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「風呂に入らない若者」が増え、個人消費減少?
上野泰也のエコノミック・ソナー
支出を絞り込む生活パターンが定着
2016年6月28日(火)
上野 泰也
若者の「お風呂」離れが進み、20代の4割はほとんど湯船につからない。その背景には、風呂につかっている「時間がない」ことのほか、「風呂に入るコストがもったいない」という節約心理があるようだ。そんな若者に、高額の消費を期待するのはもはや難しいのかもしれない。
「もったいない」「時間がない」といった理由から、湯船につかる若者が減っている
神戸市水道局、水の適正使用を目的に女子大とコラボ
若手社員有志が参加している早朝の新聞チェックで、数カ月前に興味深い記事を見つけた。
「若者よ お風呂に入ろう」
(2016年3月1日付 東京新聞朝刊から)
・『もったいない』『時間がない』
・20代4割『ほとんど湯船つからない』
・神戸の学生ら呼び掛け
湯船にお湯を張る機会が少ない若者に入浴の楽しさを伝えようと、神戸市水道局と地元の給湯器メーカー、神戸女子大家政学部の学生が協力。
「おふろ部」と名付けた情報サイトをネット上に開設して、入浴剤や半身浴など女子大生向けの情報を発信しているという。
である。
以下、この記事で最も重要な部分を引用したい。
「市水道局によると、節水機器の普及や人口減で水の使用量は減りつつある。水が水道管内に滞留すると水質の維持が難しくなるが、水道管の敷設は長期的な計画に基づいており、急には細くできない。有効利用を呼び掛けることになった」
「対象として浮かんだのが20代の若者だ。市水道局が昨年9〜10月に実施した調査では『だいたい毎日湯船にお湯を張って入る』と答えた割合は、30代の66.4%が最も多かった。20代は25%で、『ほとんど入らない』が43.8%。昨年11月に同学部で開催したワークショップでは『一人暮らしでもったいない』『時間がない』などの意見が出た」
この記事を読んだ筆者がその場にいた若手社員に聞いてみたところ、ほとんどがシャワー派だった。神戸だけでなく、東京でも状況は同じのようである。
ヨーロッパ大陸のように空気が乾燥していれば、シャワーで済ませるのが合理的だと言えるかもしれない。また、気温と湿度の高さで消耗しがちな真夏には、シャワー派が日本でも多くなるように思われる。
「もったいない」「時間がない」
だが、20代の若者が湯船につからない理由は上記の記事の通り、以下の2点のようである。
@ 「一人暮らしでもったいない」という経済面の合理的な思考
A おそらく、SNSでのやり取りやアルバイトなどでとにかく忙しいため、「時間がない」という時間的な制約
これらのうち@の関連では、さまざまな維持管理や付随する費用を含めて考えると都市部では自分で車を保有するのは「コスパ(コストパフォーマンス)が悪い」という彼らなりの経済合理的な思考ゆえに、若者の「車離れ」が顕著になって久しいことが想起される。筆者は講演などの場で最近、「お風呂にさえあまり入らない若者に車を買わせようとしても、なかなかうまくいかないだろう」と説明することがある。
上記@とAは、簡単に変わる(ないし変えられる)ことではない。時間が経ち、世代が入れ替わるに連れて、日本で「湯船派」は徐々に減っていく可能性が高いと、筆者はみている。
若者の入浴時間が近年になって短くなっていることを実際に示す統計データがないだろうかと思って探してみたのだが、そうしたものを見つけることはできず、逆に、一見すると長くなっているのではないかと思わせるデータが1つあった。
NHK放送文化研究所が5年ごとに実施している「国民生活時間調査」がそれである。日本人の生活時間がどのようなことに、どのくらい振り分けられているかを示す、時系列データが含まれている。
今年2月に公表された2015年の最新データ(調査実施期間:10月13〜26日)によると、以下のような特徴があった。
@ 日本人の睡眠時間減少が止まって「早起き」が一層進み、「早寝」が増加
A 高年齢層を含めてテレビの視聴時間が減少
B ビデオやインターネットの利用に広がり
「身のまわりの用事」に費やす時間は増加傾向
調査項目の中に、「身のまわりの用事」がある。
「洗顔、トイレ、入浴、着替え、化粧、散髪」が具体例として挙げられている分類(時間の使い方)である。
