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「崖から落ちるように」悪化、英企業景況感と先行き悲観−国民投票後
Lucy Meakin
2016年7月5日 09:14 JST
ユーガブと経済ビジネスリサーチセンター調査の指数が示した
英企業は向こう1年の輸出の縮小見込む
英国民投票で欧州連合(EU)離脱が選択されてから約1週間後に、同国の企業景況感が落ち込み、景気の先行きに対する悲観度がほぼ倍の水準に高まったことが調査で明らかになった。
ユーガブと経済ビジネスリサーチセンター(CEBR)が5日公表した景況感指数は105と、国民投票が実施された6月23日までの3日間の112.6から急低下。同月28日から7月1日にかけて行われた調査ではまた、経済見通しに悲観的な企業の割合が49%と、投票前の25%から急増したことも示された。
CEBRのディレクター、スコット・コーフェ氏は調査結果について、「著しいショック反応を示唆している」とし、「企業は経済状態について全般的に一段と悲観的になっているだけでなく、向こう1年の国内販売や輸出、投資に関する見通しも崖から落ちるように悪化した」とコメントした。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-07-05/O9TEHX6K50XU01
Vol.359:英国のEU離脱ショックの波及を読む
テーマ:世界の金融経済
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Systems Research Ltd. 吉田繁治 42159部
おはようございます。6月23日の国民投票で、国民の意思として、
英国がEU(欧州経済連合)から離脱することが決定しました(離脱
51.9%、残留48.1%)。ただしこの国民投票には、法的な拘束権は
ありません。
EU離脱は、キャメロン首相辞任後の新政府が実行することになりま
す。可能性としては、「離脱しない」こともありえます(30%くら
いでしょうか)。
EU(Europian Union:28か国の欧州連合)の加盟国が結んでいるリ
スボン条約(2007年)の50条で見ると、加盟国がEUから脱退し、
EUの法の適用を受けなくなるまでには、国民投票の結果を英国政府
がEU理事会へ通知したあと、2年かかります。EUは連合国の議会が
あり、加盟国の法に優先する法をもつのです。
ヨーロッパの決定には、この件に限らず、わかりにくいことが多い。
歴史的に対立してきた、文化、価値観、行動様式が異なる国が集ま
り、28か国(5億人)が連合したEUの内部には、常に、対立する意
見があるからでしょう。英国の国民投票でも、離脱派と残留派はほ
ぼ50:50で拮抗しています。
前号(6月24日の358号)では、開票とリアルタイムで書いてお届け
しました。今回は、英国のEU離脱がどう波及し、日本を含む世界の
金融と経済に影響するかを予想して書きます。
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<Vol.359:英国のEU離脱ショックの波及を読む>
2016年7月4日:無料版
【目次】
1.EUとは何か
2.英国民がEU離脱を選択した理由
3.離脱の国民投票の直後に、生じたこと
4.世界の金融機関とヘッジファンドはロンドンに集まっている
5.英国のEU離脱が引き起こす可能性のあること
6.リーマン危機の再来になるかどうか
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■1.EUとは何か
起点は1967年からの、経済とエネルギー面での統合目指したEC(欧
州経済共同体)です。フランス、西ドイツ、イタリア、オランダ、
ベルギー、ルクセンブルグの6か国でした。1971年には英国、アイ
ルランド、デンマークが加わって欧州諸共同体に発展します。
1981年にはギリシアが、1986年にはスペインとポルトガルも入って
拡大します。
1986年には、「単一欧州議定書」によって、加盟国間に関税のない
欧州共同市場をかかげています。前年の1985年には、シェンゲン条
約により、国境を超える人的な移動も自由化されていました。商品
の国境を超える移動に関税や制限がかからず、人の移動と居住、労
働も自由化されたのです。
2016年現在のEU加盟国は、旧共産圏も含んで28か国であり、人口は
5億人です。名目GDPは14兆ユーロ(14兆×114円≒1600兆円)で、
日本(500兆円)の3.2倍です(2014年)。一人当たりのGDPは$3.
