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2016年4-6月期GDP一次速報予測〜前期比年率・0.1%を予想DIR 前期比0.1%(年率0.6%)を予測NLI
http://www.asyura2.com/16/hasan111/msg/424.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 7 月 30 日 01:55:41: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

2016年4-6月期GDP一次速報予測〜前期比年率▲0.1%を予想
前期からほぼ横ばいを予想。先行きは慎重にみておきたい
2016年7月29日
• エコノミック・インテリジェンス・チーム エコノミスト 岡本 佳佑
• エコノミスト 齋藤 勉
• エコノミスト 小林 俊介
• 2016年4-6月期GDP一次速報予測〜前期比年率▲0.1%を予想 [PDF:322.7KB]
サマリー
◆2016年4-6月期のGDP一次速報(2016年8月15日公表予定)は、実質GDPが前期比年率▲0.1%(前期比▲0.0%)と、2四半期ぶりにマイナス成長に転じると予想する。1-3月期にうるう年効果によって押し上げられた反動の影響もあることを考慮すると、4-6月期の日本経済は底堅く推移したと評価できるだろう。ただし、内外需ともに脆弱さを抱えており、日本経済の先行きについては慎重にみておきたい。
◆個人消費は前期比▲0.1%と2四半期ぶりの減少を予想する。うるう年効果によって、1-3月期の個人消費が押し上げられた反動の影響が表れるとみている。2017年4月に予定されていた消費税増税前の駆け込み需要などから、住宅着工が増加しており、住宅投資は同+5.4%と大幅増となる見通しである。また、設備投資は同+0.3%と2四半期ぶりの増加に転じる見込みだ。輸出は同▲0.7%を予想する。財輸出に関しては、米国やアジア向けが持ち直した一方、EU向けについては一時的に弱さが見られた。

図表 1: 2016 年 4-6 月期 GDP 予測表
実質国内総生産(GDP) 前期比%
2015 2016
(注)寄与度は四捨五入の関係上、実質GDP成長率と必ずしも一致しない。 (出所)内閣府統計より大和総研作成
4-6月期 7-9月期 10-12月期 1-3月期 4-6月期
▲ 0.4 0.4 ▲ 0.4 0.5 ▲ 0.0
前期比年率%
▲ 1.7 1.7 ▲ 1.8 1.9 ▲ 0.1 民間最終消費支出 前期比%
▲ 0.8 0.5 ▲ 0.8 0.6 ▲ 0.1 民間住宅 前期比%
2.2 1.7 ▲ 1.0 ▲ 0.7 5.4 民間企業設備 前期比%
▲ 1.2 0.8 1.3 ▲ 0.7 0.3 民間在庫品増加 前期比寄与度%pt
0.3 ▲ 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.1 政府最終消費支出 前期比%
0.4 0.2 0.7 0.7 0.4 公的固定資本形成 前期比%
2.8 ▲ 2.4 ▲ 3.6 ▲ 0.7 0.1 財貨・サービスの輸出 前期比%
▲ 4.8 2.6 ▲ 0.8 0.6 ▲ 0.7 財貨・サービスの輸入 前期比%
▲ 2.5 1.7 ▲ 1.1 ▲ 0.4 ▲ 0.2 内需寄与度 前期比寄与度%pt
▲ 0.1 0.3 ▲ 0.5 0.3 0.1 外需寄与度 前期比寄与度%pt
▲ 0.3 0.1 0.1 0.2 ▲ 0.1 名目GDP 前期比%
▲ 0.2 0.8 ▲ 0.2 0.6 0.0 前期比年率%
▲ 0.7 3.0 ▲ 0.7 2.4 0.1 GDPデフレーター 前年比%
1.4 1.8 1.5 0.9 0.8


2016 年 4-6 月期:実質 GDP 成長率は前期比年率▲0.1%を予想

2016 年 4-6 月期の GDP 一次速報(2016 年 8 月 15 日公表予定)は、実質 GDP が前期比年率▲0.1%
(前期比▲0.0%)と、2 四半期ぶりにマイナス成長に転じると予想する。1-3 月期にうるう年効
果によって押し上げられた反動の影響もあることを考慮すると、4-6 月期の日本経済は底堅く推
移したと評価できるだろう。ただし、内外需ともに脆弱さを抱えており、日本経済の先行きに
ついては慎重にみておきたい。

民需:個人消費は前期比マイナス。住宅投資が大幅増となる見込み

個人消費は前期比▲0.1%と、2 四半期ぶりの減少を予想する。GDP の基礎統計である家計調
査にみる個人消費は、非常に緩やかながらも増加基調にあると評価しているが、SNA ベースの個
人消費は 1-3 月期にうるう年効果によって押し上げられた反動の影響が表れ、前期比でマイナ
スに転じるとみている。財・サービス別の動向をみると、耐久財はやや弱含んだ一方、非耐久
財やサービス消費については堅調に推移した可能性が高い。
住宅投資は前期比+5.4%と、3 四半期ぶりの増加を予想する。先行指標である住宅着工戸数
は、2017 年 4 月に予定されていた消費税増税前の駆け込み需要などから、増加基調で推移して
きた。こうした住宅着工の動きに鑑み、工事の進捗ベースで推計される住宅投資についても、
前期から大きく増加すると見込んでいる。

設備投資は前期比+0.3%と 2 四半期ぶりに増加する見通しである。企業収益は引き続き高水
準で推移しているものの、収益の源泉は数量の増加ではなく、主として投入コストの低下や輸
出向け算出価格の上昇によってもたらされているため、稼働率の上昇にはつながっていない。
加えて、世界経済の減速や円高進行も設備投資の逆風となっており、前期からの戻りは限定的
なものにとどまった可能性が高い。

