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「子供扱いしてほしい」39歳管理職、心の叫び ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」  
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投稿者 軽毛 日時 2016 年 7 月 08 日 01:06:40: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

「子供扱いしてほしい」39歳管理職、心の叫び

ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」

2016年7月8日(金)
山本 直人

「40代のその先が見えない…」

 就活シーズンも一段落したけれど、この頃になるとPさんは不思議な気分になるという。自分の勤めている会社に、多くの学生がやって来ることがどこかピンと来ない。

 Pさんの勤めている会社は、いわゆる「ベンチャー」だ。いや、「ベンチャーだった」と言った方がいいかもしれない。社員数は既に1000人を遥かに超えている。

 メディアでも話題になることも多く、学生からの人気も高い。でも普通の会社になってきたなぁ、と思う。

 Pさんが新卒で入った頃は、まさに急成長の真っただ中だった。ただし、知名度はまだまだ低かった。老舗の大手からも内定をもらったけれど、思い切って今の会社に入った。

 ただし、親を説得するのが一苦労だった。幸い父親の親友がこの分野に詳しかったこともあって、最後は納得してくれたし、今でも「いい選択したな」と言ってもらえるのは嬉しく感じる。

 しかし、Pさんは最近どこかモヤモヤしている。

 Pさんは現在39歳の管理職。仕事は安定してきたし、子供も生まれて、傍から見れば順調そのもの。ただし、30代後半にもなると否応なく「40代」の自分が見えてくるわけだが、どうも、「その先の自分」が見えて来ないのだ。

「この歳になれば、みんなそんなものなのかな?」

 どうやら、会社の同期と話しても似たような感覚を持っているようだ。そもそも、Pさんの会社では40代以上の社員が少ない。人材の流動も激しいため、新卒組が40代を迎えるのは、会社にとっても未知の領域なのだ。

 そんな中、Pさんには大学時代から仲のいい、Qさんと久しぶりに会うことになった。

 学生時代の就活から苦楽を共にして、卒業後も連絡を絶やさない親友である。それでも、お互いに家庭を持つようになって会う機会も減った。スマホの履歴を遡ったら、会うのは2年ぶりでちょっと驚く。

 それだけに、どうしてるのかな?と楽しみだった

若返って見えた老舗企業の同期

 Qさんの就活の選択は、Pさんとは対照的だった。老舗のメーカーで、しかもB to B の企業である。業務内容はしっかりしているが、華やかさからはちょっと遠い。

 就活シーズンになると、新聞に大きな広告を出したり、時にはTVCMをすることもあるが、それがちょっと唐突だ。

「あんな学生に媚びるようなことしなくてもいいのに」

 Qさんは、よくそんなことを言っていたが、どこか嬉しそうだった。そんな様子を見て、なんだかんだ言ってても自分の会社が好きなんだな、とPさんは感じていた。

 20代の頃は、お互いの仕事の話をするのがとても面白かった。あまりにも対照的だからだ。Pさんの会社は、「クールビズ」以前から服装は自由だし、フレックスタイムも当たり前で、自転車で通勤する同僚もいた。

 Qさんの会社に「タイムレコーダー」があって、独身寮には様々な掟があり、週末も会社の行事に駆り出されるという話を聞いてると、同じ国の会社とは思えなかった。

「オマエのところは、いいよなあ」

 これまで、こう漏らすのは、大概Qさんの方だった。最初の配属は、東京から遠く離れた工場で、その後も地方の事業部に行った。Pさんは、ずっと東京のオフィスだ。たまに会う時も新幹線の終電を気にしているQさんは、「ちょっと疲れたサラリーマン」に見えた。

 さて、久しぶりにPさんとQさんだが、「あれ?」と驚いたのはPさんだった。

(なんか、若返ってるな……)

 すぐに口にはしなかったけれど、それが第一印象だった。

30代はまだまだ子供

 若返って見えた理由の一つは単純だった。ひところに比べて、Qさんはかなり減量したのだ。しかし、それだけではない。Qさんは、以前よりずっと仕事に対して前のめりで、生き生きとした顔つきだった。

 あちらこちらの部署を経て、この1年ほどは本社の戦略部門に勤務しているという。異動希望を出していたこともあって、張り切って取り組むことになった。勉強しなければならないことも多い。朝早く起きて出勤前にカフェで本を読むようになり、さらに英語の勉強も始めた。

「やっと、スタートラインって感じだよ」とQさんは言う。

 それまではどこに行っても、「下積み」的な仕事が多く、悩んだ時期もあったという。当然、Qさんから見ればPさんの職場は華々しく見えただろう。20代の頃は、少なからずの同僚や後輩が、我慢できずに転職していったという。

「とにかく、ここからは自分が成長しないと」

 そんなことを言うQさんを見て、Pさんは驚いた。それって、自分が20代に頃に言っていたことではないか。ただし、最近はあまり言わなくなった。OB訪問に来る学生が、「自分が成長できる環境で……」と言うのを聞いて、懐かしく思うくらいだ。

