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シャープ液晶のカギを握ってきた人物の競合他社への移籍は、業界に大きな波紋を広げそうだ
シャープ元首脳がJDI役員に、鴻海の再建計画に暗雲
http://diamond.jp/articles/-/93112
2016年6月16日 週刊ダイヤモンド編集部
シャープの元首脳が、液晶事業で競合するジャパンディスプレイ(JDI)の役員に就任する見通しであることが、16日分かった。複数の関係者が明らかにした。JDIは早ければ月内に機関決定し、7月に着任する予定だ。
JDIの役員に就くのは、シャープ元専務の方志教和氏(63)。方志氏は三重県の亀山工場の立ち上げをはじめ、半導体や液晶事業に長年携わり、米アップルやフォード、中国・北京小米科技術(シャオミ)といったメーカーとの取引拡大に尽力してきた人物だ。
液晶の開発技術だけでなく、パネル量産などの生産技術にも明るく、シャオミをはじめ急拡大する中国メーカーと強力なパイプを持つとされる。
昨春、方志氏が高橋興三社長らとの人事抗争の中で、代表権を持つ専務から外れ顧問に就任した際には、一部のスマホメーカーが強烈に反発。その後の相次ぐ「失注につながった」(関係者)という。
業界に影響力を持つ方志氏は今年5月末、40年近く勤めたシャープを退職しており、その去就に注目が集まっていた。
シャープとの経営統合の実現が難しくなったJDIは、液晶に精通し、かつ事業の浮沈を知る人物を招き入れることで、生産体制の一段の効率化や技術開発の推進、中国メーカーとの取引拡大といった、競争力強化につなげる狙いがあるとみられる。
シャープをめぐっては、依然として優秀な人材の流出に歯止めが利かず、液晶事業においても、中核の技術者が辞めるケースが後を絶たない。
液晶事業のトップとして、ときに在庫処理による赤字に苦しみながらも、「親分肌で人望が厚かった」(シャープOB)方志氏がJDIに移ることで、薫陶を受けてきた液晶部隊が、今後大量移籍する可能性も出てきた。
■鴻海・シャープ連合は痛手
シャープは、台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)から今後資本支援を受け、次世代ディスプレイの有機ELパネルの開発に、2000億円を投資することを決めている。
有機ELパネルを制御する回路基板には現在、低温ポリシリコン(LTPS)などの技術が使われているが、シャープが量産で先行しているIGZOなど酸化物半導体の技術も、普及の大きなカギを握っているとされる。
酸化物半導体に精通したシャープの技術者が、今後もし方志氏の後を追うように大量に離反することになれば、ホンハイ・シャープ連合による有機ELの開発スケジュールにも、大きな影を落とすことになる。
中核人材の流出という、大きな不安を抱えながらの船出を迫られたホンハイ・シャープ連合。一方で、悲観論が強かったJDIは事業拡大に向けて、大きな推進力を得ることになりそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)
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