民間在庫品増加は前期比寄与度▲0.1%pt と 4 四半期連続でマイナス寄与になると予想する。
GDP 一次速報段階で仮置きされる仕掛品在庫はプラスに寄与する一方、原材料在庫がマイナスに
寄与する見込みである。そのほか、製品在庫や流通在庫もマイナスに寄与するとみている。

公需:2015 年度補正予算の執行がプラス寄与

公共投資は前期比+0.1%と 4 四半期ぶりの増加を予想している。過去の経済対策による公共
投資の押し上げ効果が剥落しつつあるものの、2015 年度補正予算の執行がプラスに寄与すると
予想する。一方、政府消費については同+0.4%と増加傾向が継続する見通しである。

外需:米国・アジア向けは持ち直し、EU 向け輸出は一時的に弱い動き

輸出は前期比▲0.7%と 2 四半期ぶりの減少を予想する。財輸出に関しては、米国やアジア向
け輸出で持ち直しの動きがみられる一方、堅調に推移してきた EU 向け輸出は、前四半期に急増
した船舶等の輸出が減少し、一時的に弱さが見られた。なお、熊本地震の発生により自動車産
業などで一部工場が操業停止になるといった影響も見られたが、輸出を大きく下押しする要因
とはならなかったもようである。一方、輸入は同▲0.2%と 3 四半期連続で減少したとみている。
この結果、外需寄与度は前期比寄与度▲0.1%pt と、4 四半期ぶりのマイナス寄与になる見通し
だ。

今後の見通し:個人消費は緩やかに拡大、外需には欧州リスクが浮上

先行きの日本経済は、基調として緩やかな拡大傾向へと復する公算であるが、引き続き内需
に力強さが欠けているほか、外需については英国の EU からの離脱が決定し、世界経済の先行き
不透明感が強まるなど、下振れリスクが浮上している点に警戒が必要だ。
個人消費は緩やかながら拡大基調に復すると見込んでいる。労働需給は引き続きタイトであ
り、このことが雇用者報酬の増加を通じて個人消費を下支えするとみられる。また、消費者物
価上昇率が前年比でマイナスに転じ、物価の影響を考慮した実質賃金が堅調に推移しているこ
とや、2017 年 4 月に予定されていた消費税増税が延期され、消費者マインドの改善が期待され
ることなども個人消費の追い風である。一方、円高に伴う企業業績の悪化懸念を受け、所得環
境の先行き不透明感が強まりつつあることなどは個人消費の重石となろう。
住宅投資は緩やかに減速するとみている。日本銀行が 1 月にマイナス金利を導入し、住宅ロ
ーン金利が低下していることは住宅投資の下支え要因となる。しかし、2017 年 4 月に予定され
ていた消費税増税に向けて急拡大した住宅着工は今後徐々に減少することが予想され、それに
遅れるかたちで住宅投資も減少し始めると考えられる。
設備投資は横ばい圏での推移を予想する。労働需給が引き続きタイトな中、特に外需の影響
を受けにくい非製造業において、人手不足に対応した合理化・省人化投資が期待できる。一方、
世界経済の停滞や円高・ドル安といった外部環境の悪化は、引き続き製造業を中心とした輸出
企業の業績の重石となろう。これまで設備投資を支えてきた“好業績”という前提が崩れれば、
設備投資を先送りする企業が増える可能性が高いとみている。
公共投資については、横ばい圏で推移する見通しである。過去の経済対策の効果が剥落する
一方で、2016 年度予算の執行や熊本地震の復興需要が徐々に顕在化し、公共投資を下支えする
見込みである。
輸出に関しては、緩やかな拡大へ向かうとみている。財輸出を地域別にみると、米国向けに
ついては、雇用環境の改善などを背景として消費財輸出が堅調に推移しよう。一方、欧州向け
輸出は、年後半にかけて慎重にみておく必要がありそうだ。英国で 6 月に行われた EU からの離
脱の是非を問う国民投票の結果、英国の EU 離脱が決定した。この結果を受け、欧州経済の先行


き不透明感が強まっており、域内の需要拡大に水を差す可能性があると考えられるためである。
一方、アジア向けについては、減速傾向が強まっていた中国経済に底打ち感が出始めているこ
とが好材料だ。年後半にかけて、持ち直し基調へと転じる公算が大きいとみている。

図表 2:実質 GDP の推移
(季節調整値前期比、%)
http://www.dir.co.jp/research/report/japan/sothers/20160729_011121.html 


2016年4-6月期の実質GDP〜前期比0.1%(年率0.6%)を予測
経済研究部 経済調査室長 斎藤 太郎 全文ダウンロード(PDF)
■要旨
1. 8/15に内閣府から公表される2016年4-6月期の実質GDPは、前期比0.1%(前期比年率0.6%)と2四半期連続のプラス成長になったと推計される。

2. 外需寄与度は小幅ながらマイナスとなり、企業収益の悪化を受けて設備投資も前期比▲0.1%の減少となったが、民間消費がうるう年の反動にもかかわらず前期比0.0%の横ばいに踏みとどまり、住宅ローン金利低下の追い風を受けて住宅投資が前期比3.3%の高い伸びとなった。また、2015年度補正予算の効果などから公的固定資本形成が4四半期ぶりの増加となり、1-3月期に続き国内需要は民需、公需ともに前期比プラスとなった。

3. 4-6月期の実質GDPは1-3月期から伸び率が低下するが、GDP統計では季節調整をかける際にうるう年調整が行われていないため、1-3月期とは逆に4-6月期の成長率は実勢よりも押し下げられている。うるう年の影響を除いた4-6月期の成長率は年率1%台半ばとなり、1-3月期の年率1%程度を上回る伸びとなる。

