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アベノミクスで株価は6割上昇したが経済は依然停滞している
http://diamond.jp/articles/-/93549
2016年6月23日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問] ダイヤモンド・オンライン
アベノミクスで果たして日本経済は良くなったのか Photo:首相官邸HP
参議院選挙における大きな争点は、アベノミクスの評価だ。この問題については、本連載でもしばしば論じてきた。以下では、それらを総括する意味で、さまざまな経済指標について、安倍晋三内閣発足直後と現在とを比較してみよう。そして、それが意味するものについて論じることとする。
要点は、実体的な経済活動が1.5%程度しか成長しなかったのに、投機で株価は6割程度上昇し、他方で実質賃金や実質消費がマイナス成長になったことだ。
■ほとんど伸びていない実質GDP
消費も3年間で1.2%減少
経済全体の動きを最も的確に表しているのは、実質GDPである。ところが、安倍内閣発足以降の実質GDPは、ほとんど伸びていない。
図表1に示すように、実質GDPは、この3年間でわずか1.4%増加したにすぎない。安倍内閣のさまざまな経済政策においては、実質1.5%の経済成長が前提とされているのだが、実際には、3年間かかっても1.5%成長を実現できていないのだ。
しかも、過去と比べても、成長率は低下している。リーマンショック後の年間成長率は、2010年は4.7%、12年は1.7%と、かなり高かった。
一般には、それまで停滞していた経済活動が、アベノミクスによって活発になったように理解されている。そして、今回の参議院選において、自由民主党は、これがアベノミクスの大きな成果であるとしている。
しかし、それは、次項で述べる株価の動向を見ての印象にすぎず、実質GDPに代表される実体経済は活性化していないのだ。
とくに注目されるのは、実質消費が減少していることだ。図表1に見るように、実質家計最終消費支出は、この3年間で1.2%減少している。これについては、後で述べる。
◆図表1:経済指標の変化(2013年初めと16年初めの比較)
■円安効果が生んだ
企業利益と株価の上昇
実体経済が停滞しているにもかかわらず、株価の上昇は極めて著しい。日経平均株価は、2013年1月から16年1月までの間に、57.3%上昇した。
この背景には、企業利益の増加がある。法人企業統計における全産業、全規模の営業利益は、図表1に示すように、13年1〜3月期から16年1〜3月期までの間に26.3%増えた。
ただし、これについてはいくつかの注意が必要である。
第1に、利益増は、円安によってもたらされたものにすぎず、企業活動の効率化や新商品の開発などによってもたらされたものではない。
ドル建て輸出額が変わらなくても、円安によって円建ての売上高は増加する。他方で円建ての原材料価格や賃金は不変なので、売り上げ増分だけ、利益が増加したのである。
この期間の売上高の増加率は、図表1に示すように、1.6%にすぎなかった。しかし、売上高営業利益率が低いため、利益は大幅な増加となったのである。
なお、日経平均株価の上昇率57.3%は、営業利益の増加率の約2倍だ。だから、株価もかなりのバブルを含んでいることが分かる。
このように、実体経済の動きとは無関係に、投機的なマネーゲームが進行したのだ。
実体的な生産活動が停滞していることは、売上高の増加率が低いことに見られる。
また、鉱工業生産指数の伸び率も、1.6%にすぎない。これは、実質GDPの増加率や企業売上高の増加率と同じオーダーの数字だ。
ところで、以上で見た状況に関しては、最近時点で大きな変化が生じている。それは、為替レートの変化だ。
上で述べたように、企業利益の増大も株価の上昇も、為替レートが円安になったことによって生じたものである。しかし、この状況が大きく変わっている。これは、本連載の第58回「本格的な円高再来の予兆、日本企業は備えを怠るなhttp://diamond.jp/articles/-/89581」で述べた通りだ。
これによって、企業の利益は今後減少し、株価は下落することが予想される。
■賃金と消費はマイナス成長
労働条件も悪化傾向
実体的な経済活動が拡大していないので、賃金は上昇していない。
図表1に見るように、実質賃金(季節調整済指数、金給与総額、5人以上)は、2013年1〜3月期から16年1〜3月期までの間に、3.9%下落した。
これは、円安によって消費者物価が上昇したためである。これが、上で見た実質消費減少の基本的な原因だ。
これについては、本連載の第57回「消費停滞は消費税のせいではない 増税再延期では解決しないhttp://diamond.jp/articles/-/89206」で論じた。
日経平均株価が6割近く上昇して資産保有者の資産が著しく増加する半面で、実質賃金が下落しているのであるから、所得分配に大きな変化があったことが分かる。
ただしこの状況は、原油価格が下落し、また為替レートが円高になったために、変わりつつある。つまり、世界経済が安倍政権が望んだのとは逆の方向に動くことによって、実質賃金や実質消費が改善しつつあるのだ。
表には示していないが、16年第1四半期の実質賃金指数は、15年の同期より0.6%だけ上昇している。
日本銀行は、人々のインフレ期待が上昇すると消費が増加するとしているが、実際にはちょうど逆のことが生じているわけだ。すなわち、円安で消費者物価が上昇して実質賃金が下落し、実質消費が減少した。そして、原油安と円高で消費者物価上昇率が下落し、実質賃金が上昇しているのである。
有効求人倍率は上昇している。これは雇用情勢の改善を示すものであり、アベノミクスの成果の1つであると自民党は主張している。
しかし、これは人手不足の反映であり、また有効求人倍率が上昇しているのは賃金の低い部分であることに注意が必要だ。つまり、これは労働条件の改善を示すものではなく、むしろ悪化を示すものである。これについては、本連載の第65回「有効求人倍率が高くても、決して歓迎できない理由http://diamond.jp/articles/-/92727」で論じた。
■税収は増加したが
一時的な現象にすぎない!?
税収は確かに増えている。これは企業の利益が増大したことに伴って法人税収が増加したことによる。
実際、図表1に見るように、一般会計税収は、この3年間で22.6%増加した。これは、企業利益の増加率とほぼ同じである。この結果、財政収支も改善している。
ただし、これについては、つぎの諸点に注意が必要だ。
第1に、法人税の増加は企業利益の増大によるものであり、これは円安によるものである。ところが、上述のように為替レートは円高になりつつあり、これによって企業利益が減少することが予想される。そのため、法人税の税収も減少するであろう。
第2は、異次元金融緩和策によって金利が低く抑えられ、その結果、国債の利払い費が抑えられていることだ。そのために財政収支が悪化しない面も忘れてはならない。
日銀が異常ともいえる量の国債を銀行から購入してきた結果、日銀保有国債は著しく増大している。これについては、本連載の第66回「『日本国債保有リスク』が三菱UFJ銀の資格返上で顕在化したhttp://diamond.jp/articles/-/93118」で論じた。
他方で、国債残高そのものは増えている。
このため、将来金利が高騰した場合に、国債の利払い費が急増し、財政支出が急増し、財政が重大な危機に陥る危険がある。
第3に、財政支出、とくに社会保障費は増大している。これは、人口の高齢化によって社会保障の給付が増加しつつあり、その半面で社会保障制度に大きな改革が行なわれていないからである。
上に述べたように税収の増加は一時的な現象であるが、社会保障支出の増大は長期的な現象である。現在は税収の増加によってこの問題が覆い隠されてしまっているわけであるが、税収増加が止まったときに、この問題は財政を大きく圧迫することになる。
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