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日本が英EU離脱で緊急対応すべき4つの経済政策(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/16/hasan110/msg/420.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 6 月 30 日 08:26:35: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

日本が英EU離脱で緊急対応すべき4つの経済政策
http://diamond.jp/articles/-/93947
2016年6月30日 高橋洋一 [嘉悦大学教授] ダイヤモンド・オンライン


■前例のないEU離脱
 そのプロセスは不透明



 先週23日、イギリスの国民投票でイギリスはEU離脱を決めた。多くの人には予想外の結果であり、離脱へのプロセスは不透明になっている。まさしく、未知への領域であり、誰も確かなことを言えない状態だ。


 BBCを聞いていると、やたらとリスボン条約50条という用語が出てくる。役人時代の性で、こうした条文は自分で見なければ納得できないが、今はよい時代で、ネットで簡単に調べられる(http://www.lisbon-treaty.org/wcm/the-lisbon-treaty/treaty-on-European-union-and-comments/title-6-final-provisions/137-article-50.html)。

 大雑把にいえば、EU加盟国は、EUから離脱できるが、欧州理事会に通知しなければいけない。その後で、脱退する加盟国とEUは脱退のための協定に合意する。ただし、その合意のための期間は原則2年である。もっとも、欧州理事会が全会一致で延長を認めれば、さらに2年、延長できる。


 筆者は、ここ数日間、このイギリスのEU離脱問題でテレビなどに出演する機会があったが、この合意のための2年を知らずに、「今から」と誤解して解説した人もいて、びっくりした。


 実は、EUの前身であるECでは、デンマークのグリーンランド自治政府が1985年に脱退した例があるが、EUでは初めてのことなので前例はない。ということは、これからわからないことだらけなのだ。


 例えば、脱退に関する通知をいつまでに行うかも、交渉次第だ。キャメロン首相は次の首相にやってほしいというが、EU側では急ぐという意見もある。イギリスは焦って通知してもメリットはないし、ゆっくり通知して時間稼ぎをしたいだろう。


 一方、EUとしては、今後や他国の脱退予備国のこともあるためイギリスに厳しく当たりたいので、「速やかに」と言って時間稼ぎを防ぎたいだろう。いずれにしても交渉ということだ。


■先行き不透明感が経済に悪影響
 ボディーブローのように効いてくる


 ただし、こうした先行きの不透明感は、政治交渉につきものだが、ビジネスでは非常に困った事態だ。しかも、脱退交渉に関わる話が不透明ということは、その後の世界の展望を描きにくい。制度というのは、空気のようなもので、安定しているときには存在すら忘れてしまうが、不安定だととたんに困ってしまう。


 例えば、関税率がどうなるかわからないと、海外輸出の多い製造業では、長期の生産計画を立てにくい。ビジネスマンの感覚からいえば、どんな制度でもいいから、わかっているほうがましだ。政治の世界はいくらでも交渉しても、ビジネスの世界からみればなんでもいいから早く決めてくれとなる。


 筆者は、この不透明感が今回のEU離脱問題では、経済に悪影響があると思っている。とりわけイギリスの中心産業である金融業での不透明感は半端ではない。金融業の単一パスポート(EU内共通免許)がなくなると、シティでの金融ビジネスは大きな魅力を失い、ひょっとするとドイツのフランクフルトに拠点を移す金融機関が出てくるだろう。この点は、リーマンショックの時に、金融機関経営が実体経済に悪影響を与えた時に似ているだろう。


 ただし、リーマンショックのように一気に問題が顕在化するというものではなく、不透明感が長期にわたって続き、ボディブローのように効いてくると思う。


 また、リーマンショックの時には、中国が財政支出をして世界経済の落ち込みを和らげてくれた。しかし、今回は、中国経済自体がリスクである。この点は、2015年8月27日付けの本コラム『「中国ショック」はリーマンショック級になる恐れあり』に詳しく書いたので、そちらを参照してほしい。


 さらに、今後の不透明な脱退交渉の過程の中で、EUの緊縮財政に反対する国、例えばスペイン、イタリア、ギリシャなどのさらなるEU離脱を誘発しかねない。ただですら、ポンドや株が売られ円高が進みかねない中で、そうした金融混乱が繰り返して起こるかもしれない。


■連鎖反応して悪化する世界経済
 悪影響はリーマン級とみて備えるべき


 イギリス経済とアメリカ経済は、シンクロ度が高い。シティで起こった話はアメリカのウォール街に波及して、米英の実体経済に悪影響することもありえる。そこで、過去のイギリス、アメリカ、日本、世界経済の成長率を見ると、かなりシンクロしている。