4. 景気が足踏み状態から完全に脱したとはいえないが、実態としては緩やかに持ち直しに向かっている。円高の進行、英国のEU離脱などに伴う下振れリスクはあるものの、少なくとも現時点では大型の経済対策が必要な経済情勢とは思われない。
http://www.nli-research.co.jp/files/topics/53502_ext_15_0.jpg 
■目次

●4-6月期は年率0.6%を予測〜成長率は前期より低下も実態は改善
●主な需要項目の動向
  ・民間消費〜前期比横ばいも実態は緩やかな持ち直し
  ・住宅投資〜住宅ローン金利低下の効果で大幅増加
  ・民間設備投資〜企業収益の悪化を受けて2四半期連続の減少
  ・公的固定資本形成〜2015年度補正予算、2016年度当初予算の前倒し執行が押し上げ
  ・外需寄与度〜輸出入ともに減少し、前期比ほぼ横ばい
【次ページ】4-6月期は年率0.6%を予測〜成長率は前期より低下も実態は改善
●4-6月期は年率0.6%を予測〜成長率は前期より低下も実態は改善
2016年4-6月期の実質GDPは、前期比0.1%(前期比年率0.6%)と2四半期連続のプラス成長になったと推計される。

外需寄与度は前期比▲0.0%と小幅ながらマイナスとなり、企業収益の悪化を受けて設備投資は前期比▲0.1%と2四半期連続で減少した。一方、1-3月期のうるう年による押し上げの反動にもかかわらず民間消費が前期比0.0%の横ばいに踏みとどまり、住宅ローン金利低下の追い風を受けて住宅投資が前期比3.3%の高い伸びとなった。また、2015年度補正予算、2016年度当初予算の前倒し執行の効果から公的固定資本形成が前期比1.0%と4四半期ぶりの増加となり、国内需要は1-3月期に続いて民需、公需ともに前期比プラスとなった。

実質GDP成長率への寄与度は、国内需要が0.2%(うち民需0.1%、公需0.1%)、外需が▲0.0%と予測する。

名目GDPは前期比0.1%(前期比年率0.5%)と2四半期ぶりの増加となり、実質と同程度の伸びとなるだろう。GDPデフレーターは前年比0.4%(1-3月期:同0.9%)、前期比▲0.0%(1-3月期:同0.1%)と予測する。輸入デフレーターの低下幅(前期比▲3.8%)が輸出デフレーターの低下幅(同▲2.8%)を上回ったことはGDPデフレーターを押し上げたが、円高、原油安の影響などから民間消費を中心に国内需要デフレーターが前期比▲0.2%と2四半期連続で低下した。

なお、8/15に内閣府から2016年4-6月期のGDP速報値が発表される際には、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから、成長率が過去に遡って改定される。当研究所では、2016年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率1.9%から同2.1%へ上方修正されると予測している。

4-6月期の成長率は1-3月期から低下するとみられるが、GDP統計では季節調整をかける際にうるう年調整が行われておらず、1-3月期は日数増により年率1%程度押し上げられる一方、4-6月期は年率▲1%程度押し下げられている(当研究所による試算値)。この影響を除けば4-6月期の実質GDPは前期比年率1%台半ばとなり1-3月期の年率1%程度を上回る伸びとなる。2015年度初め頃から続く足踏み状態から完全に脱したとはいえないが、景気は実態としては緩やかに持ち直しに向かっている。円高の進行、英国のEU離脱などに伴う下振れリスクはあるものの、少なくとも現時点では大型の経済対策が必要な経済情勢とは思われない。

●主な需要項目の動向
・民間消費〜前期比横ばいも実態は緩やかな持ち直し

民間消費は前期比0.0%の横ばいを予測する。1-3月期の前期比0.6%から伸び率は大きく低下するが、1-3月期の民間消費はうるう年に伴う日数増の影響で前期比0.4%程度押し上げられ(当研究所の試算値)、4-6月期はその反動で▲0.4%程度押し下げられていることを考慮すれば、弱い数字とはいえない。実態としては1-3月期から4-6月期にかけて伸びが若干高まったと考えられる。

春闘賃上げ率が前年を下回ったこともあり、名目賃金は伸び悩みが続いているが、雇用者数の高い伸びが雇用者所得の増加に大きく寄与している。さらに、年明け以降の円高、原油安の影響で物価上昇率がマイナスとなっていることが実質ベースの雇用者所得を押し上げている。実質雇用者所得(一人当たり実質賃金×雇用者数)は2016年入り後、前年比で2%前後の高い伸びを続けている。年明け以降の円高の進展を受けて企業部門は厳しさを増しているが、家計にとっては円高による物価下落がむしろ追い風となり、消費を取り巻く環境は徐々に改善している。

足もとの消費関連指標の動きを確認すると、2016年4-6月期の小売業販売額指数(実質)は前期比▲0.3%の低下、鉱工業指数の消費財出荷指数は前期比0.0%の横ばいとなったが、家計調査の消費水準指数(除く住居等)は前期比2.1%の大幅上昇となった。4-6月期の消費関連指標は需要側が強め、販売側がやや弱めで、全体としては緩やかに持ち直していると判断される。
http://www.nli-research.co.jp/files/topics/53502_ext_15_3.jpg 

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・住宅投資〜住宅ローン金利低下の効果で大幅増加

住宅投資は前期比3.3%と3四半期ぶりの増加を予測する。

新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2015年10-12月期の86.8万戸から2016年1-3月期が94.7万戸、4-6月期が100.5万戸と2四半期連続で大きく増加した。2016年入り後の急増の一部には2017年4月に予定されていた消費税率引き上げを見越した駆け込み需要が含まれている可能性があるが、足もとの好調は日銀のマイナス金利導入を受けた住宅ローン金利の大幅低下の影響が大きいと考えられる。

