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＜ＯＰＥＣ＞生産調整困難 サウジ原油増産強硬
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160601-00000113-mai-bus_all
毎日新聞 6月1日(水)21時47分配信
中東の２大産油国で日本の主要原油供給源でもあるサウジアラビアとイランの対立が、原油市場でも続いている。中東各地で影響力争いを繰り広げる両国は、政治的思惑から原油の増産攻勢をかけている。２日にウィーンで総会が開かれる石油輸出国機構（ＯＰＥＣ）の機能不全を深めかねない状況だ。
「市場シェアを今年も伸ばすつもりだ」。世界最大の石油会社であるサウジアラビア国営サウジアラムコのナサール社長は５月２５日、ロイター通信に増産継続の意向を明言した。
サウジは４月１７日、産油国会合で、増産凍結を土壇場で拒否した。４月の生産量は日量１０００万バレル超の過去最大規模。５月７日にはヌアイミ石油鉱物資源相を解任し、シェア優先の強硬路線をひた走る。
背景にはサウジの権力構造の変化と、イランとの対立激化がある。その中心に立つのがムハンマド副皇太子（３０）だ。２０１５年１月に即位した父親のサルマン国王（８０）の後押しで、国防相と、経済閣僚を束ねる経済開発評議会議長に就任。防衛・外交・経済を覆う強大な権限を得た。シリアでは、イランと関係の深いアサド政権と衝突する反政府組織への支援も拡大した。１月にはイスラム教聖職者処刑後にイランと断交し、対決姿勢を明確にしてきた。
この延長線上に、ドーハ会合の決裂もあった。副皇太子は会合直前、米メディアに「増産凍結はイランの参加が前提」と発言し、産油国協調に待ったをかけた。
長年専門官僚が担ってきた石油政策に王族が公然と介入するのはサウジでは異例。「石油政策がイランとの代理戦争の武器になった」（英紙フィナンシャル・タイムズ）との衝撃が市場に走った。
副皇太子は１６年予算で公共料金値上げなど放漫財政の見直しに着手し、４月にサウジアラムコの株式上場を公表するなど改革にも乗り出している。一方で米メディアに「生産はすぐに日量２００万バレル増やせる」と語るなどシェア争奪戦を優先する姿勢ものぞく。
原油価格は上昇傾向だが、回復が続くとの見方は少ない。サウジが不安定要因化するとの懸念もある。在英石油会社の幹部は、「副皇太子が石油政策の権限を掌握したことで、イランとの協調が遠のき、サウジの大幅増産といった（原油価格の下落）リスクも考慮せざるを得なくなった。ＯＰＥＣの機能不全は決定的になるだろう」と指摘する。【ロンドン坂井隆之】
◇イラン反発、米は苦慮
一方、イランも妥協姿勢は見せない。
イスラム教シーア派の盟主を任ずるイランにとり、スンニ派のリーダーであるサウジは地域覇権を争うライバルだ。昨年７月に欧米諸国などと核合意に達し経済制裁が解除されたイランは、一時日量１００万バレルに落ちた輸出量を制裁前に近い２１０万バレルに回復させた。イランにはサウジなどペルシャ湾岸産油国に対し、「制裁期間中に増産して大もうけした」との反感があり、４月のドーハ会合には代表すら送らなかった。地元メディアによるとアラグチ外務次官は５月１５日、イランと欧州企業の取引を「妨害している」とサウジを強い調子で批判した。
こうした対立の間に立つオバマ米政権は、バランス外交で対処している。「イランの原爆開発を阻止した」（ケリー米国務長官）核合意を「政治的遺産」と誇るオバマ政権は、「なんとしても維持したいという気持ちが強い」（米核専門家）。イランが合意を守るよう「果実」を与えようと、ケリー長官は４月以降、２度も欧州の金融機関にイランとの取引再開を促している。
とはいえ、シリアやイエメンで「代理戦争」を続けるイランとサウジの対立を放置すれば、中東地域の不安定化が深まる懸念がある。湾岸産油国は、米国製武器を大量購入する顧客でもある。このため、米国は有事の際の安全保障を確約して、対イラン警戒感の強いサウジなどの不満を抑えようとやっきだ。【ワシントン会川晴之】
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