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現状低下継続、先行きも大きく下落へ…2016年6月景気ウォッチャー調査
2016/07/08 15:31
内閣府は2016年7月8日付で2016年6月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で低下して41.2を計上し、水準値の50.0を下回る状態が継続する結果となった。先行き判断DIは先月比で低下して41.5となったが、こちらも水準値の50を割る状態が続いている。結果として、現状低下・先行き低下の傾向となり、基調判断は欧州情勢の混迷化による多方面への影響を受け「景気は、海外経済の不確実性の高まりを背景とした円高、株安の中、企業動向等への懸念により、引き続き弱さがみられる。先行きについては、熊本地震からの復興、公共工事の増加への期待がある一方、英国のEU離脱問題等による海外経済や金融資本市場の動向等への懸念が大きいことに留意する必要がある」となり、景況感の軟調さによるプレッシャーが大きいことを実感させるコメントが示されている(【平成28年6月調査(平成28年7月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。
現状は低下、先行きも低下
調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。
2016年6月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。
・現状判断DIは前月比マイナス1.8ポイントの41.2。
→「良くなっている」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加、「やや良くなっている」「変わらない」が減少。
→詳細項目は全項目で低下。最大の下げ幅は雇用関係のマイナス3.3ポイント。最少は飲食関連でマイナス0.6。水準値の50.0を超えた項目は前月から続き皆無。
・先行き判断DIは先月比でマイナス5.8ポイントの41.5。
→「やや悪くなる」「悪くなる」が増加、「やや良くなる」「変わらない」が減少。
→全項目で増加。非製造業や雇用関連の下げ幅が大きい。
2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。
2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況。ただしここ数か月は原油価格も再びじわりと値を上げており、それに伴いガソリン価格も上昇の兆しを見せていた。
今回月は先月に続き、水準値となる50.0を現状・先行き共に下回る形となった(双方とも11か月連続)。具体的コメントや周辺状況からも明らかな通り、6月23日にイギリスで行われた国民投票で、同国のEU離脱を望む意見が多数となり、離脱に向けた各方面の動きが活発化したことで、これを受けた影響が多角的に、大よそ日本にとってはマイナスの方向で生じている。これが対外輸出入をはじめとした経済、消費マインドにネガティブな影響を与えるものとして、大きな懸念が生じている。また同事案をきっかけに大きく円高に為替が動いたことで、株価も下落。これらもまた、景況感の足を引っ張る形となっている。
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
推移グラフを見れば分かる通り、とりわけ先行きに対する不安感が大きなものとなり、注意を要する状況となっている。
水準値超えは現状ゼロ、先行きもゼロ
それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。
↑ 景気の現状判断DI(-2016年6月)
消費税率改定からはすでに2年以上が経過したが、それによってもたらされた消費者心理の深層部分で影響を及ぼし続けているマイナスの景況感を回復させる材料が見当たらず、低迷感は継続。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いていると判断できる。
2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。
ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。
その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。昨今では為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほどである。そしてここ数か月に限れば原油価格は底打ち感から上昇の機運を見せていた。それに伴い原油関連企業の状況は一息ついた感はあるが、今度はガソリン価格の上昇を受け、運輸関連を中心に懸念が高まりつつある。
他方、上記にもある通り、国民投票を受けてイギリスのEU離脱問題やそれに絡んだ同国、さらにはEU全体の政治的混乱が多方面に波及し、原油価格もやや下落に転じ、為替は大きく円高に振れ、株価もリスク回避の流れを受けて売り込まれて下落。それらの要素はほぼすべて、日本にとってはマイナスの要因として降りかかり、消費者の消費マインド、企業の業務見通しに大きな影を差している。
