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キヤノンを蝕む危機…「博打的」巨額買収で急速に財務体質悪化、負債膨張で格付け引き下げ(Business Journal)
http://www.asyura2.com/16/hasan110/msg/441.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 7 月 01 日 01:34:40: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

                キヤノン製品のロゴ


キヤノンを蝕む危機…「博打的」巨額買収で急速に財務体質悪化、負債膨張で格付け引き下げ
http://biz-journal.jp/2016/07/post_15711.html
2016.07.01 文=編集部 Business Journal


 M&A(合併・買収)を成長戦略の中心に位置付ける企業が増えている。なかでも、精密機器メーカーは積極的だ。事務機はオフィス需要が飽和状態になっている上に、ペーパーレス化の流れにも影響を受けている。デジタルカメラはスマートフォン(スマホ)の普及で市場の縮小が止まらない。半導体製造装置の露光装置でもオランダのASMLが強く、劣勢に立たされている。

 いわば三重苦の精密機器メーカーが、揃って照準を合わせたのが医療機器の分野だ。医療用機器は光学や画像処理、化学の技術を複合的に組み合わせて利用できるため、精密機器メーカーは自分の庭で勝負できるという安心感がある。医療分野は高齢化を背景に、需要は年々拡大している。機器、医薬品ともに市場の広がりが期待でき、安定収益を見込める。

 東芝メディカルシステムズのM&Aでは、各社がしのぎを削った。東芝は2016年3月期に過去最大の7100億円の連結最終赤字を計上する見通しとなったため、虎の子の東芝メディカルの売却で赤字を穴埋めすることにした。東芝は東芝メディカルの売却益で最終赤字を4600億円に圧縮した。

■キヤノンは医療機器を成長の柱に据える

 東芝メディカルはコンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)、超音波診断装置など、医療用の画像診断機器を手掛け、国内シェアは1位。世界でも4位で、12%のシェアを持つ。買収の入札にはキヤノンのほか、富士フイルムホールディングス、コニタミノルタなどが参加した。

 近年では稀といわれる激烈な争奪戦でキヤノンが勝利した。当初、3000億円程度と見られていた買収額は、どんどん釣り上がって2倍以上の6655億円となった。

 キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長は、「2020年に連結売上高5兆円以上に再挑戦する」との目標を掲げる。主力のカメラや複写機が伸び悩むなかで、監視カメラと商業印刷、そして医療用機器を次の成長の柱に据えた。つまり、東芝メディカルは社運を賭けた買収であり、絶対に落とせなかったのだ。

 しかし、外部の評価は冷ややかだ。格付け会社ムーディーズ・ジャパンは、キヤノンの格付けを「Aa1」から「Aa3」に2段階引き下げた。巨額の買収で有利子負債が膨らみ財務体質が悪化したことが格下げの理由だ。

■富士フイルムは再生医療の総合化を目指す

 東芝メディカルの買収では、富士フイルムがぎりぎりまでキヤノンと競り合った。これまで注力してきた医療関連事業を一気に伸ばすチャンスを捉えたからだ。

 富士フイルムは地団駄を踏んで悔しがった。東芝が独占交渉権をキヤノンに与えた理由を開示するよう、東芝に質問状を突きつけたほどだ。富士フイルムの古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)は、決算会見の席上で東芝メディカルの売却先がキヤノンに決まったことについて「残念だ」と述べ、悔しさを隠さなかった。逃がした魚は大きかったが古森氏の切り替えは早く、「(東芝メディカルの買収のために用意した資金は)医薬品と再生医療で充分に使い道がある」と前向きな発言もしている。

 富士フイルムは、ケガで失われた膝の半月板の治療などで期待される再生医療に乗り出す。現在手掛けているヒトの細胞とは別の細胞を活用し、先端医療の全域をカバーする体制を整える。15年3月、米再生医療ベンチャーのセルラー・ダイナミクス・インターナショナル(CDI)を370億円で買収し、iPS細胞(人工多能性幹細胞)分野にも乗り出した。CDIはiPS細胞を安定的に大量に生産する技術を持っており、iPS細胞を使って目や心臓、神経疾患を治療する薬の治験を19年までに始める計画だ。

■ニコン、リコーも医療分野に参入

 ニコンは15年2月、眼科向けカメラで世界最大手の英オプトスを480億円で買収。オプトスは目の瞳孔から光を入れて網膜の表面を撮影する眼底カメラで、世界市場の3割強のシェアを持つ。オプトスが持つカメラ技術や販路を生かし、ニコンは17年3月期に医療機器事業で1300億円の売り上げを目指している。

 出遅れていたリコーも参入してきた。横河電機から脳磁計事業を譲り受け、16年4月から事業を始めた。脳磁計とは、脳で発生した微弱な磁場を検出し、脳が正しく機能しているかどうかを見るもので、主にてんかんの治療に用いられる。リコーの技術力を生かし精度を高め、25年までに医療分野で500億円の売り上げを目標にする。ちなみに脳磁計の買収額は非公開だ。

 医療機器の分野は家電製品やスマホと違い、中国、韓国、台湾勢の参入が遅れている。製品の価格下落もデジタル家電に比べると緩やかで、日本勢に有利に働く。メス、注射器などの手のひらサイズのものから、MRI、重粒子がん治療装置など巨大なものまで、医療用機器は多岐にわたる。

 世界市場のガリバー的存在は米ジョンソン・エンド・ジョンソンだが、得意分野で世界に通用する製品を持っている日本企業は多い。オリンパスの消化器内視鏡、シスメックスの自動で血液中の赤血球と白血球の数を測定する自動血球計数装置、テルモのカテーテルなどがそうだ。

 世界市場で通用する製品を新たに生み出すために必要なのは、ひとえに開発力と創造力、オリジナリティである。

(文=編集部)
 

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