★阿修羅♪ > 経世済民110 > 723.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
中国の「過剰な生産能力」が誘発する世界貿易戦争〜日本の鉄鋼業も巻き添えで大迷惑 各地で高まる保護主義のうねり
http://www.asyura2.com/16/hasan110/msg/723.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 7 月 12 日 08:53:37: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

2016年07月12日(火) 町田 徹
中国の「過剰な生産能力」が誘発する世界貿易戦争〜日本の鉄鋼業も巻き添えで大迷惑
各地で高まる保護主義のうねり
〔PHOTO〕iStock
貿易戦争勃発か
保護主義のうねりが高まってきた――。
世界各地で、中国製の鉄鋼製品を狙い撃ちにして、反ダンピング関税(AD)の賦課など「貿易救済措置」の発動を求める調査の開始ラッシュが起きている。
業界団体の調べによると、今年(2016年)初めから6月9日まで5ヵ月強の間に、調査開始件数は25件に達しており、過去最多を記録した昨年(2015年の46件)を上回る勢いだ。
背景には、リーマンショックを挟んで生産能力を大増強した結果、過剰生産設備を抱えた中国による世界各地への鉄鋼製品の輸出拡大問題がある。
貿易救済措置は、世界貿易機関(WTO)の協定で不公正貿易に対する救済手段として認められているものだが、恣意的に運用されれば保護主義と紙一重の危うさがある。
鉄鋼貿易を正常に戻すには、中国の過剰生産能力を圧縮して、市場実勢を無視した廉売を無くす必要がある。
ところが、一昨日(7月10日)閉幕した「上海・20カ国・地域(G20)貿易相会合」で、当の中国がこの問題を議題にすることを頑なに拒む場面があったという。こうした対応は、貿易救済措置の保護主義的な乱用を煽り、通商摩擦や貿易戦争を招くことになりかねない。
3つの貿易救済措置
業界団体が調べた貿易救済措置は、
@ 国内価格より低い価格でダンピング(不当廉売)輸出し、輸入国の国内産業が被害を受けている場合、価格を是正する目的で関税を課す「反ダンピング関税」措置
A 政府補助金を受けて生産した物品の輸出によって、輸入国の国内産業が損害を受けた場合、補助金の効果を相殺するために付加する「相殺関税(CVD)」措置
B 特定品目の輸入急増により、国内産業が重大な損害を受けていると認められ、かつ、国民経済上、緊急の必要性がある場合、損害を回避するために関税の賦課か、輸入数量を制限する「セーフガード(SG)」措置
の3つだ。
http://gendai.ismedia.jp/mwimgs/2/4/600/img_24c40109bcca0a773c3fd8502e88e9a399321.png 
ここに掲載したグラフを参照してほしい。鉄鋼製品を巡る貿易救済措置発動を求める調査開始は、2000年頃の、米企業による日本製の鉄鋼製品を巡るダンピング提訴が相次いだ時期を境に沈静化。2007年には世界中で8件と落ち着いていた。
ところが、2008年秋のリーマンショックを受けて、他国からの輸出急増を警戒する声が各地で広がり、貿易救済措置の発動を求める機運が高まった。ただ、この時期は、G20諸国を中心に冷静な対応を求める流れも根強く、2010年の17件をピークに、2011年は13件と減少に転じた。
だが、着々とマグマは溜まっていた。中国が生産能力を急ピッチで増強していたのだ。
巻き添えを喰らう日本
中国の粗鋼生産量は、リーマンショック前に年産5億トンに満たなかったが、2011年に7億トンを突破。さらに増加を続け、2014年に8億2275万トンに達した。これは、世界第2位の日本の7.4倍の規模である。
世界経済の成長ペースと比べて巨大過ぎる生産能力の増強と、中国国内の不動産バブルの崩壊が相まって、各国は鉄鋼製品の供給過剰に悩まされることになり、2012年以降の貿易救済措置の発動調査の新規開始ラッシュが始まったのだ。
元凶が中国であることは、対象を特定国に絞る反ダンピング関税と相殺関税の賦課を求める新規調査動向を見れば、明らかだ。2013年から2016年6月9日までに開始された両措置を巡る調査は合計で106件あるが、このうち中国が被提訴国となったケースが68件とワーストだからだ。以下は、2位が韓国(33件)、3位台湾(20件)、4位日本(18件)となっている。
ちなみに、日本の場合、最近は中国だけが賦課関税の対象となると、中国に代わって日本からの輸入が急増する懸念があるとして、被提訴国に加えられる例が多く、「中国の巻き添えになって、これほど迷惑なことはない」(大手鉄鋼会社)という。