この「身のまわりの用事」に平日に費やされた時間を、男女別・世代別に見ると、20代の男性は1時間04分で、5年前の調査から6分増加。20代の女性は1時間29分で、5年前から5分増加していた。
■図1:「身のまわりの用事」に費やされている平均時間(平日)
(出所)NHK放送文化研究所
同じ世代の動向を探るため、10年前(2005年)の調査における10代と比較しても、男性は9分増加、女性に至っては19分も増加している。土曜や日曜のデータでも、傾向はおおむね同じとなっている。
「お風呂派」が減って「シャワー派」が増えているとすれば、普通に考えれば入浴時間は短くなるはずである。しかし、「国民生活時間調査」のデータとは整合しない。この謎に関しては、次のようないくつかの解釈が可能だろう。
(A) 全国ベースで見ると、実際には「シャワー派」は増えていない。
(B) 「身のまわりの用事」のうち、「入浴」の時間は減っているものの、それ以外(たとえば「化粧」や「洗顔」)に費やされる時間が増えている。
(C) 「入浴」中に行われる活動が現在は多岐にわたっているため、結果として「身のまわりの用事」の時間が長くなっている。たとえば、「シャワー派」が増えていても、「お風呂派」が防水のゲーム機やテレビなどで長い時間楽しむ、お風呂の中でストレッチをするなどの活動をしているケースが考えられる。
筆者は上記のうち(B)や(C)が影響しているとみているのだが、現時点では、正解がどれなのかはわからない。より細分化した生活時間の調査結果が待たれる。
麻生財務相が語る、個人消費を伸ばすための条件とは
個人消費が低迷を続けていることに関連して、麻生太郎財務相は5月31日の閣議後記者会見で、「基本的に個人消費が伸びるためにはいくつか条件がある」と述べた上で、その条件2つを次のように説明した(時事通信の会見詳報から引用)。
■【まずデフレを止める】
「間違いなく、今より明日の方が安いとなれば買いませんよ。買い物に行って100円だった大根が次の週行ったら97円になってた。次の週は95円になってた、という話をデフレというが、そういった物価が下落状況になるときには消費は伸びない」
■【次に勤労所得層の可処分所得を増やす】
「給与が増えるということは企業が利益を出し、かつ企業の中の生産性が上がらない限りは利益が出ませんから」「そういった意味では企業が生産性を上げるような設備投資をやって、結果としてこの20年近く止まってる設備投資の多くを、この際金利の安い今、新しく買い替えていく」
個人消費に景気をけん引させるのは、今後も困難だろう
その上で、会見の最後に麻生財務相は、「消費者の心理がどのように影響していくか」が一番見えないとした。可処分所得が増えても、消費性向(可処分所得のうち消費に回される金額の割合)が低下すれば、消費は減少してしまう。
だが、麻生財務相は、生産年齢人口が毎年減少していることが消費に及ぼす影響については、記者からの質問に回答しなかった。
さらに、いわゆる「長生きリスク」にさらされている高齢者のみならず、お風呂の関連で述べた2つの理由や老後への不安などから、若者も支出額を絞り込む生活パターンを変えないとすれば、個人消費が景気をけん引する絵図を描くのは、構造的な面から今後もきわめて困難だと言わざるを得ない。
このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/062400050/
「非正規労働者」と括るのは、もうやめよう
トレンド・ボックス
神津里季生「連合」会長 × 山本一郎 特別対談(3)
2016年6月28日(火)
崎谷 実穂
6月某日、東京・御茶ノ水の連合(日本労働組合総連合会)本部。神津里季生会長を山本一郎氏が訪ねた。労働者の関心が高まっている「社会保障」の諸問題について、連合の考え方や取り組みを聞くためだ。特別対談その3をお届けする。
(その1はこちら)
(その2はこちら)
山本一郎(以下、山本):「連合」では「働くことを軸とする安心社会」を目指して政策提言などをされています。現在、新卒で入社したら定年まで一つの会社で働く終身雇用制が崩れ、雇用の流動化が進んでいますよね。そんななか、非正規労働者の問題は現代社会の中で存在感を増しているのではないでしょうか。
神津里季生(以下、神津):そうですね。現在、雇用労働者の4割は非正規労働者で、さらにそのかなりの部分が年収200万円以下の、いわゆる「ワーキングプア」となっています。非正規労働者の多くは、社会保険や健康保険などのセーフティネットからこぼれ落ちているのも問題です。連合ではこの問題に対応するため、「非正規労働センター」を立ち上げました。