5万(360万円)であり、日本(400万円)の90%です。
現在のEUが経済面で突出しているのは、高い失業率であり、2014年
現在で10.2%です。日本の失業は3.2%、米国は5.5%です。EUは、
08年のリーマン危機(米国発の金融危機からの不況)から回復して
いないのです。人々の所得と自尊心にもかかわる失業率は、経済の
中でもっとも重要な指標です。
EUが、国家主権から取り上げて、共通化した大きな項目は以下の4
つです。
(1)EUの議会(欧州議会)で作られた法は、理事会での検討審議
を経て、EU加盟国に適用される。EU法は、国内法に優先する。
(2)外交、安全保障政策、司法、内政、経済・財政政策、内務で
も共通の政策を推進する。
(3)加盟国間の貿易には関税を課さず、輸入制限もしない。資本
と財の移動も自由である。
(4)EU域内の、移動、居住、労働は自由である。社会保障も、共
通のものが保証される。((注)西欧と格差が大きな東欧諸国に対
しては例外事項あり)
(注)英国とアイルランドは、国境を超えた移動の自由を謳うシェ
ンゲン条約には加盟していません。例えばイタリアからフランスに
行くときは、パスポートもビザも要りませんが、フランスやイタリ
アから英国に行くには、パスポートが必要です。
EUは各国の国内法を超える超国家です。超は強大という意味ではな
く、超えるということです。
以上の4つに加え、1998年には統一通貨のユーロを発行するECB(欧
州中央銀行)が発足します。通貨の発行権は、国権に属する重要事
項です。
通貨を統一するには、「労働の移動の自由が必要」と説いたのは、
「最適通貨圏の理論」を作ったロバート・マンデル(ノベール賞経
済学者:ユーロの父と言われる)です。
1999年には決済用の仮想通貨として導入され、2002年1月に現金通
貨が発行されました。このユーロは、欧州25カ国が採用しています。
EUのうちのユーロ加盟国は19か国です。なお英国(ポンド)、スイ
ス(スイスフラン)、デンマーク(クローネ)、スウェーデン(ク
ローナ)、ノルウェー(クローネ)は、統一通貨のユーロを導入し
ていません。
EUは、度重なる戦争で分断された大陸だったヨーロッパを、平和な
統合された単一市場にすることによって、米国経済と対抗すること
が目的でした。ユーロは、ドルの減価傾向に対する対抗でした。欧
州諸国に貿易黒字で貯まった基軸通貨のドルが、定期的に減価して
いたからです。このドル経済圏からの離脱が、統一通貨ユーロの目
的でした。
基軸通貨国は、輸入の代金として、自国の通貨を刷って渡せばいい
という特権をもっています。ユーロを結成すれば、ユーロの加盟国
間貿易に米ドルを使わなくてもよくなります。戦後は、ドイツとフ
ランスの貿易にも、米ドルを使っていたのです。(注)中国と日本
の貿易にも米ドルが使われています。
サッチャーが首相だった英国は、「通貨は国家が管理すべきだ」と
して、80年代から始まっていた欧州通貨連合の動きには加盟してい
ません。本当の理由は、ユーロ内で主導権をもつドイツへの拒否反
応でした。ユーロの通貨政策では、ドイツが中心になっています。
フランスはドイツに従属しています。
以上の背景を知れば、英国のEU離脱は、欧州と世界の歴史にとって、
21世紀でもっと大きな事件のひとつなる感じがします。100年間の、
世界の10大ニュースのトップクラスにはいるでしょう。
■2.英国民がEU離脱を選択した理由
国民投票のとき、EU離脱派は以下の主張をしていました。
(1)EUは、国家の上で官僚的な決定をし、英国の国益に反するこ
と増えてきた。
(2)欧州の統合は、現実に実現することではない。
