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「市場経済国」認定せず 対中国、欧州委が基本方針
【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)の欧州委員会は20日、中国を世界貿易機関(WTO)協定上の「市場経済国」と認定しない基本方針を決めた。認定すれば、不当な安値競争の歯止めがきかなくなる恐れがあると判断した。ただ中国にも一定の配慮をみせ、経済的なつながりの強い同国との対立を回避したい意向を示した。
約5000人がEU本部前で中国のダンピング阻止を求めてデモを繰り広げた(2月、ブリュッセル)=ロイター
中国は2001年にWTOに加盟した。この際、当初15年間は他国からのダンピング(不当廉売)認定などで不利な条件を課される「非市場経済国」として扱われることを受け入れた。その規定条項が12月11日に失効する。
中国はこの条項が失効した後は自動的に市場経済国に移行すると主張するが、日米欧は個別に判断する構えを示してきた。
一部の新興国などでは、政府が企業の生産や輸出に実質的な補助金を出すケースがあり、適正な製品価格が分かりにくい。WTO協定では、このような国を非市場経済国として、ダンピング対抗措置をとりやすくしている。具体的には別の国の製品価格などを基準に対抗措置をとることができる。
中国側からすれば、反ダンピング関税などをかけられやすいとの不満があり、市場経済国として認定を強く求めている。
EUによると、中国側はWTO協定の条項の失効後も非市場経済国としての扱いを変えなければ、WTO協定違反で賠償請求する構えもみせている。
ただ中国の求めに応じて、市場経済国と認定すれば反ダンピング措置が難しくなり、安い中国製品が欧州市場に大量流入する懸念がある。EUは域内で最大21万人の雇用が失われると試算する。
「(EUは)中国を市場経済国として認定しないだろうが、法的な責任は尊重する」。20日の記者会見で欧州委のカタイネン副委員長は強調した。欧州委は認定しなくても中国からWTO協定違反で提訴されずに済むようにEUの反ダンピング制度を抜本的に見直す方針だ。
具体的にはEU法を改正し、市場経済国かどうかの判断で反ダンピング措置の扱いが変わる仕組みをやめる。すべてのWTO加盟国を対象に、ダンピングが疑われるケースならば国際価格を考慮して判定するという。
欧州委は今後具体策を詰めて、秋に加盟国と欧州議会にダンピング対抗措置の新制度を提案する。ただ新たなダンピング対抗措置が中国などの安値品の流入に対抗できる制度として機能するかはなお不透明だ。
EUはWTO協定上の中国を市場経済国として認定しない一方、EU法上で非市場経済国と名指しするのをやめ、中国との摩擦を減らしたい考えをにじませた。
EUがひとまず方向性を出したことで、日米がどう動くかも今後の焦点となりそうだ。
[日経新聞7月22日朝刊P.6]
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