神津 里季生(こうづ・ りきお)
1956年、東京生まれ。1979年、東京大学卒業後、新日本製鐵に入社。新日本製鐵労働組合連合会会長、日本基幹産業労働組合連合会委員長などを歴任。2013年から連合事務局長を経て、2015年、第7代連合会長に就任。(写真:菊池くらげ、以下同)
山本:「労働組合」というと正社員の労働条件を改善するためのもの、という印象がありました。でも、連合は労働者全体の代表として、非正規労働者の労働条件の改善などにも積極的に取り組んでいるんですよね。このあたり、時代に合わせて仕組みを変えたり、うまくカバーできるものなのでしょうか。
神津:はい。しかし「非正規労働センター」をつくりつつも、私自身としては、この「非正規」という言い方自体を変えていくべきではないかと思っているんですよ。「非正規」というのはつまり、「正規に非ず」ということですよね。どんな理由であれ、そこで働いている方々を「正規ではない」と呼ぶのは失礼ではないかと思うんです。また、「非正規」と一口に言っても、そのなかにはさまざまなパターンがあります。
それぞれに対策を講じていくことが必要
山本:臨時社員、派遣社員、契約社員、パートタイマー……あと、嘱託社員などもですね。本当にたくさんの雇用形態があります。また、請負の一部には、実際には雇用のような形態であるにもかかわらず、きちんとした保護のない状態になっている場合さえもあります。「労働者」といっても、支払い方に一騎当千な報酬を得る類のプログラマーのような知識労働者もいますし、最低賃金の引き上げを心待ちにしているような労働集約的なサービス業に従事しておられる方もいる。一緒くたに「働くこと」を考えて労働組合がカバーしようとしても、なかなかむつかしいのではないでしょうか。
神津:それらを一括りで呼ぶことには無理があるのではないかと。雇用形態によって問題も違ってきますし、それぞれに対策を講じていくことが必要です。
山本:まったく同意見です。これまでも社会変化によって労働環境が変わってきましたが、連合では今後どんな社会が到来するとお考えですか?
山本一郎(やまもと・いちろう)
1973年、東京生まれ、1996年、慶應義塾大学法学部政治学科卒。ベンチャービジネスの設立や技術系企業の財務・資金調達など技術動向と金融市場に精通。東京大学と慶應義塾大学で設立された「政策シンクネット」では高齢社会対策プロジェクト「首都圏2030」の研究マネジメントも行う。
神津:人口が減少していくのは、しばらくは止められないので、さらに少子高齢化が進んだ社会になることは確実でしょう。また、今後はAIなどのテクノロジーが発展していくはずです。第4次産業革命とも呼ばれています。ロボットの普及も間違いなく人間の労働に大きな影響を与えるでしょう。そうした社会変化をふまえ、2035年を一つのポイントとして政策を整理していこうとしておりまして、その議論を連合の中で始めたところです。
山本:約20年先の未来を見据えて、働き方の形も、求められる能力も変わっていくのは間違いないですね。
神津:一方で、そこまで悠長なことも言っていられない現状もあり、直近の目標もいくつか掲げています。そのひとつが、2020年までに組合員数を1000万に増やす、「1000万連合」の実現です。ただ、やたらに組織拡大をするというだけの意味ではありません。この目標の意義を問いなおして、社会にどうやって広くオープンな形でつながっていくかを考えています。
山本:どこかの新聞が1,000万部とか頑張ってましたが、風呂敷を広げすぎると着地点がむつかしくなりませんか(笑)
問題解決のノウハウを中小・ベンチャーに
山本:「働くこと」を価値とした組織化の話でいきますと、昔から連合は、"社員"という雇用者属性の組織化は得意だったのではないでしょうか。ひとつの会社に長く勤め、賃金カーブの上昇を期待しながら生涯設計を立てて行く人が多かった時代は、組織化がしやすかった。しかし、述べたとおりこれからはいろんな働き方があり、また会社をどんどん移っていく時代に差し掛かります。そうなりますと、もう少し、さまざまな属性の労働者がゆるやかにつながるネットワークをつくる方向で広げていく形にならざるを得ないのではないかと思うのです。縦割りの組織ではなく、ネットワーク型の仕組みにすることで、時間をかけて培ってきた連合の持っている問題解決のノウハウが、中小・ベンチャー企業の人たちにも行き渡る。
