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参院選を前に格闘の政策は?<自民党・共産党・おおさか維新の会>
子どもの貧困放置で「経済損失50兆円、財政負担20兆円」〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160629-00000255-sasahi-soci
AERA 2016年7月4日号
損失は50兆円以上、財政負担は20兆円──。日本の将来にかかわる大問題。この問題を各党はどう考えているのか。参院選を前に聞いた。
子どもの貧困を何の対策もせずに放っておけば、15歳の1学年だけでも、経済損失は約2.9兆円におよび、国の財政負担は約1.1兆円増える──。日本財団と三菱UFJリサーチ&コンサルティングが昨年末、こんな試算を発表した。
問題を放置すると、学力や進学率など教育格差が生まれ、将来の賃金格差にもつながる。「子供の貧困対策に関する大綱」によると、大学や専門学校などへの進学率は、全世帯が73.3%なのに対し、生活保護世帯は32.9%、児童養護施設だと22.6%、ひとり親世帯は41.6%と、経済状況によって進学率に格差があるのは明らかだ。貧困世帯の子どもは塾に通えないということもあるが、家庭環境に問題を抱えていて勉強に身が入らないという背景もある。
試算では、進学率が今のままのシナリオと、貧困世帯の進学率が非貧困世帯並みに改善するシナリオを比べた。しかも、この推計はたった1学年分なので、これを子ども全体(18歳以下)で考えると、単純計算で国全体の経済損失は50兆円以上。さらに生活保護の支給などが増え、国の財政負担が約20兆円も増える。子どもの貧困は「かわいそうだから対策すべき」と思われがちだが、実は経済問題として解決すべき課題でもあり、当事者だけの問題ではなく、将来への投資として国全体が取り組むべき課題なのだ。
●所得再分配効果少ない
そもそも日本で子どもの貧困格差がこんなにも深刻なのはなぜなのか。
もちろん、親の所得格差が開いてきたことが理由に挙げられるが、首都大学東京教授で、同大が15年に設立した「子ども・若者貧困研究センター」のセンター長を務める阿部彩さんは、教育と社会保障の問題点を指摘する。本来なら、教育は経済格差を緩和する機能を持つべきなのに、日本では経済格差がそのまま学力差になる。
「同じように毎日学校に通っていてどうしてこんなに学力格差が出てしまうのか。学校での教え方について、もう一度見直す必要がある」(阿部さん)
また、税や社会保障制度については、数年前まで国の所得再分配によって、子どもの貧困率がアップするという逆転現象が起きていた。
「所得再分配」といえば、税制や社会保障などを通じて、所得の高い人から低い人へ富を移転させて貧困を削減することが期待されているのに、日本では低所得層の社会保険料や税の負担が大きいうえに、子育ての負担を減らす社会保障の給付が少ないために再分配後の貧困率が高くなってしまっていたのだ。
阿部さんによると、児童手当拡充の効果などで09年に逆転現象が解消されたが、それでも再分配効果は他の先進諸国と比べて依然小さいという。
「貧困世帯への支援はもちろんですが、貧困に陥っていないギリギリのところで頑張っている世帯にも手厚い給付や負担の見直しが必要です」(阿部さん)
深刻化する子どもの貧困問題に対し、13年に「子どもの貧困対策法」が成立し、翌年には「子どもの貧困対策大綱」が策定された。
大綱によると、当面の重点施策は、「教育支援」「生活支援」「保護者の就労支援」「経済的支援」「実態調査」の5分野だが、これまでにある施策ばかりで目新しいものはなく、有識者でつくる内閣府の検討会が提言した「給付型奨学金」の創設や児童扶養手当の支給対象年齢延長は記載されなかった。
●各党が注力するテーマ
国の対策が不十分な中、政府は経済界の協力を募り、民間資金をあてにしようとしていた。
それが今年3月に民主党(現民進党)の蓮舫代表代行が参院予算委員会で費用対効果の悪さを指摘した「子供の未来応援基金」。子どもの貧困対策のために寄付を募り、子どもの支援活動をするNPOへの支援などに充てる計画で、政府は広報などに約2億円の予算を充てて昨年10月から寄付を呼びかけてきたが、今年2月までに約2千万円しか集まらず、蓮舫氏は「2億円を基金に入れれば良かった」と訴えた。
本来は民間頼みではなく、国が率先して貧困対策に取り組むべきではないのか。今回の参議院議員選挙では、各党は子どもの貧困問題をどう考えているのか。アエラは、6月1日現在で5人以上の国会議員を有する7党に向け、政策アンケートを実施した(右の表)。
まずすべての党が参院選に向けた公約に「子どもの貧困対策」を掲げていた。今回アンケートを実施しなかった党でも、「日本のこころを大切にする党」は6月3日に発表した「政策実例」の2項目で貧困対策とひとり親世帯への支援策の充実を掲げ、「新党改革」は「2016約束」の中で給付型の奨学金の創設などを明記。子どもの貧困解消は各党が注力するテーマだ。
7党には、高齢者向けの政策が重視され、子育て世代と比較して予算も多くつく「シルバー民主主義」の現状についても、どう考えるか聞いてみた。
国立社会保障・人口問題研究所によると、年金や介護など高齢者向けの13年度支出は54兆6247億円。一方、児童手当や保育所整備などの子育て向けの支出は6兆568億円。対GDP比で見ても、高齢者向けは11・31%、子育て向けは1・25%と9倍の開きがある(左上のチャート)。背景には、高齢者が有権者の4割を占め、そのうえ下の世代と比べて投票率が高いことがあると考えられている。
●世代間対立ではなく
各党は、「世代間の給付と負担の公平の確保を図っていく」(自民)、「高齢者向けを削って子ども向け予算に回す、という発想では問題の解決にならない。両方増やす」(共産)、「社会保障の重点は子ども・子育て支援にシフトさせるべき」(維新)、「(高齢者と子育て世代への予算配分は)1対1にできれば良い」(生活)などと回答した。
消費増税の延期による社会保障費の不足については、政権与党からは「優先順位を考える」(自民)、「あらゆる財源を捻出する」(公明)と心もとない回答が。野党側は「金融所得課税の5%引き上げ」(民進)、「所得税の累進性の強化、法人税率の引き上げなどで税収を増やす」(社民)と、税制改革で新たな財源を確保すべきと回答した。
前出の阿部さんは言う。
「貧困は高齢者層でも深刻で、世代間の対立をあおるのは違う。年齢ではなく所得階層でしっかり負担と給付を見直すことが大切です。また、圧倒的に予算が少ないことが問題。消費増税が延期されましたが、負担が将来に持ち越されただけで政治の責任逃れ。日本の未来を考えて、国民に『負担してください』と言える政治家を選ばなければ、問題は解決しません」
(編集部・深澤友紀)
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