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7月22日に配信が始まった「ポケモンGO」
ただの一アプリ「ポケモンGO」で国家的大混乱…自治体が削除要請、各業界で特需ラッシュ
http://biz-journal.jp/2016/08/post_16294.html
2016.08.14 文=石野純也/ケータイジャーナリスト Business Journal
7月22日に配信されたスマートフォン(スマホ)向けゲーム「ポケモンGO」が、社会現象を巻き起こしている。米グーグルの社内ベンチャーから独立したナイアンティックが、任天堂が出資するポケモンの協力の下で開発したゲームで、ナイアンティックのヒット作でもある「イングレス」を下敷きにしており、位置情報と連動しているのが特徴だ。
ゲームの主目的は、歩いていると出現するポケモンを集めること。街中のさまざまなスポットに、アイテムやEXP(経験値)をもらえる「ポケストップ」や、ポケモン同士を戦わせる「ジム」が設定されている。こうした仕掛けがあるため、ユーザーは基本的に外に出て遊ばなければならない。高い人気や話題性も相まって、レアなポケモンが出現する公園は、連日、黒山の人だかりになっている。
実際にある場所と連動してゲームが進むため、街中でゲームを遊ぶ人が急増した
スマホ上で配信されるゲームなだけに、ポケモンGOは携帯電話業界にもさまざまな影響を与えた。その代表例が、モバイルバッテリだ。家電量販店にはポケモンGOの人気を受け、モバイルバッテリの特設コーナーが設置され、在庫がないと嬉しい悲鳴をあげるメーカーもいる。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手キャリア3社も、スマホのアクセサリーとしてモバイルバッテリを取り扱っているが、ポケモンGOの登場で、その売れ行きにも弾みがついたという。
KDDI社長の田中孝司氏は、「モバイルバッテリがやたらと売れた」とその影響を語る。ドコモやソフトバンクの関係者に話も聞いても、この傾向に変わりはないようだ。ポケモンGOは熱心にプレイしようとすると常時起動していなければならず、バッテリの消費が激しいためだ。
アンドロイド端末に関しては、対応OSがアンドロイド4.4以上でメモリ(RAM)が2GB以上と、アプリのなかでは端末に求めるスペックが比較的厳しい。数年前のスマホをそのまま使っている人は、ポケモンGOの配信が始まってもすぐに遊べなかったのだ。そのため、機種変更需要もにわかに高まった。田中氏は、「(機種変更が)20%増えた」と語っている。
KDDI広報部によると、この数値はポケモンGO配信前後5日間の比較とのことで、その効果は明白だ。あるメーカーも同様に、ポケモンGO配信開始直後に「売れ行きが跳ねた」と語っている。
ポケモンGO専用をうたうSIMカードを発売するMVNOも登場した。画像は日本通信の「ゲームSIM」
■格安スマホ各社も素早い対応
機種変更特需はすでに落ち着いているようだが、スペック差の大きなSIMフリースマホのメーカーのなかには、対応の可否をアピールするところも出てきた。ポケモンGOが今後、どこまで継続してプレイされるか次第ではあるが、このブームが続くようだと、スペックの低いローエンド端末が敬遠されるおそれも出てくる。また、AR機能を使うためのジャイロセンサー搭載モデルは、やはり単価が高い。結果として、より高価格帯のSIMフリーモデルに人気が集まり、販売単価が上がる可能性もありそうだ。
SIMフリースマホと同様、いわゆる「格安スマホ」と呼ばれるMVNO(仮想移動体通信事業者)も、ポケモンGOの人気にあやかろうとする動きが活発化している。真っ先に“便乗商品”を発表したのが、フリービットグループのDTI。同社はポケモンGOの通信のみ通信量としてカウントされない「DTI SIM ノーカウント」を発表している。提供は今秋の予定だ。同様のサービスは、FREETELも投入を予定している。
FREETELは、LINEやWeChat、App Storeなどのデータ通信料をカウントしないサービスを提供していたが、これをポケモンGOにも拡大する。同社は端末メーカーとしての顔もあり、こちらでもポケモンGOの人気を活用。ジャイロセンサーまでフルに対応している「REI」や「KIWAMI」といった機種への、乗り換えキャンペーンを行っている。
日本通信も、ポケモンGO対応のSIMカード「ゲームSIM」を8月10日に発売する。同社のゲームSIMが、DTIやFREETELと異なるのは、これが「ポケモンGO専用」というところ。つまり、ポケモンGO以外の通信はできないのだ。このSIMカードはプリペイド方式になっており、30日もしくは1GBまでの通信が可能。利用の継続は500円でできる。ポケモンGOを遊びたい子どもに与えたり、ポケモンGO専用端末に挿したりするのに向いたSIMカードといえるかもしれない。
SIMフリースマホの明暗も分けた格好だ。ファーウェイの場合、「P9」(上)は完全対応だが、「P9 lite」はジャイロセンサー非対応でARが使えない
■スマホ業界全体に特需
ポケモンGOの配信は、ネットワークにも負荷を与えた。配信日の7月22日には、一部MVNOのトラフィックが集中し、速度が低下する事態にもなった。ゲームそのものの通信量は少ないため、配信日以降の影響は特にないというが、ダウンロードが殺到した様子がうかがえる。
Windowsのアップデートなど、トラフィック全体に与える影響が大きいサービスはあるが、ポケモンGOもそれと肩を並べたというわけだ。アップデート開始時など、今後の動向にも注目したい。
このように、ポケモンGOは、キャリアやメーカーといったスマホ業界にも、“特需”を呼び込んだ。いちアプリがここまで影響力を持つのは、異例の事態といえるだろう。
人気が高まる一方で、歩きスマホによる事故への懸念も高まっている。ドコモ社長の吉澤和弘氏は、決算説明会の席であえて歩きスマホについての注意喚起をしたほどだ。過去の事例を踏まえると、キャリアにとっては批判がいつ自分たちに向くかもわからず、新しいサービスだからといって声高にポケモンGOを推せない現状もある。
歩きスマホ以外でも、公園にゴミが散乱したり、ゲームを遊ぶのにふさわしくない場所で遊ぼうとする人が現れたりと、ポケモンGOにまつわる問題が顕在化しつつある。すでにポケストップの削除に乗り出す自治体なども出てきているが、社会の反発が強くなれば、その勢いもそがれかねない。
利用者が節度を持って遊ぶのはもちろんだが、アプリ自体にもなんらかの抑止機能が必要になってくるはずだ。大手キャリアは歩きスマホ防止アプリを配信しているが、こうした機能をポケモンGOに組み込むような対策も必要になるだろう。
(文=石野純也/ケータイジャーナリスト)
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