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バブル気味の不動産価格がなぜか弾けない「5つの理由」
http://diamond.jp/articles/-/92731
2016年6月9日 沖有人 [スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント] ダイヤモンド・オンライン
多くの関係者は不動産価格の高騰を不安視している。しかし、その見立ては正しくないかもしれない。バブル気味の不動産価格がなぜか弾けない「5つの理由」を考えよう。
「イノベーターは常に常識を疑う」
『イノベーションのジレンマ』の著者、クレイトン・クリステンセンの言葉である。不動産に関わる大多数の人が、不動産価格の高騰を不安視している。そんな人は「リーマンショックのように下げ局面がいつか来る。その際には買いたい」とも言う。これは今やステレオタイプの言い分になってきた。素人が半ば「したり顔」で言っているのを見ると、「待てよ、そんなイージーなはずがない」と考え始めることになる。次なる局面は意外な展開になるかもしれない。そんな可能性を検討してみよう。
投資家は利回りで相場感を把握している。借入れ金利が下がると、利回りが低くても購入意欲が湧く。「利回り−金利」のギャップが大きくなれば、投資機会があると考えられるからだ。この価格が不動産へのお金の流れと連動することははっきりしている。
筆者がよく使っている以下のグラフを基礎編として紹介しよう。不動産を購入するときは借り入れを伴うことが常だ。借り入れが以前よりもたくさんできるということは、バランスシート(貸借対照表)上資産はインフレすることになるから、当たり前と言えば当たり前の話である。
◆図表1:賃貸マンション取引価格と金融緩和の関係
(出典)日本不動産研究所、日本銀行よりスタイルアクト作成
■意外に下がっていない
リーマンショック後の不動産価格
リーマンショック前後で不動産が下げたことは、確かに事実である。では、どの程度下げたか過去の市場価格の変化を検証しておこう。まず、自宅購入者を対象にして、新築マンションと中古マンションの価格インデックス(下記グラフ)を使おう。これは株でいう日経平均やTOPIXのようなものだ。インデックスは物件価格を物件の立地によって品質補正をしているので、単純平均よりも正確な動きを表しており、四半期単位に算出している。
◆図表2:首都圏新築・中古マンション価格指数
(出典)住まいサーフィン
リーマンショック後、新築価格は1年(4回の四半期)にわたって下げているが、その下げ幅は6%に過ぎない。その後1年は横ばいで推移している。この横ばいの期間も不動産の仕入れに当たる土地価格は下落し続けていた。それなのに、販売価格が下がらないのには理由がある。新築マンションを供給するデベロッパーの多くが倒産し、塩漬けになる案件が続出、新規供給が以前と比較して3分の1ほどに減ってしまったからだ。
自宅マンションを買いたい需要層はそこまで減っていなかったので、需給バランスが非常にタイトになる。物件を探している側としては、売っている物件がほとんどない状況と思ってもらえればわかりやすいかもしれない。こうなると、新築を探している人でも中古物件に流れ始める。中古マンション市場の需給バランスが逼迫し、新築価格が横ばいの期間に中古が値上がりし始め、リーマンショック前の水準まで戻るという「想定外」の局面を迎える。ここでわかることは、不動産価格はお金がデベロッパーに多く流れることで値上がりするが、一方で需給バランスという要因の影響も受けるということである。
いつの時代も、供給戸数と物件価格は反比例する関係にある。供給が増えれば、価格は下がる。供給が減れば、価格は下げ局面でも下がりにくくなる。
◆図表3:首都圏分譲価格と供給戸数
(出典)不動産経済研究所からスタイルアクト作成
リーマンショックから2年後、デベロッパーの破綻が止まり、息を吹き返し始める。そうなると供給が増えるので、価格は下がり始める。新築・中古ともに価格は下がり始め、底を迎えるまでリーマンショック後4年を要した。ここまでの下げ幅は新築で13%、中古で7%となっている。想定よりも低くないだろうか?
■【まだ安いと考えられる理由(1)】
民泊で賃料が上がる
パリでは民泊が大流行して、パリジャンの家賃が高騰している。通常、民泊で不動産を運用すれば2倍以上に賃料収入が増える。これにより、以前からの借り手は郊外に住むことを余儀なくされているのが実態だ。家賃が上がると不動産価格は高騰する。所有者からすると、家賃は高騰し資産はインフレするのだから、市場原理として過去の大家ビジネスに戻ることはできなくなる。
一方、日本の民泊事情はと言うと、法制度が未整備でグレーゾーンが幅を利かせている。個人レベルでは実質的に許容され、法人レベルではお咎めが入るという矛盾に困惑する人も多い。そんななか、訪日観光客数見通しの上方修正が行われ、東京五輪が開かれる2020年には4000万人と、2015年の2倍に設定されている。ホテルの稼働率はここ20年以上なかった高稼働率を出している。目標が2倍に設定されても、泊める側の受け入れ能力がすでに不足していることになる。
今後法整備が行われ、民泊が容認されれば、法人の参入は進むだろう。特に、高配当を望まれる不動産投資信託が参入すると、一気に不動産価格に影響が出始める。現在、ホテルの売買価格が高騰しているが、今後は民泊できる賃貸マンションの価格が高騰することになる。土地を仕入れて開発するデベロッパーは、分譲マンション以上に売却価格が高い民泊仕様の賃貸マンションを量産することになる。収益性が高ければ、土地価格は高騰する。そのワリを喰って分譲マンションは減ることになるが、供給戸数が減れば価格は高く設定できる。
