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年金を「人質」にして増税を呼びかける財務省の作戦にダマされるな!〜日本の社会保障は、それほど脆弱ではない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48895
2016年06月13日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
■財務省のムチャクチャなロジック
消費増税の延期を巡り、「社会保障への影響が懸念される」といった報道が多く見られる。ここは是非、参院選で論争してもらいたいところだ。この議論をまともにやると、民主党政権下で実施された民自公の3党合意が果たして正しかったのかという議論に行き着くからだ。
まず指摘しておきたいのは、3党合意は、消費税が社会保障目的税(消費税による税収は、年金などの社会保障費用に充てる)であることを前提としていた、という点だ。このため「消費増税しないと、社会保障はカットされる」と、財務省は常に社会保障を人質にとって消費増税を推進してきた。この人質作戦はかなり有効で、社会保障関係の素直な人たちは財務省の説得を受けて消費増税の推進者になっている。
消費税を社会保障財源のために使うのは、仕方ないと思う人は多いだろう。財務省は、社会保障費が年々伸びていくので、消費税を社会保障に充てなければいけないという。増税したい財務省と予算を大きくしたい厚労省の合作による滅茶苦茶なロジックだが、社会保障の専門家でもこれに異を唱える人はほとんどいない。
社会保障は、助けあいの精神による所得の再分配なので、国民の理解と納得が重要だ。というわけで、日本を含めて給付と負担の関係が明確な「社会保険方式」で運営されている国が多い(もっとも保険料を払えない低所得者に対しては、税が投入されている。ただし、日本のように社会保険方式といいながら、制度によっては税金が半分近く投入されている国はあまり聞かない)。
このように税の投入が多いと、給付と負担が不明確になって、社会保障費はドンドン膨らむ。その一部は業界の利益になって社会保障の効果が出にくくなる。
一例をあげれば、特別養護老人ホームの内部留保が一施設当たり3億円(収入1年分)にまで膨らみ、業界全体で2兆円と過大になっている。これは税投入が末端に行き届かずに、中間業者の懐を潤し、結果として社会保障費の増大につながっているといえる。
■消費税=社会保障となったバカげた経緯
消費税の社会保障目的税は、「社会保障を保険方式で運営する」という世界の流れにも逆行するもので、それを行っている国は寡聞にして聞かない(ドイツのように消費税引き上げの増収分の一部を、特定用途に使った国はある)。
消費税の社会保障目的税化が間違いというのは、1990年代までは大蔵省の主張でもあった。しかし、1999年の自自公連立時に、財務省が当時の小沢一郎・自由党党首に話を持ちかけて、消費税を社会保障に使う、と予算総則に書いたのだ。なお、平成12年度の税制改正に関する答申(政府税制調査会)の中で、「諸外国においても消費税等を目的税としている例は見当たらない」との記述がある。
こうした世界標準のロジックから、消費税を社会保障目的税にするのではなく、社会保障は保険料で賄うほうが望ましい。しかし、今の日本では世界で常識になっている税・保険料の徴収インフラができていない。このために、税・保険料の徴収漏れが予想されており、これが不公平感にもつながっている。
税・保険料の徴収インフラとは、国税庁と年金機構が一体化する歳入庁を創設することだ。歳入庁ができれば、国民にとっても一ヵ所で納税と保険料納付が済むし、行革の観点からも行政の効率化になる。
海外では、米国、カナダ、アイルランド、イギリス、オランダ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ハンガリー、アイスランド、ノルウェーが、歳入庁のもと、税と社会保険料の徴収の一元化を行っている。東ヨーロッパの国々でも傾向は同じで、歳入庁による徴収一元化は世界の潮流と言ってよい。
歳入庁の創設は税と保険料の歳入増にもつながる。国税庁が把握している法人数と年金機構(旧社保庁)が把握している法人数は80万件も違うことから、保険料の徴収漏れが12兆円程度との推計もあり、実際に国会でも議論されている(浅尾慶一郎 http://asao.net/blog/report/3592)。
こうした推計に異論はあるだろうが、計算をあげつらうより、実際に歳入庁を作ることに意味がある。歳入庁は、社会保障を保険方式で行いつつ、同時に不公平も解消する王道だからだ。
しかし、歳入庁の創設は財務省にとって都合が悪いらしい。国税庁は財務省の植民地になっており、国税権力を財務省が手放したがらないからだ。筆者が第一次安倍政権で旧社保庁を解体し、歳入庁を創設しようとした時にも、財務省は激しく抵抗した。民主党は、政権交代時に歳入庁を公約していたが、その後下ろしてしまった。
2014年には、当時の民主党を含む野党各党が、「歳入庁」設置や一括交付金の復活を盛り込んだ行財政改革推進法案を衆院に提出したこともあるが、民主党の右往左往ぶりは滑稽でもある。
■年金システムを、バランスシートで見てみると…
以上を踏まえた上で、社会保障の財政状況を調べてみよう。ここで述べる手法は、筆者が現役官僚時代から、実際の政策判断に用いたバランスシート・アプローチである。これで、日本政府のバランスシート作成、財務省財政資金のALM(資産負債総合管理)、道路公団民営化、特別会計埋蔵金発掘などを行った。それほど役立ったものだ(財政問題のストック分析 http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/04j019.pdf)。
