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世界経済は「リーマン直前」とまったく似ていない(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/16/hasan109/msg/361.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 6 月 02 日 09:05:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

世界経済は「リーマン直前」とまったく似ていない
http://diamond.jp/articles/-/92302
2016年6月2日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問] ダイヤモンド・オンライン



Photo:首相官邸HP


 安倍晋三首相は、来年4月に予定されていた消費税率の10%への引き上げを再延期する意向だ。世耕弘成官房副長官は後に否定しているが、その理由として、「世界経済がリーマンショック直前のような状態にある」ことを挙げている。


 安倍首相は、先進7ヵ国首脳会議(伊勢志摩サミット)においても、現状がリーマンショック直前と似ているので、危機を食い止めるために財政拡大が必要であるとの議論を展開した。そして、サミット後の会見では、リーマンショック直前との類似を、何度も繰り返し指摘した。


 しかし、以下に述べるように、現状はリーマンショック直前とはまったく違う。


 したがって、「何もしないとリーマンショックのようなことが起こるから、消費税増税延期や財政拡大が必要だ」というロジックは成り立たない。


■需要を急減させたリーマンショック
 ケインズ政策が必要な典型的局面だった


 リーマンショックが日本経済に大きな打撃を与えたのは、輸出が急減したからだ。


 それまでの日本経済は、輸出主導の経済成長を続けていた。


 図表1に示すように、リーマンショック直前までは、貿易収支の黒字が年間10〜15兆円という状態が継続していた。


 それが、リーマンショックで5兆円程度に急減したのである。


 このように、リーマンショックとは需要の急減である。同様の事態が世界各国を襲った。


 こうした事態に対しては、需要を追加することが必要であり、そのために財政拡大を行なうのは、ごく自然な政策であった。リーマンショック直後は、ケインズ政策が必要とされる典型的な局面だったのである。


 だから、「リーマンショックのような事態が起きれば消費税増税は行なわない」という考え自体は、正当化できる。


 ところが、図表1に見るように、ここ数年、貿易収支は赤字が継続していた。リーマンショック前とは、状況はまったく違う。


◆図表1:貿易収支の推移

(資料)財務省


 最近、貿易収支が黒字に転じている。しかし、これは原油価格低下などによって輸入価格が低下していることによるものであり、リーマンショック前に貿易収支の黒字が続いていたのとはまったく違うメカニズムによるものだ。


 これまでも述べてきたように、現在、日本経済の成長率が低い原因は、消費が伸びないことであり、それは将来の所得に関する不安が大きいからだ


 したがって財政拡大等の短期的需要追加策によっては、問題を解決することができない。


 安倍晋三首相は、消費税増税を再延期するとともに、公共事業などの経済対策を盛り込んだ2016年度第2次補正を編成する方針だ。


 消費税増税の再延期や財政拡大は、一時的に株価を上げるだろう。しかし、日本が抱える問題は解決できない。そして副作用も大きい。


■表面的には似ている円高転換
 その原因はリーマン当時と異なる


 為替レートについても、それまでの円安が円高に転じたという意味で、リーマンショックと現在は表面的に似ている(なお、円高自体は、アメリカ金融バブルが崩壊した2007年から生じていた。リーマンショックでそれが加速したのだ)。


 ただ、円高転換の原因は違う。


 リーマンショック直後に急激な円高が生じた原因は、円キャリーバブルの崩壊だ。


 それまでの期間、円キャリー取引が進んだために円安が進行していた。円キャリー取引が生じたのは、1つにはアメリカの金利が高かったからだが、アメリカで住宅バブルが発生し、投機資金の需要が大きかったことも一因だ。


