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今の日本企業は、竹槍で大砲装備の米軍に抗う太平洋戦争末期の状況…まったく歯が立たず
http://biz-journal.jp/2016/06/post_15384.html
2016.06.07 文=庭山一郎/シンフォニーマーケティング株式会社代表取締役 Business Journal
ドードーという鳥をご存じでしょうか?
マダガスカル沖に浮かぶモーリシャス島などにいた絶滅種の鳥です。今のシチメンチョウより大きくて重い巨大な鳥で、天敵のいない絶海の孤島でのんびり暮らしていたので、翼は退化して飛ぶことができず、自身の体重のせいでヨタヨタ歩き、地上に巣をつくってのどかに暮らしていました。1600年代に入植者が入ってきた時、航海の保存食用に乱獲され、また彼らが持ち込んだ犬や猫やネズミが天敵となってあっという間に絶滅してしまいました。
私は、現代の日本企業はドードーに似ていると考えています。退化した翼はマーケティングであり、巨大化した体を持て余してヨタヨタ歩く姿は、意思決定の遅さそのものです。
では、なぜこんな姿になってしまったのでしょうか。戦後、日本企業の前には巨大な二つの市場が広がっていました。
ひとつは国内市場です。工場も家もなく焼け野原にバラックが建つ中に8000万人近い腹ペコの国民がいました。敗戦の失意の中で夢中で働き、食べ物や着る物を調達し車を購入し、やがて家を買って家具や家電製品を揃えていきました。これらすべてが巨大な市場になったのです。
復興から始まり、朝鮮戦争特需、高度経済成長、そしてバブルと国内市場は断続的に50年近くも成長を続けたのです。
もうひとつは海外市場です。ドイツが降伏した後、日本は世界を相手に孤軍奮闘していました。挙げ句の果ては日ソ中立条約を一方的に破棄されてソ連にまで攻撃され、東京はもちろん全国の主要都市は焼け野原になり、原子爆弾を2発も落とされました。世界史の常識で考えれば二度と立ち直れないレベルのダメージを被って敗戦したのです。
この国を早期に復興させないとずっと面倒を見ることになると考えた米国は、当時紙クズ同然だった日本円の為替レートを1ドル360円で保証するという政策を採りました。現在の為替から見れば4倍近いレートです。しかし、日本は敗戦までは独自の技術でゼロ戦や戦艦大和をつくり、それで世界を相手に戦った第一等の工業国でした。復興が始まり、国内市場の旺盛な需要のお陰で生産体制が整ってくると、この為替のお陰で「日本製品は品質が良くて安い」という評価を確立し、世界中で飛ぶように売れたのです。
こうして、国内・海外の二つの巨大市場でマーケティングの必要なく急成長できる環境が半世紀も続いてしまいました。その結果、天敵のいない南の孤島でドードーが翼を退化させていったように、日本企業はマーケティングを忘れてしまいました。
しかし、海外市場での為替優位性も国内市場での消費の成長も完全に止まったリーマンショック以降の日本企業は、1600年代のドードーのように見えました。ドードーを襲った悲劇が日本企業に起きたのです。入植してきた人間の食料として乱獲され、彼らが連れてきた天敵によって安住の地を追われつつあるのです。
マーケティングという翼と牙を持った天敵に対して、マーケティングのノウハウも組織も、その責任者であるCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)も持たない日本企業は歯が立ちません。海外市場はもちろん、国内でも外資系企業と戦って勝ち残っている分野はわずかです。
日本企業がドードーのように絶滅しないためには、マーケティングを早急に強化するしかありません。今のように製品のスペックと営業部門の汗と足だけに頼っていては、竹やりで機関銃や大砲を装備した敵に戦いを挑もうとした太平洋戦争末期の二の舞になってしまいます。
この状況は幕末に似て見えます。あの時の日本も250年の鎖国によって世界の文明から完全に遅れをとり、ドードーのように弱弱しく、ヨタヨタしていました。欧米列強から見れば赤子の手をひねるように征服できる国家だったのです。それに気づいた少数の下級士族が命を掛けて維新を断行し、服装や文化をはじめ何から何まで西洋から貪欲に学び、そのお陰で間一髪のところで欧米の植民地にならずに済んだのです。
今、日本企業はマーケティングに投資すべきです。マーケティングのノウハウを蓄積し、人材を育て、組織を構築することを大車輪で断行すべきです。躊躇したり先送りしたりする余裕はもうありません。
そして明治維新がそうであったように、情熱をもった若手と、一部の先見の明を持った経営者によって改革は成されるでしょう。私はそう信じています。
(文=庭山一郎/シンフォニーマーケティング株式会社代表取締役)
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