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燃費試験の不正行為について会見する三菱自動車工業・相川哲郎社長
クルマ燃費偽装の「真犯人」…そもそもカタログ数値はすべて間違っているし、正しい
http://biz-journal.jp/2016/06/post_15602.html
2016.06.23 文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表 Business Journal
■燃費の測定に偽装が忍び込む
4月以降、三菱自動車工業やスズキの燃費データ不正問題が世間を揺るがしているが、カタログ燃費の測定は、台上で行う(シャシーダイナモ試験)。タイヤで駆動される、地下に設置された大きなローラーの上に、しっかりワイヤーで固定した試験車を乗せ、エンジン(モーター)を始動し決められた速度でタイヤを回転させローラーを回して測る。このときにローラーに抵抗をかけ、回りにくくする。この抵抗が空気抵抗であり、ころがり抵抗であり、車重であり、タイヤ等の回転慣性力である。
風洞で測定した空気抵抗や、実際に走らせて測ったころがり抵抗の値をシャシーダイナモに入力し、ローラーに回転抵抗を加えて実際の走行状態を再現し、燃費を測定する。入力する測定値を少しいじれば、たちまちローラーの抵抗は変わり、燃費が変わる。ここに燃費データ偽装の悪意が忍び込む余地がある。
■自動車とは加減速する乗り物
自動車は、一定の速度で走ることなどめったにない。常に加速し、減速し、ときに停止しアイドリングする。それは道路、信号、渋滞の強さ、ドライバーによって千変万化する。走り方と環境で燃費は違うが、それでは燃費の数値をカタログに載せられない。ということで、一般的な走行パターンを想定(JC08)し、そのパターン通りに台上で自動車を加速・減速し、一定速度で走って試験し、燃費として公表しようということになっている。
しかし、実際の走行状態は百万通りある。上記の走行パターンはたった1つだから、実燃費とカタログ燃費が違って当たり前である。違って当たり前と知れば、怒っても仕方ないと思えるのだが、怒りの真相はそういうことではない。私たちは大量生産品のシャツを買うとき、あるいは統一テストに回答するときのようにいつでも、どこでも、みんなと同じであることを求められる。「実燃費とカタログ燃費が乖離するのは、あなたがJC08のように運転しないからだ」といわれているような気がするので、ユーザは腹が立つのである。
■燃費偽装のやり方
さて、空気抵抗やころがり抵抗は、実は気圧、湿度、気温等で変わってしまう。たとえば、高地でボールがよく飛ぶのは、空気抵抗が少ないからである。高地では気圧が低く、空気の密度が小さいからだ。したがって、気圧が低ければ自動車の空気抵抗は小さくなる。低気圧のときは燃費が良い。ただし、ほんの少しだから判別不能だ。
タイヤは空気圧が高いと、ころがり抵抗が小さくなるが、限度がある。気温が高ければタイヤの空気は圧力が高くなり、ころがり抵抗が低減する。これもわずかだ。
そのほか、エンジンや変速機に使われる潤滑油(オイル)も気温が高いと柔らかくなり、ころがり抵抗が小さくなる。だからといって、暑い日には燃費が良くなるとは限らない。暑いと空気密度が小さくなる。湿度が高い分、空気中の酸素が少なくなりエンジンの効率が落ちるので、パワーが落ち、よけいにアクセルを踏む。燃費は悪化する。エンジンは、高気圧で寒い冬の日が調子が良い。
たとえばテストコースでころがり抵抗を測定したときの気温、気圧、湿度などをころがり抵抗が悪化する値に書き換えると、どうだろうか。これらをころがり抵抗に適した標準状態に戻すと、抵抗は少なくなり、そのデータを入力したローラーの回転抵抗は少なくなって滑らかに回る。軽くなったローラーを回すには少ない力で済み、エンジンはあまり力を出さなくて良い。よって、ガソリンをあまり消費せず、燃費の測定データは良くなる。
こんなデータ偽装はまさかやっていないと思うだが、スズキはテストコースで実走行をせず、これまでのデータを整理整頓して積み上げ、それを使っていたという。ただし、燃費は実際の走行データと大きくは違わないという。であれば、最初から実際に走行させて燃費を測れば良かったのではないだろうか。
■真犯人は、これだ
では、本当の燃費はどうすれば測定できるのだろうか。それは不可能だ。「本当」などないからだ。あるいは、すべての燃費データが本当なのである。
私たちはデータが示されないと、不安で仕方がない。コスト/パフォーマンスや利益率、売上、偏差値などが1%でも、1mmでも、1gでも違うと血相を変える。また、本当と嘘がはっきりしないと落ち着かない。しかし、歴史とは時の権力者の歴史であるとよくいわれるように、史実といってもなかには時の覇者に都合良く書かれたものがある。真実を探すのは容易ではない。だからといって嘘が大手を振って通る世の中であっては困る。
それにしても、高価な測定器を使って優秀なエンジニアが何日もかかって測定したカタログ燃費は、この世の中に実際には存在しない一種の幻想というのも、なんだか寂しい。燃費は私たちの実生活のなかで、しっかりとらえることが大切ではないだろうか。カタログ燃費ならぬ「マイ燃費」である。これほど真実に近い燃費はなく、しかも実用的である。
私たちがカタログ燃費という「数字」に振り回されると、メーカーも「数字」を偽装して、私たちを振り回す。こんな習慣はやめるべきだ。真犯人は、数字なるものを「真実」だと錯覚してしまう文化ではないだろうか。
(文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表)
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