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日本にも経済制裁? 米為替「新ルール」の中身
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160530-00018079-president-bus_all
プレジデント 5月30日(月)12時15分配信
■日本が「監視リスト」入りした意味
ゴールデンウィーク突入直前の4月29日(米国時間)、米財務省から半年に1回の為替報告書(FOREIGN EXCHANGE POLICIES OF MAJOR TRADING PARTNERS OF THE UNITED STATES) が公表された。筆者がかつて外国為替市場で実際に取引をしていた時には、必読の報告書だった。というのも、最新のデータを織り込んで、各国の為替政策のスタンスに対する米国の見解が端的に把握できるからだ。
以前は、公表となると国内の主要メディア等でもそれなりに取り沙汰されていた記憶がある。ところがここ数年、その内容がアベノミクスに対してかなり否定的となってくるに連れ、国内での報道の頻度が下がってきた感は否めない。さすがに日本が「監視リスト」入りしたことで、いかに都合が悪くとも今度ばかりは無視できなかったのだろう。
米財務省は各国の為替政策が公正か否かを客観的に判断するため、今年2月にオバマ大統領が署名、成立した「貿易促進法2015」を元に、貿易収支・経常収支・為替介入の3つの項目からなる新基準を採用した。すべて抵触すればスリー・ストライクとなり「為替操作国」と認定される。
となれば米国からの制裁措置をも視野に入れる必要に迫られるのだが、この度の報告書で該当国なし。今回「監視リスト」入りした中国、日本、韓国、台湾、ドイツは3項目中2つに抵触してツー・アウトの状況だ。
報告書の概要はすでに各紙で伝えられている通りだが、それ以外の詳細部分について目を向けてみたい。
■常連中国に次いで2番目に日本が挙げられた
まず、報告書の公表は2016年4月29日(現地時間)であり、ドル円の為替レートはすでに110円を割った水準だった。報告書は基本的には15年下半期から16年3月末時点までのデータを元に分析したものだが、この間のドル円レートと言えば125円台から110円台へと急激に円高方向へと動いた時期と重なる。今年1月に入って日銀のマイナス金利導入発表以降の急激な円高方向へのシフトも踏まえた上で、一連の動きに関して、
Japanese authorities characterized exchange rate movements as“quite rough”and said that they “continue to watch the foreign exchange market with a sense of tension,
and …… act appropriately if that becomes necessary.”(17〜18p)
(日本当局は為替レートの動きは「かなり荒っぽい」と特徴づけ、「緊張感を持って相場を見続ける……必要になった場合の適切な行動をする。」と発言している)
と日本側の発言を引用した直後に
Treasury assesses that current conditions in the dollar-yen foreign exchange market are orderly,(18p)
(米財務省は現状のドル円の為替市場は秩序だっていると評価している)
と行き過ぎたドル高からの水準訂正を是認。日本の当局の発言に釘を刺した形となっているのが象徴的でもある。
「監視リスト」入りした各国だが、報告書での掲載順にChina, Japan, Korea, Taiwan, and Germanyとなっている。最初の4カ国までを見ればアルファベット順かと思うのだが、最後にドイツが登場するため、別の思惑があっての列挙というのがわかる。中国は過去十数年、経済制裁の対象となる「為替操作国」までになることはないにしても、寸前の段階であり、この報告書では毎回のように名指しされる言わば常連だ。というわけで、中国の名前が筆頭に挙がっても何ら驚くには値しないのだが、その中国に次いで2番目に登場したのが日本となれば、この位置関係をどう捉えるかで報告書の見方も変わってこよう。
日本経済に関する具体的な記述としては下記の評価が登場する。
Demand also remains weak in Japan, with consumption especially hit hard following the April 2014 hike in the consumption tax.(3p)
(日本の需要は弱いままであり、14 年4月からの消費税増税以降、特に消費に打撃がある。)
■巨額の外貨準備が各国の内需を低迷させる
以前の寄稿(4月14日付)で各国の税制に関して直接口出しをすればそれは過剰な内政干渉にあたるとしたが、米財務省もご多分に漏れず、増税による日本経済の深刻な打撃については言及していても、増税見送りすべしといった踏み込んだ表現は避けている。たとえ本音が日本の内需拡大に直結する減税であっても、だ。というのも、各国の国内需要の弱さは米国の経済成長の足手まといとなってきた、との文脈の中で上記の指摘がなされているからだ。
15年後半から16年3月末まではドル高・新興国通貨安が進んだ時期でもある。各国はそれに対応すべく、ドル売り・新興国通貨買い介入を実施したわけだが、ドル売りをする際には各国はそれぞれが保有するドルの外貨準備を取り崩し、そのドルを売った相対で自国通貨買いをすることになる。結果、各国の外準は著しく減少する。
今回の新基準の1つに設けられた為替介入の項目に関わることであるが、巨額の外貨準備の存在は各国の需要低迷の要因の1つと米財務省は考えている向きがある(この点については、今年3月に国際金融経済分析会合に招致されたスティグリッツ教授の「需要を縮小させる外貨準備の積み立ての必要性を減らす」べきとする資料なども参考になろう)。
本来、国内で循環すべき資金が外貨準備として自国外に滞留すれば(ドルの外貨準備なら米国債あるいはFRBの当座預金となる)、その分内需が低迷する。世界総需要のマイナス要因は所得格差と外貨準備高需要であることは「国連報告」でも指摘されており、外貨準備高を生きたお金として活用できるような資金循環をつくりだす必要性が問われている。
国際収支不均衡の結果としての外準の存在があり、外準の存在自体が問題というよりSDRのような活用方法が求められている現在、GDP比28.7%と突出した外貨準備をすでに保有する日本が、漫然とドル買い為替介入を実施しさらに外貨を増やす⇒スリー・ストライクとなる行動はそもそも取りにくい。ちなみに、対GDP比における外貨準備の比率は中国30.8%、ユーロ圏2.1%、英国3.5%、カナダ4.5%となっている。
現状が果たして円高水準と言い切れるのか、目先のドル円レートの動きに惑わされることなく日本の実体経済や国際収支の不均衡を鑑みた上での適正なドル円レートについて考える際、今回の米財務省の新基準は1つの示唆ともなろう。
経済評論家・大阪経済大学客員教授 岩本沙弓=文
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