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中国が発表した新たな金融政策に、不安しか感じられない理由 膨れあがる不良債権
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49273
2016年07月25日(月) 真壁 昭夫「通貨とファイナンスで読む世界経済」 現代ビジネス
7月18日、中国国務院は『金融機関に対して、試験的に企業の株式を保有することを認める』との声明を出した。それは、監督行政の銀行などに対する方針転換だ。
これまで、中国の銀行などは企業の株式を保有することができなかった。銀行のリスクテイクに制限をかけ、自己資本の毀損を防ぎ、預金者の安心を支える措置だった。
試験的な規制緩和の目的は、銀行が抱える不良債権を株式に交換することを通して、不良債権を処理することにある。それを実現する手法が“デッド・エクイティスワップ=債務と株式の交換”だ。この方法を通して中国政府は、企業再生と株式保有による銀行収益の改善の両方を目指そうとしている。
■増加し続ける中国の不良債権
2016年3月末時点、中国の不良債権残高は約1.4兆元(当時の邦貨換算額で24兆円)となり、明らかに増加の一途をたどっている。
今のところ、中国人民銀行による金融緩和の効果もあり、不良債権問題が銀行の経営を圧迫し、信用収縮が進む状況にはなっていない。
しかし、経済成長率が下方トレンドを辿る中、今後も不良債権が増加することは避けられないだろう。この不安を払拭するため、3月の全人代で(全国人民代表大会)の閉幕後、李克強首相は『市場の活力を刺激し、構造改革を通じて経済発展を支えられるようにすべき』と述べた。
これは借金=デットを、エクイティ=株式に転換して、借金の返済を免除する措置だ。デッド・エクイティスワップ(DES)を用いた不良債権処理等を念頭に置いた発言と考えられる。
具体的には、過剰債務を抱え、経営破綻が懸念される企業の債務負担を軽減するためDESを通して債務の株式化が実施される。これによって、企業の財務内容の改善が期待できる。
DESは企業再生のための有力な手法の一つと考えられている。中国は銀行が保有する債権(不良債権)を株式と交換し、保有することを想定しているようだ。
首尾よく企業の再生が進めば、債務の株式化によって株式を保有する金融機関には、配当や株式の値上がりによる利益が期待できる。つまり、中国政府はDESを通して、債務問題に直面する企業の再生と銀行の収益獲得の、“二兎を追う”ことを目指しているようだ。これは、一発逆転ホームランを狙うことにも似ている。
■ただの「問題の先送り」?
問題は、理論通りに企業再建と金融機関が保有する資産価値の向上が達成できるか、だ。
実際に銀行によるDESが可能になれば、データ上は不良債権に定義される債権残高は減るだろう。しかし、銀行が不良な資産を保有することに変わりはない。政府の強い管理下にある大手銀行などが、貸出先の再建の可否を見極め、事業を再生できるかも不透明だ。それは容易ではない。
むしろ、中国政府は株価が持ち直しつつある中で銀行に株式を保有させ、不良債権への懸念を抑えたいのだろう。中国政府の目指す“市場の活力を刺激する”こととは、規制緩和などを通して投機資金の流入を促し、資産価値を高めることだ。その上で、ゾンビ企業のリストラや再生を進めれば混乱は避けられると考えているのだろう。
これは問題の先送りに過ぎない。
中国経済が直面する問題は、リーマンショック後、4兆元の景気刺激策が引き起こした資源バブルの後始末だ。つまり、過剰なヒト、設備、不良債権のリストラである。
この3要素からなる“過剰な供給能力”を削減するためには、いったん企業を清算し、需給のバランスを調整する必要がある。不良化した資産の価値を回復させることとは違う。
中国政府にとっての悩みは、抜本的な改革を進めると社会情勢が不安定化しかねないことだ。だから、相場を刺激して期待を高め、その場しのぎの対策に終始してしまう。
その結果、将来のどこかの時点で、中国の不良債権問題はより深刻になる可能性がある。今すぐにそうした事態が起きるとは考えづらいが、今回の対応が抜本的な問題解決でないことは確かだ。
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