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[けいざい解説]またも「ヘリコプター・マネー」論 日本、危ういタブー接近
財政支出の財源を中央銀行が直接まかない、空からお札をばらまくように減税や給付金で国民にお金を届ける。そんなヘリコプター・マネー(ヘリマネ)政策の是非を巡る議論が世界的に熱を帯びている。実験の舞台として注目されているのは他ならぬ日本だ。
ヘリマネ政策は歯止めが利かなくなり、通貨価値の急落や物価の暴騰を招くとして禁じ手とされてきた。今になって脚光を浴びる背景には金融政策だけでは先進国の「長期停滞」を突破できないとの危機感がある。
昨年11月、国際通貨基金(IMF)はワシントンで開いた金融政策に関する会議の冒頭テーマにヘリマネ政策を取り上げた。元英金融サービス機構(FSA)会長のアデア・ターナー氏は「選択肢から外すべきでない」と主張。IMFの幹部からは「タブーとされた政策だったはずだが」との声も漏れた。
4月にはかつて「ヘリコプター・ベン」と呼ばれたバーナンキ前米連邦準備理事会(FRB)議長もブログに「排除は時期尚早」と記し、米国内外で話題になった。
こうしたなかで財政政策と金融政策が接近するのが日本だ。安倍晋三首相は27日閉幕の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で財政出動で率先する構えをみせた。消費増税も再延期の方向だ。日銀は大量の国債を購入しており、間接的に政府の財源調達を助ける色彩が濃くなる。さながら「疑似ヘリマネ」だ。
ただ日銀の黒田東彦総裁はヘリマネを否定し、物価安定のあかつきには保有国債の残高を減らす構えだ。その場合、政府に将来の財政負担が残り財政支出による景気浮揚効果も小さくなる。
通常の財政支出は消費者がお金を受け取っても「後から増税などを通じて回収される」と心配して貯蓄に回し、効果が相殺されるという。これに対し、ターナー氏の主張の中核は、政府は中銀から調達したお金を返す必要がなく、利子も払わなくていい点にある。
もっともヘリマネ政策は財政支出に歯止めがかからなくなるリスクも大きい。そうした事態を防ぐため、ターナー氏も「中銀の独立を確保しつつ、政治家の乱用を防ぐルールを確立すべきだ」と唱える。疑似ヘリマネはその歯止めもない点に大きな危うさを抱える。
ターナー氏は「日本は5年以内にヘリマネ導入を余儀なくされる」と予言する。彼が考える処方箋は「日銀が保有する大量の国債を政府への無利子・無期限の預け金に切り替える」というものだ。形の上では国債による大量の借金が帳消しになり、財政再建への道が開かれる。通常の財政支出の選択肢も増えるうえ、消費者の将来不安も高まらない――。
「国債」を「預け金」に変えるだけでうまくいくならよいが、身内(広義の政府部門内)の話とはいえ、借金の帳消しは日本の信用力に響く恐れがある。究極の奇策に頼るのか、地道に経済成長と財政再建の両立をめざすのか。世界が日本の今後を注視している。
(ニューヨーク=大塚節雄)
[日経新聞5月29日朝刊P.3]
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