本コラムでは、財政問題がそれほど深刻ではないことを、政府の日銀を含む連結ベースのバランスシートで示してきた。例えば、2015年12月28日付け「「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした〜それどころか…なんと2016年、財政再建は実質完了してしまう! この国のバランスシートを徹底分析」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47156)を見ていただきたい。
社会保障はどう考えたらいいのだろうか。今公表されている政府の連結バランスシートには、社会保障の一部しか取り込まれていない。具体的には、年金についての将来債務は、今公表されている政府のバランスシートでは基本的には含まれていない。年金以外の社会保障では、毎年のフローの予算編成で大変だが、将来にわたった年金ほど大きな問題はないにもかかわらずだ。
負債に過去債務(現時点の年金受給者の給付額と、現時点までの年金加入期間に対応した給付額の合算の現在割引価値)、資産に年金積立金、将来保険料の現在価値、国庫負担の現在価値、とするのが一つの考え方だ。今の政府バランスシートでは、負債に過去債務のうち年金積立金と国庫負担相当分だけをとり、資産には年金積立金だけを加えており、年金バランスシート分析として不十分だ(ここが重要)。
そこで、年金バランスシートを作ってみよう。データとしては、毎年の政府バランスシートの文中で書かれているモノを利用する。1999年度版(http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/prev_fy2002/bs1309.pdf)と2014年度(http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2014/national/fy2014-gassan.pdf)からのデータで、年金バランスシートをみると、以下の通りだ。
保険料について、将来見通しどおりに進むのであれば、年金バランスシートも破綻することはないので、年金の脆弱性を見る場合のポイントは、@過去債務に対する将来保険料部分、A将来の年金給付の水準ということになる。
@については、これまで年金給付を約束しているが、その財源はなく将来保険料に依存しないと仕方ない部分なので、これが小さい方が年金は健全といえる。1999年度版と2014年版を比べると、455兆円から680兆円に増加しているが、15年間という期間を考慮すればそれほど深刻でない。
Aについては、マクロ経済スライドも導入されているので、将来の年金給付の調整がある。しかも日本の年金給付水準はそれほど高くないので、それほど脆弱でない。
むしろ心配があるのは、きちんと保険料を徴収できていないおそれ、なのである。
■社会保障を人質にとるのはおかしい
これは、消えた年金問題で発覚した旧社会保険庁の体質が、今でも残っているようで心配である。旧社会保険庁は解体されたが、それでも不祥事は絶えない。
2010年10月、機構職員と社保庁OBが官製談合で逮捕された。2013年4月には、過去の記録ミスによる支給漏れを支払う「時効特例給付」が行われておらず、約10億円の未払いが発覚した。そして、2015年5月に125万件の情報流出問題を起こした。
こうしてみると、歳入庁構想に話が戻ってしまう。やはり歳入庁は必要である。
なお、消費税は社会保障目的税ではない、とすると、どうなるのか。これは、消費税は地方税にすべきという結論になる。消費税は一般財源だが、国が取るか地方が取るかという問題になるが、地方分権が進んだ国では、国でなく地方の税源とみなせることも多い。
これは、国と地方の税金について、国は応能税(各人の能力に応じて払う税)、地方は応益税(各人の便益に応じて払う税)という税理論にも合致する。
ヨーロッパの国は一国の規模が小さく、GDPでみても日本は欧州の国が7つ、8つくらい集まった規模だ。ヨーロッパの場合にはサイズが小さく、日本からみれば地方単位であるので、EUを一つの国として、その中に地方があり、それぞれで消費税を導入しているという見方もできる。
また、地方分権の進んだ国では、オーストラリアのように国のみが消費税を課税し、地方に税収を分与する方式、ドイツ、オーストリアのように国と地方が消費税を共同税として課税し、税収を国と地方で配分する方式、カナダのように国が消費税を課税し、その上に地方が課税する方式、アメリカのように国は消費税を課税せず、地方が消費税を課税する方式がある。
これらを見ると、世界でも、分権度が高い国ほど、国としての消費税のウエイトが低いことが分かる。
いずれにしても、自公民の3党合意に基づく、消費税を社会保障目的税とする社会保障改革は行き詰まっている。社会保障を人質にとり、消費増税を迫るのはどうかと思う。
消費税の社会保障目的税を前提とすることは妥当なのか。世界の先進国で、消費税を社会保障目的税としている国はない。どこの国も、社会保障は保険料財源が基本で、保険料を払えない人のために、所得税の累進課税で金持ちから賄っている。3党合意や社会保障改革の見直し、消費税をどうすべきか議論するのは急務なのだ。
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