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震源地は中国とサウジ?秋に災厄が世界経済を見舞う 権力闘争の犠牲となる中国経済、サウジでは銀行が危機的状況 
http://www.asyura2.com/16/hasan111/msg/583.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 8 月 05 日 00:12:20: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

中国・北京で開かれたEUと中国のビジネスサミットに出席する李克強首相。習近平国家主席との対立が伝えられている(2016年7月13日撮影、資料写真)。(c)AFP/Ng Han Guan〔AFPBB News〕


震源地は中国とサウジ?秋に災厄が世界経済を見舞う 権力闘争の犠牲となる中国経済、サウジでは銀行が危機的状況
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47527
2016.8.5 藤 和彦 JBpress


 中国人民元が国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)構成通貨に加わる時期が迫っている。2016年10月以降、SDRの通貨バスケットにおける人民元の構成比は10.92%となって円の8.33%を上回り、米ドルやユーロに次ぐ重要通貨になる。

 ところが人民元のSDR入りを控えた7月21日、米ダラス連邦準備銀行(FRBのメンバー行)は「人民元は投資家にとって安全資産にはなりえない」とする報告書を発表した。

 ダラス連銀のスタッフは、株価変動の指数と安全通貨とされる米ドルや円、ユーロ、ポンド、スイスフランに対する人民元の相対価値を分析した。その結果、「人民元のパフォーマンスは2011年から2015年後半までは主要通貨よりも良好だったが、その後市場のボラティリティーが高まる中で主要通貨に対する相対価値が低下した」ことが判明したという(人民元は今年に入って主要通貨に対して約3%下落)。

 経済成長の勢いに陰りが見られるとともに、人民元取引の自由化に逆行する動きが目立つ中国政府の姿勢から、「現時点で人民元が安全通貨だとの指摘は裏付けられず、人民元が安全通貨の地位に向けて前進しつつあるとの見方も疑問視される」と結論づけた。

 国際銀行間通信協会(SWIFT)の今年6月時点の発表によると、人民元の決済シェアは昨年8月にピークに達して以降、縮小傾向にあり、2014年10月以来の低水準(1.72%)となった。シェアの順位は5月と同じくカナダドルに次いで第6位である。

 IMFが2016年10月の人民元のSDR入りを決定したのは2015年11月30日だった。当時は「人口規模が米国の4倍以上もある中国が、経済規模で米国を上回るのは時間の問題であり、人民元が米ドルの基軸通貨としての地位を脅かす存在になる」とセンセーショナルに受け止められた。だが、今年に入り中国経済に対する悲観的な見方が支配的になったことから、人民元のSDR入りはほとんど話題に上ることはなくなった。

■上海株式市場が下落、資金流出も再び拡大傾向に

 中国の不動産市場は今なおバブル崩壊には至っていない。むしろ北京や上海など一部都市では既に高止まりしていた不動産価格がさらに上昇するという不可解な現象が起きている。

 今年第1四半期の不動産業界への新規融資額は1.5兆元と、過去最高水準となった(昨年第4四半期は8000億元弱)。同業界の財務体質は目を覆うばかりである。5月21日付米ウェブサイト「The Automatic Earth」によれば、30%を超える上場不動産企業が金利負担に耐え切れず明日倒産してもおかしくない状態にあるという。

 中国の企業債務が経済成長率を大幅に上回る勢いで拡大していることを危険視する論調も高まっている。モルガンスタンレーによれば、現在の企業債務の水準は金融危機前の住宅バブル期の米国に比べても2倍に相当し、バブル崩壊により中国の銀行が被る損失額はサブプライム危機の米国の銀行の損失額の約4倍に上ると懸念されている。

 株式市場を見ても、このところ安定していた上海株式市場が7月下旬に6週間ぶりに大幅下落した。金融当局が、リスク性の高い理財商品を通じた株式投資の抑制に動きつつあるとの懸念が広がったからだ。

 中国銀行業監督管理委員会(銀監会)は、盛京銀行などの都市銀行の金融投資額の伸びが前年比100%を超えている(6月14日付ブルームバーグ)状況を踏まえ、3.6兆ドル規模にまで膨らんだ理財商品に関する商業銀行の取り扱いについて、新たな規制を策定中であることを明らかにした(7月28日付ロイター)。これに対して市場関係者の間では、「当局の規制で過度の調整が起きるのではないか」と心配する声が上がっている。

 資金流出も再び拡大傾向にあるようだ。中国外貨管理局は「5月の純流出規模は約20億ドル」としているが、ゴールドマンサックスは7月2日、「中国からの資金流出が加速しており、5月の資金流出規模は260億ドルに達した可能性がある」との見方を示した。

■経済政策の主体は李克強から習近平へ

 中国では7月下旬から8月にかけて「北載河会議」が開催されている。

 北載河会議とは、中国共産党の指導者や長老らが毎年夏、河北省の海辺の避暑地である北載河に集まって開く非公式の会議である。毛沢東時代から指導者らが家族連れで別荘に滞在しながら毎年重要な政治的決定がなされると言われている。