 イギリスEU離脱は、連鎖反応を起こし、アメリカ経済、日本経済、そして、世界経済を悪くする可能性がある。その「二の舞」を避けるためには、影響度はリーマンショック級とみて、備えておくほうがいい。世界経済は密接につながっている以上、日本も影響を被るというからだ。


 これはまさに危機管理である。危機管理では、甘い前提や希望的観測を排除する必要がある。


 イギリスのEU離脱問題はリーマンショック級の経済危機になる可能性がある以上、2017年度からの消費増税の見送りは日本にとっては正解だった。その判断の前提で、安倍首相はひょっとしたらリーマンショック級のことが世界に起こりうるリスクがあると発言し、(サミット文書にもイギリスのEU離脱が世界経済のリスクと書かれているのだが)その当時はさんざん非難された。ただ、結果として慧眼判断であった。もし消費増税を決めた後で、イギリスがEU離脱になったら目も当てられないことになっていたはずだ。


■筆書の考える危機対応策
 まず消費税は凍結にすべき


 というものの、これだけでは十分でない。筆者の考える危機対応策は次の通りである。


(1)消費増税は延期ではなく、凍結にすべき
(2)日銀の政策決定会合を臨時で開催して、量的緩和30兆円増
(3)参院選後の補正予算で、財政支出 60兆円(20兆円×3年)。財源は、埋蔵金、財投債、国債。支出対象はインフラ整備、減税+給付金
(4)事実上無制限の為替介入。そのために、今の介入枠を参院選後の補正予算で引き上げ


 (1)と(2)、(1)と(3)はセット。前者がヘリコプターマネー、後者は非不胎化介入となって効果がある。


 これらの手法は、基本的には3月24日付け本コラム「増税スキップ・景気対策・追加緩和で日本経済は盤石になる」で書いた話と同じである。


 こんな額は必要ないという人が必ずいるが、これらはほぼすべて予算枠である。必要なければ予算不用にすればいいだけだ。つまり弾を込めて引き金に手をかけるだけで、実際に撃つのは別であり、あくまで準備するだけだ。


 また、為替介入は米国の許しがないとできないという人もいるが、これは日本の主権の問題である。もし協議しても、日本だけの猛烈な円高を防ぐというのなら理解も得られるだろう。日本単独では効果が薄いのは事実であるが、日銀の追加量的緩和と同時であれば、いわゆる非不胎化介入なのでかなり効果がある。


 当然ながら、「財政再建が心配」という人もいるだろう。しかし、それは火事場での放水による消火活動によって「家具が水に濡れてはまずい」と同じ意見だ。とにかく、経済を良くすることが先決である。


 どうしても財政再建が気になるというのであれば、発行分が基礎的財政収支の赤字にカウントされない財投債を活用すればいい。財投債については、2月25日付けの本コラム「マイナス金利は心配無用 国民も政府もメリットのほうが大きい」を参照していただきたい。


■EUは経済的な最適規模を超えている
 将来的にはイギリス経済は成長する!?


 イギリスがEUから離脱する数年間は摩擦的なコストがかかり、そのために不況になる可能性があると思っている。ただし、その摩擦的な期間を過ぎれば、ひょっとしたらイギリスは立派に経済成長するかもしれない。


 というのも、EUに加盟していないスイスやノルウェーの経済は必ずしも悪いというわけでない。加えて、筆者は統一の中で多様性を認めるEUは、その政治理念は素晴らしいと思うが、経済的な最適規模を超えていると感じている。多様な国家を画一的な経済政策でコントロールすることはできないからだ。この点について、25ヵ国で構成されているユーロ圏でも最適規模を超えていると論じた2011年10月20日付けの本コラム「ギリシャはデフォルト(債務不履行)常習国 歴史と最適通貨圏理論で解く問題の本質」をご覧いただきたい。


 そもそもイギリスは、ユーロ圏ではなく独自通貨を持ち、国境検査なしで国境を越えることを許可するシェンゲン協定にも加入していない、「いいとこ取りの国」であった。いわばEU内では恵まれた「特権国家」であったが、それでも移民問題などでEU離脱となったのが現実だ。


 イギリスの遠い将来はいいかもしれないが、当面は経済混乱が続くだろう。それに対し、日本は、リーマンショックの時に「蜂に刺されたようなもの」と言って、無為無策の状態であった。今回はその愚を繰り返してはならず、備えなければいけない。


 

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