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旧シャープ本社社屋 photo by Otsu4 CC BY-SA 3.0
シャープ、「7000人リストラ」でも危ない。経営再建できない深刻な問題とは?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160714-00101125-hbolz-bus_all
HARBOR BUSINESS Online 7月14日(木)9時10分配信
電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手、台湾の鴻海に買収されることになったシャープ。先月23日には本社にあった創業者の銅像すら撤去されるなど現在、経営再建の真っ只中だ。
そんなシャープで取り沙汰されているのが「7000人削減」の噂だ。
同社は買収前の昨年7〜8月時点で、3200人が希望退職に応じたばかりだが、買収後の5月12日に発表された決算概要資料では、「グローバルで最大7000人程度の人員削減」という文言が明記され、騒動となった。もし実現されれば、4万4000人いるシャープ社員の実に16%が職を失うからだ。
のちに国内からの批判を受け、文言自体は削除された。しかし、先月22日になって鴻池の副社長が「7000人削減の可能性」を改めて認めた。
買収契約を結んだ4月2日時点で、鴻海の郭台銘会長が「なるべく全員残ってもらえるようにしたい」と話していただけに、再三の人員削減計画に対しては「やはり外資系企業は冷徹だ」、「雇用は維持されず、日本企業の技術力だけが国外流出する」といった感情的な批判が噴出している。
しかし、ここで一度客観的な数字を読み解き、類似企業と比較することで、この人員削減の妥当性、ならびにシャープの現状を改めて把握したいと思う。
なぜなら、筆者は人員削減だけではシャープは再建できないと考えるからだ。
◆シャープの従業員削減はムダなのか!?
まずはシャープという会社の規模を改めて確認したい。同社の有価証券報告書に記載されているPL(損益計算書)によれば、’15年度の売上高(連結)は2兆4600億円となっている。
拙著『進め!! 東大ブラック企業探偵団』でも取り上げた、総合電機メーカー大手のパナソニックの7兆5500億円、東芝の5兆6700億円、ソニーの8兆1000億円、日立の10兆円の3分の1、あるいは4分の1にも満たない数値だ。
しかし、その一方で、シャープの4万3000人という従業員数は、パナソニック(25万人)の5分の1以下、日立(33万5000人)の7分の1にも満たない数値だ。
つまり、シャープは従業員一人あたりの売上高が他の電機メーカーに比べて大きい。別の言い方をすれば、人件費の割合が極端に低い企業といえるだろう。
PL(損益計算書)をさらに読み解いていこう。
企業の「総売上」から「売上原価」を引いたものが、いわゆる「粗利」であり、そこから「販売費及び一般管理費(”販管費”と略され、人件費もここに含まれる)」を引いたものが「営業利益」だ。
つまり、売上原価と販管費の合計が売上高を下回っていれば黒字、上回っていれば赤字である。
図示した企業のなかでは、シャープと東芝が赤字となっている。
とりわけシャープは売上高に占める売上原価の割合が99.6%と、極めて高く、構造的な赤字体質となっている。一方の販管費率は8.8%程度で、鴻海を除く他社の半分以下である。
ちなみに、鴻海は安価な従業員を大量に抱え、iPhoneなど世界中の製品に対する究極の「下請け」を行っており、販管費率は脅威の3.48%という低水準だ。しかし、そもそもこのビジネスモデルは、日本の総合電機メーカー大手やサムスンなどとは全く違うので今回の比較対象にはならない。
◆「7000人削減」は鴻海の広報戦略の失敗
話をシャープのPLに戻そう。仮に人件費や広告宣伝費を一切なくして、販管費を0円にしても、たった0.4%の営業利益率にしかならない。
全上場企業における営業利益率の平均は4%から5%とされているため、シャープはそもそも現在のビジネスモデルが崩壊していると言える。作っているモノと作るのにかけるコスト、その仕組みそのものが悪いのだ。
ここからわかるのは、社員の16%程度をカットしたところで、業績に直結する影響はほぼないという事実だ。
ちなみに、人件費は社員数×1人あたりの平均給与で決まるが、シャープは他社と比べて給与も明らかに低い。
従業員の平均給与は634万円であり、役員報酬の平均も1600万円しかない。これは、総合商社やキー局など、「従業員」への給与水準がトップクラスの会社の平均年収と大差ない水準である。
なお、ソニー、日立、パナソニックといった他の大手電機メーカー3社の役員が得ている報酬の平均額は、それぞれ全上場企業中のトップ200にランクインしている。
以上、具体的な数字から明かしてきたように、シャープはすでに人件費を極限まで切り詰めている。さらなる人員削減を進めても大して業績改善に寄与しない。
充分なメリットがないにも関わらず、7000人の人員削減について、経営陣が言及し、メディアを騒がせ、「やはり鴻海は買収した日本企業の社員の雇用を守らないのか」というマイナスな印象を与えたのは、鴻海のPR上の失敗といえるのではないだろうか。
◆シャープの人員削減で笑う、ある会社とは?
ところで、シャープの人員削減を追い風としている企業をご存知だろうか。その会社の名は日本電産。オムロンや京セラなどと同じく京都に本社を構え、モーターなどBtoBの部品を作っているメーカーで、一般的な知名度は総合電機メーカーに劣るものの、2兆円超の時価総額はパナソニックと肩を並べる。
同社は本業を軸に、世界中の様々な部品メーカーを買収し、経営再建することで急速に業績を拡大してきた。
その再建のキモは、「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」という、創業者にして現社長の永守重信氏指導のもと、従業員の徹底的な意識改革が行われたことにある。リストラを一切行わない永守氏は、優秀でない人材や失敗した人材を育て上げ、同社を売上高1兆円の大企業へと導いた。
シャープに対しても、昨年以降、元社長や副社長といった経営層や部長クラス以下の数百人をすでに受け入れている。シャープは同社のお得意先の一つであり、引き抜きは絶対にしないと公言しているが、リストラや希望退職により、市場に出回った人材を手に入れる分にはモラル上の問題も少ない。当然、会社ごと買収するよりもはるかに安上がりだ。
シャープの人員削減は、鴻海・シャープの業績改善への効果は薄いが、シャープにいた人材を手に入れられる他社、そして何より新天地で活躍の機会が得られる元従業員にとってはメリットが大きくなりうる事態だと筆者は捉えている。
<文/大熊将八(Twitter ID:@Showyeahok) photo by Otsu4 via Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0>
おおくましょうはち○瀧本哲史ゼミに属する現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者
ハーバー・ビジネス・オンライン
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