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スーパーホテルの店舗(「スーパーホテル HP」より)
一泊5千円で究極の感動提供するスーパーホテルがヤバい!極限まで客の快適さ追求経営
http://biz-journal.jp/2016/07/post_16093.html
2016.07.30 文=小野貴史/経済ジャーナリスト Business Journal
ホテル経営は「顧客満足追求業」ともいえるが、全国114カ所・海外3カ所に展開するスーパーホテル(大阪市)の場合、顧客満足を向上させるというよりも、むしろ極めようとしている。顧客満足を評価する数々の受賞が、その経営姿勢を示しているのではないか。
スーパーホテルは2014年にJCSI(日本版顧客満足度指数)のビジネスホテル部門で1位となり、評価項目ではコストパフォーマンスを示す知覚価値とロイヤルティで1位を獲得した。「1円あたりの顧客満足度日本一」を目指すという突き詰めた課題が達成されたのである。
09年度(中小規模部門)と15年度(大規模部門)には日本経営品質賞を受賞し、「顧客本位に向けた経営変革は、経営品質活動の進化した姿であり、サービス業全体、組織変革を目指す組織のベンチマーキング対象となる」(経営品質協議会)と評価された。さらに14年度、15年度と2年連続で「J.D.パワー アジア・パシフィック 日本ホテル宿泊客満足度調査」(1泊9000円未満部門)No.1を獲得した。
こうした評価に対して、スーパーホテル経営品質部部長の星山英子氏は、こう受け止めている。
「宿泊客はビジネスパーソンの方がメインなので、接客サービスの方針は『日常の感動のおもてなし』と設定しています。東京ディズニーリゾートのような非日常のおもてなしとも、高級シティホテルのようなラグジュアリー感のあるおもてなしとも違います。当社のホテルでは、日常性のなかで『エッ、こんなことまでやってくれるの!』というサービスを提供しています。その取り組みが評価されたのだと思います」
たとえば雨天の日の来客にはタオルを差し出すという心遣いをし、台風が発生した日には時刻表で交通手段を調べて助言する。あるいは受験生には、応援商品として普及している「キットカット」にメッセージを添えて手渡す。スーパーホテルのサービススタンダードは「第2の我が家」だが、何より宿泊客との距離感が近い。従業員から積極的に声をかけ、カウンターから飛び出して接遇しているのである。
「マニュアルがあるわけではありません。従業員が自分の感性を働かせ、その場のタイミングに応じて何がベストかを判断して、おもてなしをしています」(同)
しかし、これだけの事業規模ともなれば、相応のノウハウが組織的に蓄積されているはずである。
■膨大なデータを活用
スーパーホテル全店舗では計約2万件のアンケートが毎月収集され、うち約7000件が感謝や賞賛の内容である。そのなかから抽出した接遇事例を約100件データベースに登録し、全従業員が閲覧できる仕組みを整備している。この蓄積をどれだけ応用できるかは従業員の質に左右されるが、スーパーホテルは独自の人材像を定めている。「自律型感動人間」である。これは、感謝の心をもって宿泊客を感動させるサービスを自分で考えて提供できる人間という意味だ。
「採用では、本社直轄の7店舗も、ベンチャー支配人制度による委託運営99店舗も、感動のできる人、夢を持っている人を選びます。夢を持っている人は自律的に考えることができるからです」(同)
アルバイトを含めた人材育成では、内面に焦点を当てた施策を実施している。たとえば、各店舗では毎日朝礼時に「Faith(フェイス)」と題する理念・行動基準カードの輪読を、アルバイトも参加して行っている。フェイスには「経営理念」「環境理念」「行動基準」「働く仲間への約束」「サービススタンダード」などが記載され、毎回担当者を決めて、フェイスの感想やフェイスに従った行動の成果などを発表し、支配人が講評を述べている。社員は毎週月曜日に本社に集まり、山本梁介会長、山村孝雄社長が理念や創業の想いを語っている。
