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瀕死の東芝がようやく見出した、「ハイテク産業」という一筋の光明
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49201
2016年07月19日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
■背水の陣
東芝がようやく、前途に光明を見出したのかもしれない――。
米ウエスタンデジタル(WD)のスティーブ・ミリガンCEOが先週金曜日(7月15日)、綱川智・東芝社長と共同で記者会見し、2018年度までの3年間に50億ドル(約5,250億円)を投じて、スマホ向け需要などが見込まれる次世代フラッシュメモリを増産、この分野で先行するライバルの韓国サムスン電子にキャッチアップする戦略を明らかにした。
粉飾決算で屋台骨が揺らぎ、ジリ貧が懸念される東芝にとって、この投資は目先の資金繰りや売り上げ確保で追い風になる。また、いざという時に向けた四日市工場の売却先の確保にも繋がる可能性があり、朗報と言えるだろう。
また、この日米の記憶装置大手の提携強化は、巨額の開発・製造投資やM&A(合併と買収)を積極化している中国勢への対抗策としても注目されそうだ。
東芝は米サンディスクと2002年から、四日市工場でスマートフォンなどに使われるフラッシュメモリを共同生産してきた。
今回の記者会見は、同工場で次世代フラッシュメモリを製造する新棟の完成式が行われたのにあわせて開かれたもの。
WDのトップが出席したのは、同社が今年5月、サンディスクを買収して完全子会社化したことに伴い、サンディスクから四日市工場での合弁事業を引き継いだためである。
次世代フラッシュメモリの増産戦略などを明確にした今回の記者会見は、WD、東芝双方にとって、生き残りを賭けた、大きな意味がある。
■倒産の危機にあった
まず、東芝は新規有望分野での投資を云々する以前に、会社の存続が危ぶまれる状況に陥っていた。
昨年秋、2014年度第3四半期までの6年9ヵ月間に2,248億円の税引き前利益の水増しをしたなどとする有価証券報告書の訂正を行い、粉飾決算の幕引きと経営不安の払しょくを図ったものの、結果ははかばかしくない。
今春には、頑なに拒んできた米原発子会社ウェスチングハウス(WH)の「のれん代」の一部償却が避けられなくなり、虎の子の「東芝メディカルシステムズ」売却を余儀なくされた。
この売却で償却原資を確保して、債務超過転落の危機は回避したものの、東芝に残ったのは“出涸らし”のような事業ばかりだ。東芝が掲げた高成長路線の回復どころか、黒字の確保や売り上げの維持すら容易ではなく、戦略投資とはいえ、カネ食い虫と言われるフラッシュメモリを回す資金を手当てできる状況にないとみられていた。
しかも、中国勢が台頭し、サムスン電子が次世代フラッシュメモリの開発・販売面で先行する中で、提携先のサンディスクの経営も決して安泰ではなかった。
この点について、東芝は有価証券報告書(2016年3月期版)に、こう明記せざるを得ないほどだった。
「合弁契約に基づき、サンディスク社の持分を買い取る可能性があります」
「当該製造合弁会社が保有する生産設備のリース契約に関して、現在当社とサンディスク社が個別に50%ずつの債務保証をしていますが、サンディスク社の業績又は財政状態の悪化により、当社がサンディスク社分の保証債務を承継し又は当該製造合弁会社に対するサンディスク社の持分を買い取る可能性がある」
■渡りに船
それだけに、WDが今回、サンディスクから東芝との協力を引き継ぐ姿勢を明確にしたことは、東芝にとって頼もしい助け舟だ。
東芝の負担を合わせたフラッシュメモリへの投資額は3年で約1兆4,000億円に迫るという。
四日市工場の土地や工場建屋は別にして、その他の増産投資をWDがほぼ折半で負担する姿勢を示しており、脆弱だった東芝の信用が補完される可能性がある。
そうなれば、東芝の事業計画に厳しい視線を注いでいた主力銀行からの新たな借り入れに繋がる可能性が出てくるほか、売上高や利益の確保でも八方塞がりの状況を打開できるかもしれない。
東芝の腹が決まっているとは思わないが、協力によって信頼関係を強化しておけば、万が一の場合、WDに四日市工場の買収を要請し易くなる面もあるだろう。
一方、主力製品が時代遅れになるリスクを抱えて新規分野への進出が急務になっていたWDにとっても、東芝との協力は渡りに船である。同社は、ハードディスクドライブ(HDD)で強固な地位を誇ってきたものの、IT製品の記憶媒体の分野では、HDDから、高速でデータの書き込み・消去ができる記憶媒体ソリッドステートドライブ(SSD)への移行が急ピッチで進んでいるからだ。
次世代フラッシュメモリの需要は、スマートフォンやSSD向けに着実に増大する見通しだ。そこで、買収したサンディスクが、東芝との間で協力関係を持っていたことを奇貨として、WDは収益構造の転換を急ぐものとみられる。
■激しさを増すハイテク戦争
WDと東芝が提携関係を維持・強化していく姿勢を見せたことに、日米両政府の経済・通商外交の責任者たちは、ホッと胸をなでおろしているのではないか。
実は、両国政府は、中国企業が世界各地でM&A(合併・買収)攻勢を強めていることに神経を尖らせていた。
2016年1〜3月の中国勢による海外M&Aは総額1,011億ドル(約11兆500億円)と、わずか3ヵ月で早くも過去最高だった昨年の年間実績(1,095億ドル)に迫った。この中には家電大手ハイアールによる米ゼネラル・エレクトリック(GE)の家電事業の買収も含まれている。
米政府は、中国企業によるITや半導体分野の米企業買収に伴う技術や知的財産の流出は、安全保障で米国を脅かすと危機感を強めている。このため、中国の国営企業「紫光集団」が昨年、相次いで米企業に食指を伸ばしたことに対し、水面下で待ったをかけている。紫光集団は、もともと投資会社だったが、中国の半導体会社2社を買収して半導体企業への業態転換を進めていた。
ちなみに、紫光集団が最初に食指を伸ばした米企業は、半導体大手のマイクロン・テクノロジーだ。昨年夏、買収を打診した。しかし、米政府の審査が一向に進まず、ペンディングになっているという。
2つ目が、東芝のパートナーとなったWDだ。紫光集団は昨年9月、15%出資することに合意したと発表もしたが、その後、断念を表明した。その背景について、WDのミリガンCEOは15日の記者会見で、「ある種の反対が米政府からあった」と明かしている。
日本でも、経済外交筋から、シャープが中国本土と密接な関係にある台湾企業ホンハイに買収されたのに続き、IT分野のハイテク企業が中国勢に買収されるのは「国際競争力の観点からマイナスだ」(政府幹部)との声が早くから上がっていた。特に、東芝の場合、米国内の原発のメンテナンスで重要な地位を占めるWHを傘下に抱えており、中国企業が買収の食指を伸ばすことに神経を尖らせていた。
国益を揺るがすというハイテク戦争は、さらに激しさを増す雲行きだ。
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