ただし、消費税率の引き上げは延期されることが決まり、住宅購入を急ぐ必要はなくなったため、増勢基調は今後一服する可能性があるだろう。
・民間設備投資〜企業収益の悪化を受けて2四半期連続の減少

民間設備投資は前期比▲0.1%と2四半期連続の減少を予測する。

設備投資の一致指標である投資財出荷(除く輸送機械)は2016年1-3月期の前期比▲2.0%の後、4-6月期は同2.2%と5四半期ぶりに増加した。一方、機械投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は2016年1-3月期には前期比6.7%と2四半期連続の増加となったが、2016年4、5月の平均は1-3月期を▲11.3%と大きく下回っている。

また、日銀短観2016年6月調査では、2016年度の設備投資計画(含む土地投資額、除くソフトウェア投資額)が前年度比0.4%(全規模・全産業)となり、前年同時期の3.4%(2015年6月調査の2015年度計画)を大きく下回る伸びとなった。

円高や海外経済の減速を受けて企業収益は大きく悪化しており、2016年度の経常利益は2011年度以来5年ぶりの減益となることが予想される(法人企業統計ベース)。設備投資意欲の低迷に企業収益の悪化が加わることにより、設備投資は当面低調に推移する可能性が高い。
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【次ページ】公的固定資本形成〜2015年度補正予算、2016年度当初予算の前倒し執行が押し上げ

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・公的固定資本形成〜2015年度補正予算、2016年度当初予算の前倒し執行が押し上げ

公的固定資本形成は前期比1.0%と4四半期ぶりの増加を予測する。

公共工事の進捗を反映する公共工事出来高は2013年7-9月期の前年比25.7%をピークに鈍化傾向が続き、2015年9月以降は前年比で減少が続いている。一方、公共工事の先行指標である公共工事請負金額は2014年7-9月期から減少を続けてきたが、2016年1-3月期は前年比1.2%と7四半期ぶりの増加となった後、4-6月期は同4.0%と伸びを高めた。2015年度補正予算、2016年度当初予算の前倒し執行が押し上げ要因となっている。

なお、現在検討されている大型経済対策は9月に召集予定の臨時国会で成立することが見込まれるため、その効果が顕在化するのは年末以降となるだろう。
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・外需寄与度〜輸出入ともに減少し、前期比ほぼ横ばい

外需寄与度は前期比▲0.0%と小幅ながら4四半期ぶりのマイナスとなるだろう。財貨・サービスの輸出が前期比▲0.6%、財貨・サービスの輸入が前期比▲0.3%といずれも小幅な減少を予想する。

4-6月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲2.1%(1-3月期:同2.6%)、EU向けが前期比▲3.1%(1-3月期:同5.7%)、アジア向けが前期比▲1.1%(1-3月期:同0.5%)、全体では前期比▲0.1%(1-3月期:同▲0.3%)と小幅ながら2四半期連続の低下となった。1-3月期とは逆に4-6月期は主要3地域向けが弱め、中東、中南米、ロシアなどその他地域が強めとなったが、輸出数量全体では海外経済の減速、円高の進展を背景に横ばい圏の動きが続いている。

4-6月期の輸入数量指数(当研究所による季節調整値)は前期比▲0.9%(1-3月期:同1.2%)と2四半期ぶりの低下となった。国内需要の低迷を反映し輸入は弱めの動きとなっている。
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なお、日本銀行が作成している4-6月期の実質輸出は前期比1.1%のプラスとなったが、日銀の実質輸出は財のみとなっているのに対し、GDP統計の輸出には輸送、旅行などサービスの受取が含まれている。また、概念的に近い財のみの輸出を比較しても実質化のデフレーター、季節調整パターンなどが異なることから、両者の動きは必ずしも一致しない。たとえば、日本銀行の実質輸出は2015年10-12月期が前期比プラス、2016年1-3月期がマイナスだが、GDP統計では符号が逆になっている。4-6月期は日銀の実質輸出はプラスだが、GDP統計の財の輸出はマイナスになると予想する。

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コメント
 
1. 2016年7月30日 02:22:04 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[558]
「嫌われる勇気」 実践はなかなか難しい
2016年7月29日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・新規失業保険申請件数は26.6万件と前週から1.4万件増加。もっとも、4週移動平均は25.7万件へと0.1万
件減少し、今次サイクルの最低に比肩。約43年ぶり低水準を維持している。
・7月ユーロ圏景況感指数は104.6と6月から0.2pt改善。製造業(▲2.8→▲2.4)、サービス業(+10.9→
+11.1)、小売業(+0.8→+1.8)、建設業(▲18.2→▲16.3)が揃って改善。消費者信頼感は▲7.9と速
報値に一致して6月から0.7pt悪化。他のサーベイ指標と同様、BREXITの影響は限定的となっている。