(3)移民、難民問題が、英国とEUを苦しめている。
(4)EUにあずけた国家主権を取り戻す。
EUから離脱すれば、英国の景気は減速し、失業が増えて、給料は下
がり、不動産価格も下がるとは予想されていましたが、75%が投票
に行った英国民の選択は、自らも驚いた離脱でした。
「労働者階級と高齢者」はEU離脱に、「都市部のエスタブリッシュ
メントに属する人と若者層」は、キャメロン首相が選挙運動を率い
た残留でした。
離脱派は、「EUに奪われた国家主権をとりもどす」と訴え、国民に
受けたのです。国民の間には、EUの強まった官僚主義、EUの義務と
して行う移民の受け入れに対する反感が強くなっていました。英国
が拠出したお金が、スペインやギリシアの高速道路に使われるとい
う反発も生じていたのです。
【海外から投資された工場】
日本と英国の関係で言うと、英国から、単一市場の大陸EUへの輸出
は関税がかからないため、日本の製造業1000社は、累計で10兆円の
工場投資を英国に行い、英国人16万人を雇用しています。
【関税がかからない】
日本からEUに輸出すれば、統一関税がかかります。日本製の自動車
なら約10%です。この関税が、EU28か国内の貿易ではかからない。
このため、日本の企業は、欧州では歴史的にもなじみが深く、海外
からの工場誘致を優遇していた英国に進出したのです。
EUから離脱すれば、この関税特権はなくなります。日本に限らず、
米国、中国の英国工場が、イタリア、スペイン、ポルトガルに移動
することが想定できるのです。(注)輸出売上比10%の課税がある
かどうかは、工場経営にとって大問題です。
工場の移転は、所得の減少と失業を生み、英国の景気を、長期に大
きく不況化させます。この想定にもかかわらず、英国民はEU離脱を
選んだのです。
国民投票の結果は世界にとって驚きでした。もっとも驚いたのは、
英国人かも知れません。事前の予想では、最終的に、英国人は保守
的な残留を選ぶということだったからです。利に聡い英国人が、経
済的な不利を招く選択をするはずがないという見方も強かったので
す。
【押し寄せる難民】
イスラム国(ISIS)との戦闘地域であるシリアとイラクからは、陸
続きのトルコを経て、EU加盟国のギリシアやルーマニアに入国し、
そこから、パスポートやビザが要らないEU各国へ行く難民がいます。
シリアでは国民の半分の760万人が難民生活を送り、410万人は国外
(90%がトルコ、レバノン、ヨルダン)に逃れていると言われます。
【移民】
ドイツでは、全人口8213万人のうち1556万人(19%)が、主に東欧
やトルコからの移民という背景をもつ人々です。少子・高齢化のド
イツを、移民が埋めてきたと言っていい。
英国への移民は、流入が1年に50万人から60万人、流出が30万人か
ら40万人くらいで、純流入は1年に20万人です。2000年代に急増し
ました。
人口20万人といえば東京の渋谷区、文京区、港区、荒川区、新潟県
の上越市、埼玉県の熊谷市、静岡県の沼津市です。これらの市や町
の全人口が、海外から押し寄せる移民だと考えれば、20万人のイ
メージがつかめるでしょう。EU離脱派は、この移民が、英国人の所
得を下げていると考えたのです。
■3.離脱の国民投票の直後に、生じたこと
離脱が多数と予想された直後から、英ポンドは下落し、世界は株安
に向かいました。
日本円に対しては、158円付近だったポンドが、136円へと14%下が
っています(16年7月4日)。ドルに対しても、$1.48から$1.32へ
11%下げています。ユーロに対しては、1ユーロ=1.31ポンドが1.
