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日米欧の経済停滞は「資本主義の限界」なのか?
http://nikkan-spa.jp/1160592
2016.08.05 日刊SPA!
日本とユーロ圏でマイナス金利となり、アメリカも次なる利上げに踏み込めないでいる。金利の否定は資本主義の否定にも等しい。やはり資本主義は限界を迎えているのか? 新刊『資本主義の限界』において、「『正と反の経済学』によって『限界』を突破できる」と指摘している名城大学都市情報学部の木下栄蔵教授に聞いた。
名城大学都市情報学部・木下栄蔵教授
――最近では「資本主義は戦争によってしか発展できない」とする、思想家の内田樹氏と政治学者の白井聡氏の対談が話題になりました。資本主義限界論がここそこで聞こえてきます。
木下:私はそうは思いません。それを説明するのに好都合なのが、私が提唱している「正と反の経済線」です。
――「経済線」とはどんな線なのでしょうか?
木下:需要と供給の差をラインに示したものです。この線が原点よりも上にあればインフレギャップが存在し、下にあればデフレギャップが存在していることを示します。気をつけてほしいのは、「高い水準にあるから高成長」「低い水準にあるから成長していない」といったように経済の規模や成長率を示す線ではないということです。その国の経済がインフレギャップなのか、デフレギャップなのかを示したシンプルなラインです。
木下栄蔵・著『資本主義の限界』P55より
――図を見ると、日本が高度経済成長期にあった時代も経済線は横ばいですね。
木下:この時代、細かなインフレギャップやデフレギャップ、あるいは好況や不況はありましたが、基本的には大きな需給ギャップは発生せず、日本経済は発展していきました。それが大きく変わったのは1985年のプラザ合意です。急激に円高が進み、「円高不況」「円高デフレ」となりました。そこで当時の澄田智日銀総裁は政策金利を引き下げました。これがインフレギャップを発生させ、平成バブルの元凶となりました。
――1989年の大納会、日経平均は今も破られていない史上最高値の3万8915円をつけました。
木下:まさにバブルのピークです。ところがそれ以降、ソ連の崩壊などパラダイムの転換となる大事件が続き、日本経済も大きな転換点を迎えることになります。バブル崩壊です。富の先食いであるバブルは必ず弾けます。戦後ずっと「正の経済」にあった日本経済ですが、バブル崩壊後に「反の経済」へと遷移しました。
――バブル崩壊で発生した「失われた20年」、そしてデフレギャップをいまだ日本は解消できていない、と。ところで経済線を見ると、直近はデフレギャップが拡大しているようです。これは何を意味するのでしょうか。
木下:これこそが前編で指摘した「反のバブル」の発生を示しています。きっかけとなったのは前述したように日銀の異次元緩和であり、それを加速させたのがマイナス金利でした。通常、バブルはインフレギャップの拡大により発生します。つまり経済線が極端に上方へ移動することで発生していました。チューリップバブルしかり南海バブルしかり、あるいは日本の不動産バブルやアメリカでリーマンショック前に発生していたバブルしかりです。ところが今回、初めてデフレギャップの発生した「反の経済」の下でバブルが発生しました。
――ではデフレギャップとは何なのでしょうか。
木下:ひと言でいえば、銀行に滞留したお金です。今はいくら日銀がお金ばらまいても、金利をマイナスにしても、企業は設備投資しないし、消費者も消費しない。だから「供給>需要」の関係は変わりません。新たな需要が生まれていないからです。むしろ、デフレギャップは拡大しているのが現状です
――この状況を救う方策はあるのでしょうか。
木下:ひとつ考えられるのが戦争です。先ほどの「経済線」を今一度見直してください。日本は大正バブルの崩壊後にも「反の経済」へ陥りましたが、戦争によって脱却しています。第2次世界大戦によって京都や奈良、北海道などのごく一部を除く日本全土が空爆を受けました。その結果、日本の供給能力はほぼゼロになるほど壊滅させられました。大正バブル崩壊後、「供給>需要」となりデフレギャップを抱えていたのが、空爆によって「供給<<<需要」へと急転換した。敗戦後、インフレという副作用はあったものの、日本は「正の経済」へと復帰して、高度経済成長を遂げていくのです。
――では、今の日本が復活する道も戦争である、と?
木下:広島と長崎に落とされた2発の悲惨な原子力爆弾を人類が経験した今、大規模な総力戦である戦争は国際的に許されるものではありません。いくら戦争が資本主義再生の手段として有効だからといって、決して選ぶべきでないことは明らかです。戦争以外にも日本が「反の経済」を脱して発展を遂げる方策もあることはあります。資本主義がダメだからといって、社会主義、共産主義を選択することは愚の骨頂ですから、我々でなんとかして資本主義の限界を突破する方法を模索せねばなりまません。
資本主義の限界を突破する秘策とは……? 次回後編では、新刊『資本主義の限界』の骨子でもある「反のバブル崩壊」について話を聞いた。〈取材・文/高城泰 撮影/岡戸雅樹〉
【木下栄蔵(きのした えいぞう)】
1949年、京都府生まれ。1975年、京都大学大学院工学研究科修了、現在、名城大学都市情報学部教授、工学博士。この間、交通計画、都市計画、意思決定論、サービスサイエンス、マクロ経済学などに関する研究に従事。特に意思決定論において、支配型AHP(Dominant AHP)、一斉法(CCM)を提唱、さらにマクロ経済学における新しい理論(Paradigm)を提唱している。1996年日本オペレーションズリサーチ学会事例研究奨励賞受賞、2001年第6回AHP国際シンポジウムでBest Paper Award受賞、2005年第8 回AHP国際シンポジウムにおいてKeynote SpeechAward受賞、2008年日本オペレーションズリサーチ学会第33回普及賞受賞。2004年4月より2007年3月まで文部科学省科学技術政策研究所客員研究官を兼任。2005年4月より2009年3月まで、および2013年4月より名城大学大学院都市情報学研究科研究科長並びに名城大学都市情報学部学部長を兼任。8月12日に新刊『資本主義の限界』(扶桑社)を発売
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