大きい。その名づけ親である、気まぐれ八百屋だんだん店主・近藤博子さんが今「こども食堂はこどもの食堂ではない」と言う。なぜか。
2016年7月24日(日) 8時56分
「子どもの貧困対策をするつもりはない」と 対策先進市・明石市長が言う理由
タコで有名な兵庫県明石市は、子どもの貧困対策の先進市でもある。対策は泉房穂市長のリーダーシップの下で推進された。ところが当の泉市長は「子どもの貧困対策をするつもりはない」と言い切る。そのワケとは?
2016年7月20日(水) 9時54分
【参院選後】加藤勝信大臣に聞く 「子どもの貧困対策、失速しませんか?」
「争点つぶし」「野党抱きつき」と言われた一億総活躍。その中に、子どもの貧困対策も入っている。もしそれが本当なら、参院選後に対策は失速するのか。消費増税延期の余波は? 加藤勝信・内閣府特命大臣に聞いた
2016年7月12日(火) 7時2分
子どもの貧困 「彼女はラッキー」で終わらせない
成績優秀でも大学に行けない生活保護家庭の子、篤志家に学費を出してもらって保育士を目指す子。2人の子の人生をわけるのが「運」や「偶然」だけに任せていいわけがない。
2016年7月7日(木) 7時33分
「みんなで鍋をつつくって、本当にあるんだね」 〜1ミリでも進める子どもの貧困対策〜
広くて深い子どもの貧困問題。そこでは「あたりまえ」の体験が欠如し、人生の選択肢が狭められている。「1ミリでも進める子どもの貧困対策」として、シリーズで多角的に検討していく。
2016年7月1日(金) 7時19分
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