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「同一労働・同一賃金は実現できない!」本当の理由
http://president.jp/articles/-/18165
2016年6月3日 PRESIDENT Online スペシャル 新経営サービス 常務取締役 人事戦略研究所所長 山口俊一=文
■欧米諸国では当たり前の考え方だが
同一労働・同一賃金に対する議論が活発になってきました。安倍内閣の方針を受け、厚生労働省も大学教授などを中心メンバーとした「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」を発足させ、年内には実現のための具体的な方策案が出てきそうです。
同一労働・同一賃金とは、「同じ価値の仕事内容であれば、同じ賃金にしなさい」という考え方です。
主要先進国では当然の考え方として認識されていて、欧米ではこの原則に沿うかたちで、職種別賃金や職務給という考え方が定着しています。
日本でも、男女雇用機会均等法に加え、パートタイム労働法改正で(1) 職務内容が正社員と同一、(2) 人材活用の仕組み(人事異動等の有無や範囲)が正社員と同一であれば、正社員との差別的取り扱いが禁止されることになりました。徐々にではあるものの、確実に動き出しているといえるでしょう。
しかし、政府が現在このテーマで解決しようとしているのは、あくまで正社員と非正規社員の待遇格差是正に絞られているように見えます。すでに、働く人の実に40%(女性に限っては50%)が、非正規社員となっています。バブル崩壊後のデフレ経済下において、小売り・飲食業を中心に、非正規社員比率を高めることで、人件費コストを抑制してきたのです。
たとえば、フルタイム社員に対するパートタイマーの時間当たり賃金水準は、ヨーロッパ諸国が70〜80%程度であるのに対して、日本では50%台となっています。非正規社員のうちパートタイマーは6割程度を占めていますので、この人たちの待遇を改善すれば、大きなインパクトになるでしょう。
しかし、本来の同一労働・同一賃金を実現しようとするのであれば、正社員と非正規社員の格差是正だけでは不十分です。それ以外にも、この考え方を阻む、日本の長年にわたる雇用習慣が横たわっているからです。
■日本の雇用習慣に横たわる給料格差
1.中高年社員と若年社員
ある工場で、同じ製造ラインの作業者として25歳と50歳の社員が、働いているとしましょう。しかも、モノを造るのは機械ですので、両者の間に生産性の違いはありません。この会社が年功序列型の給与制度なら、月給がそれぞれ20万円と40万円であっても、不思議ではありません。25歳の若手社員が「同じ仕事しているのに、年齢が違うだけで、給料が2倍も違うのはおかしい」と訴えたら、どうなるでしょうか?
2.家族持ちと独身者
家族手当のように、仕事内容とは関係ない要素によって決定される給与項目は、どうでしょう。結婚しない人が増える世の中、独身者から見れば、明らかな不公平です。仮に、配偶者2万円、子ども1人につき5000円の会社なら、子ども2人の世帯主には合計3万円の家族手当が支給されることになります。年間の平均昇給額が5000〜6000円である昨今、いくら独身者が頑張っても、3万円の差を埋めるのは並大抵のことではありません。
3.定年前社員と定年再雇用者
ほとんどの会社では、60歳が定年で、その後に再雇用されると、賃金水準が大幅にダウンします。ところが実際には、59歳と60歳の1年の違いで、急激に能力が低下するわけではありません。今年5月には、横浜の運送会社で再雇用されたトラック運転手が訴えた裁判で、「定年前と同じ立場、同じ仕事であれば、再雇用後であっても、給与水準を引き下げるのは違法」という判決が、東京地裁で出されました。これまでの常識を覆す、驚くべき判決です。
4.全国社員と勤務地限定社員
もう1つ、政府が進めようとしている雇用政策に「非正規社員の正社員化」がありますが、この切り札として「限定正社員」が位置づけられています。勤務地や職種を限定することで、無限定の正社員よりは一定の待遇差を容認する考え方です。
しかし、同じ職務の場合、勤務地や職種が限定されているという理由だけで、極端な賃金差は許容されるのでしょうか。勤務地限定社員の方が、仕事は優秀かもしれません。
5.出向者とプロパー社員
大企業では、多くの子会社・関連会社に、社員を出向させています。通常、子会社・関連会社の賃金水準は、親会社よりも低く、出向者には親会社の賃金制度が適用されるため、同じ仕事内容であっても、出向者とプロパー社員の処遇差は厳然と存在します。少なくとも子会社の業務においては、出向者よりプロパー社員の方が、仕事ができるケースも多いでしょう。これは違法にならないのでしょうか。
■オジサンの給与を下げるしか方法はない
このように、真に「同一労働同一賃金」を実現しようとすれば、非正規社員の待遇改善だけに留まらず、正社員内に存在している問題に手を付けなければなりません。
まずは、非正規社員の待遇改善だけに着手するにしても、賃金水準を正社員に近づけるには、大幅な人件費増を伴います。国際的に比較して利益率の劣る日本企業が、更に利益を削って人件費を増やすことは、事業の存続にもかかわるため困難です。
ところで、今回採り上げた、これまで優遇されてきた人たちの共通項は何でしょう?
「正社員」「中高年社員」「家族持ち」「定年前社員」「全国社員」「出向者」。いずれも、その多くは中高年の男性社員、すなわちオジサンです。
もし政府が、本気で同一労働・同一賃金を実現しようとするのではあれば、「これを実現するためなら、既得権者の賃金は引き下げてもよろしい」という法律をつくるしかないと思います。
しかしながら、冒頭の「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」に提出されている資料の中でも、「有利な取り扱いを受けている人の処遇を引き下げて対処することは許されない」旨の記述があります。すなわち、既得権は守りながら改善しましょう、というスタンスです。
国がこのスタンスを変えない限り、「結果は見えた」といえるのではないでしょうか。
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