 つまり、リーマンショック前には、アメリカの住宅バブルよって円安になり、日本の輸出が増えるという状況であったわけだ。


 そしてアメリカの住宅バブルが崩壊したため、「円キャリーの逆戻し」と言われる現象が発生し、急激な円高になったのである。


 今年になってからも、かなりの円高が進んでいる。これも投機資金の投資先変更によるものである。その点では、リーマンショック後の円高と同じだ。


 ただし、中身は違う。リーマンショック直後には、アメリカから日本への投機資金の還流が起きたのに対して、現在起こっているのは、新興国や一次産品から、日本を含む先進国へという資金の流れの変化である。そして、これを引き起こしているのは、アメリカの金融正常化である。


■一見同じような原油価格の動向
 メカニズムはまったく異なる


 安倍首相は、サミットで配布した資料で、原油など一次産品価格が、リーマンショック後も最近も55%下落したと述べた。


 実需の変化によって下落したのでなく、それまで投機によって高値になっていたのが崩壊したという点では、どちらも同じだ。


 ただし、リーマンショック後は大規模な金融緩和が行なわれたので、図表2に見るように、原油価格はその後、投機によってすぐに高いレベルに回復した。つまり、長期的な意味での正常水準には戻らなかったのだ。この点が、今回起こりつつあることとの重要な違いだ。


◆図表2:原油価格の推移

(資料)EIA


 今回の下落は、アメリカの利上げが原因だ。それによって、資金が原油投機から引き揚げられているのだ。


 以上で見たように、一見して同じような現象が生じていても、その裏にあるメカニズムはまったく違うことがある。断片的な経済指標をつなぎ合わせるだけでは、経済状況を正しく理解することができない。


■経済減速の「後遺症」に悩む中国
 世界はその教訓をくみ取るべきだ


 リーマンショック後に各国が金融緩和を行ない、バブルが発生した。バブルが発生したのは、アメリカではなく、新興国、とくに中国と資源国である。それがいま崩壊している。これが、現在発生している社会的な経済混乱の本質である。


 中国はリーマンショック後に巨額の財政支出と金融緩和を行ない、不況を回避した。しかし、この政策が、その後中国経済に大きな歪みを与えた。現在の中国経済の減速は、その後遺症である側面が強い。


 世界は、このことから教訓をくみ取るべきだ。つまり、大規模な経済刺激策は、一時的には経済をマイナス成長から救うことができるかもしれないが、しかし大きな後遺症を残すということだ。


■リーマン直前は「投機の時代」
 現在は米国金融正常化でバブル終了


 リーマンショック直前は、世界経済が異常な状態で膨れ上がり、それが崩壊する間近の状態だったのである。


 リーマン前のバブルはアメリカで生じたのだが、その後、世界の先進国は金融緩和を行ない、バブルは別の形をとって継続した。「投機の時代」が続いたわけである。


 石油価格の高騰や新興国の株価、通貨の高騰がこれによって生じた。


 現在は、アメリカの金融正常化によって、これまでのバブルが終了しつつある状態だ。


 その意味で、世界経済は正常な状況に戻りつつある。リーマンショックが異常な状態を引き起こしたのに比べると、正反対である。


 これが最も重要な点だ。


 診断が間違っていれば、処方も間違ったものとなる。現在の世界が抱える問題は、財政拡大や増税延期によっては解決できない。むしろ悪化してしまう危険がある。メルケル・ドイツ首相が財政拡大論に長々と反論したのは、当然のことだ


