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ビジネスマン必読のベストセラー!『捨てられる銀行』のどこがどう読まれているのか 地方銀行が次々に「まとめ買い」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49184
2016年07月19日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
先行きの不透明感が拭えない日本経済。その原因の一つは、銀行がダメになったからだ。リスクを取らない。融資先の内情を見ない。生産的なアドバイスもしない。あなたのメインバンクは大丈夫か。
■顧客のほうを向いていない
〈 ある地銀の話だ。
ある医療法人が地元の地銀2行に利益改善策を提案するよう求めた。すると、A行は医療法人に対して試行錯誤しながら改善提案をしてきた。
もう一つのB行は、貸出残高ではA行を上回るメインバンクであったが、支店長が医療法人からの依頼を甘く見たのか、要請を放置した。営業目標への貢献にも繋がらないからだろう。余計なコストを負いたくないという思いもあったろう。
しばらくして、医療法人からB行に通告が入った。借り入れている全額をA行に移すと。メインバンクの交代だ。しかも地域金融の支店においては看過できる融資額ではない。文字通り激震が走った 〉
B行の担当者は慌てて本部に連絡し、担当役員や頭取が当の医療法人を訪問したという。
〈 B行の頭取は医療法人の理事長に対し、
「どうか考え直していただきたい。そうでないと私は支店長を更迭しなければならなくなる」
と、支店長のクビはあなたの一存にかかっていると言わんばかりに理事長へ翻意を促した。
すると、理事長はため息をついて言った。
「あなた方はいつもそうだ。何も分かっていない。顧客の方を見ていない。私は利益改善提案をお願いしたのに、提案はせずに、いまだに部下を更迭せざるを得なくなるとか、困るとか自分の話ばかりされる。私たち客には何ら関係のない話だ。だから私はメインバンクを変更するとお伝えしたのです」〉
これは極端な話ではない。日本の各地でいま、顧客の信頼を失った銀行が次々と「捨てられ」つつある。その現状を活写し、分析した共同通信社経済部記者・橋本卓典氏の著書『捨てられる銀行』(講談社現代新書)が大ベストセラーになっている(〈〉内は同書の引用)。
元横浜銀行代表取締役常務で、現在は神奈川ニュービジネス協議会事務局顧問を務める小林孝雄氏も、同書の内容に大きく頷く。
「かつて銀行は、監督官庁である金融庁に良く見られることを第一に考えていたと言っても過言ではありません。だから、たとえば不良債権を減らすことばかりに気を取られたり、融資をするにしても担保を重視したりしていました。取引先や顧客の事情よりも、財務内容ばかりを気にして、監督官庁から良い銀行だと思われようと頑張ってきた。地域の企業や地域経済のことを第一に考えてきた地銀はほとんどなかったでしょう」
銀行のこういった姿勢を助長してきたのが、金融庁が'99年7月に発表した「金融検査マニュアル」だ。これは'98年の長銀・日債銀の破綻によって、危機的な信用不安に陥った金融機関が適切に不良債権を処理するために作成された。
同書はこう指摘する。
〈 (マニュアルの公表によって)「不良債権を生み出さないための銀行経営」に、ほとんどの銀行はシフトしてしまった。シフトしただけではない。銀行経営者は顧客の真の価値とは何か、地域金融とは何かを考え、リスクをとって考えること、行動することをやめた 〉
■「目利き力」を失った
その結果、銀行は融資を必要とする地域の企業と向き合わなくなった。
地域金融のプロフェッショナルとして知られ、鹿児島銀行と山陰合同銀行の社外取締役も務める多胡秀人氏も口を揃える。
「20年前の不良債権問題から、だんだんと銀行は自己中心的になってきました。リスクを取らなくなった地方銀行は、能力も落ちていきました。稚内信用金庫や鹿児島銀行など、しっかりやってきた銀行もあるのですが、それは例外ですね。
私は地方に行くと、老舗旅館を見るんです。地元の金融機関がだらしない地域ではどんどん潰れています。しっかりしている地域は、地元資本の旅館がちゃんと残っている。銀行が地元の企業に寄り添って経営を支えているかは、そういうところを見ればわかります」
検査マニュアルに加えて、地銀の決定的な「モラルハザード」を招いたのが、'98年と'08年の二度にわたって導入された「信用保証制度」だったとも同書は指摘する。
〈 中小企業が金融機関から借金をする場合、倒産などで返済できない事態に備えて信用保証協会が返済を100%肩代わりする(代位弁済)という制度だ 〉
〈 100%保証によって中小企業・小規模事業者に必要資金を流す金融円滑化の効果は確かにあった。しかし、銀行のみならず事業者も思わぬ「代償」を支払うことになった。
銀行は完全にリスクから解き放たれる代わりに、企業の事業価値を見る目利き力を次第に失っていったのだ 〉
100%保証だから、金融機関の審査部は問題なく了承する。大手銀行から地銀まで、企業が短期的に必要とする資金であっても、この保証制度の適用を受けた長期融資に切り替えていった。
■エリートの限界
