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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第185回 北海道新幹線の経済効果
http://wjn.jp/article/detail/4393842/
週刊実話 2016年8月11日号
津軽海峡を超え、北海道新幹線の新青森-新函館北斗間が開業して約4カ月が経過した。日本のマスコミは、新幹線の開業直後の乗車率低迷などの「失敗」は大々的に取り上げるが、想定以上に開業効果があると「無視」する傾向がある。というわけで、今回は当初の乗車率低迷を乗り越え、着実に経済効果を出しつつある北海道新幹線を取り上げたい。
新幹線でつながると「交流人口」が増える。交流人口とは、通勤・通学に加え、買い物、文化鑑賞、教育、エンターテインメント、スポーツ、観光、医療などの「サービス」の顧客として、その地域を訪れる人口規模になる。
北海道新幹線開業により函館市や北斗市、さらには東北北部の交流人口が増大することで、観光やビジネスが拡大する。増大した交流人口のサービスを提供する一次効果、さらには生産者の所得が拡大することにより追加的に生産が拡大する二次効果−−。北海道新幹線(新青森-新函館北斗間開業)は、年間約136億円の経済波及効果があると見込まれた。
さらに、北海道新幹線が札幌まで延伸されると、北海道の純交流人口は42.4万人増える(「北海道新幹線札幌延伸による経済波及効果長打事業の概要」より)。「純交流人口」とは、北海道以外に拡大する交流人口になる。北海道新幹線延伸で、北海道外、つまりは東北などの交流人口も40.6万人増えると見込まれているが、北海道や東北・関東で互いに行き交う人が増えるため、当たり前の話として交流人口の増加は双方向に発生する。
ただし、北海道外の交流人口が増え、ビジネスが拡大したとしても、北海道のGDP(道内総生産)にはならない。というわけで、新幹線開業時の交流人口は、「純交流人口」で見るのが適切なのだ。
北海道の純交流人口が42万人増えた際の「北海道のGDPの増加」がどの程度の規模になるかといえば、最大で1086億円となっている。毎年、北海道のGDPが1000億円以上も増えるわけである。
とはいえ、現状の北海道新幹線は新函館北斗駅が終点だ。札幌に延伸される以前の段階では、北海道新幹線の経済効果はそれほど大きくならないのではと危惧されていたわけだが、意外や意外、北海道新幹線の開業後、函館の観光サービスや飲食サービスは、北陸新幹線開業後の金沢ほどではないが、それなりに活況を呈している。
北海道新幹線「新青森-新函館北斗間」の今年6月の利用実績は、一日平均で約7900人に上った。在来線の同区間における昨年6月の利用実績が約4300人である。新幹線開業により、利用客がほぼ倍増したことになる。しかも、ゴールデンウイークで観光客が増える5月と比べても、6月は4%ほど伸びた。
函館朝市『どんぶり横丁』は、以前は閑散としていた午後1時頃(何しろ「朝市」だ)から、むしろ来客数が増加するようになった。東京駅を8時20分に出発する「はやぶさ5号」の乗客が、新函館北斗駅から在来線に乗り換え、どんぶり横丁に到着するタイミングが、まさに午後1時頃なのである。
函館の観光産業の象徴である五稜郭は、新幹線開通後、4月が対前年比30%増、5月が32%増、6月が50%以上の増加と、着実に来場客が増えている。
北海道新幹線の開業により函館の交流人口が増えると同時に、「函館の観光サービスや飲食サービスの商圏が東京圏に届いた」と考えて間違いなさそうだ。わざわざ5時間近くも費やし、函館市まで新幹線で行く東京圏の住民などごく一部に違いない、と思った読者がいるかも知れないが、何しろ東京圏の「市場規模」は3500万人(!)と、世界最大なのだ。東京圏が世界最大のメガロポリスである以上、その一部でも市場と化すことができれば、地方の観光サービスや飲食サービスのビジネスは一気に拡大することになる。
現在、函館駅周辺の主要ホテルが予約できない状況に至っている。北海道新幹線も、北陸新幹線開業後の金沢同様に、民間の建設投資ラッシュを引き起こす可能性が濃厚である。
JR北海道によると、開業から5月末までの北海道新幹線の利用者数は、上下線合わせて44万9600人。前年('15年)の在来線の実績に比べ、ほぼ倍増だ。
開業直後には20%程度に停滞し、不安に思われていた乗車率も上昇傾向にあり、ゴールデンウイークがあった5月は38%にまで伸びた。夏休みを迎え、北海道新幹線の乗車率はさらに上昇すると見て間違いないだろう。
ちなみに、北海道新幹線の新青森-新函館北斗間には、奥津軽いまべつ駅、木古内駅と二つの停車駅がある。これまで知名度は抜群だったものの、東京圏の住民が訪れにくかった津軽半島に「乗り換えなし」で行けるのだ。観光やビジネスで移動する人にとって、「乗り換えなし」が心理的距離に与える影響は極めて大きい。乗り換えが一度あるだけで、最低30分は心理的距離が伸びてしまうとのことである。
北陸新幹線開業後の金沢があれほどまでに一気に活況を呈したのは、まさに東京駅から「乗り換えなし」になったためだ。東京駅から2時間半かつ「乗り換えなし」で行けるため、東京圏の住民にとって金沢が一気に「身近な都市」になったのだ。
東京駅から新函館北斗までは北海道新幹線で4時間強と、確かに近くはない。とはいえ現在の函館の活況を見ていると、「乗り換えなし」の効果は筆者が想像していた以上に大きいようだ。
北海道新幹線が札幌まで開通すると、今度は函館や津軽の観光サービス、飲食サービスの市場が「200万人」超の札幌都市圏にリーチする(届く)ことになる。そうなると、函館や津軽を訪れる人はますます増える。
日本では、いまだに新幹線について数値データを無視して否定する論調が少なくない。その種の「新幹線否定論」を突破し、新幹線整備を進めていくためには、新幹線の「実績」を繰り返し繰り返し示していく必要がある。
みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。
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