20ポンドへと、対ドルと同じくらいの下げ幅です。
英国は対外的な経常収支(貿易収支+所得収支)では、米国に次ぐ
恒常的な赤字国です。2015年は、$1230億(約13兆円:GDP比4.3
%)の赤字でした。ポンド安になると、海外からの輸入品の価格が
高騰して、赤字が増えます。
そして英国の所得は減って、物価は上がり、不況化して行きます。
さらに英国からユーロに対する輸出に関税がかかるようになると、
ポンド安になっても輸出は減ります。この輸出減は、英国内の企業
所得の減少です。
(注)2011年の東日本大震災以降、貿易は赤字なることが多くなっ
たとはいえ、経常収支は黒字である日本では、逆に「円高」が輸出
の不振を招き、不況をもたらすことが多い。
世界の株価は、同時に、大きく下げています。ドイツ6.8%、フラ
ンス8.0%、スペイン12.4%、イタリア12.5%、米国3.6%、そして
日本が7.9%安でした。1日で7%〜10%の下落は、何かの大きな異
変のときの「暴落」です。
なぜ2年も先のユーロ離脱が、まだ何も起こっていないのに、英国
の通貨を下げて、世界の株価を下げたのか。これを理解するには、
サッチャーが押し進めたロンドンの、金融での「ウィンブルドン
化」を知らねばなりません。
■4.世界の金融機関とヘッジファンドはロンドンに集まっている
株価の下落でもっとも大きなものは銀行株でした。EUと世界のマ
ネーを集める中継地になっているロンドンのシティが、EU離脱によ
って凋落するという予測からです。
英国がEUに加盟しているときは、EUで金融の事業(マネーの調達と
投資、貸し付け)を行うのに、新たな免許や許可は要りません。英
国に支店を作っていれば、EUの全域で事業が展開できます。このた
め世界のほとんどの大手金融機関は、世界の金融の中心であるウ
ォール街とつながりがあるロンドンのシティ(ウォール街のような
金融街)に、拠点を構えています。英国と米国は、歴史的に関係が
深い。このためEUの企業が起債するとき、多くが、世界からお金が
集まっているシティを使ったのです。
金融業の所得は、英国のGDP($2.7兆:284兆円:2016年)のうち
10%は占めるように、大きなものになっています。1980年代からの
英国の製造業の空洞化を埋めたのが金融業でした。
英国がユーロから離脱した場合、シティの金融機関が、EUで事業を
行うには、新たにEUからのライセンスを受けねばならない。このた
め、シティに集まった多くの金融機関が、パリやフランクフルトに
移る準備をしています。
JPモルガン、ゴールドマンサックス、バンク・オブ・アメリカ、シ
ティバンク、モルガンスタンレーなどがその準備を進めています。
JPモルガンは1万6000人の社員のうち4000人を、モルガンスタン
レーは1000人の移転を決めています。英国の大手金融機関HSBCも
1000人を移転します。
シティの金融機関の社員は、大きく減るでしょう。これは世界1ク
ラスに高いロンドンの不動産価格を下げることも意味します。都市
部で978万人が住むロンドンでも、所得の高い金融業の社員が1万人
も減ると、家族を含めば3万人の人口減です。これは、1万軒の住宅
が空くことを意味します。
空き家が増えると、20年も上がり続けてきた不動産価格が、大きく
下がります。30%近い下落かもしれません。部屋が狭いに高いホテ
ルの料金も50%は下がるでしょう。
ロンドンの住宅価格は、10年前に比べて96%上がっています
(2015年10月時点)。10年で2倍の価格になったのが、ロンドンの
住宅です。最高級地区の2ベッドルーム(日本風に言えば4LDKくら
い)のコンドミニアムには325万ポンド(当時のポンドで5億円)の
価格すらついていました。
高級地区の平均的な住宅の1sf(スクエアフット)当たりの価格は、
2006年には1000ポンドくらいでしたが、2015年には2500ポンド(今
回のポンド下落前で40万円)に高騰しています。
1平米当たりならその3.3倍の132万円。100平米の狭目の3LDKで1億
3200万円ですから、価格のバブル度が分かるでしょう。本来なら
5000万円が妥当です。今後、その価格に向かって下がるはずです。
ロンドンの不動産価格は、EUの金融の中心シティによって、NY並み
に上がってきたのです。(注)2015年には、ロンドンの高級物件で