今回月の現状判断DIは全項目でマイナス。振れ幅は雇用関連のマイナス3.3ポイントを除けばマイナス2ポイント内に収まっており、比較的穏やかな下げ方。しかし全項目におけるマイナスへの動きは、一連の状況変化が、多方面に渡っていることの裏付けでもある。一番大きく下げた雇用は、多種多様な方面に大きな影響をもたらす指標であるだけに、早期の回復が望ましいのだが。
景気の先行き判断DIは現状と比べるとさらに悲壮感が強く、全項目で下げに違いないものの、下げは幅現状よりもはるかに大きい。
↑ 景気の先行き判断DI(-2016年6月)
最大の下げ幅を示したのは雇用関連でマイナス8.8ポイント。前月で大きく上げて唯一水準値の50.0を超えたことの反動もあるが、景況感の大幅な下落を予見したものとなる。また、非製造業の下げ幅がそれに続くマイナス8.4ポイントとなっているが、これは上記にあるイギリス問題で、大幅に円高が進んだこと、海外への輸出が低迷することを受けての動きと考えれば道理は通る。
地震の余波とボーナスと、そしてなによりイギリス関連と
発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。
■現状
・ボーナス時期であり、耐久消費財の大型商品が好調に推移している。台数でみて前年比でテレビが120%、冷蔵庫100%、暑さも影響してエアコン200%と今月の売上構成比に寄与している。今月の売上は前年比120%と良い状態で着地となる(家電量販店)。
・熊本地震が宿泊予約にまだまだ影響している(観光型ホテル)。
・とにかく来客数が少なく、来ても足りないものを単品で買い、必要な物以外は買わないという状態が続いている(一般小売店[青果])。
・円高傾向が続いており、団体の外国人観光客を中心に集客が落ち込んでおり、売上が減少している(観光型ホテル)。
■先行き
・熊本地震の影響で、例年と比較して来客数・売上等が減少したが、熊本地震から2か月を経て来客数が戻りつつある。熊本地震直後から取り組んでいる熊本からのアクセス確保、情報発信等の成果が、長期休暇に入ることでより発揮される(観光名所)。
・消費税増税が再延期になったが、さらに、英国のEU離脱問題で経済がどうなるのか分からず、先行きがみえないため、消費も冷え込む。今より一層不安である(一般レストラン)。
・経済的な変動の影響が、これから大きく出てくる。これまではインバウンド客の増加で安心していたが、これだけ円高になると今後は期待できない(観光型ホテル)。
・英国のEU離脱問題を受け、円高、株安などの消費マインドに悪影響を与える要因により、消費行動が更に鈍化すると予想される(南関東=百貨店)。
先の熊本地震は発生直後は大よそネガティブな形で消費マインドに影響を与えたが、発生から2か月が経過し、復旧による景況感へのプラス化が読み取れるコメントも見受けられる。プラスマイナスは業種によるところも大きいが、懸念は確実に縮小している。
他方、イギリスのEU離脱問題は、消費税率改定延期によってもたらされた一服感を吹き飛ばすような影響を、直接・間接的に与えている。今回抽出したコメント内に限っても、「英国」で検索すると重複込みで36件もコメント上に登場しており、プラス的評価は皆無であることから、いかに強力な足の引っ張り度合いであることが分かる。雇用関連ですら、イギリス問題によって生じた多方面の影響が長期化すると、企業の採用抑制につながるとの心配の声も見受けられる。
なお4月分・5月分では熊本地震に特化したコメントの集約が掲載されていたが、今回月ではその項目が無い。各コメントには言及しているものもあるが、先月ほどの量、率では無くなったとの判断によるものだろう。上記にもあるが、それだけ状況が鎮静化した証ではある。
今年の動向を振り返ると、原油価格の低迷に伴う関連企業の業績悪化懸念、そして中国経済・株式市場の急落、世界規模の市場下落、さらには為替の円高化、来年に迫った消費税率引上げにより、景況感は大きな減退を経験していた。
その後消費税率の引き上げ延期はなされたが、原油価格はじわりと上がり、さらに4月の熊本地震、そして6月のイギリスのEU離脱への動きにより、為替と共に株価は大きく下落し、経済的な見通しもかなり怪しげな雲行きとなったことは否めない。季節感では今夏は猛暑となりそうで、季節物商品の売上には貢献しそうだが、それだけで他の要因をすべてカバーできるはずもない。
多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。昨今では可処分所得を削り取る大きな要素となる社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。
世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。
■関連記事:
【原油先物(WTI)価格の推移をグラフ化してみる(2016年)(最新)】
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http://www.garbagenews.net/archives/2184492.html
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