【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は横ばい。企業決算の幾つかが利益確定売りを誘発、NYダウが小幅に下落した一方、
S&P500は小幅高で引け。WTI原油は41.14j(▲0.78j)で引け。
・前日のG10 通貨はGBPの下落が目立った一方、CHF、EUR、JPYなどマイナス金利調達通貨が強かった。
USD/JPYは日銀の追加緩和を巡る思惑から幅広いレンジで推移。米国時間午後に105半ばまで上値を伸ばし
た後、オセアニア時間では104半ばまで下落。
・前日の米10年金利は1.504%(+0.7bp)で引け。新規の材料に乏しく小幅なレンジで推移。欧州債市場は
総じて堅調。英国(0.713%、▲2.5bp)、ドイツ(▲0.090%、▲1.1bp)が小幅に金利低下となり、イタ
リア(1.189%、▲1.3bp)、スペイン(1.088%、▲1.4bp)、ポルトガル(2.965%、▲3.1bp)もそれに
追随。3ヶ国加重平均の対独スプレッドは概ね横ばい。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は日銀会合の結果を控えて売り買い交錯。小幅安で推移している(9:30)。
・6月鉱工業生産は前月比+1.9%と市場予想(+0.5%)を大幅に上回った。出荷(+1.2%)が増加する一
方、在庫率(▲1.4%)は低下しており、バランスも良い。生産予測指数は7月が+2.4%、8月が+2.3%
と2ヶ月連続の増産計画が示され、このデータを基に経産省が試算した7月の鉱工業生産は前月比+0.9%
となった。これが実現した場合、7月の水準は4-6月期平均を年率+5.2%上回る。
・6月コアCPIは前年比▲0.5%と市場予想(▲0.4%)を下回った。エネルギー物価の下押し圧力が和ら
ぐ反面、円高による輸入物価下落が波及、最近はコアコア物価の上昇率鈍化も響いており、コアCPIは

2013年3月以来の下落幅を記録。コアコア物価は前年比+0.4%と5月から0.2%pt鈍化。教養娯楽用耐久
財、宿泊料が下押しに寄与。
・6月失業率は3.1%と5月から0.1%pt低下。就業者数が47.0万人増加した一方、失業者数が4.0万人減少。
労働参加率も上昇しており内容は良い。求人関連指標は有効求人倍率が1.37倍(5月1.36倍)、新規求人
倍率が2.01倍(5月2.08倍)。後者はやや大きめの低下だが、この指標は過去半年程度ボラタイルな動き
となっており、均してみれば堅調な推移となっている。労働市場の異変を示すものではないだろう。
・6月家計調査によると実質消費支出は前月比▲1.1%と2ヶ月連続の減少(前年比では▲2.2%)。もっと
も、コア消費(除く住居、自動車、贈与等)は前月比+0.4%と反発し、直近6ヶ月の平均である94.2を上
回った。販売側の統計である6月小売売上高(商業動態統計)も前月比+0.2%と3ヶ月ぶりに増加した。
除く燃料小売業(ガソリンスタンド)ベースでは前月比±0.0%と横ばいも、前年比の下落幅は縮小(▲
1.1%→▲0.5%)しており回復基調にある。家計調査、小売売上高ともに消費の底打ちを確認させる。
・本日の金融政策決定会合で日銀は「ETF購入額の6兆円への増額」を決定。他方、政策金利は▲0.1%で
据え置き、長期国債の買入額も年間80兆円で据え置いた。筆者は事前の予想で追加緩和なしをメインシナ
リオとしたうえで、追加緩和があるとすればETFの増額のみであるとしていたが、それに近い結果とな
った(たとえば、6/30、7/6、7/27付け当レポート)。日銀は、名目金利が十分に(そして恐らく日銀の
想定以上に)下がっている状況に鑑みて、金利の下押しを通じた金融政策に区切りをつけ、拡大余地の残
されている株式市場への梃入れに主軸を移した模様。ETFの増額であれば、政府の経済対策に呼応する
というメッセージを発信することができ、日銀の“ヤル気”をアピールできるという利点がある。今回の
日銀の決定は緩和手段の限界を感じさせつつも、できる限りのことはやるという姿勢を強調することにそ
の目的があったように感じられる。筆者は、日銀が市場に嫌われることを見越したうえで「ゼロ回答」を
出してくることを覚悟していたが、今回の結果は「ゼロ回答」の決定を下した際の金融市場の失望に、日
銀が強い警戒感を抱いていたことを浮き彫りにしたと言えるだろう。


・注目の物価見通しは16年度が+0.1%へと下方修正されたものの、17年度は+1.7%で据え置かれ、物価目
標の達成時期は「2017年度中」との予想が維持された。2017年度中の目標達成を後ろ倒しすることは2018
年3月の総裁任期までに物価目標が達成できないことを認めるのと同義であるため、その後ろ倒しを躊躇
ったのだろう。もっとも、次回の展望レポートが公表される11月1日の会合では、物価目標達成時期が後
ろ倒しされる可能性が高まる。再び、追加緩和観測が燻りそうだ。
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2016/fuji201607292.pdf


 

2016年7月29日
日本銀行経済・物価情勢の展望(2016 年7月)
【基本的見解】1
<概要>
? わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さが
みられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。先行きを展望
すると、暫くの間、輸出・生産面に鈍さが残り、景気回復ペースの鈍化し
た状態が続くとみられる。その後は、家計・企業の両部門において所得か
ら支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基
調をたどるとともに、輸出も、海外経済が減速した状態から脱していくに
つれて、緩やかな増加に向かうことから、わが国経済は、基調として緩や
かに拡大していくと考えられる。
? 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、
当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、物価の基調
は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。この間、
原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、
エネルギー価格の寄与度は、現在の−1%強から剥落していくが、2016
年度末まではマイナス寄与が残ると試算される2。この前提のもとでは、消
費者物価の前年比が、「物価安定の目標」3である2%程度に達する時期は、
中心的な見通しとしては 2017 年度中になるとみられるが、先行きの海外
経済に関する不透明感などから不確実性が大きい。その後は、平均的にみ
て、2%程度で推移すると見込まれる。
? 従来の見通しと比べると、成長率については、財政面での景気刺激策の効
果もあって、見通し期間の前半を中心に上振れている。なお、2017 年4月
に予定されていた消費増税の延期に伴い、駆け込み需要とその反動減は均
される。物価見通しについては、こうした成長率の上振れの一方、為替円
高や中長期的な予想物価上昇率の改善が後ずれしていることなどにより、
2016 年度について下振れているが、2017 年度、2018 年度については概ね
不変である。
? 金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、こ
れを安定的に持続するために必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・
質的金融緩和」を継続する。今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、
「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、「量」・「質」・「金
利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる。