 いつもは、Pさんが話して、Qさんが聞き役に回ることが多かった。ところが、この日は逆だ。Qさんの話は、相当に新鮮だった。業界は堅いけれど、仕事の内容は、まさに企業戦略そのものだ。

 ビジネス書でかじったリアル感のないカタカタ用語が、現実ではこんなに活きているのか……。先端だと思っていた自分たちの業界だったけれど、今はどうなんだろうか? いろいろと考えながらQさんの話を聞いていたが、特に印象に残った一言があった。

「いろいろ古いなぁと思うこともあったけど、ウチの会社は“懐が深い”ってことなのかな」

 いかにも日本的な言い回しだが、Pさんもどこか分かる気がしたのだ。

もう一度若手になりたい?

 Pさんは、ずっと以前から転職サイトに登録していた。別にその気はなくても、とりあえずは登録していろいろな情報を得る。同僚も大概はそうしていた。「自分の市場価値」を知る上でも、半ば当たり前のことだったのだ。

 今までは、送られてくる案件リストを眺めているだけのPさんだったが、初めて問い合わせをすることになった。この転職仲介会社を利用する場合、まずはアドバイザーと会うことになる。

 求人をしている企業の中から、その時点での希望先を事前に伝えることになったが、Pさんは比較的歴史のあるメーカーを選択した。実は最近では、ベンチャーから、こうした老舗企業への転職組が増えている。自社で養成するよりも、キャリア採用の方が効率的という面もある。

 実際に会ったアドバイザーは、想像よりも年配だった。最初から打ち解けた感じになり、本音を交えながら、いろいろな話をしたという。そして、別れ際にこんなことを言われた。

「いやぁ、まだまだ勉強して鍛えられてみたいんじゃないですか?」

 Pさんは、この一言でハッとしたという。30歳そこそこでマネージャーとなり、いまの会社ではもちろん一人前として扱われる。ただし、そこはかとない不安や喪失感もあった。その正体が、何となく分かったというのだ。

「自分は、まだまだ“子供扱い”されたいんじゃないか?」

 親友のQさんが遠回りしていたようでいながら、「これから成長」だよと言っていたことも思い出す。下積みのような期間が長いということは、半面、じっくりと育てるということでもある。そして、そこを乗り切った者には、思い切ってチャレンジさせる。規模が大きいだけに、挑戦対象の選択肢もそれなりにある。

 平均年齢は高いが、さまざまな経験を経た規模の大きい老舗企業ならではの「懐の深さ」の意味が分かるような気がしたのである。

 Pさんは自問する。若い会社というのは、社員を早く大人にしてしまうのではないか?

 歴史が浅いので、40歳以上の手本になる人があまりに少ない。Pさんも大人扱いはされるが、管理職として自分が本当に一人前なのかは、よく分からない。そして、”階段”を順調に上ってふと立ち止まると、チャレンジを通じて成長を実感できそうな対象が、なかなか見当たらない。

 山をどんどん登っていったら、いきなり高原に出てしまい、途方に暮れているような感じなのである。

 数年前には想像しなかったような岐路に、自分が立っていることにPさんは気づいた。40歳を目前にすると、新たな機会はそうそう多くはない。

 一度高原を下り、別の山を目指すことに気持ちは傾き始めているという。

■今回の棚卸し
 若い会社であるほど、成長は速い。一方で、それは「早い老成」をもたらす可能性もある。大企業でも、スピード出世した人が同じような感覚になることは多いようだ。30代半ばで持ち上げられているうちに、当人の不安や喪失感が増していることもある。

 「若くてしっかりしている」社員が内に抱えている不安は周囲に気づかれにくく、当人の「いきなりの転職」で驚かされることもある。マネジメント層にとっても、見落としがちな視点ではないだろうか。

■ちょっとしたお薦め
 「大人になりたい」という思いと、「もっと子供でいたい」という気分は、ひとりの心の中に共存することもあるようだ。そして、「大人になりたくない」代表は、あのピーター・パンだろう。アニメがあまりにも有名なこの話だが、原作(Peter and Wendy)は、少々味わいが違う。ことに最終章は、大人が読んでこそ、心に沁みるのではないだろうか。

 訳書も多いが、昨年出版された新潮文庫の新訳「ピーター・パンとウェンディ」がお薦めだ。夏休みの一冊にもいいのではないだろうか。


このコラムについて

ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」
50歳前後は「人生のY字路」である。このくらいの歳になれば、会社における自分の将来については、大方見当がついてくる。場合によっては、どこかで自分のキャリアに見切りをつけなければならない。でも、自分なりのプライドはそれなりにあったりする。ややこしい…。Y字路を迎えたミドルのキャリアとの付き合い方に、正解はない。読者の皆さんと、あれやこれやと考えたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/032500025/070100008  

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