■「国によって差がある」経済成長率
 問題を抱えているのは日本


 世界経済が問題を抱えていることは事実だ。


 それは、サミット宣言の基本認識に表れているとおりである。「世界経済の回復は継続しているが、成長は穏やかで、国によって差がある」というものだ。


 重要な点は、「成長率が緩やか」という点と、「国によって差がある」という点だ。


 この状態は、図表3に示されている。2010年以降は、日本の14年を除くと成長率はプラスだ。したがって、「回復は続いている」ということになる。


 しかし、05〜07年頃と比べると、成長率はおよそ1%ポイントほど低下した。だから、「成長は緩かだ」ということになる。


 しかし、図に示した3国の間で、成長率にはかなり顕著な差がある。


 図からはっきり分かるとおり、14年、15年とも、アメリカ、ドイツ、日本という順になっている。


◆図表3:米独日の経済成長率


 安倍晋三政権が発足して以来直近3年間の日本経済の成長率は、平均0.6%にとどまった。


 それに対して、アメリカ経済は、堅実な成長を続けている。この3年間の実質成長率は、2.1%であり、日本の4倍近い。そして利上げを進めている。


 つまり、問題を抱えているのは、日本なのである。


 だから、本来であれば最も長期的な対応を行なわなければならないのは日本だ。その日本が短期的な財政政策に依存しようとしているのは、極めて異様な姿である。


 安倍首相はこれまで、「消費税増税再延期は、リーマンショック並みの経済危機がない限り行なわない」としていた。選挙対策のために再延期せざるをえなくなったが、従来の説明との整合性から、「現在がリーマンショック直前と同じ」と強弁せざるをえない状態に陥っているわけだ。


 現政権は、誤った政策を採用しようとしているだけでなく、それを説明するロジックについても、誰もがおかしいと思う不思議な論理を持ち出さざるをえない状況に追い込まれている。



 

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コメント
 
1. 中川隆[2707] koaQ7Jey 2016年6月02日 09:33:29 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2978]

ド素人にはわからないだろうけど、安倍さんの判断は非常に正確だよ.

というよりテクニカルアナリストの間のコンセンサスを安倍さんが繰り返しただけだよ


2008年と今年は日経平均がフィボナッチ時間分析で特に重要な転換点になる年
普通にいくと夏に大暴落が起きる

テクニカルアナリストの間では超有名な話だからね

そうでなければ年始からの外資の怒涛の売りは無かったよ

みんなアホにババ掴ませて逃げたいから本当の事を言わないだけだよ

8月までに大暴落が起きる

アホが気付かないだけ

チャート読める人間なら誰でも今が「リーマン危機前夜」より更に恐ろしい状況なのがわかる :

三菱UFJモルガンスタンレー証券 宮田直彦氏のレポート


NYダウは高値から 50%下げてもおかしくない

ダウは昨年11月安値を抜けたがS&P500は抜けておらず、両者は弱気ダイヴァージェンスを形成

S&P500はMACDが売り転換したのに上昇中で、これも弱気ダイヴァージェンス
ダウとS&P500が三尊天井からの下離れを開始

中国株の下落が米株のセル・イン・メイのトリガー
上海総合指数は三尊天井のネックライン割れ (5/9)


2. 中川隆[2708] koaQ7Jey 2016年6月02日 09:34:31 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2979]
安倍さん、日経のプットでも買ってるのかなあ...?

原油が下がって、昨日の英国世論の電話調査で離脱組が残留組を上回ったことで一気に離脱組が増加。一気に株とFXの市場はリスクオフに傾いた。


安倍首相はリーマンショック直前に似ているという理由で消費増税を延期したけれど、もしやエリオットをやっているアドバイザーでもいるのかな...?


いろいろ野党に批判されているけれど、ここから株価とドル円が急落するようなことにでもなれば、安倍さんの株は大暴騰!

安倍さん、日経のプットでも買ってるのかなあ...?
http://ameblo.jp/win-sugita/


サミットで首相が配ったという

「怪文書」(商品価格の下落がリーマンショックと同じというもの)
http://fxshufoo.blog.so-net.ne.jp/upload/detail/m_sfxmnpc1619.png.html


