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温泉旅館の楽しみといえば、温泉と料理。心配事が何もなければ、思う存分楽しむことができるはずですが・・・。(写真はイメージ)
顔面蒼白!中国人旅行者が旅館でピンチ 李さん一家の「はじめての日本」〜念願の温泉旅館の巻
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47025
2016.6.13 宮田 将士 JBpress
これまで3回にわたって、初めての日本旅行をレポートしてきた中国人の李小勇さん(仮名)。夫婦旅行のはずが家族全員で行くことになり(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46515)、大阪では心斎橋の魔力に翻弄され(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46689)、そして京都観光のはずが買い物に引き込まれたり(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46937)と、紆余曲折をたどっています。
そんな李さん一家の旅行も、いよいよ佳境に。奥さんの買い物熱に引き込まれながらも、何とか京都観光を済ませ、李さん念願の温泉旅館にたどり着いた一家。あとは温泉と夕食を楽しむだけと思いきや・・・。李さんによる初めての日本旅行レポート第4弾、それではどうぞ。
■大きな心配事
京都北部にある、海に面した温泉旅館。部屋から綺麗な日本海が一望できる。旧正月の時期だが、あまり中国人は来ないのか、空いていたので予約した。日本語のサイトからしか、予約できないからかもしれない。
それにしても遠かった。嵐山を早めに切り上げて出発していなかったら、たどり着けなかっただろう。
家族全員、初めてのことだらけで大興奮だ。温泉、畳、障子、浴衣、床に直接寝るための布団、なんだか使い方が分からない指圧器・・・。妻とお義母さんは、もうスマートフォンで写真撮影が止まらない。息子は畳の上を大喜びで泳いでいる。お義父さんは障子に興味津々のようだ。そんなはしゃぐ家族たちをよそに、 私はとても焦っていた。
例えるなら、出かけてから、ふと「出るときに鍵かけたかな」「ガスの元栓ちゃんと閉めたかな」と心配になるあの焦燥感だ。乗り換えに乗り換えを重ねて、苦労してたどり着いた京都北部の温泉旅館。「温泉だー!!」と喜ぶ家族をよそに、私は旅館に到着する前からある1つの不安が頭から離れず、興奮した家族の話にも上の空だった。
それは「子供用のお子様ランチをちゃんと注文完了してただろうか?」という心配だった。
日本へ来る前、ネットで宿泊の予約をしたときには、オプションで子供のお子様ランチを注文したと思っていた。だが、旅館の宿泊予約は日本語のサイトで、オンライン翻訳を使いながら悪戦苦闘した上に、後ろでいろいろ無茶を言う妻を必死にかわしながらの作業だったこともあり、もしかしたら注文を確定していなかったのではないかと、突然心配になり始めたのだ。
もうすぐ夕食の時間だ。もし注文できていなかったとして、今からネットで追加注文なんて無理だ。パソコンは持ってきていない。スマートフォンでサイトを開いて、オンライン翻訳を使って、今から追加でお子様ランチを注文するのは不可能に近い。それより、注文が完了してなかったことが妻にバレることのほうが恐怖だ。これまでの経験上、「ごめん、お子様ランチ注文できてなかった(笑)」では済まない。絶対に怒られる・・・。
もしかして、さっきチェックインのときに、旅館の人が料理のことでいろいろ説明をして困った顔をしていたような気がしたのは、「お子さんのご夕食はいかがいたしましょうか」というようなことを言っていたからではないだろうか。
もし、本当に注文できていなければ、夕食の時間が来た瞬間全ては終わる。もしかしたら、心配は気のせいで、お子様ランチがちゃんと登場する可能性はあるが、考えれば考えるほど、注文できていない疑惑は膨らみ、やがて確信へと形を変えていった。
■初めての温泉
夕食まであと1時間半。まずは皆で温泉に漬かろうということになった。
お子様ランチのことが頭を離れないながらも、お義父さんとお義母さんに「まさかの混浴だったらどうします(笑)」などと冗談を振りまく。そして妻には「いきなりドボンと湯船に入っちゃだめだよ。ちゃんとかけ湯して、洗ってから入る。それから、タオルはお湯につけちゃだめだよ。あと水泳は禁止」と、温泉のマナーをしっかりと説明する。
