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「英EU離脱は正しい」と株式市場は判断している
http://diamond.jp/articles/-/94531
2016年7月7日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問] ダイヤモンド・オンライン
多くのメディアは「イギリス国民はEU離脱を後悔している」と報じていますが、株式市場の評価は違うようです
報道では、イギリス国民はEU離脱の決定を後悔し、国民投票のやり直しを要求していると伝えられている。
しかし株式市場の反応は、これとまったく異なる。イギリスの株価は、離脱直後の落ち込みから回復し、現在、年初来最高値を記録している。
他方で、大陸諸国の株価は6月前半より低い水準だ。
これは、少なくとも経済的に見る限り、離脱はイギリス経済にとって有利で、大陸ヨーロッパに不利であることを示している。
■年初来最高値を示した
イギリスの株価指数
イギリスの株価指数(FTSE100)の動向は、図表1に示すとおりだ。EU離脱決定直後の6月24日に下落したが、すぐに回復し、現在は年初来最高値になっている。
これは、EU離脱がイギリスの経済にとって問題をもたらすのではなく、逆にイギリス経済にとって有利な決定であったことを意味する。EUを離脱して経済的自由を取り戻すことによって、イギリス経済がさらに発展するという見通しの反映と解釈できる。
これに対して、ドイツの株価指数(DAX)は、やはり離脱直後に下落してその後回復したが、回復力は強くない。現在の水準は、6月前半までの水準に比べると、かなり低い。
◆図表1:イギリス株価とドイツ株価の推移
図には示していないが、フランスもドイツと似た傾向だ。
実は、6月24日の株価指数の下落率で見ても、イギリスのFTSE100の下落率が一番低く、3.2%だった。ドイツDAXは6.8%、フランスCACは8%、そしてスペインIBEXは12.4%、イタリアMIBが12.5%もの下落率だった。
これは、イギリスの経済が混乱し、イギリスが衰退に向かうというマスメディアの報道とは逆の傾向を示している。マーケットはイギリスのEU離脱を支持しているのだ。
株価に見られる動向は、イギリスのEU離脱が、イギリス経済にとって有利で、大陸ヨーロッパ諸国にとって不利であることを明確に表している。
■ポンドの下落は
短期的な見通しにすぎない
イギリスのEU離脱によって、ポンドは急落した。英ポンド/米ドルは1985年以来の安値を更新した。ユーロ/英ポンドは、国民投票前の0.78程度から0.84に急上昇した。
このようなポンド急落は、上で見たイギリス株の動向と相反する動きだ。
なぜこうなったのだろうか?
まず、国民投票前のポンド高に対する反動との解釈がありうる。事前予想では残留派優勢だったので、英ポンド/米ドルは1.5ドル、英ポンド/円は160円まで買われていた。それが、離脱という結果になったので急落したとの見方だ。
いまひとつは、金利の動向にかかわるものだ。これまでイングランド銀行は金利引き上げを模索していた。しかし、これが不可能になった。イングランド銀行のカーニー総裁は、6月30日に早期利下げを強く示唆した。これがポンド高を招いたとの見方がありうる。
ただし、ポンド安は投票直後の6月24日に急激に生じた現象であり、これでは説明できない。
今度のポンド下落は、イギリスの実体経済に対する見方の変化を反映したものではなく、イギリスからの資金流出予想で生じたものだろう。しかも、それは、短期的な見通しである。
為替レートが短期的な見通しに影響されていることは、ポンドが減価し日本円が増価していることに現れている。これは、イギリス経済の将来に疑問があるためにイギリス売りが起こり、日本経済に将来性があるために日本買いが起こっているわけではない。
投機資金は短期的な情勢に反応している。とりあえずはイギリス経済に不確実性が大きくなったためにイギリスから逃避し、制度的変更のない日本円に滞留しているにすぎない。
日本国債の利回りは長期債までマイナスになっているので、満期まで持てば損失が生じてしまう。そのような資産に流れ込むのは、近い将来に売却することを計画しているからだ。このように、投機資金のタイムホライズンは極めて短い。
■イギリスとの関係を強化する中国の存在
ドイツはイギリス市場を手放せない
これからイギリスは、EUからの離脱と、EUとの新たな枠組み創設の交渉に入る。交渉期間は2年だ。
EUはイギリスに対して厳しい態度で交渉に臨む決定をしたと伝えられる。ドイツのメルケル首相は、「いいとこ取りを許さない」と強気発言をしている。
しかし、これは「通商は双方の利益のために行なう」という基本を忘れた発言に聞こえる。
しかも、自由な貿易関係の維持にとくに大きな関心を持つのは、貿易黒字国である。黒字国では、マーケットを手放したくないという要請は極めて強いからだ。だから、これからの交渉に最も重大な関心を持っているのは、他ならぬドイツである。
これを、具体的な計数で見ておこう。
図表2に示すように、EU28ヵ国は、イギリスの輸出で47.4%、輸入で52.8%のウエイトを持つ。EUがイギリスの貿易で極めて重要な位置を占めていることは疑いない。
EU諸国に対して、イギリスは貿易赤字を計上している(表に挙げた国ではすべて赤字になっている)。
EU28ヵ国の比重は、貿易赤字で見ると68.8%と、かなり高い値になっている。つまり、EU加盟国から見れば、イギリスは大変重要なマーケットなのである。
◆図表2:イギリスの輸出・輸入(2014年)
(資料)ジェトロ、原資料は英国歳入税関庁
表には示していないが、ドイツの場合、2014年において、輸出額の7.4%がイギリス向けであり、これはフランス9%、アメリカ8.5%に次ぐ大きさだ。
フランスの場合は、イギリスのウエイトは7.1%であり、ドイツ16.6%、ベルギー7.3%、イタリア7.2%に次ぐ。
■イギリスがEUから離脱しても
EU諸国は自由貿易協定を結びたい!?
このように、EU諸国から見てイギリスは大きな市場である。したがって、イギリスがEUを離脱しても、自由貿易協定を結びたいと考えるだろう。
中国は、習近平のイギリス訪問を見ても分かるように、イギリスとの経済関係の強化を図ろうとしている。これによって、従来はドイツから輸入していた工業製品が中国からの輸入に置き換わる可能性がある。
これはドイツにとっては重大な事態だ。したがってイギリスとの間の関税同盟が必要である。
EU加盟国がイギリスの後に続いてEUを離脱するといったドミノ効果を引き起こす可能性が高い。とくに、オランダ、チェコ共和国、フランスではEU離脱を支持する世論が高まっている。16日には、スイスでEU加盟申請を取り下げる議会決議が可決された。
EUこそ分解の危機に直面しているのである。
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