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「伊勢志摩サミット 公式HP」より
中国発「リーマンショック並み」世界経済危機の兆候…中国、異常な債務膨張と成長失速
http://biz-journal.jp/2016/06/post_15313.html
2016.06.01 文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授 Business Journal
5月26〜27日、伊勢志摩で開催された主要7カ国首脳会議(伊勢志摩サミット)は、世界経済の危機回避を目指すことなどを確認して閉幕した。今回の会議の結果、表向きにはサミットの首脳宣言には各国の協調を重視する姿勢が盛り込まれた。それはある意味では、これまでのサミットの声明を踏襲した内容といえる。
しかし、経済の側面にフォーカスすると、安倍首相が呼びかけた「リーマンショック並みの危機」に対して、各国首脳から疑問の声が出たことが気になる。サミット後の会見でIMF(国際通貨基金)のラガルド専務理事は、「世界経済は危機的状況にはない」と明確に安倍首相の呼びかけを否定した。そうした事情もあり、「安倍首相はサミットを利用して増税延期という国内問題を世界各国に認めてもらおうとした」との印象を残してしまった。その点には批判があるだろう。
ただ、中国の債務の増加などをみる限り、世界経済は大きなリスクを水面下に抱えていると見られる。2008年のリーマンショック後、中国が進めた4兆元(当時の邦貨換算額で60兆円程度)の景気刺激策は、世界的な資源開発ブーム(資源バブル)を発生させた。そのバブルは14年年央の原油価格の急落をもたらした。足許では、バブル崩壊の影響は小康状態にあるものの、今後のリスクは徐々に高まる可能性は残っている。
また、米国の利上げは新興国から資本を流出させ、世界的なリスクオフにつながる懸念がある。米国をはじめ、世界各国の経済基盤も不安定になりつつあるだけに、リーマンショック並みの危機が発生しうるか否か、状況を冷静に確認することは重要だ。
■「リーマンショック並みの危機」を唱えた安倍首相の真意
サミットで安倍首相がリーマンショック並みの危機が迫っていると各国首脳に呼びかけた背景には、いくつかの要素が考えられる。
ひとつは、14年年央以降の資源(コモディティ)価格の下落は、先行きへの懸念を高める要因だ。そうした状況を考えると今後、各国がリスクを認識し、経済の混乱が発生した場合には協調体勢を取って対策を進めることを確認することは重要だ。
しかし、今回のG7会議では、首相の提言は各国からの反発を招き、首脳宣言の文言策定が難航した。これは、協調の重要性を共有し、主要国が一致団結しているとのメッセージを国際社会に発信する上で、明らかなマイナスだ。
もうひとつの要因は、安倍首相はサミットを利用して「来年4月に予定されている消費増税を再延期すべき」との賛同を各国首脳から得たと内外に示したかったのだろう。これまで政府はリーマンショック並みの危機がない限り、消費増税は予定通り実行すると表明してきた。目先の景気にとって増税はマイナスであると考えられる。そのため、首相はなんとかして増税再延期の客観的論拠をつくりたかったのだろう。しかし各国首脳は、世界経済は危機的状況にはないと一蹴し、日本の主張は孤立してしまった。
個々で冷静にリーマンショック並みの危機の可能性を考えてみる。世界経済の下振れリスクは高まっている。各国の政府、中央銀行なども、世界経済が調整するリスクに気を配り、先行きに慎重な見方を持っている。
何が世界経済のリスクを高めているのかに着目すると、中国経済の動向が最も気がかりだ。第1四半期の実質GDP成長率が6.7%(前年同期比)まで低下した。これは7年ぶりの低水準だ。輸出や消費(小売り売上高)等も悪化傾向にある。
一方、債務の膨張にはブレーキがかかっていない。中国の民間セクター(金融機関を除く)の債務残高はGDPの200%を超えている。鉄鋼やセメントなどの業種では過剰な生産能力が蓄積され、そのリストラが急務だ。それにもかかわらず、足許では住宅価格の高騰が粗鋼の需要観測を刺激し、リストラではなく増産を進める企業も出始めた。中国経済の問題は解決よりも悪化に向かっているおそれがある。
■中国が発生させた資源バブル