1 7月 28、29 日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定されたものである。
2 各政策委員は見通し作成にあたって、原油価格(ドバイ)は、1バレル 45 ドルを出
発点に、見通し期間の終盤である 2018 年度にかけて 50 ドル程度に緩やかに上昇してい
くと想定している。その場合の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比に対するエネルギ
ー価格の寄与度は、2016 年度で−0.6〜−0.7%ポイント程度と試算される。また、寄
与度は、2016 年度後半にマイナス幅縮小に転じ、2017 年度初に概ねゼロになると試算
される。 3 日本銀行は「物価安定の目標」を消費者物価指数(総合ベース)の前年比上昇率で2%
としている。そのうえで、見通しは、天候など予測しがたい要因に左右される生鮮食品
を除くベースの消費者物価指数で作成している。

1.わが国の経済・物価の現状

わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さ
がみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。海外経済は、
緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾分減速している。そうし
たもとで、輸出は横ばい圏内の動きとなっている。国内需要の面では、設
備投資は、企業収益が高水準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある。
個人消費は、一部に弱めの動きもみられるが、雇用・所得環境の着実な改
善を背景に、底堅く推移している。住宅投資は再び持ち直しており、公共
投資は下げ止まっている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、地
震による影響もあって、横ばい圏内の動きを続けている。企業の業況感は、
総じて良好な水準を維持しているが、このところ慎重化している。わが国
の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除
く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、小幅のマイナスとなっている。予想
物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、
このところ弱含んでいる。

2.わが国の経済・物価の中心的な見通し

(1)経済情勢
先行きのわが国経済を展望すると、暫くの間、輸出・生産面に鈍さが残
り、景気回復ペースの鈍化した状態が続くとみられる。その後は、家計・
企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続す
るもとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、海外経済が減
速した状態から脱していくにつれて、緩やかな増加に向かうことから、わ
が国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられる。見通し期間
中の成長率は、潜在成長率を上回って推移すると予想される4。

4 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、このところ「0%台前半」と計算
されるが、見通し期間の終盤にかけて徐々に上昇していくと見込まれる。ただし、潜在
成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、
相当の幅をもってみる必要がある。


3

見通しの背景にある前提は、以下のとおりである。

第1に、日本銀行が、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これ
を安定的に持続するために必要な時点まで「マイナス金利付き量的・質的
金融緩和」を継続するもとで、実質金利は見通し期間を通じてマイナスで
推移するなど、金融環境はきわめて緩和した状態が続き、景気に対し刺激
的に作用していくと想定している5。

第2に、海外経済については、幾分減速した状態が暫く続くとみられ、
英国のEU離脱問題などを巡って不透明感も強い。しかし、先行き、先進
国が着実な成長を続けるとともに、その好影響の波及や政策効果により新
興国も減速した状態から脱していくとみられることから、緩やかに成長率
を高めていくと予想している。

第3に、公共投資は、このところ下げ止まっており、先行きは、2016 年
度予算の早期執行や近日中に取りまとめられる予定の経済対策の効果など
から増加に転じるとみられる。見通し期間の中盤以降は、オリンピック関
連投資の本格化もあって、高めの水準を維持すると想定している。

第4に、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもと
での女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向け
た取り組みと内外需要の掘り起こしなどが続くとともに、デフレからの脱
却が着実に進んでいくにつれて、企業や家計の中長期的な成長期待は、緩
やかに高まっていくと想定している。

以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2016 年度
については、輸出は、暫く鈍さが残るとみられるが、その後は、海外経済
が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな増加に向かうと考えら
れる。また、企業収益は、前年度に比べて減益となるものの、非製造業を
中心に高水準で推移するとみられる。そのもとで、設備投資は、金融緩和

5 各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また先行きの政策運営については市
場の織り込みを参考にして、見通しを作成している。具体的には、長短金利について、
市場金利をもとにしつつ、展望レポートと市場参加者との物価見通しの違いを加味し、
想定している。


4

に伴う実質金利の一段の低下効果もあって、増加基調を続けると考えられ
る。個人消費は、株価下落に伴う負の資産効果もあってこのところ弱めの
動きがみられるが、雇用・所得環境の着実な改善が続くことなどから、緩
やかに増加すると予想される。この間、公共投資も、2016 年度予算の早期
執行や近日中に取りまとめられる予定の経済対策の押し上げ効果などから、
緩やかな増加に転じると考えられる。こうした内外需要のもとで、成長率
は、潜在成長率を上回ると予想される。

2017 年度から 2018 年度にかけては、輸出は、海外経済の成長率の高ま
りを背景に緩やかな増加を続けると考えられる。内需面では、設備投資は、
緩和的な金融環境や成長期待の高まり、オリンピック関連需要の本格化な
どを受けて緩やかな増加基調を維持すると予想される。個人消費も、雇用
者所得の改善を背景に、緩やかな増加を続けると予想される。この間、公
共投資は、近日中に取りまとめられる予定の経済対策による押し上げ効果
などから 2017 年度にかけて増加し、その後は、経済対策の効果は減衰する
ものの、オリンピック関連需要もあって、高めの水準で推移すると考えら
れる。こうしたもとで、成長率は、潜在成長率を上回ると予想される。
この間、潜在成長率については、見通し期間を通じて緩やかな上昇傾向
をたどり、中長期的にみた成長ペースを押し上げていくと考えられる。
今回の成長率の見通しを従来の見通しと比べると、財政面での景気刺激
策の効果もあって、見通し期間の前半を中心に上振れている。なお、2017
年4月に予定されていた消費増税の延期に伴い、駆け込み需要とその反動
減は均される6。

