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廣澤知子のやさしいマネー講座
2016年07月11日
第459回 「貧困スパイラル」
以前にも書いたことがあるのですが、実は日本は貧困率が意外に高いのです。
第154回 貧困率について
最近「子どもの貧困」を取り上げた特集やニュースをいくつか続けて見かけました。過去には「一億総中流社会」といった言葉が流行ったこともあり、豊かな先進国のイメージもある日本ですが、けっこうな格差社会であることは世界的にも指摘されており、そのしわ寄せは子どもたちにきています。
以下「子どもの貧困対策の推進に関する法律について」(平成25年法律第64号) (平成26年1月17日施行)の添付資料「現状・背景」より引用
■ 子供の貧困率
16.3%(2012年厚労省)(2010年OECD加盟34カ国中25位)(OECD(2014) 日本は2009年(15.7%))
■ 子供がいる現役世帯のうち大人が一人の貧困率
54.6%(2012年厚労省)(2010年OECD加盟34カ国中33位)(OECD(2014) 日本は2009年(50.8%))
■ 生活保護世帯の子供の高等学校等進学率
90.8%(全体 98.6%)(2013年厚労省/文科省)
■ 世代を超えた「貧困の連鎖」
子どもの貧困率というのは「相対的貧困世帯に属する子どもの割合」であり、日本では2012年には子ども6人に一人という状況になっているとのこと。高齢者の一人世帯増加による貧困化はかなり注目されてきましたが、子育て世帯の非正規雇用者割合の増加・低所得化、そしてひとり親家庭の増加で若年世帯の貧困化が深刻になってきています。これらの事実が高齢者のそれ以上に深刻なのは、貧困により子どもが教育を受ける機会の喪失が高まること。その結果が上記高等学校等進学率にも表れています。学歴別の年間収入には依然差があり、かつ高等教育を受けていない場合非正規社員となる確率も高く、世代を超えた貧困スパイラルにつながりやすくなります。
お金があることだけが幸せではないでしょう。事実、日本の幸福度と収入の関係を調べたデータ(大阪大学21世紀COEによる調査)によれば、幸福度と収入の比例関係は年収700万円あたりで頭打ちになるとか。お金があればあるだけ幸せ、というわけではないということですね。また、子どもを大学に通わせている世帯の年収は700〜800万円というデータもあります(東大に限ると半数以上が950万円以上になるとのこと)。子どもに高等教育を受けさせ、幸福度を感じられる年収の目安というのが浮き上がってきますよね。もちろん学歴=幸福ではありませんし、もし貧困状態にある場合には高すぎる目標に感じるかもしれません。
ライフプランニングには具体的なマネープランが必要です。そうした目標を可視化することで、もし収入が届かないのであれば時間をかけて相応の貯蓄準備をするなど、早めに取り掛かれます。貧困のスパイラルを断ち切るためにも、貧困状況になくとも自身にとって幸福度を感じる水準に達するためにも早めに計画的に取り組みたいものですね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員
http://lounge.monex.co.jp/column/money/2016/07/11.html
貧困率について154回 廣澤知子のやさしいマネー講座
2009年10月05日
「格差社会」という言葉はすっかり日本に定着したかのようにみえます。平均年収が下がり、雇用不安等から社会全体が「豊かさ」から後退していて、一億総中流社会と言われた日本は大きく変容してしまったわけですが、中でも経済格差が拡大してきていることが注目されています。
国民の所得分布の中央値である50%に満たない人が全体に対しどれくらいいるかを示す「(相対的)貧困率」と言われる指標があります。国民の経済格差を表すもので、長妻昭厚生労働相は昨日、この「貧困率」を測定する方針を固めました。
この貧困率ですが、OECDの発表による2006年7月のデータでは、日本は先進国の中では米国に次いで2位という残念な状況にあります。
逆に貧困率の低い国としてはスウェーデンをはじめ、フランス、英国などが挙げられます。
皆さんには日本はそれほど貧困層が多いという実感があるでしょうか?
ここで注意したいのは、この貧困率が「相対的」であるということ。
もう一つ興味深い調査結果があります。
「貧しさのために生活必需品が買えなかった経験」についてGlobal Attitudes
Project(44 カ国、約38,000 人を対象に、世界的に行なわれている世論調査のプロジェクト)が2002年に調査したもので、日本、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、イタリア、ロシア、中国、韓国、ロシアの11カ国を対象にしています。
この調査結果では、日本は「食料、医療、衣服を買えなかったもの」の比率が対象国中もっとも低く、相対的貧困率では低かったフランスや英国よりも「生活困窮者」は少ないことを示しています。
米国はといえば、相対的貧困率も生活困窮者の比率も先進国の中では一番高く、しかしながら上記調査対象国中(スウェーデンを除く)国民一人当たりのGDPは最も高く(2007年世銀調査)、豊かさと貧困の格差がいかに大きいかが分かる結果となっています。
実際のところ、米国では居住エリア、利用する店、学区などが生活水準によって明確に分かれており、犯罪発生率なども貧困地区が飛びぬけて高くなっています。
国民皆保険ではない米国においては、貧困層は病院にもかかれず、移民の場合は国語である英語もあまり話せないまま教育も十分に受けられずにいます。
半面、富裕層は日本人には想像もできないほどの豊かな暮らしをしています。
こうした富裕層と貧困層には生活の中に接点がないといってもよいくらいなのです。
このように国によって国民の生活背景は大きく異なり、国の経済力をGDPや貿易量だけで測るのは難しいように感じます。
特に現在、世界的に回復が期待されている個人消費というのは、まさに個々の国民の生活力や将来への不安の有無などが表れるものです。
人口における高齢者比率も見逃せません。各国の経済力や今後の経済上昇期待を占うときに、一義的な経済指標の比較だけでは見逃してしまうことも多くありそうです。新興国の経済を見るときにもぜひ注意していきたいものです。
日本においても、冒頭にあげたように長妻大臣の音頭によって相対的貧困率が調査されれば、「日本は貧困率が高い!」とニュースなどで声高に叫ばれる可能性は高いでしょう。それだけで日本の経済=もうダメだといった論調になりかねませんが、ひとつの調査結果に振り回されず、多角的に今後の経済見通しを考えていくようにしたいですね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
前の記事:第153回 米ドルの地位と為替レート −2009年09月28日
次の記事:第155回 FX取引、為替レートのイロハ −2009年10月19日
http://lounge.monex.co.jp/column/money/2009/10/05.html
子どもの貧困対策の推進に関する法律(PDF形式:152KB)別ウインドウで開きます
http://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/pdf/hinkon_law.pdf
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