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テレビ業界、ついに生き残りかけ捨て身の再編始動…CM制作費減少と「テレビ離れ」深刻
http://biz-journal.jp/2016/08/post_16218.html
2016.08.08 文=牧瀬良/フリージャーナリスト Business Journal
テレビCM制作業界の勢力図が塗り替えられることになりそうだ。業界2位のAOIPro.と同3位のティー・ワイ・オー(TYO)が経営統合に向けて基本合意したからだ。2社は9月27日に開く臨時株主総会での決議を経て、2017年1月4日に共同持ち株会社を発足させる。この統合によって、東北新社を抜き、国内シェア首位のCM制作グループが誕生することになる。
両社統合の背景には何があるのか。ニュースリリースでは、次のように説明されている。
「近年、インターネットを中心としたデジタルメディア等の媒体の多様化や、スマートフォンやタブレット端末等に代表されるデバイスの多様化に加え、通信速度やデータ解析、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)等のテクノロジーの進化もあいまって、広告事業を取り巻く環境は大きく急激に変化している」
何より、地上波テレビCM制作費が、2015年に前年比98.8%(1兆9323億円/電通調べ)と減少に転じた。人口減や「テレビ離れ」で市場規模の先細りは明らかだ。リリースでは、「両社が現時点において主力としているTVCM制作マーケットについては、中長期的には大きな成長を見込む事は難しい」と指摘している。つまり、今後の成長に対する危機感――これが両社の決断を後押ししたのはいうまでもないだろう。
統合協議は今年2月ごろから具体的に動き出したという。AOIPro.の本社は品川区大崎1丁目にあり、グループ従業員数は約900人。主要取引先は博報堂、電通、アサツーディ・ケイの3社。連結売上高は320億円(16年3月期)で営業利益は25億円(同)。一方のTYOの本社は品川区上大崎2丁目で、グループ従業員数は約840人。主要取引先は AOIPro.と同じ3社。連結売上高は284億円(2015年7月期)で営業利益は18.8億円(同)。今年4月末時点の時価総額はAOIPro.が133億円、TYOが104億円。
「規模も同じような会社が『(仕事を)取った、取られた』の繰り返しで、『一緒になったらよいのではないか』という声は以前からありました」とTYOのIR担当者は話す。
AOIPro.はかつて、子会社でゴルフ雑誌「週刊パーゴルフ」事業を手がけていた。14年3月期は年商16億円を上げたものの営業損失約2.6億円と赤字で、その不採算事業を14年10月に譲渡した。これによって収益の重しを外すことができた。グループの採算も改善し、本業のCM制作に専念できる体制を整備したという経緯がある。これも両社を統合に結び付ける要因になったのは間違いないだろう。
■アジアに活路を求め、資本力増強も狙う
アジアに活路を求めている点でも、両社の思惑が一致したようだ。『会社四季報2016年3集・夏号』(東洋経済新報社)の「材料欄」を見ると、AOIPro.は「【中国深耕】上海のCM制作協力会社に出資し持分会社化。北京子会社と2拠点体制強化で日系企業の需要深耕」、TYOは「【協業化】アジア圏の日系企業向け広告支援で、インドネシアに続きタイやベトナムでも業務・資本提携を促進」と明記されている。統合によって、中国・東南アジアで一気通貫のCM制作受託が前進するのは確かなようだ。
「ネガティブな統合ではなく、アジアで相互補完の体制を築くことができるという点でも将来に可能性を持った統合です」とAOIPro.の広報担当者は強調している。
最近の広告・動画技術の進化に対応するために、資本力を増強する狙いもあるようだ。動画広告の主流はテレビからインターネット、VR・ARといった体験型コンテンツへ移行していくとみられ、統合をテコに技術開発を強化するという。VRは仮想現実(Virtual Reality)を体験できる技術であり、AR(Augmented Reality)はカメラに表示される映像にデータなどをCGで「その場にいるように表示する」技術。最近、国内外で話題になっている「ポケモンGO」はこのARだ。
地上波テレビCM制作市場は縮小するものの、「広告に関連する事業領域は、その手法や構造の変化を伴いながらも、拡大していくものと考えられる」(ニュースリリースより)との共通の思いが両社にあるのも事実だろう。
一方、テレビCM制作トップで16年3月期に約600億円(連結)を売り上げた東北新社は、2社の統合に関して「コメントを控えたい」(広報担当)と静観の構え。だが、シェアが塗り替えられるだけに決して穏やかではないだろう。この16年度下期からは「番組調達力、制作力を生かし有料動画配信の新サービスを開始する」(前出「会社四季報」より)など攻勢に出る。広告制作市場で、東北新社と統合2社による競争が一段と激化するのは間違いなさそうだ。
(文=牧瀬良/フリージャーナリスト)
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