ここで大事なのは、土地活用の方法は多様でも土地価格は1つの市場であるということだ。都心で言えば、土地はホテル市況がよければホテルに、オフィス市況がよければオフィスに活用されていく。このように用途が多様に取れる場所は、価格が下がるどころか下げにくい要因を内包していることを忘れてはならない。
■【まだ安いと考えられる理由(2)】
金融緩和はまだまだ続く
金融緩和は2018年まで続くだろう。それはゴールがインフレターゲット2%だからだ。消費者物価指数は現状0%に近い水準で、2%からはほど遠い。原油価格が低迷する中で物価が上がる気配はない。マイナス金利まで踏み込んでも金融政策だけで、インフレを起こすことは難しいと思われても、仕方のない状況である。この金融緩和は日銀の政策であり、現在の黒田総裁の任期は2018年3月まである。そこまで金融緩和は続く可能性が高い。それに少額ではあるが、日銀は不動産投資信託を買っている。いずれ不動産への貸出しが多いという口先介入が本格化し、不動産への総量規制がかかるときが来るかもしれないが、近々の話ではあるまい。
■【まだ安いと考えられる理由(3)】
今後も局所的に人口は増える
東京の中心部への人口の流入は、依然高水準で続いている。少なくとも今の求人倍率から、新卒採用は2年先まで高水準が続くことが予想される。若年人口が減少する日本において、大企業が新卒採用を増やしていると、東京への人口流入は続くことになる。日本全体の人口の減少幅が大きくなろうとも、東京は独り勝ちの構図が続く。人の集積があるところで不動産価格が上昇するのは、全世界共通の法則である。
ただし、これまでと決定的に違うところは、その影響範囲が狭くなることだ。1980年代後半のバブル時は、ドーナツ化現象という「都心部の不動産価格が高いため郊外に人が移動する」現象が起きた。これは、リーマンショック前の不動産価格高騰期にはすでに起こっていなかった。
そうなる理由は2つある。1つは以前のバブルと価格水準が異なること、もう1つは世帯構成が小さくなっていることだ。ファミリー世帯が減って1人世帯が増えると、自分が我慢すれば都心には住めるので、郊外に行く理由が薄らぐからだ。これが子だくさんのファミリーとなると、子育て環境を重視することから状況は違ってくる。つまり、今後都心の不動産価格が高騰しても郊外や地方に波及する可能性は低いと考えられる。過去の体験談による勘違いはしないようにしたい。
■【まだ安いと考えられる理由(4)】
世界的に見れば東京はまだ安い
アベノミクスの取り組みの1つに、規制緩和を目的とした特区がある。地理的な限界を持つと不動産価格は高騰する例が多い。島のように面積制限があるところは、シンガポール、香港、マカオ、ニューヨークなどが代表的だ。また、その国の首都は知名度の高さゆえに買いニーズが旺盛であり、高騰しやすい。加えて金融市場を持つ都市は、ロンドン、ニューヨーク、上海など高所得者が多いからこそ地価は上がりやすい。
東京はそれらの要素を持ち合わせているゆえに、こうした世界的な都市と比較して不動産価格が非常に安いと思われている。それに加えて円安が進む事態となれば、海外投資家には一層割安に見える。国境を越えて資金がグローバルに動く現代において、日本国内に「高くて自宅が買えない」という声が増えても、彼らは買い手の1つに過ぎないと考えた方がいい。
◆図表4:マンション・高級住宅(ハイエンドクラス)価格水準の比較
(出典)日本不動産研究所
■【まだ安いと考えられる理由(5)】
資産は高齢者が持っている
日本の個人資産の3分の2以上は、60歳以上の高齢者が保有している。金融資産も持ち家率も年齢と共に上がるので、資産家になる。しかし、定年を迎えて年収は下がるため、個人的に稼ぐ力は他の世代よりも劣っていると言わざるを得ない。資産を持っていても所得が少ない人にとって、インフレは悪い話ではない。
なぜなら、インフレの際は資産インフレ率の方がはるかに高いケースが多いからだ。いざとなったら、資産を切り崩すことで生活することができる。持てる者と持たざる者で差がつくが、生活コストを下げることは日本では郊外や地方移住でいくらでも可能である。
また、ニッチな不動産市場は価格を維持することが容易である。それも、毎年30兆円も相続移転が行われている個人金融資産の規模からしたら、小さい市場はいくらでもある。たとえば相続税対策用の不動産購入などは、市場に出てくる総額が年間500億円程なので、「タワーマンション節税」の商標登録を持っているスタイルアクトがそれに向いているマンション名を公表すれば、需要過多の状況をつくりだすこともできそうだ。
■不動産はなぜ下がらないか?
「5つの理由」に潜む死角
ここまで紹介した「不動産が意外に下がらない5つの理由」をもう一度併記し、その意味を考えてみよう。
・民泊で賃料が上がる……世界的なシェアリングエコノミーの流れ
・金融緩和はまだ続く……金融政策
・局所的に人口は増える……人口動態
・世界的には東京はまだ安い……グローバルな投資マネーの動き
・資産は高齢者が持っている……節税市場の台頭
これらの理由は、近視眼的な相場感ではない。価格との因果関係に注目することによって、生まれてくる視点である。ここで指摘した市場のカギを握るのは、いずれも自宅購入者ではない。日本で少子高齢化が進むなか、自宅需要の割合は減少し続けており、価格に変動を起こす他の要因が市場に強く影響するようになっている。
それらは前述の5つの理由に基く環境変化(世界的なシェアリングエコノミーの流れ、金融政策、人口動態、グローバルな投資マネーの動き、節税市場)だったりする。世界は密接に関係し、連動し、徐々に変容しながら次の世界を生み出している。未来を予測する際には、時代に即した見識でシミュレーションをしたいものである。
不動産価格が意外に下がらない理由を、あなたは考えたことがあっただろうか。
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