にはいろいろと反対の声も多いようですが、私はそうばかりは言えないと考えています。


やはり、この商品価格の下落はただ事ではないのであり、次に来る大きなショックの前触れになりうるものと思っています。

この「怪文書」の真の評価はまだ先になるでしょう。


3. 2016年6月02日 10:04:55 : SKLssvmpSU : bqq1LCfyCG0[98]
>1,2

なんのためにコメントとているのだろう?
経済を論じるのは国民のためで、株価の話をしているのではないのに。

世界の中で現状経済に問題が多いのは、まさに日本である。そして、それは民間での対応が良くなかったと同時にアベノミクスを含めて政府の政策が失敗だったことを物語っているに他ならない。


4. 2016年6月02日 10:09:43 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[1570]

>以下に述べるように、現状はリーマンショック直前とはまったく違う

当然、欧米がバブルだった時代と、全てが同じではないが

日本にとっては、海外発の需要激減が発生し、さらに拡大するリスクが大きい点では大きな共通点がある

>世界経済がリーマンショック直前のような状態

これは、下の官僚作成文書にあるように、部分的には正しい

世界のリスク資産残高やGDP比はリーマンショック前になっているし

中国では過剰生産と信用バブルが連鎖して続いており、

原油国の過剰生産もあって信用リスクも小さいわけではない

それらの点は、IMFやOECDですら指摘しているのだから、

くだらん上げ足とりをするよりも、現状で、あるべき政策をきちんと提言しなければ意味がない


>現政権は、誤った政策を採用しようとしているだけでなく、それを説明するロジックについても、誰もがおかしいと思う不思議な論理

と言っても、野口には無理だなw

http://www.j-cast.com/tv/2016/06/01268405.html
毎日新聞の記事によると、資料はA4用紙4枚で、「世界の商品価格はリーマン前後の下落幅と同じ」「新興国の投資伸び率はリーマン後より低い水準」など、グラフや数値を使い2008年のリーマン・ショックとの比較が示されている。サミット初日の討議で提示し、各国首脳から「そこまでいっていない」と否定されてしまったが、安倍首相は「危機感は共有された」と強弁した。

初めに答えありき
資料を作成したのは経済産業省出身の今井尚哉・首相政務秘書官と菅原郁郎・同省事務次官ら経産省ラインらしい。政府関係者にはサミット2日前に突然配布され、財務省にとってはまったくの寝耳に水。資料を見た麻生財務相は「何がリーマン・ショック前だ。変な資料を作りやがって」と唸ったという。


5. 中川隆[2710] koaQ7Jey 2016年6月02日 10:18:17 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2981]
>>3
>世界の中で現状経済に問題が多いのは、まさに日本である。そして、それは民間での対応が良くなかったと同時にアベノミクスを含めて政府の政策が失敗だったことを物語っているに他ならない。


アベノミクスの目的がわかってないだけ

今まで日銀が金融緩和したタイミングはすべてアメリカが金融引き締めを実施した直後だろ

安倍さんや黒田さんはアメリカ経済の崩壊を防ごうとしてるんだ

安倍や黒田が自分で判断してやってる事じゃないだよ

アメリカの出口戦略を助ける為に日本の金をアメリカに流すのがアベノミクスの目的なのさ

日本の景気が良くなったら金は日本国内で投資されるからアメリカが困るんだ

それで緊縮財政を取って、消費税も上げ、日本の景気が良くならない様に操作していたんだ

アベノミクスは大成功だったという評価は覆らない


6. 英松[111] iXCPvA 2016年6月02日 14:39:37 : wONaLl8IgQ : 6rzrY7eRCSU[7]
中川さんが書かれている事は全くその通りで、我国は宗主国様のご命令通り経済運営を行っている訳です。
つまり富の還流を粛々と進めている訳で、引き続き行う意向との表明をされました
アベノミクスは宗主国への富の還流なのです。
又、「世界経済の危機」的状況は主だった投資家の共通認識ですから、安倍首相の判断は間違っていないのになぜ取り下げたのでしょう。

ところでオバマ大統領の広島訪問は安倍内閣支持率アップの後押しとしての一面が有り、参議院選挙において自公で61議席以上獲得のシナリオになるでしょう。


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