その結果、銀行の営業マンはこれまでしていたような、足繁く事業所に通い、事業の実態を自分の目で確認することがなくなってしまったという。
城南信用金庫前理事長の吉原毅氏が、地銀は金融機関として本末転倒に陥っていると嘆く。
「もともと地銀は地域のお殿様。最もステータスの高い存在でした。それがおかしなことに、近年、東京に進出してくるようになった。地方にはおカネを貸すところがないからと、東京に出てきてダンピングのような低金利で融資する、ということをやり始めたのです。
視野の狭い地方のエリートが短期的な視点で、合理的なつもりの判断をしてきた結果ですが、長い目でみたらこれは自殺行為に等しい。各地域で、いかに地元を発展させるかを考えないと、根無し草になってしまいます。地域金融機関の原点は、おカネを通じて、地域の人々や企業の幸せを創出していくということ。本書は、そのことを指摘しているのです」
思考停止に陥った地銀に活を入れるべく立ち上がったのが、昨年、金融庁長官に就いた森信親氏だ。森氏は'80年に旧大蔵省に入省。海外畑を歩んだ後、'06年に金融庁に移って監督局総務課長に抜擢され、その後も要職を歴任した。「型破りなエース」として、金融庁内や金融関係者に早くから注目されていた森氏は、検査局長時代に大改革に着手した。
前出の「金融検査マニュアル」を撤廃し、銀行の個別の資産査定を原則中止したのだ。
さらに通称「森ペーパー」を発表し、金融業界に衝撃を与えた。
〈 人口動態の推計から、'25年3月末の予想市場規模と中小企業向け貸し出しの利ざやの状況を分布図にしたものだ。行名は伏せられているが105行中、30近い地銀の利ざやがマイナス(逆ざや)に陥っている内容だった 〉
〈 森ペーパーは、人口が落ち込む中、このままでは収益は落ち込み、本業の貸し出しで稼げなくなる現実を突きつけていた。
資産査定の検査はなくしたが、森は地銀を甘やかすつもりは毛頭なく、むしろ人口減少という本質的な危機に備え、住宅ローンや低金利競争の貸し出しから脱却し、利ざやの改善につながる持続可能なビジネスモデルの構築を急がせる狙いだった 〉
森氏が主導した金融庁の方針転換を、経済ジャーナリストの磯山友幸氏は高く評価する。
「金融庁は銀行行政とべったりくっついてきた長い歴史があったので、どうしても銀行に厳しいことが言えなかった。ところが、森さんの指導で金融庁は『地方の金融機能の強化』などに重点的に取り組むようになりました。日銀が異次元の金融緩和をしても一向に増えない金融機関の融資を促すために、地銀が成長性のある企業におカネを貸すよう、地銀の経営に切り込み始めたのです。
なおかつ、驚くべきことに地方銀行の大口融資先に金融庁が直接ヒアリングできるようにしました。金融庁自らが地方金融の現状を把握しようとしている。もちろん、地銀に対するプレッシャーにもなる。思い切った方針転換だと思います」
森氏が長官就任早々行ったのが、中小企業1000社に金融機関との関係を聞き出す初の取り組みだった。その結果、見えてきたことがある。
〈 多くの地銀は「低金利での貸し出しこそ、企業や事業者が最も求めているものだ」と思い込んでいるが、企業側は「金利以上に事業内容を見てもらい、経営課題の解決と成長に向けて一緒に歩んでほしい」と期待していたのだ 〉
それこそが、本来の金融機関の役割だと、前出の吉原氏は解説する。
「貸す、貸さないという問題ではなく、いかにして困っているお客様を助け、新しい事業を創出していくか。この役割を果たせなければ、金融機関の存在意義はありません。そのことに気づく銀行と、気づかない銀行の差は、これから広がっていくでしょう」
■変われなければ潰れるだけ
そこに気づいている銀行は、数少ないが確実に存在する。同書では4つのモデルケースが紹介されているが、石川県金沢市に本店がある北國銀行の例を紹介しよう。同行は、営業ノルマを撤廃するというドラスティックな改革を断行した。
〈 営業ノルマが設定され、それが人事評価に反映される場合、人は自らの評価のためにノルマの達成を目指す。銀行員の場合、顧客には本来必要のない投資信託を売りつけたり、必要以上の借入金を増やすことにつながる。顧客満足か営業成績かの二者択一を迫られれば、営業成績に心が傾く。(中略)意識や行動を抜本的に変えるためには評価の仕組みを改めるしかない 〉
〈 地方の中小企業の場合、本質的な顧客満足とは、金融庁のヒアリングでも実証された通り、経営課題を解決した先にある成長や経営の立て直しだ。成長や経営再建の実現で顧客と金融機関の信頼関係が深まれば、貸出金の利ざやが改善する好循環の取引も期待できるだろう。これこそが地方創生の姿ではなかろうか 〉
もちろん、銀行にとって変化は容易ではない。だが、マイナス金利政策の導入もあり、顧客から預金を集めて、国債で運用していれば利益の出る時代は終わった。いま変わらなければ、銀行は生き残れない。
そして、この問題は銀行だけに限らない。人口減少という日本全体が向き合わざるを得ない難問を真正面から論じているからこそ、本書は銀行員のみならず、多くのビジネスマンに読まれているのである。
「週刊現代」2016年7月23日・30日合併号より
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