 今年の重要テーマの1つは、“政治局常務委員の定年制の見直し”だ。共産党の最高意志決定機関の7人のメンバーである政治局常務委員は、従来のル−ルでは節目の党大会の時点で「68歳以上」であれば引退しなければならない。そのため、習近平国家主席は反腐敗闘争の盟友である王岐山氏を常務委員の座に残すことができない。そこで、習近平国家主席はこのルールを「70歳以上」に改正するのではないかという観測がある。そうすれば、王岐山氏を首相に抜擢し、対立が囁かれている李克強首相を全国人民代表大会委員長という「閑職」に追いやることができるようになるからだ。

 中国では江沢民政権下の1998年から2003年まで在任した朱鎔基首相の時代に、民政分野の具体的問題について首相が全面に立って指導し、国家主席は首相を「立てる」方式が確立した。次の胡錦濤政権でも四川大地震(2008年)や高速鉄道事故(2011年)の際に現地に飛んで陣頭指揮をする温家宝首相の姿がクローズアップされた。

 しかし、今年の夏に全国規模の水害が発生した際、その陣頭指揮に立ったのは李克強首相ではなく習近平主席だった。異例の状態に中国メディアの関心が集まっている。

 経済問題についても、習近平政権の発足当初は李克強首相が活躍していたが、今年春頃から習近平主席の発言が目立つようになった。

 李克強首相と国務院の官僚たちは経済政策として、規制緩和を進めて民間企業を育成する、いわゆる「リコノミクス」を始動させていた。だが、5月9日付の共産党機関紙の人民日報がリコノミクスを厳しく批判する論説を掲載した。論説の筆者は、習近平主席の側近の経済専門家(劉鶴・党財経指導小組事務局長)とされている。彼の持論は「国有企業を保護し、経済に対する共産党の主導を強化する」である。共産党の主導強化に反することになる人民元のSDR入りにも、習近平主席は消極的だろう。

■国家統制と締め付けの経済政策

 習近平派の経済専門家が主導権を握るにつれて、強権的な手法による経済政策が目立つようになってきた。

 やり玉に挙がっているのは「ゾンビ企業」だ。中国人民大学によれば、実質的に経営破綻しているゾンビ企業は、2013年時点で約2.7万社に上る。上場企業でゾンビ企業の比率が高かったのは製鉄業(51.4%)、不動産(44.5%)、建設業(31.8%)である。

 中国メディアの報道を見ても「ゾンビ企業は中国経済にとっての『悪貨』だ! 今こそ駆逐せよ」という論調が目立つようになっている。「高い技術力を有する『良貨』の企業を増やすことで『悪貨』のゾンビ企業を淘汰せよ」という主張は一見正論のように聞こえる。しかし、「財務面で不利な環境に置かれている民間企業を一斉に駆逐して、国有企業を温存する」という習近平派の本音が見え隠れしているように思えてならない。

 また、今年になっても中国企業による海外でのM&A攻勢が旺盛だが、資金流出を防ぐための当局の強硬手段のせいで、買収を撤回する事例が相次いでいると いう(6月1日付ロイター)。7月に入り中国政府は国境をまたぐ為替取引の管理を強化している(8月3日付日本経済新聞)。

 ゴールドマンサックスは7月28日、「中国の最高指導部は資産バブルを警戒しており、金融当局は一段とタカ派になるかもしれない」との見方を示した。朱鎔基首相の時代に発生した金融危機を蛮勇を奮って乗り切った王岐山氏が首相に抜擢されれば、その傾向はさらに強まるだろう。

 チャイナウォッチャーの間では「南院(共産党中央の建物、中南海地区の南側にある)」と「北院(国務院の建物、中南海地区の北側にある)」の争いに注目が集まっている。いずれにせよ権力闘争が激化して犠牲になるのは経済そのものである。

■サウジの建設事業が壊滅的状況に

 中国経済と同様にこのところ軟調気味なのが原油市場である。

 OPECの7月の原油生産量は日量3341万バレルと過去最高を記録する勢いである(7月30日付ロイター)。OPECの増産が嫌気され、8月1日、米WTI原油先物価格は一時約3カ月半ぶりに1バレル=40ドルの節目を割り込んだ。

 OPEC増産の要因は、イラクやナイジェリアで輸出量が伸びたことに加え、サウジアラビアも日量1050万バレルと過去最高の生産ペースを維持していることにある。

 気になるのは、サウジアラビアの原油需要の伸びが、少なくともここ6年で最低のペースになっていることだ。原油安はサウジアラビアの経済成長に深刻な打撃を与えている。以前のコラム(5月28日)で、サウジアラビア政府が深刻な財政不足から建設業者に対する支払いをIOU(政府借用証書)で行うことを検討していると紹介した。その後、建設業者が国家プロジェクトへの参入を避けるようになったため、同国内の建設事業は80%減少したと言われている。

 サウジアラビア株式市場は7月後半の2週間で株価が急落した。上場企業170社のうち株価の下落を免れたのは16社に過ぎなく、株式市場で140億ドル以上の損失が発生したと言われている。

 株価急落の要因は金融システムの崩壊に瀕していることにある(7月31日付ブルームバーグ)。国内銀行の破綻を回避するためサウジアラビア通貨庁(中央銀行に相当)は40億ドル規模の緊急支援を行うことを決定した。

 以上、中国とサウジアラビアの経済が置かれている厳しい状況を見てきた。私たちは秋にかけて世界経済にパーフェクトストーム(複数の災厄が同時に起こって破滅的な事態に至ること)が吹き荒れることを覚悟しなければならないだろう。

 

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