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スズキ・鈴木修会長(つのだよしお/アフロ)
スズキを腐食させる86歳・鈴木会長親子の暴走…偽装事件で副会長を「トカゲの尻尾切り」
http://biz-journal.jp/2016/07/post_15902.html
2016.07.15 文=編集部 Business Journal
三菱自動車工業は6月24日、千葉・幕張メッセで株主総会を開いた。益子修会長が続投することに対して「CEO(最高経営責任者)が、なぜ全責任を取って辞任しないのか!」との批判の声が上がった。「日産自動車との提携の道筋をつけるため。新体制が発足するまで現職にとどまる」と述べ、株主の理解を求めたが冷ややかな空気が会場を覆った。
総会では益子氏の取締役再任や日産で副社長を務めた山下光彦氏の取締役就任などが承認されたが、相川哲郎社長は引責辞任した。総会後の取締役会で、益子氏が会長と社長を兼務し、山下氏が開発部門担当の副社長に就くことが決まった。
三菱自は、10月をめどに日産から議決権ベースで34%の出資を受け入れる。その後、年内に臨時株主総会を開き、日産から会長を含む取締役4人を受け入れ新体制がスタートする予定だ。
「日産のカルロス・ゴーン社長の“操り人形”」(三菱グループ幹部)との見方が出ている益子氏は、10月以降も取締役として残ると取り沙汰されている。というのは、日産が三菱自を傘下に組み入れた狙いがはっきりしているからだ。
日産は、これまで三菱自からOEM(納入先ブランドでの受託製造)供給を受けていた軽自動車を自主生産する工場を手に入れる。さらに、三菱商事が持つ東南アジアの自動車の販売網に日産の自動車を乗せることで、弱点だった東南アジア市場のテコ入れを図れる。
世界販売1000万台を目標にする日産にとって、三菱商事の販売網は喉から手が出るほど欲しい。三菱商事とのパイプをつなぐためには、三菱商事出身の益子氏の続投が望ましいのだ。社長には、三菱商事出身で今回副社長に昇格した白地浩三氏が就くとの見方が有力だ。一方で、益子氏が社長兼CEOを続投する可能性もゼロではない。
三菱自の前途は多難だ。2017年3月期の決算は、1450億円の赤字となる見込み。燃費を偽装した軽自動車4車種のユーザーへの賠償金が500億円、日産の逸失利益の補填や部品メーカーへの補償などで1000億円を計上する。「これ以上、損失は出ない」(黒井義博常務執行役員)としているが、三菱ブランドの毀損に伴う販売減がこれから本格化するだろう。
ライバルメーカーのトップは、「値引きで販売台数を確保する“安売り作戦”を敢行するとみられるが、国内のディーラー網が崩壊するリスクが高まっている」と指摘する。
三菱自は2月、20年までの商品戦略を発表したばかりだ。多目的スポーツ車(SUV)と電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド(PHV)に開発を集中し、17〜20年度までに14車種を投入する計画だ。だが、計画の実行部隊に日産からトップが送り込まれたことで、計画の抜本的な変更は避けられないだろう。その結果、タマ(新車)が不足する懸念が強まっている。
■スズキ、ワンマン経営は変わらず
“もうひとりの修さん”であるスズキの鈴木修会長は、燃費データを違法に測定した問題の責任を取り「CEOを辞退する」と公表した。退任や辞任ではなく辞退なのだ。「トカゲの尻尾切り」で引責辞任する技術統括の本田治副社長は、プレスリリースによると「退任」となっている。
国土交通省は「経営陣が十分なチェックができていなかった」との調査結果を公表し、石井啓一・国交相は、スズキに再発防止策の進捗状況を3カ月ごとに報告するよう求めた。「経営責任の明確化」を求める国交省に対するクセ球の回答が「CEOの辞退」だったというわけだ。
広辞苑によると、辞退とは「へりくだって引き下がること。任命・勧誘などを断ること」とある。国交省から「一定のけじめ」を求められた鈴木修氏が、それを断った――。これが事の真相だろう。
「経営の第一線から退くのか」と記者会見で問われた鈴木修氏は「現役を退くのが退任だ」と述べ、「CEOは辞退するが、経営トップとしては現役だ。続投する」と宣言した。
「燃費不正は、私がCEO時代に起きた問題なので、逃げるのではなく会長を続けようと考えた」
代表権を持つ会長を続ける理由をこう強弁した。鈴木修氏のワンマン会社という体制は不変なのである。
昨年6月に長男の鈴木俊宏氏が社長に就任し、「経営戦略会議」を新設。組織上は集団指導体制と移行した。しかし、意思決定機関は「本部長会」のままであり、本部長会は鈴木修氏が仕切ってきた。
「昨年の社長交代の際も“チームスズキ”を目指すとしていたが(実行されていない)」という厳しい指摘に、俊宏氏は「(鈴木修会長が)37年間トップだった。1年でなかなか変わらないが、今回の件を受けて、(チームスズキを)加速しなければと思う」と述べた。
「トップダウンの中で、社員が意見を言いづらいこともあった」と俊宏氏は認めたが、「意見を言いづらかった」のは、実は俊宏氏自身ではなかったのか。社長がそうだったから、役員や社員は沈黙してしまうのだ。果たしてチームスズキは本当に機能するのだろうか。
経営トップとして不正問題を見抜けなかった責任が鈴木親子にはある。燃費不正問題が発覚した三菱自では、技術トップの中尾龍吾副社長に加え、相川哲郎社長も引責辞任した。
スズキの場合、今回の問題で退任するのは技術担当の本田氏だけだ。創業家一族の鈴木親子は守られた。6月29日の取締役会で鈴木修氏が16年間続けたCEOを、俊宏氏が引き継ぐことが決まった。
1978年からトップに君臨し続けたカリスマ会長の影響力は強烈だ。スズキは鈴木修氏の会社であり、効率を最優先し、トップダウンで何事も同氏が決めてきた。これが不正の温床となったスズキの企業風土なのだ。スズキ躍進の原動力となった経営手法の限界が、燃費不正で露呈したという事実に鈴木修氏は気付いていない。気付かないフリをしているのかもしれない。
カリスマ経営者と呼ばれた鈴木修氏が、進退に言及する時期にさしかかっている。「ひとまず、トヨタ自動車から技術担当の役員を派遣してもらったらどうだろうか」(前出・ライバルメーカーのトップ)とのアドバイスもある。
(文=編集部)
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