は前年比で10%の価格下落の傾向が見えていましたが、今後、これ
が加速します。
テムズ河の河畔には、世界最大のヘッジファンドであるマン・イン
ベストメントのオフィスがあります。ロンドンには、世界のヘッジ
ファンドも集まっているのです。
ロンドンの大手金融機関とヘッジファンドは、パナマ文書でその一
部が明らかになってきたタックス・ヘイブン(租税回避地)への、
最大の窓口になっています。世界の金融機関、事業法人、富裕者の
マネーがロンドンを経て、世界の英国領に多いタックス・ヘイブン
に流れているのです。
世界の通貨を売買する外国為替交換の40.9%は、ロンドンで行われ
ています。金額では1日2.7兆ドル(283兆円)です。この面では、
米国(ウォール街)は世界シェアの18.9%であり、ロンドンの半分
以下です。このロンドンの外為市場の大きさは、ロンドンがEUの金
融の中心になっているからこそ、あるものです。参考のために言え
ば、東京の金融機関での外為交換のシェアは、世界の5.6%と低い。
EUから離脱すれば、ロンドンが、EUと世界に対して提供している金
融機能は弱体化します。ロンドンは金融面でも、世界の大都市から、
英国の大都市に舞い戻ることになるでしょう。金融は、人と人の出
会いによって拡大する性格をもっているからです。サッチャーが目
指した、世界の「ウィンブルドン」は、あえなく消滅します。
■5.英国のEU離脱が引き起こす可能性のあること
▼英国の分裂の可能性
英国は、単一民族が主体になった国家である日本からは、イメージ
がしにくい国家の構造をもっています。英国の正式名称はUnited
Kingdom of Great Britain and Northern Islandです。イングラン
ド、ウェールズ、スコットランドの各王国と北アイルランドの4国
が連合した国家です。英国そのものがEUのような連合国と言えるで
しょう。
4国は主権国家ではありませんが、国とみなされていて、自治権を
もっています。国会もあり、独自の首相もいるのです。2014年には
スコットランドが、独立を問う住民投票を行い、賛成44.7%、反対
55.3%で否決され、英国に止まりました。各国では連合国より、そ
れぞれの国にアイデンティティが強いのです。
今回のEU離脱の国民投票の結果では、イングランドとウェールズは
残留が多数でしたが、スコットランドと北アイルランドでは残留派
が多数です。
人口 離脱 残留
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
イングランド 5478万人 53.4% 46.6%
ウェールズ 309万人 52.5% 47.5%
スコットランド 537万人 38.0% 62.0%
北アイルランド 185万人 44.2% 55.8%
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
残留派が多数になったスコットランドには、経済のコアとして北海
油田があります。英国のEU離脱となれば、スコットランドでは再度、
独立運動が盛りあがって、国民投票で独立とEU残留を決める可能性
が高い。北アイルランドも独立を志向するでしょう。
つまり、英国のEU離脱とともに、英国そのものが国として分裂する
可能性もが生じます。
▼EUからの離脱ドミノの可能性:EU内部ではEU反対が強い
英国民がEUに対して不満をもったように、EUの他の国でも不満が高
まっています。理由は、リーマン危機以降、各国にEUが強いた緊縮
財政です。ドイツが中心になって、財政赤字をGDPの3%以内にとど
めるよう指揮しています。このため、EU各国内の、EU反対派が増え
ているのです。
リーマン危機後、EUの失業率は、10.1%と高いままです(2016年5
月)。失業とは、企業が雇用を減らしたため、働いて得る所得がな
いことです。雇用保険で生活しています。経済でもっとも重要な指
標は、失業率です。
EUでは、リーマン危危機(2008年〜)と南欧危機(2010年〜)から、
回復をしていません。ECBによる通貨の増発で金融機関が生き残っ
ただけであり、実体経済の回復はない。
失業率が10%の社会は、準恐慌とも言える不況でしょう。各国の失
業率を見ると、ギリシア24.1%、スペイン19.8%、ポルトガル12.