神津:おっしゃるとおりです。今後もっと、中小企業の経営者団体とコミュニケーションを取っていこうということで、3月に、全国中小企業団体中央会(全国中央会)の幹部と意見交換をおこないました。中小企業の賃上げなども含めて、連合と全国中央会で連携して取り組んでいこうという話になったんです。
山本:日本だと、どうしても大企業よりも中小企業のほうが、待遇が悪いというイメージがあります。ブラック企業に代表される労働問題や、ハローワークなどでの採用時点でのトラブルもかなりの割合を中小企業が占めている割に、企業が小さい分、行政の目も行き届きません。
神津:中小企業であることは、本来決してネガティブなことではないんですよね。連合で一昨年、ドイツに中小企業についての視察団を出しました。ドイツでは、中小企業の社会的位置づけが低いなんて発想はまったくなかった。
山本:ドイツでは職人育成の制度が整っていて、むしろ小さな会社で働いている人は専門技術を持って、腕を頼りに独立した人だと尊敬されている。そういう企業が、シーメンスなどの巨大な複合企業と対等に渡り合い、仕事をしています。一方、日本の町工場や独自の技術を持っている大学の研究室が大企業と連携した時に、対等に意見を言えているかというと意外とそうではないんですよね。
神津:日本には「謙譲の美徳」が根強くあって、いいことをしていてもそれを声高に主張することができないんですよね。これは生産性の問題にも関わっていると、私は考えています。日本では中小企業、とりわけサービス産業の生産性が低いと言われています。これは、せっかく質の高いサービスを生み出しているのに、遠慮して正当な対価をとれていないからだと思うんです。
山本:そうなると、会社の経営としてもあまり儲からない。働く側は、長時間労働なのに賃金も低く抑えられて、消費も促されない。雇用も不安定だと貯蓄にお金が回り、経済全体としては下降していくという悪循環が生まれかねません。生活を楽しむ、人生を自分でコーディネートするという方向に、発想がいかないんです。少子高齢化で労働人口が減っていくなか、経済価値を上げていくのには、人の価値を上げるしかないと思います。
神津:そうですね。
次の世代にどういう社会を渡していくか
山本:何をもって人生を価値あるものにするか。その価値を生む行為が労働だと私は思っています。では、価値を高めていくにはどういう政策を実行するべきなのか。人が減っていくいまこそ、人の価値を上げていくような教育やセーフティネット、労働政策をある程度内容を見直し、充実させていく必要があると思います。もっと、生き方に対して社会が政策面でコミットするような政策パッケージが必要だと思うんです。
神津:たしかに人の価値を高める政策は、今すぐにでも始めないとこれから先の社会を支えられなくなるでしょうね。特に教育問題は深刻です。
山本:これからの社会で、世界の優秀な人々と渡り合っていける人をどう育てるか、今ここで踏ん張って考えないと大変なことになります。大学の機能をグローバルとローカルに分けたG型L型大学の議論も叩き台としては面白かったですし、大学改革もまだ途上です。会長の仰るような第四次産業革命に資する、競争力のある人材を育成することが、人の価値を高める上では急務だと思うのですが。
神津:一方で、今すでに苦しんでいる子どもを救うことも早急にやっていかなければなりません。貧しい家庭環境によって学ぶ意欲や自信をなくし、将来への希望を持てなくなって、さらに貧困に陥っていくという貧困の連鎖。これは、連合でも由々しき問題だと捉えています。
山本:社会の問題のしわ寄せが、弱い存在である子どもに向かっているのは大問題です。経済的にも今は国の借金を、今の若い人よりさらに下の世代に「ツケ」ているような状態ですからね。
神津:今の社会は子どものクレジットカードで買物をしているようなものだというたとえを聞きました。まさにそうですよね。これは本当に悲しい話だと思うんです。私は今年60歳になりましたが、次の世代にこんな社会を引き継ぐと考えると、罪悪感すら覚えますよ。
山本:次の世代にどういう社会を渡していくかというのは、大事な視点ですよね。政策も、そこから優先順位を決めるべきなんです。
神津:そうですね。連合でもその視点は持ち続け、人々が希望を持って働ける社会をつくっていきたいと思います。
(了)
このコラムについて
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