(2)物価情勢
先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、エネルギー価格下
落の影響から、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられる

6 政府は、2017 年4月に予定されていた消費税率の引き上げを 2019 年 10 月まで2年半
延期する方針を、6月2日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針 2016」
で示している。このため、今回の見通しは、この方針を踏まえて作成している。


5

が、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考え
られる。この間、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくと
の前提にたてば、エネルギー価格の寄与度は、現在の−1%強から剥落し
ていくが、2016 年度末まではマイナス寄与が残ると試算される。この前提
のもとでは、消費者物価の前年比が、「物価安定の目標」である2%程度
に達する時期は、中心的な見通しとしては 2017 年度中になるとみられるが、
先行きの海外経済に関する不透明感などから不確実性が大きい。その後は、
平均的にみて、2%程度で推移すると見込まれる。
今回の物価見通しを従来の見通しと比べると、成長率が上振れる一方、
為替円高や中長期的な予想物価上昇率の改善が後ずれしていることなどに
より、2016 年度について下振れているが、2017 年度、2018 年度について
は概ね不変である。

こうした見通しの背景として、物価上昇率を規定する主たる要因につい
て点検すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バラ
ンスは、新興国経済の減速を背景に製造業の設備稼働率の改善が遅れる一
方、労働需給の引き締まりは続いており、全体として横這い圏内の動きと
なっている7。先行きは、経済対策の効果もあって、失業率が低下するなど、
労働需給の引き締まりは続き、そうしたもとで、パート時給をはじめとす
る賃金への上昇圧力は強まっていくとみられる。設備の稼働率も、輸出・
生産が持ち直していくに伴い、再び上昇していくと考えられる。このため、
マクロ的な需給バランスは、本年度末にかけてプラスに転じていくと見込
まれる。すなわち、需給面からみた賃金と物価の上昇圧力は、着実に強ま
っていくと予想される。

7 マクロ的な需給バランスについては、@潜在GDPを推計のうえ、実際のGDPとの
乖離を計測するアプローチと、A生産要素(労働と設備)の稼働状況を直接計測するア
プローチがある。展望レポートにおけるマクロ的な需給バランスの計測は、従来から、
後者のアプローチを採用しているため、GDP成長率の変化と需給バランスの拡大・縮
小の間に1対1の対応関係があるわけではない。マクロ的な需給バランスの値は、計測
方法や使用するデータによって異なり得るため、相当の幅をもってみる必要がある。


6

第2に、中長期的な予想物価上昇率については、やや長い目でみれば全
体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる。とくに、
予想物価上昇率に関するマーケット関連指標やアンケート調査結果は、低
下している。その背景としては、実際の消費者物価が1年以上にわたって
前年比0%程度で推移したため、その影響を受ける形で、予想物価上昇率
が低下したものと考えられる(予想物価上昇率に関する「適合的な形成メ
カニズム」)。また、このところの個人消費の弱めの動きを背景に、新年
度入り後の価格改定においては、食料工業製品や耐久消費財など「財」を
中心に改定を見送る動きがみられる。

先行きについては、前述の見通しに基づけば、個人消費の持ち直しに伴
って、企業の価格設定スタンスは再び積極化していくとみられる。賃金設
定スタンスについても、今春の賃金改定交渉においては、伸び率は昨年を
下回ったものの、3年連続でベースアップが実現したほか、中小企業にも
賃上げの動きが拡がっている。さらに、労働需給の影響を強く受ける傾向
のある非正規労働者の賃金は、はっきりと上昇している。こうした点を踏
まえると、企業収益から雇用者所得への波及は維持されており、賃金の上
昇を伴いながら、物価上昇率が緩やかに高まっていくというメカニズムは、
引き続き作用していると考えられる。また、今後、エネルギー価格による
下押しの剥落もあって、実際の物価上昇率は高まっていくと予想される。
以上を踏まえると、中長期的な予想物価上昇率は、日本銀行が2%の「物
価安定の目標」の実現を目指して「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」
を推進するもとで上昇傾向をたどり、2%程度に向けて次第に収斂してい
くとみられる。

第3に、輸入物価についてみると、原油価格をはじめとする国際商品市
況の既往の下落は、当面、輸入物価を通じた消費者物価の下押し圧力とな
るが、その影響は減衰していく。この間、為替が輸入物価を通じて消費者
物価にもたらす影響については、最近の円高もあって、価格上昇圧力を抑
7
制する方向に作用すると考えられる。

3.上振れ要因・下振れ要因

(1)経済情勢

上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第
1に、海外経済の動向に関する不確実性がある。英国のEU離脱問題を巡
る不透明感が国際金融資本市場や世界経済に及ぼす影響には注意が必要で
ある。また、中国をはじめとする新興国や資源国についても、先行き不透
明感が強い。さらに、米国経済の動向やそのもとでの金融政策運営が国際
金融資本市場に及ぼす影響、金融セクターを含む欧州債務問題の展開や景
気・物価のモメンタム、地政学的リスクなどもリスク要因として挙げられ
る。こうした海外経済や国際金融資本市場の動向については、わが国の輸
出入を通じた直接的な影響に加え、企業や家計のコンフィデンスに影響を
与え、設備投資や消費などの支出行動に抑制的に作用する可能性に注意す
る必要がある。

第2に、企業や家計の中長期的な成長期待は、規制・制度改革の今後の
展開や企業部門におけるイノベーション、家計部門を取り巻く雇用・所得
環境などによって、上下双方向に変化する可能性がある。この点、企業が
高水準の収益に伴う潤沢なキャッシュフローをより効率的に設備・人材投
資などに活用していくことが期待される。