4%、イタリア11.5%、フランス9.9%です。ドイツですら6.1%で
す。(注)米国は4.7%、日本は3.2%で、いずれも完全雇用の水準
です。
EU内での、EU反対派も、英国にほぼ似ています。国民投票が行われ
れば、EUからの離脱がドミノ倒しになる可能性も排除できないので
す。
【各国でのEU反対派】
EU反対 EU賛成
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜
ギリシア 71% 27% EU反対派が71%
フランス 61% 38% EU反対派が61%
英国 48% 44% EU反対派が48%(国民投票では
51.5%)
スペイン 47% 50% EU反対派がほぼ半数と見ていい
オランダ 46% 51% EU反対派がほぼ半数と見ていい
スウェーデン 44% 54% 以下は賛成派多数
イタリア 39% 58%
ハンガリー 37% 61%
ポーランド 22% 72%
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜
(米国大手調査会社:PEW Research Center: Fact &Trend :
2016年春)
http://www.pewglobal.org/2016/06/07/euroskepticism-beyond-brexit/
EUから厳しい緊縮財政を求められたギリシアのEU反対が71%は当然
としても、驚くのはドイツ、英国と並んでEUの中核国であるフラン
スのEU反対が61%と高いことです。国民投票が実施されれば、大国
フランスの離脱という事態になります。
スペイン、オランダでは、英国のようにEU賛成と反対が拮抗してい
ます。今、国民投票があれば、英国と同じ結果になるでしょう。
選挙で選ばれたわけでもないブリュッセルのEU官僚が、各国の政策
に口出しをするのを、快く思っていないという不満が強いのです。
EU当局では、EU離脱のドミノ現象を防ぐため、英国との離脱交渉で
英国に有利な関税や財政等の制度、政策を残さないことを言ってい
ます。フランス、オランダ、スペインがユーロ離脱となれば、EUは
瓦解します。
これを防ぐため、EU側は、英国に無条件での完全離脱を迫るという
ことです。
2010年代になって、EUへの不満が増えている根本の理由は、EUを主
導しているドイツのメルケル政権が、お金を出すことと引き換えに、
各国に緊縮財政を強いていて、各国が独自の経済政策を実行する主
権を奪っていることです。
EUの首脳部は、この方針を変える予定は全くない。このため、リー
マン危機以降の失業率が改善しない中で、EUへの反発は、日々高ま
っているのです。EU離脱の動きは、強まって行く方向です。
■6.リーマン危機の再来になるかどうか
英国の国民投票の直後に、金融市場が動揺し、世界の株価を急落さ
せたことから、英国の離脱ショックが、リーマン危機のスケールの
金融危機を招くという見方があります。この点についてはどうか?
(1)英国のEU離脱が、国内ではスコットランドや北アイルランド
の住民投票を招いて「独立多数派」になり、独立に向かう事態にな
ること。
(2)そして、英国のEUからの離脱がドミノ倒しのような現象を招
くきこと、この両者があれば、今度はEU発の、リーマン危機より深
い金融危機が起こるでしょう。
5億人経済の、通貨では英国ポンドとユーロ、そして、EUの株価の
急落から始まって、不動産価格の全面崩壊になるからです。それが、
金融機関に巨額の不良債権を生み、信用収縮を招きます。これは、
わが国にも、リーマン危機と同じような、不況(GDPの低下)をも
たらします。
EU離脱ショックの波及が、リーマン危機のときと違うのは、ECB
(ユーロの中央銀行)、大英銀行、米国FRB、そして日本の日銀が、
それぞれのバランスシートを限界に近いまでに膨らませて、信用供
与した後であることです。
リーマン危機のときの金融機関の危機は、米国FRBの$4兆(420兆
円)の緊急のマネー増発(3回の量的緩和)により、連鎖的な波及を
止めることができました。収縮した民間金融機関の信用を、FRBに
よる信用供与(ドルの増発)で補うことができたからです。
今回も、ECBとFRBが緊急に通貨を増発し、信用供与することが有効
になるかどうか。この点が不明です。ECB(ユーロの中央銀行)を
支配しているドイツがもっとも毛嫌いする通貨増発を行うかどうか
です。このため、英国のEU離脱ショックの波及があったときの金融
危機は、リーマン危機より深く、長くなる可能性があると見ていま
す。
ただし、キャメロン辞任の後の首相が、「EU離脱の自主撤回」をす
る可能性も残っています。もしそうなれば、EUはあたかも骨折の後
の骨のように強化されたとみなされ、英ポンドとユーロおよびEU株
の高騰が起こるでしょう。その可能性は、30%と見ています
【後記】
分かりにくい欧州のことを、できる限り、わかりやすくまとめたつ
もりです。わが国にも、08年のリーマンショック以上の影響を及ぼ
す可能性があります。知っておくこと、これが肝心です。
http://archives.mag2.com/0000048497/?l=ose082569d
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