この朝礼には1時間もかけるから、朝礼というよりも研修である。しかも、たんなる唱和ではなく業務に直結させた考察によって、従業員の血となり肉となってゆくのだ。
対話を重視した企業風土にも着目したい。期末・期初や上半期・下半期などの単位でフィードバック面接を実施する企業は珍しくないが、スーパーホテルは毎月1回、全従業員が所属長と1対1で30分以上の対話を行っているのだ。この場では、仕事の悩み、人事異動の希望、家庭の悩みなどテーマを問わず打ち明けられ、上下関係を融和させている。
「上司が聴き役に徹し、本人の強みを自信に変え、モチベーションを向上させています」(星山氏)
燃えるようなモチベーションを従業員にどうやって持続させるか。業種にかかわらず企業経営の要諦はそこにいきつくが、スーパーホテルは重層的にモチベーションの持続を仕組んでいる。従業員を資本と見なす経営を人本主義と呼ぶことがあるが、そのモデルケースといってもよいだろう。
■見えない生産性向上策
高い顧客満足度の背景には、ハードウェアの革新性も挙げられる。スーパーホテルは「生産性の向上と顧客満足度の向上」という一見すると相反する要素の両立を目指してきた。チェックインとチェックアウトを自動化し、入室は暗証番号で鍵を省いたことによってフロント業務を効率化する一方で、宿泊客を精算時の混雑や鍵の保管の煩わしさから解放した。二兎を追って二兎を得たのである。
さらに宿泊客に見えない生産性向上として、経理業務のクラウド化がある。各ホテルに経理担当者を配置せず、クラウド活用によって自動処理し、本社勤務の4〜5人で経理業務を担当している。
これらの生産性向上で実現させた1泊約5000円の料金は、1996年に博多に第1号店がオープンして以降、低価格商法としてクローズアップされてきた。会社側が低価格をアピールした時期もあったが、顧客満足度の高さが実証された今では、見方の修正が必要だろう。星山氏も「低価格というよりもリーズナブルな価格と認識しています」と述べている。
■稼働率90%、リピート率70%を持続
ハードウェアによる顧客満足の向上では、快適な睡眠の提供にも重点的に取り組んでいる。その根底には、ビジネスパーソンの宿泊客が聞けば、誰もの心に灯がともる温かい思いがある。
「宿泊されるビジネスパーソンの方々には、チェックアウトしてから出張先で行なう商談に成功していただきたい。そのためには、しっかりとした睡眠を取っていただくように心を配っています」(星山氏)。
その具体策として、大阪府立大学と共同で「ぐっすり研究所」を設立し、科学的な知見に基づいてオリジナルのベッドと枕を開発した。枕は8種類が用意され、フロント脇に設置されたコーナーで自由に選べる。
さらに室内の天井には、消臭機能を発揮する「稚内珪藻土」(わっかないけいそうど)という北海道で採掘される岩石の粉末を塗布して、快適な空間を保持している。
コンセプトに掲げる「Lohas(ロハス)」の実践では、浴室にセットしたシャンプーやコンディショナーがオーガニック。朝食で提供される野菜はすべてJAS認定の有機野菜で、保存料・化学調味料・アレルギー特定原材料などの27品目不使用のオリジナルドレッシングが添えられている。味噌汁には有機大豆で醸造した味噌を使用している。
こうして実践する「生産性の向上と顧客満足度の向上」は稼働率約90%、リピート率約70%を持続させ、16年3月期に売上高290億3700万円(前期249億円)を計上した。先に紹介したように、経営品質協議会はスーパーホテルを「ベンチマーキング対象となる」と評価したが、ここまで極めてきた経営をベンチマーキングしたところで、同様に取り組めるものではない。フェイスの浸透に飽くなき姿勢で臨むような“スーパーホテルDNA”を保有しない限り、核心にたどり着くはるか手前で亜流にとどまってしまうだろう。
その意味で、スーパーホテルは異色の地歩を固めている。
(文=小野貴史/経済ジャーナリスト)
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