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8日の日本株は大幅上昇。だが筆者は「アベノミクスの矛盾と限界」を主張する(写真:AP/アフロ)
束の間に終わる「アベノミクス再起動」の夏 市場は決して政策を好感していない
http://toyokeizai.net/articles/-/130886
2016年08月08日 近藤 駿介 :金融・経済評論家/コラムニスト 東洋経済
「今後、政府、日本銀行が一体となって、あらゆる政策を総動員して、全力でデフレ脱却に取り組んでいきます」(8月3日の安倍首相記者会見)
日銀が7月の金融政策決定会合で上場投資信託(ETF)の購入枠を6兆円へと倍増させたのに続き、政府が総額28兆円の経済対策を2日の臨時閣議で閣議決定したのは、周知のとおりだ。
■政府の対策に対して、市場は好意的とは言えず
こうした「政府、日銀が一体となって」打ち出した政策に対する市場の評価は芳しいものではなかった。8日の日経平均株価こそ1万6550円と前週末比で396円上昇したものの、先週(8月1〜5日)1週間で日経平均は約1.9%下落し、為替市場で円は2円50銭ほど米ドルに対して上昇、101円前後まで円高が進んだ。
また、メディア等ではあまり報じられていないが、先月の27日には−0.297%まで低下していた10年国債の利回りは−0.1%付近まで上昇(価格は下落)してきている。
今回、政府、日銀が一体となって「金融政策」と「財政政策」を打ち出したにもかかわらず、市場が好意的な反応を見せなかったのは、アベノミクスの限界と矛盾が見え始めたからである。
まず、政府が打ち出した事業規模28兆円の経済対策。事業規模は過去3番目であるが、いわゆる「真水部分」(国と地方の直接歳出)は7.5兆円に過ぎない。
問題は経済対策の規模ではなくその効果である。
今回の経済対策の効果について政府は「本対策に基づく予算措置により短期的に現れると考えられる実質 GDP(需要)押し上げ効果を現時点で概算すれば、概ね 1.3%程度と見込まれる」と発表している。
2016年1-3月期の実質GDPは約530兆円であるから、1.3%程度の効果は約6.9兆円と、真水の7.5兆円を下回っていることになる。
「短期的」とは断っており、一概にはいえないが、経済対策の原則は、その効果が真水を上回ることのはずだ。政府が、経済効果が真水を下回る経済対策を打ち出すということは、数字だけ見れば、さほどの効果のない可能性のある投資をするということに他ならない。
■大量のETF買いの一方、円高要因をつくる日銀
財政が厳しい中で、「初めから効果が薄い」と見込まれている経済対策を打ち出すということは、財政赤字を増やす政策でしかない。これではいくら事業規模が過去3番目の大きさといっても、投資家の信頼を得られるはずはない。
民間では考えられないような経済対策を行うのなら、本来は十分な検証と説明が必要である。だが、ある意味で「初めから損失を被る」ことを分かっているものに積極的に投資していこうとしている「先輩格」は、マイナス金利の国債を大量に買い漁っている日銀でないだろうか。
その日銀は7月の金融政策決定会合でETF購入増額を決め、8月4日にはこれまで350億円程度であった1回の購入額の2倍以上に相当する719億円のETF購入を実施した。
しかし、ETF購入額倍増と同時に打ち出した「企業・金融機関の外貨資金調達環境の安定のための措置」は、海外投資家の円調達コスト上昇を通して円資産投資に対する需要を抑圧するものだったと考える。こうした、株価に対して効果が異なる政策を打ち出さなければならないところに「金融緩和の限界」が現れているといえる。
先月末から日本の10年国債利回りが上昇に転じて来たのも、日銀が打ち出した「金融緩和の強化」によって海外投資家の円調達コストを上昇させた政策効果によるところが大きいのではないか。
日本の株価を上昇させるために打ち出した「金融緩和の強化」は、短期的には本来の目的である株価上昇をもたらさずに、海外投資家の円調達コストの上昇を通じて日本株の買い余力を抑え、国内金利の上昇と円高圧力を増すという副作用を生み出す結果となっている。
黒田日銀総裁は「緩和手段はいくらでもある」と強気の姿勢を見せ続けているうえ、安倍首相も「黒田総裁は現在の金融政策について、限界がきていることは全くなく、その時々で最も適切な政策を行う旨、発言されていると承知をしています」(3日記者会見)という認識を示している。
仮に「緩和手段はいくらでもある」というのが真実だったとしたら、「金融緩和の強化」と称して、何故アクセルとブレーキを同時に踏むような矛盾した政策を採ったのかという疑問が残る。
■限界は「緩和手段」にとどまらない?
もし知らないでこうした政策を採ったのだとしたら、それは黒田総裁以下、日銀政策委員会審議委員が必要な能力を備えていないことになるし、知っていてこうした政策を採用したのだとしたら、それは「緩和手段がなくなって来ている」ことを表すものになる。
筆者は、個人的には、今回矛盾した政策を採用したのは、前者であった可能性が高いと考えている。それは、黒田日銀総裁が「金融マン」ではなく「行政マン」であるともいわれるように、現在の日銀政策委員のほとんどが金融の実務経験を持たない学者、証券会社のエコノミスト、銀行為替ディーラーなどで占められ、「金融」を完全に理解している人が少なくなったからである。
アベノミクスの中心的政策である「大胆な金融緩和」にとって、「緩和手段の限界」だけでなく、「審議委員の能力の限界」もボトルネックになってきていることには注意が必要だ。
アベノミクスが、金融市場からの信頼を取り戻す日は来るのだろうか。
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