第3に、財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下するような場
合には、人々の将来不安の強まりや経済実態から乖離した長期金利の上昇
などを通じて、経済の下振れにつながる惧れがある。一方、財政再建の道
筋に対する信認が高まり、人々の将来不安が軽減されれば、経済が上振れ
る可能性もある。

(2)物価情勢
上述のような経済の上振れ、下振れ要因が顕在化した場合、物価にも相
応の影響が及ぶとみられる。それ以外に物価の上振れ、下振れをもたらす
8
要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が
挙げられる。中心的な見通しでは、先行き個人消費の持ち直しが明確にな
るにつれて、企業の価格設定スタンスも再び積極化し、労働需給の改善に
伴う賃金の上昇が続くことと相俟って、中長期的な予想物価上昇率が「物
価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく姿を想定して
いる。しかしながら、既往のエネルギー価格下落の影響から、総合ベース
でみた消費者物価の伸びが当面低位で推移することが、「適合的な形成メ
カニズム」を通じて予想物価上昇率の伸びをどの程度抑制するかという点
や、海外経済を中心とした景気の先行きに関する不透明感が、企業の価格・
賃金設定スタンスにどのような影響を与えるかという点を巡っては、不確
実性がある。

第2に、マクロ的な需給バランス、とくに労働需給の動向がある。中心
的な見通しでは、近年の高齢者や女性による労働参加の高まりや最近みら
れているパート労働の正規雇用化が労働供給を下支えしていくことを前提
としているが、この点を巡っては上下双方向の不確実性がある。
第3に、物価上昇率のマクロ的な需給バランスに対する感応度が挙げら
れる。とくに、公共料金や一部のサービス価格、家賃などは依然鈍い動き
を続けており、先行きも消費者物価の上昇率の高まりを抑制する要因とな
る可能性がある。
第4に、原油価格といった国際商品市況や為替相場の変動などに伴う輸
入物価の動向や、その国内価格への波及の状況によっても、上振れ・下振
れ双方の可能性がある。
4.金融政策運営
以上の経済・物価情勢について、「物価安定の目標」のもとで、2つの
「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する8。
まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、わが国

8 「物価安定の目標」のもとでの2つの「柱」による点検については、日本銀行「金融
政策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について」(2013 年1月 22 日)参照。
9
経済は、2017 年度中に2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、こ
れを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと判断され
る。

次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクに
ついて点検すると、中心的な経済の見通しについては、海外経済の動向を
中心に下振れリスクが大きい。物価の中心的な見通しについては、先行き
の海外経済に関する不透明感や、そのもとでの中長期的な予想物価上昇率
の動向などを巡って不確実性は大きく、下振れリスクが大きい。より長期
的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場
や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていな
いほか、低金利に伴う金融機関収益の下押しによって金融仲介が停滞方向
に向かうリスクについても、金融機関が充実した資本基盤を備え、前向き
なリスクテイクを継続していく力を有していることから、大きくないと判
断している。もっとも、政府債務残高が累増するなかで、金融機関の国債
保有残高は、全体として減少傾向が続いているが、なお高水準である点に
は留意する必要がある。
金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、
これを安定的に持続するために必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・
質的金融緩和」を継続する。今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、
「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、「量」・「質」・「金
利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる。

以 上


10
(参考)
▽2016〜2018 年度の政策委員の大勢見通し
――対前年度比、%。なお、< >内は政策委員見通しの中央値。
実質GDP 消費者物価指数
(除く生鮮食品)
消費税率引き上げの
影響を除くケース
2016 年度 +0.8〜+1.0
<+1.0>
0.0〜+0.3
<+0.1>
4月時点の見通し +0.8〜+1.4
<+1.2>
0.0〜+0.8
<+0.5>
2017 年度 +1.0〜+1.5
<+1.3>
+0.8〜+1.8
<+1.7>
4月時点の見通し 0.0〜+0.3
<+0.1>
+1.8〜+3.0
<+2.7>
+0.8〜+2.0
<+1.7>
2018 年度 +0.8〜+1.0
<+0.9>
+1.0〜+2.0
<+1.9>
4月時点の見通し +0.6〜+1.2
<+1.0>
+1.0〜+2.1
<+1.9>
(注1)「大勢見通し」は、各政策委員が最も蓋然性の高いと考える見通しの数値について、
最大値と最小値を1個ずつ除いて、幅で示したものであり、その幅は、予測誤差など
を踏まえた見通しの上限・下限を意味しない。
(注2)各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また先行きの政策運営については
市場の織り込みを参考にして、上記の見通しを作成している。具体的には、長短金利
について、市場金利をもとにしつつ、展望レポートと市場参加者との物価見通しの違
いを加味して、想定している。
(注3)原油価格(ドバイ)については、1バレル 45 ドルを出発点に、見通し期間の終盤
である 2018 年度にかけて 50 ドル程度に緩やかに上昇していくと想定している。その
場合の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比に対するエネルギー価格の寄与度は、2016
年度で−0.6〜−0.7%ポイント程度と試算される。また、寄与度は、2016 年度後半に
マイナス幅縮小に転じ、2017 年度初に概ねゼロになると試算される。
(注4)4月時点の見通しでは、消費税率について、2017 年4月に 10%に引き上げられる
ことを前提として、各政策委員は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いた消費者
物価の見通し計数を作成した。今回の展望レポートでは、政府が6月2日に閣議決定
した「経済財政運営と改革の基本方針 2016」の中で、2017 年4月に予定されていた
消費税率の引き上げを 2019 年 10 月まで2年半延期する方針が示されているため、そ
の方針を踏まえて見通しを作成している。
11

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1607a.pdf


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