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伊勢神宮の参道を歩く各国首脳(資料写真、2016年5月26日撮影)。(c)AFP/STEPHANE DE SAKUTIN〔AFPBB News〕
次の「世界経済危機」の震源地は日本か 消費税の増税延期は財政破綻のリスクを高める
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47008
2016.6.3 池田 信夫 JBpress
伊勢志摩サミットでの安倍首相の発言は、世界に大きな反響を呼んだ。彼は「エネルギー・食料・素材など商品価格がリーマン・ショック前後での下落幅である55%と同じ」で「リーマン級の経済危機再燃を警戒する」と説明し、消費税率の10%への増税を再延期する考えをにじませた。
ところがこの説明はサミットで各国首脳から疑問が出て、世界のメディアからも批判を浴びた。フィナンシャル・タイムズ紙は「安倍氏が説得力のない2008年との比較を持ち出したのは増税延期のためだろう」と評し、ル・モンド紙は「安倍氏は突飛な悲観主義で各国を驚かせたが、首脳の同意は得られなかった」と嘲笑した。
■商品相場の暴落は危機の前兆ではなく結果
この資料は次のように、2008年のリーマン・ブラザーズ破綻の前の状況と現在を比べているが、これは誤りだ。下の図だけを見ると、まるで商品相場の暴落が原因でリーマンが破綻したように見えるが、事実は逆である。
サブプライムローンに巨額の不良債権が発生していることが表面化したのは、2007年8月にフランスの大手銀行パリバがサブプライムの解約を凍結した事件だった。これをきっかけに不動産担保ローンの債務不履行が相次ぎ、金融機関が破綻した。
そして2008年5月に、アメリカの大手投資銀行ベア・スターンズの経営が破綻して、ニューヨーク連銀に救済された。それが図の左のピークに対応し、このあと金融危機が世界に拡大し、投機資金が商品市場から引き上げたため、商品相場も暴落した。
その金融危機の最後の段階で、最大手のリーマンが救済されなかったため、全世界がパニックになった。つまり商品相場の暴落は安倍首相の言う「危機の前兆」ではなく、金融危機の結果なのだ。
この危機から脱出するために各国は銀行救済に多額の公的資金を投じ、ようやく金融システムは回復してきた。2014年から商品相場が下がったのは、需給の悪化やOPEC(石油輸出国機構)の生産調整の失敗などが原因で、金融危機とは無関係だ。
さすがに安倍首相も、6月1日の記者会見では「リーマン・ショック級の事態は発生していない」と認め、再延期は公約違反ではないかとの批判に対しては「これまでの約束とは異なる新しい判断だ」と意味不明の弁解をした。
■世界最大の不良債権を抱えているのは日本国民
これは経済オンチの首相がサミットのホストとして恥をかいた、という笑い話ではすまない。この資料をつくったとされる今井尚哉秘書官(経済産業省出身)や記者に説明した世耕弘成官房副長官などの官邸スタッフも、世界金融危機の意味を知らないで「リーマン・ショック」(日本以外では使わない言葉)がその始まりだと思っていたわけだ。
それは日本が(幸い)金融危機に巻き込まれなかったためだろうが、内閣がこの程度の認識で大丈夫なのだろうか。金融危機は景気が悪いのとはまったく別の現象で、増税とは無関係だ。その原因は巨額の不良債権が蓄積していることで、日本では1990年代に経験した。
そして今、世界最大の不良債権を抱えているのは日本の年金受給者である。総合研究開発機構のシミュレーションによると、いま約150兆円ある年金積立金をこのまま食いつぶすと、実質賃金が今のように上昇しないと、2032年には年金基金がゼロになってしまう。
そうなると年金がもらえなくなるので、これを2050年まで延ばすには、年金給付を42%カットするか、年金保険料を35%引き上げる必要がある。つまり日本国民は年金保険料の4割の不良債権を抱えているのだ。
今のまま放置すると、年金債権はデフォルト(債務不履行)になる。その規模も90年代の銀行の不良債権をはるかに上回り、2050年には600兆円の債務超過になる。これは厚生労働省も認め、最大800兆円の債務超過になると推計している。
この他にも医療・介護などを合わせると、社会保障特別会計だけで最大1500兆円の債務超過になる、というのが鈴木亘氏(学習院大学)の試算である。
■世界経済危機の主要なリスクは日本の政府債務
このように巨額の債務超過になっている日本政府が国債を発行し続けると、そのうち金利が上がり始めるだろう。今は幸い世界的な低金利で、日銀が大量に国債を買っているので、国債は順調に消化されてゼロ金利に近いが、そういう状況が永遠に続くことはありえない。
「日本国債の9割は日本の金融機関が保有しているから大丈夫だ」と言う人がいるが、彼らは愛国心で国債を保有しているわけではない。優良な融資先がないから国債を買っているだけなので、企業収益が高まれば国債を売るだろう。その意味で国債は、不景気に救われているのだ。
国債管理対策として一部で言われているのは、日銀が保有する国債を売らないで塩漬けにし、すべての国債を買い取る構想だ。いま日銀の保有している国債は300兆円ぐらいだが、すべての国債を買い取るには1000兆円近い資金が必要になるだろう。
日銀は日銀券を発行できるので資金調達には困らないが、そういう計画が判明した途端に国債の信認が失われて金利が上昇するおそれが強い。日銀は数十兆円の債務超過になり、それを一般会計で埋めるために国債を発行して日銀が引き受ける・・・と雪ダルマ式に政府債務が増え、金利上昇と激しいインフレが起こるだろう。
これは空想的なシミュレーションではない。今すぐ財政が破綻することはないが、巨額の不良債権は存在しているので、何らかの形で(おそらくインフレで)踏み倒すことは避けられないのだ。OECDも、今週発表した世界経済見通しで「日本の政府債務が世界経済の主要なリスクだ」と警告している。
その意味で「リーマン・ショック以来の世界経済危機のリスクがある」という安倍首相の認識は、長期的には間違っていない。ただしその震源地は日本政府であり、消費税率の増税再延期は、そのリスクを逆に高めるのだ。
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