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ショック!日銀の「ETF買い入れ」には、日経平均を押し上げる効果はなかった…!?〜統計的検証で明らかになった、意外な結果
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49423
2016年08月11日(木) 安達 誠司「講座:ビジネスに役立つ世界経済」 現代ビジネス
■買い入れ枠倍増の効果
筆者にとって、7月28、29日の金融政策決定会合は、ほぼ「ゼロ回答」に等しかったという認識だった。しかし、マーケット関係者の評価は、どうやら異なるようだ。
特に、株式市場関係者の間では、日銀がETFの買い入れ枠を、従来の3.3兆円から6兆円にほぼ倍増させたことが、日本株(というよりむしろ日経平均などのインデックス)独自の押し上げ要因になるとの見方がコンセンサスになっている。証券会社の中には、この買い入れ枠の倍増の効果は、日経平均株価に換算すると1,000円以上になるとの試算を出すところも出ている。
確かに8月9日時点の終値でみると、日銀の金融政策決定会合が開催された7月29日から、ドル円レートは0.08%の円安にとどまっているのに対し、日経平均株価は1.18%の上昇となっている。
2012年1月4日から2016年8月9日までの日経平均株価とドル円レートの関係に基づき、2016年8月9日のドル円レートの水準から計算される日経平均株価の想定値を試算すると、1万4,465円となる。同日の実際の日経平均株価の終値は1万6,765円だったので、単純に考えると、ドル円レートの水準から想定される日経平均株価の水準を2,300円上回っているようにみえる。
だが、統計学的には、為替レートとの相関性だけで考えた場合でも、標準誤差を考慮すると、日経平均株価が1万6760円程度の株価になることが可能性としては十分ありえる。そのため、今回のETF買い入れ枠拡大の効果が早くも出ているのかどうなのかはこれだけでは明確にはいえない。
そもそも、日銀によるETF購入が日経平均株価にプラスの効果をもたらすとの指摘は従来からあった。
そこで、過去の日銀のETF購入と日経平均株価の関係を統計的に検証してみると、意外な結果が出た。具体的にいえば、日銀がETF購入を実施した日の日経平均株価は統計的に有意に前日比マイナスになっていたのである。すなわち、統計学的に検証する限りにおいては、日銀によるETF購入によって、平均的には株価はむしろ下落したという結果になったのである。
図表1:日銀によるETF購入が日経平均に与える影響についての統計的検証
■日経平均株価は逆に下がる?
ところで、日銀によるETF購入は2010年12月15日から開始されている。そして、年間購入枠が段階的に拡大されるに従って、1日あたりの購入額も平均的には拡大している。
そこでまず、2010年12月から2016年7月までの月次データを用いて、日銀によるETF購入額が、日経平均株価の収益率にどのような影響を与えているかを検証してみた。
最初に、ETF購入額自体が日経平均株価の月次収益率の変動を説明する要因になりえるか否かを検証。ちなみに他の説明要因として、米国株との連動性を考慮してニューヨークダウ工業株30種平均株価、そして、ドル円レートを加えた。
その結果は、ETF購入額は、日経平均株価の月次収益率の変動要因とはみなせないというものになった(その他の説明要因として米国株を落とし、ドル円レートのみとした場合も結果は変わらなかった)。
次に、日銀によるETF購入という事実(額は関係ない)が日経平均株価の月次収益率の変動要因として適切か否かを同様に検証した。具体的には、日銀のETF購入が実施された月には1、実施されなかった月には0を入力する新たなダミーの説明要因(ダミー変数)を作成し、そのダミー変数の有効性を検証した。
その結果もETF購入額同様、日経平均株価の説明要因にはならなかった。
さらに、ある程度まとまった規模のETFの買い入れを実施しないと日経平均株価に影響を及ぼさないという可能性を考慮して、日銀が月次ベースで1,000億円、及び1,500億円以上のETF買い入れを実施した月には1を、それ未満の買い入れしか実施しなかった月には0を入力するダミー変数を作成し、それを説明要因として、その有効性を検証した。
すると、今度は、そのダミー変数は統計的に有意となった。つまり、日銀のETF購入は、まとまった規模実施された場合には、日経平均株価に有意な影響を与える可能性が示唆される結果となった。
だが、問題はその符号であった。この場合、ETF購入額のダミー変数の符号がプラスであれば、日銀によるETF購入は、日経平均株価を押し上げることを意味する。だが、残念なことに、符号は負であった。これをそのまま解釈すると、日銀がまとまった額のETFを購入すると、日経平均株価は逆に下がるということになってしまう。
これは、日次データを用いてもほぼ同様であった。ただし、日次データの場合、1日の購入額が300億円以上か否かで「ダミー変数」を作成した。しかし、その符号はマイナスとなった。すなわち、日銀がETFを購入した日の日経平均株価は前日比で下落する傾向が強いという結果となった。
このような、日銀がETFを購入した日に日経平均株価が下がるという傾向は実際のデータからも確認できる。
2010年12月15日から2016年8月9日までの間で、日銀がETFを購入した日は計379回あった。その379回のETF購入時における日経平均株価の日次の収益率は平均1.02%のマイナスであった(ちなみにドル円レートは0.18%の円高であった)。一方、日銀がETFを購入しなかった日の日経平均株価の日次収益率は平均0.45%のプラスでドル円レートは0.09%の円安であった。
一方、日銀がETFを300億円以上購入した日は計157回あった。その157回のETF購入時における日経平均株価の日次の収益率は平均1.16%のマイナスであった(ちなみにドル円レートは0.25%の円高であった)。一方、日銀がETFを購入しなかった日の日経平均株価の日次収益率は平均0.19%のプラスでドル円レートは0.05%の円安であった。
■効果は織り込み済み
以上より、日銀によるETF購入が日経平均株価を押し上げるという仮説は採択されなかった。
つまり、少なくともこれまでの実績をみると、日銀によるETFの購入が日経平均株価を押し上げたという事実は確認できない。
日銀によるETF購入が日経平均株価にもたらす因果関係を考えるのであれば、日銀のETF購入が実施されると、それを日経平均の上昇要因であると思い込む「愚かな投資家」が株を購入しようとするので、そこに高値で売りつけて損失を回避しようと試みる投資家が現れて、最終的に日経平均株価は下落することが多かったということになるのではなかろうか。
もしくは、好意的に解釈すれば、日経平均株価の大幅な下落に直面した日銀が、そのタイミングでETFを購入した結果、日経平均株価の下落幅は限定的になった可能性も否定できない(これは、日中足のデータを用いて検証する必要がある)。
ちなみに、日銀がETF購入を実施した翌日に株価が上昇したケースは、201回あった(ETF購入の53.3%)。これを300億円以上のETF大量購入の場合に限定すると、77回あった(ETF大量購入の49%)。日銀のETF購入が1日の時差をもって市場のセンチメントを改善させるという効果もせいぜい5分5分ということになろう。
結論としては、いずれにせよ、筆者は、日銀のETF購入が市場環境を好転させて株価を上昇させるという過度の期待を持つべきではないと考える。また、株価は既知となった情報は既に織り込み、その時点での株価にあっという間に反映する。
そのため、日銀のETF購入の効果を認めるにしても、その効果に対する期待は既に株価に織り込まれていると思われる。したがって、日本の株価が独自の要因でどんどん価格を吊り上げていくというのは過大な期待であると思われる。
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