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人とクルマのテクノロジー展 2016にて
このままでは日本の自動車メーカーは“生き残れない”!?トヨタも日産も?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160531-00010003-autoconen-ind
オートックワン 5月31日(火)15時57分配信
■自動車技術のプロが全国から集結
クルマに関する学術会である「日本自動車技術会」。その年次総会である春季大会が例年通り、5月末にパシフィコ横浜で行われた。会議棟での学術講演会に加えて、自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展」も開催された。
このままでは日本の自動車メーカーは“生き残れない”!?「人とくるまのテクノロジー展2016」フォトギャラリー[画像15枚]
展示会場内には、トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、三菱、スズキ、ダイハツ、いすゞ、ふそうなど、自動車メーカー各社が、ハイブリッド車、燃料電池車、そして自動運転車に関する技術を紹介。大手サプライヤーでは、デンソー、ボッシュ、コンチネンタルなどが、自動運転に係る各種のセンサーなどを出展した。
一般ユーザー向けの「モーターショー」と比較すると、展示パネルの内容が“プロ向き”で材料や電子技術に関する計算式などが並ぶ。
そうしたなか、開催初日となる25日の午後、会議センターメインホールで行われたフォーラムが、実に興味深い内容だった。
題目は「 2050年の社会情勢を見据えた交通システムと自動車用動力システムへの提言 」。
なんだか屁理屈が多そうで、面倒くさくて分かりにくそうなイメージだが、「これからのクルマ」を俯瞰するには最適な場だと感じた。
■自動車における“将来”は「次の次」が精一杯
人とクルマのテクノロジー展 2016にて
同フォーラムは、EVの基礎研究で高名な早稲田大学・大聖泰弘教授の基調「2030年から2050年に向けた自動車技術の方向性」から始まった。これは、自動車技術会のなかにある「将来自動車動力システム委員会」での議論をとりまとめたものだ。
具体的な講演内容では、CO2削減が主体となった。なぜなら、2015年10月に国連で協議されて参加各国が約束した「パリ協定」で「2050年に先進国は温暖化効果ガスを現状から80%削減し、全体として50%削減を目指すこと」で合意したからだ。
こうした国際協議の場で、将来の一つの目安として「2050年」が使われているので、自動車技術会としても「2050年を念頭に置いた議論」を考えてきた。ところが、実際には「まあ、考えたとしても2030年くらいまでで精一杯だ」という声が現役エンジニアの本音だ。
クルマのフルモデルチェンジは平均で6年。2016年現在から2030年までの14年間で、2回のフルモデルチェンジがある計算だ。エンジニアとしては、新型車で「次の次」までのイメージは沸くが、2050年の「次の次の次の次」を連想することは事実上、不可能だ。
そのため、大聖教授の講演でも、国が打ち出している燃料電池車の導入ロードマップなどで具体性があるのは2030年頃まで。2030〜2050年については、かなりざっくりしたイメージの話だった。
日本国内全体での電源構成でも、再生可能エネルギー、火力(石油、石炭、LNG)、そして原子力の構成目標でも、2030年度には具体的な数値が提示されたが、2050年は「?」マークが目立った。
■“2つの危機”により国家存亡の恐れも
人とクルマのテクノロジー展 2016にて
二番目に登壇したのは、国土交通省・国家政策局・総合計画課長の中村貴志氏だ。
「“国土のグランドデザイン2050”が描く、国土と交通の未来像」という、お堅いイメージの題目だ。だが、具体的な内容は、国民ひとりひとりの将来に直結する意味深いものだ。
そのなかで、「課題認識」として“とんでもないこと”を言った。「2つの危機」として、「 人口減少 」と「 巨大災害の切迫 」を挙げ、「対応を誤れば、国家の存亡にもかかわるおそれ」と言い切った。
「人口減少」では、2008年の1億2,808万人をピークとして、2030年には1億1,662万人、2050年には1億人を切って9,708万人まで徐々に減少。だが、そこから先の減少が急速で、2100年には最悪のシナリオでは「3,795万人」になる危険性があるという。
また、最悪のシナリオでの想定死者数が33万人とされる南海トラフ地震については「明日起こっても不思議ではない」と明言。そして、今後は生活や人生に対する価値観が大転換し、「豊かさとは何か」を問い直す必要があり、「守る」だけではなく、新しい文化(暮らし)の創造が不可欠、と結論づけた。
■「自動車村」の弊害を早期に払拭せよ
人とクルマのテクノロジー展 2016にて
次に登壇したのが、自動車技術会・「社会・交通システム委員会」の石太郎委員長。これまで3年間に渡り議論されてきた、同委員会の活動概要の報告を行った。
その内容は、従来の自動車産業界の常識で考えると「かなりエグい」ものであり、筆者を含めて聴講者の多くが驚きを隠せなかった。
要するに、約130年間に渡り世界で開発が進んできた自動車の「あり方」がいま急激に変化しており、 日系メーカーがこれまでの考え方を続けていれば「生き残れない」 というものだ。
これまで自動車エンジニアは、自動車を社会の中核として捉えてきた。だが、IoT(モノのインターネット化)などによる社会状況の急激な変化によって、クルマは社会全体のなかでの「ひとつの要素」に成り下がった。
いや、より正確に表現すれば、自動車メーカーは「自分たちが世界を動かしている」という驕り(おごり)があっただけで、「クルマが社会の一部」という現実から目をそむけてきた、と言える。
石氏は講演のなかで、何度も「 自動車村 」という言葉を使った。自動車エンジニアは日々のルーティーンワークに追われ、世の中の先を見ようとしても、「次の新車開発」を重要視するなか、社会全体を見渡す姿勢が欠如してしまう。よって、似た者同士が集まって居心地の良い場所、いわゆる「自動車村」に引きこもってしまうというのだ。
そして、講演の「さいごに〜まとめとして」の、最後の項は次のような言葉で締め括られていた。
「2050年に自動車社会は今のまま存在することは考えにくい。マイナス要因も多いが、これをチャンスととらえて、日本の生き残りのために、今から2050年に向けた知恵を結集し努力を積み重ねなくてはならない」
言い換えれば、現状をルーティーンワークしているだけでは、日本の自動車産業は生き残れないということだ。「言うは易し」だが、実行するのは極めて厳しい。
こうした厳しい現実があることを、ユーザーも認識するべきだと思う。
桃田健史
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