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「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング。その事実上の筆頭株主が日本銀行となる日もそう遠くなさそうだ Photo by Hiroshi Tanaka
「大株主は日銀」の異常が多発 異次元緩和の検証は虚心坦懐に
http://diamond.jp/articles/-/98153
2016年8月12日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長] ダイヤモンド・オンライン
日本銀行は、「マイナス金利付き量的質的金融緩和策」の効果を9月の金融政策決定会合で「総括的に検証」すると発表した。どのような結論となるのか、市場の観測は二分している。「新たなバズーカ緩和策の導入か」という期待の一方で、「マイナス金利を撤廃するのではないか」との見方もある。
実際に出てくるのはどちらでもないと考えられる。今回の「検証」における日銀の最大の狙いは、インフレ目標達成に向けた闘いを、短期決戦から持久戦に事実上シフトすることにあるだろう。
7月に日銀が公表した「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」にも記載があったが、日本は実際に物価が上昇しなければ、人々のインフレ予想は高まらない傾向が強い。しかし、消費者物価指数でウェイトを占めるのは、公共料金や家賃関連など日銀の緩和策に短期的には反応しない品目で、インフレ率は上がりにくい。
一方、インフレ率のプラス幅は目標の2%から当面遠ざかっていくことが予想される。このままでは市場からたびたび追加緩和策を催促されてしまうが、その手段は実際のところ枯渇してきている。
「できるだけ早期に2%のインフレを目指す」という文言は、2013年1月に出した政府との共同声明にも記載されているため、公式には変えられない。せめて、海外の大半の中央銀行に倣って、運営上のスタンスとしてインフレ目標達成期間を微妙に「中期化」する印象を発し、市場の追加緩和要求の高まりを鎮めたいのだろう。
欧州中央銀行(ECB)や英国、スイスなどの中央銀行も2%近辺のインフレ目標を採用しているが、実際のインフレ率は大幅に低い状態が続いている。しかし、彼らは「中期的には目標に届くように頑張っています」と、おうような態度を取っている。現実的には、インフレ率を短期間に目標値へ誘導することは不可能だからだ。市場もそれを理解しているので、あまり攻撃を仕掛けない。
ところが、日銀だけが「短期的に達成してみせる。そのためにはちゅうちょなく、あらゆる手段を取る」と宣言しており、市場に攻められる構図に自ら陥っている。
7月の決定会合で日銀は、市場の期待に無回答ではまずいと思ったらしく、株価指数連動型上場投資信託(ETF)の購入額をほぼ倍増の年間6兆円にした。この決定を“小粒”と評する報道もあったが、これはすごい金額だ。外国人投資家全体でも、日本株を年間6兆円買い越すことは滅多にない。
また、米通信社ブルームバーグによると、4月時点ですでに日銀がETFの購入を通じて、かなりの数の企業で大株主になっていた。日経平均株価の構成銘柄である225社のうち、日銀が大株主の上位10位に入っている企業は9割弱もあり、テルモやヤマハなど上位3位のケースも6社あったという。
今回の増額により、来年には日銀が事実上の筆頭株主となる企業が増加しそうだ。ファーストリテイリング(ユニクロ)もいずれそうなるだろう。日銀が将来ETFを売却すると言ったら、それらの株は暴落する可能性があるため、出口政策は極めて難しい。
浮動株比率が小さい株の場合、価格は日銀によって大幅にゆがめられる。日銀は日本の市場における価格発見機能を次々と壊している。日本経済を社会主義化するかのようなこうした政策は本当に正しいのか、黒田東彦・日銀総裁の言葉通り、日銀政策委員会は「虚心坦懐」に検証する必要がある。
(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
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