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ジュネーブのOPEC本部。原油価格が回復傾向にあることから、総会でも現状維持の方向となりそうだ(写真:ロイター/アフロ)
底を打った原油価格は自然と60ドルを目指す 今後ドル安基調が続けば下支え要因になる
http://toyokeizai.net/articles/-/120816
2016年06月02日 江守 哲 :エモリキャピタルマネジメント代表取締役 東洋経済
原油価格が膠着状態にある。2日にはOPEC総会を迎えるが、事前に目立った報道はなく、主要産油国の間でも増産凍結などに向けた話し合いがもたれた形跡はない。4月の産油国会合において、サウジアラビアが増産凍結合意を目前で反古にしたことで、産油国の足並みが一気に崩れることになった。しかし、原油相場はそれを機にむしろ上昇基調を強めている。結局のところ、供給削減をしなくても、原油価格は反転したのである。
■OPECはあえて行動する必要がなくなった
今回のOPEC総会では、明確な方向性が打ち出されることはないとみられている。30ドル割れの水準にあった原油価格がひとまず50ドルを回復しており、産油国も慌てて策を講じる必要はないと感じているはずだ。また、サウジとイラン以外の産油国には、余剰生産余力はそれほど多くないもようである。さらに、米国の産油量が減少傾向にある中、サウジやイランも、原油価格を押し下げるような増産をあえて行う必要はないだろう。
このように考えると、OPECはあえて行動する必要はなく、現状の産油量を維持するのが自然であり、最善の政策ということになる。世界の石油需要は今のところ安定的に増加している。世界的な景気の落ち込みがないかぎり、需給は早ければ年末までに、遅くとも来年の前半ごろにはバランスし、原油価格を支えることになるだろう。
今回の原油価格の反発基調において、米国内の産油量の減少が寄与していることは間違いない。米国のシェールオイル企業の破綻は100社を超えているもようであり、これが米国の産油量の減少につながっているものと考えられる。一部には、原油価格が反転すれば、すぐに生産活動が再開されるとの指摘も聞かれるが、少なくとも破綻企業が増加している事実を考慮すれば、そのような動きはそう簡単には起きないのではないか。今回の破綻企業の増加は、現状の原油価格の水準では、生産活動が継続できないことが明白になったといえる。
したがって、生産再開に必要な資金の出し手からすれば、今後の原油価格が相当の高い確度で、一定水準で推移することを確認する必要がある。その水準は45ドルではなく、最低でも50ドル、できれば60ドルは欲しいところ。そう考えると、米国内の産油量が再び増加に転じるには、かなり高いハードルがあるといえる。この点からも、需給が再び緩和するようなことは考えにくい。
5月のメモリアルデーを境に、米国ではドライブシーズン=ガソリン需要期に突入した。原油相場は、ガソリン需要の増加と在庫の減少を背景に、石油相場全体が上昇しやすい時期に入ったわけである。米国内の石油需要は今年に入ってから堅調に推移しており、これも在庫減少に寄与しよう。また、この時期までに原油相場が上昇基調にある場合、年末までその基調が続きやすい傾向がある。今年は年初に安値を付けたこともあり、その後の反発基調により、この上昇パターンに適合する値動きになっている。
原油相場を取り巻く環境はますます複雑化しているが、この傾向に乗るのであれば、原油相場は年末までのいずれかのタイミング、一度は60ドルの大台を試すことになるだろう。ただし、上昇には投機筋のロングポジションがある程度解消される必要がある。OPEC総会を機に投機筋がポジション調整の売りを出す可能性があり、その場合には47ドル台から45ドル台後半までの調整となる可能性もある。
■ドルの基調転換が原油価格の反転・上昇に寄与
60ドルを目指す際には、ドル安基調の継続が不可欠であることは言うまでもない。原油価格が底打ちから反転・上昇する過程において、ドル高基調の反転が大きく寄与した。思い出せば、2014年7月に原油相場が下落に転じるきっかけとなったのもドル高だった。したがって、ドルの基調転換は今後も原油価格の下支え要因として不可欠な要素になる。
幸い、米国はこれまでのドル高政策を転換させ、ドル安を志向していると考えられる。ドル指数はおおむね7年ごとに上昇と下落を繰り返すサイクルがあり、その7年目が昨年であったことも、その見方を裏付ける根拠になっている。今後複数年にわたり、ドル安基調が続くとすれば、原油相場にはポジティブな要因となる。
いずれにしても、原油価格はすでに底を打った可能性が高く、大崩れすることはないだろう。米国が利上げの可能性を示唆することでドルが上昇すれば、これが原油価格の上値を一時的に抑える可能性はあるが、7月に利上げを実施するまでに、それを織り込む形でドルの上昇が頭打ちになれば、その後はドル安を支えに堅調に推移するだろう。その間に需給要因に大きな変化がなければ、原油相場は自然に60ドルを目指すことになる。
その場合、米国ではインフレ圧力が着実に強まるだろう。また景気への悪影響も念頭に入れる必要が出てこよう。これまで原油価格の上昇は、株式市場にとってポジティブ要因としてとらえられてきたが、今後はそうはいかなくなる。原油相場が上昇した場合のさまざまなリスクを念頭に入れたうえで、市場動向を見極める必要がありそうだ。
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