巻き添えとはいえ、業績への影響は大きい。
例えば、米国際貿易委員会(ITC)が6月22日に反ダンピング課税などの賦課を最終決定した、家電製品などに幅広く使われる冷延鋼板のケースがわかり易い。中国製品には反ダンピング課税(265.79%)と、政府補助金に対する相殺関税(256.44%)の両方が賦課されることになったが、日本製品にも反ダンピング課税(71.35%)が課されることになったからだ。
日本の2015年の冷延鋼板の対米輸出実績は14万5962万トン(1ドル=100円換算で、約154億円)だ。買い手にとって、事実上、7割を超す値上げだけに、買い手がこの負担を嫌えば、新日鉄住金やJFEスチールの対米冷延鋼板輸出が今後数年にわたってゼロになりかねない。
冷延鋼板だけでも無視できないリスクだが、大手鉄鋼メーカーによると、各種の貿易救済措置がすでに発動されているものと調査中のものをあわせると、各地で合計31品目が対象になっている。経営への影響は決して軽微とは言えない。
鉄鋼は国の経済力の”ものさし”
今後、こうした貿易救済措置が続々と開始される可能性も否定できない。
2016年年初から6月9日までの調査開始の内訳を見ると、反ダンピング関税、相殺関税のいずれかの賦課を求めるものが5ヵ月余りで20件と、過去最高だった昨年(40件)を上回る勢いとなっている。また、セーフガードの発動を求めるケースも5件と、過去最大だった2014年(7件)を大きく上回る勢いだ。
プロイセンの鉄血宰相ビスマルクの演説が元とされる「鉄は国家なり」という言葉を引くまでもなく、鉄鋼は今なお一国の経済力のものさしだ。
中間財である鉄鋼の不公正貿易を貿易救済措置で無くしても、代わりに輸出国が家電製品や自動車として製品化して輸出すれば、保護主義的な輸出入政策がエスカレート、通商摩擦や貿易戦争が勃発してもおかしくない。そうした摩擦は貿易そのものを減らし、中国バブルの崩壊や英国の「EU離脱」で減速が確実な世界経済の足を引っ張るだろう。
7月9日、10日の2日間、中国・上海市で開かれたG20貿易相会合は、国際協調を打ち出すことで、そうした減速懸念を沈静化する好機だった。共同声明に「鉄鋼などの過剰生産能力は協調した対応が必要だ」との文言を盛り込み、かろうじて国際的な亀裂は回避した。
しかし、舞台裏では、体裁にこだわる議長国の中国が「構造問題を貿易相会合で議論するのは不適当だ」と抵抗、日米欧の集中砲火に遭い、過剰生産問題は「(世界の)貿易と労働者にマイナスの打撃を与えている」と声明に盛り込むことになったという。
鉄鋼業では、生産調整で高炉の火を消して大量の人員整理をするより、赤字でも国内で捌き切れない製品を輸出して操業を続けたほうが、経営陣にとって労務対策が楽である。
また、中央政府の方針に従わず、地元での失業発生を嫌う地方政府が補助金を拠出し続けており、こうした問題先送り型の経営を支えているという。中国ならではの根深い問題だ。
しかし、中国の過剰生産製品の輸出は、失業の輸出との批判を招き、世界各地で保護主義を勢い付かせかねない。
中国では、粗鋼生産世界5位の宝鋼集団と同11位の武漢鋼鉄集団の2国営企業を統合、過剰生産体質の是正に着手する動きがあるという。
今年9月に浙江省杭州市で開くG20首脳会合までに、目に見える形で過剰生産能力の圧縮策を打ち出して、保護主義を勢い付かせずに国際協調路線を維持することは、同会合の議長国としての責務だろう。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49148

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
1. 2016年7月12日 11:00:07 : EYCSp0M8Tw : qnio2lBwNco[259]
共通のルールで貿易の出来る国同士がグループを作る、広義の保護貿易主義になるだろう。
中国は共通ルールが理解できなければ孤立するか、武力で経済圏を広げるかの選択を迫られることになる。
国内市場が大きいから孤立でも生きていけるんだろうけどね。

2. 2016年7月12日 13:33:48 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[1878]

↑一国では無理だよ

すでに膨大な食糧や資源などを輸入せざるえないし、

逆に言えば、輸入してくれなければ困る国も多い

日本も、もちろん、その一つだ


  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民110掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民110掲示板  
次へ