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トランプ氏の話はデタラメ
トランプ大統領でTPPも白紙か? 日本車関税38%は本気なのか?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160528-00508553-shincho-soci
「週刊新潮」2016年5月19日菖蒲月増大号 掲載
その良し悪しはさておいて、甘利明前経済再生大臣が白髪を増やしてしまうほどに精力を費やしたTPP(環太平洋パートナーシップ)協定が、ちゃぶ台返し寸前である。「ロビイストが主導した破滅的な合意」と猛反対しているトランプ氏、返す刀で日本向け牛肉の関税を下げないなら、日本車に38%もの関税をかけると言い出した。
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12カ国が進めてきたTPPは、アメリカでも最終段階に来ている。スケジュールでいえば、アメリカ大統領選挙が終了した後、米議会で批准されれば正式発効となる。だが、TPP嫌いのドナルド・トランプ氏(69)が勝てば成立阻止に動くのは明白だ。
そのトランプ氏がネブラスカ州に乗り込んだのは5月6日のこと。ここは、アメリカでも2番目に肉牛生産が盛んな土地だ。トランプ氏が票田にしている白人の人口は8割を超える。そこでまた、トランプ氏は日本を槍玉にあげた。
〈日本からの輸入車には、ほとんど関税がかかっていない。大量の日本車がアメリカに流れ込んでいるじゃないか〉
そうぶち上げると、今度は日本向けの牛肉について、
〈日本が牛肉に38%の関税をかけるのであれば、我々は日本の自動車に対しても38%の関税をかけてやる!〉
これが、大喝采なのである。ビーフの仇を自動車でとるという屁理屈だが、そもそもトランプ氏の話はデタラメである。
■共通している「アンガー」
ワシントン駐在の特派員が言う。
「まず、日本からの輸入車に関税がほとんどかかっていないと言うのはウソです。アメリカは輸入乗用車には2・5%の関税をかけています。中でも人気のピックアップトラックには25%もの高率関税がかかる。逆にアメリカが日本に輸出している自動車は関税ゼロです」
経済ジャーナリストの福田俊之氏によると、
「日本の自動車メーカーは多くが北米で現地生産しています。1980年代に強いられた輸出自主規制でさんざん痛めつけられてから、ほとんどが現地にシフトしているのです」
また、日本向けの牛肉にしても、現状は38・5%だが、TPP発効時に関税が10%以上引き下げられ、最終的に9%になる。むしろ、日本の肉牛農家は大打撃だ。
それにしても、トランプ氏は、なぜ、ことあるたびに日本を目の敵にした発言を繰り返すのだろうか。
在米ジャーナリストの古森義久氏が言う。
「トランプ支持層に共通して見られるのは、ナショナリズムというよりアンガー(怒り)です。彼は、対日政策を体系的に考えているわけではない。しかし、日本をターゲットにした発言が好意的に受け止められているのも事実です。日米安保条約にしても、国民の底流にある“不公平”という不満にうまく火をつけている。有権者のアンガーを引き出すのが彼の手法なのです」
稀代のポピュリスト政治家の前に日本はあまりにも訥弁(とつべん)である。アメリカ大統領選の本選ではアメリカ国民はトランプ氏にどんな審判を下すのか。
「特集 ムリが通れば『安保』が引っ込む? 露悪家『トランプ』有言実行の吉凶検証」より
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