大浴場に向かう途中で、妻からの「小勇、あなたの今回の旅行計画は最高。やっぱりあなたは計画立てるの得意ね」という満面の笑みのお褒めの言葉にも、「もちろんさ! 俺はこういうの得意なんだよ」とひきつった笑顔で何とか対応した。
そして待ちに待った温泉。大浴場というだけあって本当に大きい。お義父さん、私、息子とも、これほど大きなお風呂は生まれて初めてだったため、3人で思わず「おーーーー!!」と叫んでしまった。
自分も一緒に飛び込みたい衝動をこらえ、プールと勘違いしている息子を諭す。
「いいかい、まずはしっかりと体を洗って、かけ湯をしてから湯船にゆっくりと入るんだよ。走るのも良くない。滑って危ない。あと騒ぐのもダメ。日本人は公共の場でのマナーをとても大切にする人たちなんだからね」
出発前にネットで調べた豆知識を総動員して父親の威厳を見せつけているその横で、お義父さんがいきなり湯船に入ろうするのを必死に止めた。お義父さん曰く「すまん、あまりの風呂の大きさにちょっと動揺してしまった」らしい。
隣の女湯からは、妻とお義母さんの大喜びの声が聞こえてくる。お湯はとても熱いが、最高に気持ちいい。窓からは海も見えて景色も素晴らしい。我ながら選んだ旅館と日本の温泉の素晴らしさにうっとりして、ほんの少しの間だけ、お子様ランチの心配を忘れることができた。
■運命の夕食の時間
温泉に大満足して皆が部屋に戻ってきた後は、いよいよ夕食。お風呂から戻ってみると、すでに料理の準備が始められていた。恐る恐るテーブルを見てみると、案の定4人分しかない。お子様ランチは本当に注文完了していなかったのである。
途端に現実に引き戻された私は、何とかこの場を乗り切る方法を必死に考えたが、良い案は浮かばない。「売り切れた」はあり得ない、「旅館側の手違い」これはもっとダメだ。もう、正直に話して妻に怒られるしかないのか、さっき旅行の計画を立てるのが上手だと褒められたばかりで、いきなり段取りの悪さを罵倒されるのかと、先ほど温泉でさっぱりしたにもかかわらず、浴衣が嫌な汗で湿り始めた。
運び込まれる大量の料理。刺し身の舟盛りは豪勢で中国人好み。使われている食器もみな雅(みやび)なものが多い。料理の見た目も美しく、写真映えするものばかりで、妻やお義母さん好み。食べるのもそっちのけで、バシャバシャ写真を撮っては、SNSにアップしている。お義父さんとお義母さん用に注文したお肉も、柔らかくて美味しそうだ。ビールも日本酒もそろっている。食前酒の梅酒も甘すぎず、すっきりしていて飲みやすい。
お子様ランチが運ばれてくる気配がない絶体絶命のピンチでなければ、心から料理を楽しめたはずだった。「出発前にもう一度確認すべきだった」。後悔だけが頭の中をぐるぐる回る。もう観念して謝るしかないと思ったその瞬間。
お義母さんが一言、「小勇さん、ちょっと料理多すぎじゃない? 食べきれないわよ。私の分は孫と一緒に食べるから、お子様ランチ、キャンセルできない?」
すると、息子も笑顔で「おばあちゃんと一緒に食べる。僕、お肉とトウモロコシ食べたい! お子様ランチいらない」とお義母さんの意見を後押し。
救いの神は舞い降りたのである。
「お義母さん、ありがとう。明日の空港の免税店の買い物代、全部僕が出します」と心の中で感謝の言葉を繰り返し、お子様ランチはキャンセルしたことにして、心置きなく目の前のごちそうに舌鼓を打った。
後から旅館の人に確認をしたら(英語が少し分かる若い人がいた)、予想した通り、チェックインのときに、子供の分の食事が無いのはどうしたらいいだろうかという質問を受けていたらしい。そのときは分からないまま「OK、大丈夫」を連呼していたので、旅館の人は大丈夫だと思ったそうだ。
料理に大満足した後は、再び温泉に漬かる。心配事がなくなった後の温泉は、先ほどにも増して気持よく、長時間お湯に漬かりすぎて少しのぼせてしまった。
奥地すぎてWi-Fiのモバイルルーターの電波が届かず、ネットにつながらないと言って妻の機嫌が悪くなったり、フロントで買ったラムネの開け方が分からず、吹き出して旅館の人にご迷惑をかけたり、初めて布団で寝て翌朝全員背中が痛くなったり、いろいろ小さな事件は起きたが、初めての温泉旅館は大満足のうちに幕を閉じた。
皆疲れて寝てしまった、夜11時30分。明日はとうとう帰国の日。私は、今回の旅の最後のミッション、旅館から関西国際空港までの移動のルートを念入りに確認をしてから、畳の香りが心地よい布団に入って眠りについた。「そう、俺は旅行の計画立てるの得意なんだよ・・・」。(続く)
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