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ソフトバンクのARM買収の本当の意図とは? Photo by Takeshi Kojima
ソフトバンクARM買収、10年後が見えなくても価値がある理由
http://diamond.jp/articles/-/97100
2016年7月29日 鈴木貴博 [百年コンサルティング代表] ダイヤモンド・オンライン
ソフトバンクがイギリスの半導体大手ARMを約3.3兆円で買収した。アリババの一部株式やガンホーの株式などを売却して2.3兆円の手元資金を準備し、1兆円をみずほ銀行からつなぎ融資を受けてという形で、ほぼ自前資金での大型買収となった。
過去のソフトバンクの大型買収といえば2006年のボーダフォン買収と2012年のスプリント買収が各々約1.8兆円だったので、今回のARMの買収はその両社を合わせたのとほぼ同じ規模に近い、ソフトバンクの歴史上最大の買収劇である。
■ソフトバンクの中核事業になるのか?
「IoTの時代」の生活とは
さて、ソフトバンクがARMを買収した理由は10年後、IoTの時代がやってきたときに、「ソフトバンクグループの中核中の中核」となる企業を手に入れるということだと孫社長は説明した。これはどういうことなのか?
IoTは、「Internet of Things」の略で、家電や自動車、宅配便の荷物からコンビニの棚まですべてのモノがネットワークに接続され情報をやりとりすることで、現在よりも圧倒的に世の中の効率がよくなる近未来を意味する言葉だ。
一説によれば今から5年後には500億個のモノがインターネットにつながり、センサーによって情報がクラウド上に集められ、AIによって分析され、より最適な状態が達成され、圧倒的なコスト削減や機会損失をなくすことができるという。
が、わたしの周囲にも「それがどういうことか具体的にイメージがつかない」という人は少なくない。なによりもIoTについて説明してくれている記事にそれが書かれていないことが多いのだ。
ひとつだけ具体例を挙げてみよう。
たとえば自宅の冷蔵庫と、スーパーの買い物かごがどちらもIoTでクラウドにつながっていたとする。そうすると、スーパーで買い物をしている際に、本人は何も操作していないのにもかかわらずスマホに、
「あとレタスとえんどう豆を買ったほうがいいです。それとカートに入っている鶏肉パックは無駄です」
と表示が出る感覚。なにもしなくてもこうなる。これがIoTの示すひとつの未来だ。
つまり冷蔵庫は庫内の食品を自動的に把握している。複数台の内部カメラで食品の出入りを覗いて画像解析して何がいつどれだけ入ったり出たりしたかを数えてくれている。
ショッピングカートは今、スーパーで何を買おうとしているのか、自動的に把握している。
そしてクラウドでは過去の買い物履歴の傾向や、冷蔵庫の中身の消費状況のデータを持っていて、季節のうつろいも加味したうえで人工知能がそれらを分析して、買い物の過不足を分析しれくれている。そういうことがすべて組み合わされればスーパーでの買い物が最適化される。
それでどれくらいの効率化になるか。家庭の冷蔵庫の中身の廃棄率はだいたい15%だという数字がある。毎月5万円分の食材を買う家庭では年間で10万円を食べ残してロスしている。これがなくなれば確かに家計は助かるだろう。
こういったことが家庭でも起きるし、産業全体でも起きる。IoTで「圧倒的にコストが削減でき、機会損失がなくなる」というのはそういうことだ。
■10年後の未来が描けずとも
ARMを買収した2つの理由
しかしそれで「誰が儲かるのか」が現時点では見当がつかない。なぜならみんなが一斉にIoTを目指して動く中で、誰がどのようなビジネスモデル、どのような特許、どのような製品で優位を築くか次第なので、実は今の時点では誰がどう勝つのかまったく見当がつかないといっていい。
振り返って考えれば20年前、1996年ぐらいに「10年後、インターネットの時代が来る」ということは皆わかっていて、それでみんなが一斉に投資をした。NTTもソニーも日立もマイクロソフトもIBMもみな一斉に動いた。それでも1996年の時点ではその競争の頂点に立つのがグーグルやアマゾン、フェイスブックやアップルであることが予測できたわけではない。
だから10年後にIoTの時代が来るとわかっていても、そこでソフトバンクがどうなっているか?そしてARMがそこでどういう位置に立っているのかは、投資家から見ても、たぶん孫社長から見ても、今の時点ではわかるわけがないということになる。
ではARMに現時点で3.3兆円という莫大な投資をする意味はどこにあるのか?皮肉屋に言わせるとボーダフォンとスプリントを各1.8兆円で買収し、ARMを3.3兆円で買収した合計額が6.9兆円なのに対して、現在のソフトバンクの時価総額は6.5兆円。「買収したときよりも価値が下がっているではないか」という陰口も聞こえてくる。
しかし今回の買収には、経営戦略的にはふたつの意味がある。
ひとつは現時点でもARMはスマホ社会の中核で非常に重要な位置を占めているということ。ARMはスマホのアプリケーションプロセッサーで85%のシェアを持つなど、スマートフォン、タブレットPCなどの中核部品を供給している。
つまりこれからの10年間、ARMはスマホ社会にはなくてはならない企業であり、その間、キャッシュカウ(金のなる木)としてお金を稼ぎ続けてくれるということがポイントその1だ。
そしてもうひとつが、ARMとソフトバンク、そしてアメリカのスプリントの事業ドメインを総合すると、それがIoTのど真ん中にあるということだ。
モバイルのアプリケーションプロセッサーだけでなくARMのさまざまな半導体製品が、近未来のIoTにつながるモノの中にエンベデッド(内蔵)され、それがソフトバンクやスプリントのネットワーク経由でクラウドにつながる。
つまりIoTがどちらに転んで行っても、そこで登場するさまざまな事業機会に一番早く気づくことができ、同時に、そこで勃興する新たなベンチャー企業に対して一番早い段階で相乗効果を提供できるアクティブな投資家として手を上げることができる。
戦略意図をまとめると、これからの10年間、当面の間キャッシュカウが稼ぎ続けることで時価総額が維持できて、かつ、自社の事業ドメインの中で勃興する新しい事業プレイヤーに投資家として参画できる立場に立つことができる。それが「たとえ10年後の姿が今見えていなくても、意味がある」ソフトバンクの今回の買収の絵柄なのだ。
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