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ポケモンGOに沸く任天堂の業績は本当に復活するのか
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160718-00001779-toushin-bus_all
投信1 7月18日(月)16時15分配信
■ポケモンGOリリースで株価は93%上昇
2016年7月6日に米国でリリースされた“Pockemon GO(ポケモンゴー)”。リリースされた国では社会現象にもなりつつあり、大きなブームになりつつあります。実際に株式市場でも任天堂 <7974> の株価は発表以降急激に上昇し、2016年7月6日の任天堂の株価の終値は14,380円だったのが、7月15日終値では27,780円と実に+93%も上昇しました。株式市場での期待の大きさがうかがえます。
■2016年度の業績予想はピークの10分の1以下
では、任天堂はこのポケモンGOで業績的に復活することができるのでしょうか。なぜ復活というかは、同社の業績の推移を見ていけば分かりますが、2009年3月期(2008年度)に営業利益で5,553億円であった水準が、2017年3月期(2016年度)の会社予想では450億円となっています。2017年3月期の業績が会社予想と同水準で着地すれば実に収益は10分の1以下になることになります。
■ポケモンGOは業績のエンジンとなるか
2008年度は、携帯型ゲーム機であるニンテンドーDSだけではなく据え置き型ゲーム機Wiiも販売台数を大きく伸ばし、その関連ソフトも大きく販売数量を伸ばしていました。2008年度の業績はそうしたハードウェアとソフトウェアの収益が大きく貢献していたことになります。それでは、今回のポケモンGOは任天堂の業績を大きく再浮上させるエンジンとなるのかについて考えてみたいと思います。
■ナイアンティックとはどのような企業か
そもそもポケモンGOは、ポケモンGOのサイトを見ると開発元と販売元はNiantic, Inc.(ナイアンティック)となっています。ナイアンティックをご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんが、Ingress(イングレス)というスマホでマップを使用した陣取り合戦ゲームで有名です。ナイアンティックはもともとグーグルの社内スタートアップがスピンアウトした企業です。
任天堂は2015年10月に株式会社ポケモンとともにナイアンティックとポケモンGOを共同開発するためにナイアンティックに出資をしています。ナイアンティックの当時のプレスリリースからは株式会社ポケモン、グーグル、任天堂から総計30百万ドル(1ドル=105円換算で約31.5億円)の資金調達をしています(イニシャルでは20百万ドル)。ナイアンティックはこの資金をポケモンGOとイングレスの開発に使うとしています。つまり任天堂と株式会社ポケモンはナイアンティックの株主ということになります。
■ポケモンはポケモンのもの
さて、そもそもポケモンは任天堂のコンテンツだとお考えの方もおられるかもしれませんが、そうではありません。ポケモンは株式会社ポケモンのコンテンツです。ただ、任天堂は株式会社ポケモンの株主であり持分法適用子会社となっています。2016年3月期の有価証券報告書によれば、任天堂は株式会社ポケモンの議決権のうち32%を保有しています。
■収益経路を考える
今回のポケモンGOで任天堂が得ることのできる収益の基本構造は資本構成から推測すると、以下の2つが中心と思われます。
1.ナイアンティックがイングレスとポケモンGO等のサービスを提供することによって得られた利益を原資とした株主への配当
2.株式会社ポケモンのポケモンGOを含めて全社で得られた利益を原資とした株主への配当
株式会社ポケモンはナイアンティックからポケモンの使用許諾料などを得ている契約をしているかもしれませんが、株式会社ポケモンはナイアンティックに出資もしており詳細は分かりません。いずれにせよ株式会社ポケモンの利益が拡大すれば、その株主である任天堂は潤うことになります。
ただし、よく考えてみて欲しいのですが、このスキームでは任天堂が直接収益を手にする構造とはなっていません。任天堂が得られるのはナイアンティックや株式会社ポケモンからの配当という2次的収益です。ポケモンGOのアプリ内課金が大きく伸びても1次的にはナイアンティックの売上、またグーグルのグーグルプレイやアップルのアップストアにプラットフォーム使用料としてプラットフォーマーに流れる仕組みです。
任天堂からしてみれば、スマホ上で位置情報を活用することによってゲームを面白くしたい、また自社でそれらを短期間に実現するリソースが不足していたという観点から、ナイアンティックへの出資と共同開発ということでポケモンGOのプロジェクトを進めさせたのだと思われます。
しかし、裏を返せば出資にとどめたという事実は、コンテンツをスマホに展開するだけでは任天堂全体の収益を大きくドライブするだけの材料としては不十分ということではないでしょうか。
■任天堂の仕事は新たなハードの提案とコンテンツを組み合わせること
過去の任天堂の売上や利益は、独自のユーザーインターフェースを持つハードウェアとそれに最適なソフトウェアが組み合わさることで新しいユーザー体験を提供することから生まれてきました。現在のハードウェアであるニンテンドー3DSやWii Uが変化点にあることを考慮すると次世代機のハードウェア“NX”がカギであることには変わりありません。どこまで行っても任天堂の業績を大きく変えるきっかけとなるのはハードウェアとコンテンツの組み合わせです。
ポケモンGOが米国でリリースされるちょうど1年前の2015年7月11日に岩田聡元任天堂社長がなくなられました。もちろんポケモンGOの熱狂的に迎えられた立ち上がりを喜んでいるかとは思います。任天堂はこうしたユーザーのニーズを出資案件を通じて見ることで、次世代機(ハードウェア)に反映してほしいものです。任天堂の次世代機への期待は膨らむばかりです。
投信1編集部
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