中国経済の低迷、そして債務問題などの構造上の問題の主な原因は、リーマンショック後に打ち出された4兆元の景気刺激策にある。リーマンショック後、中国は低迷する景気を立ち直らせるために、インフラ投資や自動車などの販売支援策を大々的に進めた。問題は、4兆元という刺激策の規模が過大で、しかもその内容は公共投資に偏っていたことだ。
大規模な刺激策の発動は、鉄鉱石や銅、原油など、あらゆる資源を中国が買い漁るとの見方を強めた。その結果、世界規模で資源開発が急速に拡大し、資源バブルが発生した。このバブルの波に乗って、米国ではシェールガス開発が進み、中国経済が減速するなかで世界経済を支えた。
リーマンショックの発生によって重大な経済危機に直面した世界経済は、中国が引き起こした資源バブルの熱気によって徐々に回復に向かった。そのなかで、米国をはじめ先進国、新興国の中央銀行は、積極的に利下げなどの金融緩和を進めて景気を支えた。欧州での財政問題の深刻化が財政出動へのハードルを高めるなか、低金利が投資家のリスク許容度を支え、14年年央頃まで世界経済はバブルの熱狂に浸った。
ところが、中国経済の減速が鮮明化した14年年央頃を境に、資源バブルは崩壊に向かった。それを象徴する動きが原油価格の下落だ。理由は中国の経済成長率が低下し、需要が低迷したからだ。中国の資源需要の低迷は、鉄鉱石、銅等、多くの資源価格の下落につながった。原油価格の下落は産油国の財政の悪化に直結する。そのため、サウジアラビアなどは価格の下落を補うために増産を続けた。
この結果、需給バランスが悪化して原油価格に下押し圧力がかかり、16年2月には1バレルあたり26ドル台にまで下落した。これは、原油価格の下落が経済を圧迫する“逆オイルショック”というべき動きだ。産油国は、財政の悪化を補うためにソブリンウェルスファンドが保有していた株式などの売却を余儀なくされ、15年後半以降の世界的な株価の下落の一因になった。
資源バブルの発生は、新興国の構造改革を遅らせる要因にもなった。特に見逃せないのが債務の増大だ。新興国が抱える債務残高は、民間を中心にリーマンショック以前の水準を超えている。その典型が中国の民間債務問題だ。
■世界経済が抱えるリスク要因
新興国では債務が増加する一方、中国を中心に過剰な生産能力が放置され成長基盤が悪化している。債務規模を支えるだけの成長は期待できず、いずれ調整は不可避だろう。債務規模がリーマンショック以前の水準を上回っていることを踏まえると、世界経済はリーマンショック前を上回るリスクが存在するとさえいえる。
一方、米国では今後数カ月以内での利上げが視野に入っている。それは、ドル買いと新興国通貨売りの動きを引き起こすおそれがある。仮にFRB(米連邦準備制度理事会)が多くの投資家の想定以上に積極的な利上げを志向し、市場に利上げを備えさせようとすれば新興国の金融市場が混乱するかもしれない。それは、世界的なリスク回避につながり、先行きへの懸念を高めるだろう。
そう考えてくると、今後の経済を議論する上では、リーマンショック並みの危機のようなリスクを念頭に置くことが必要だ。足許の世界経済は、マイナス金利政策など過剰なまでの金融緩和によって債券や株式の価格を支え、需要の低迷などを糊塗している状況に等しい。そして、さらに景気が悪化した場合、先進国での金融緩和の余地は極めて小さい。財政状況を考えると、思い切った財政出動も容易ではない。世界経済の下方リスクは着実に拡大していると考えられる。
それだけに、主要国はいち早く政策面での協調を進め、通貨安競争の回避や財政出動を通した構造改革への合意を形成すべきだ。その点で、今回の伊勢志摩サミットは重要だった。各国の政治動向をみると、協調よりも離反や内向き志向が目立つ。英国はEUからの離脱(Brexit、ブレグジット)を国民に問おうとしている。米国では共和党の大統領候補として、誰もが予想していなかったドナルド・トランプ氏の躍進が目立つ。それは、米国が米国のことだけを考えればよいという世論を反映している。サミットでのわが国の主張も、自国の都合しか考えていないことの表れと言える。
主要国が内向き志向を強めるなか、世界的なレベルでリスクが顕在化した場合に有効な対策は打てるのだろうか。むしろ、ある国の金融緩和を他国が批判する状況が出現しやすいように思われる。それだけに、ひとたび市場に混乱が生じれば、これまで以上のマグニチュードで懸念が高まる可能性があるだろう。
(文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授)
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