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販売台数40%減の衝撃予測 自動車産業の脅威「次世代カーシェア」
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6805
2016年05月23日(Mon) 宮田拓弥 (Scrum Venturesゼネラルパートナー)
現在発売中のWedge6月号では、「自動車産業が壊れる日」と題して、米国の自動運転開発や次世代カーシェアなどについて、現地ルポを行い特集しています。こちらの書店や駅売店にてお買い求めいただけます。
自動運転と並び、既存の自動車業界を揺さぶっているのが「カーシェア」だ。
2025年までには、自動車全体の20%がシェア利用されると言われている。自動車メーカーは、自動車ビジネスの新しいあり方を模索することを迫られているのだ。
今年2月にバルセロナで開催された、世界最大級のモバイル見本市「モバイルワールドコングレス」で、フォードのマーク・フィールズCEOは「フォードは、自動車メーカーから、自動車サービス企業に変わる」と宣言した。
かつて自動車は憧れの対象であり、若者にとっては所有する車がそのアイデンティティーとなっていた。今や若者にとってのアイデンティティーはスマホなどの電子機器にとって代わられ、自動車は「持つ」ものから「使う」ものへと急速に変化を遂げている。
そうした現状に危機感を抱き、最近BMW、GM、フォードなどの欧米の大手自動車メーカーが、相次いで「カーシェア」事業に参入している。
日本においても、1960年代からトヨタや日産などのメーカーが、自社の車をレンタルする「レンタカー」ビジネスを展開したが、それらのサービスとは内容も狙いも大きく異なる。
BMWは、今年4月に米国シアトルで「ReachNow」というカーシェアサービスをスタートした。ReachNowは、BMWおよび傘下のMINIの自動車を「1分単位」で、「どこからどこへでも」簡単に借りることができるサービスだ。
BMWのReachNowで借りることができる自動車(写真・REACHNOW)
まずは無料のスマホアプリをダウンロード。免許の表裏両面と、自分の顔写真を送ると、免許の写真と自動でマッチングを行い、本人認証を行う。あとは、支払い用のクレジットカードを登録すれば登録が完了する。
BMWカーシェアサービス「ReachNow」のスマホ画面。今年4月にシアトルでサービスを開始した
従来のレンタカーとは異なり、街中に駐車してある車を直接借りることができる(上のスマホ画面参照)。借りたい車が見つかったら、スマホから無料で予約ができる。そして駐車場所で車を見つけると、鍵の代わりとなるのは「スマホ」だ。
スマホアプリから車の鍵を開け、車に乗り込む。車に乗ってから1分単位での課金となり、サービスエリア内であれば「どこでも」降車が可能というのも特徴だ。ガソリン代、保険、パーキングメーターなどは料金に含まれており、気軽に利用できる。現在は登録無料、1分あたり41セント(約45円)で利用ができる。12時間使って最大80ドル(約8800円)となっている。
最近大手自動車メーカーが展開しているカーシェアサービスは、このように、自分の好きなメーカーの車を、1分単位から借りられて、しかも、どこでも乗り捨て可能という便利なサービスだ。
しかし、こうしたサービスの提供は、自らの本業である自動車の販売にマイナスの影響を与える可能性もある。なぜ自動車メーカーは、自らこうしたサービスを提供するのであろうか。
米国では2015年のビジネスにおける出張時の交通手段として、Uberがタクシーを上回った
(写真・MASATAKA NAMAZU)
その背景には、欧米を中心に急速に進む「シェアリング系」サービスの普及がある。まずは、Uber、Lyftなどの「ライドシェアリング(以下、ライドシェア)」が挙げられる。日本では規制の問題があり、まだサービス自体もスタートしていない状況だが、米国ではすでにタクシーなど既存のサービスを脅かすほどに普及を始めている。
経費精算ソフトのCertifyが公開したデータによれば、15年のビジネスにおける出張時の交通手段として、Uber(41%)が、タクシー(20%)とレンタカー(39%)を上回った。最近では全米ほとんどの空港でライドシェアの乗り入れが可能となっている。
そしてもう一つが、GetaroundやRelayRidesなどに代表される「C2Cカーシェアリング(Consumer to Consumer、以下、C2Cシェア)」というカテゴリーのシェアリングサービスである。
ライドシェアは、自家用車を持つ消費者が、空き時間などを利用して「ドライバーとなる」サービスだが、C2Cシェアは、自分が車を使わない時間に、「他の消費者に車を貸す」というサービスだ。
C2Cシェアの代表的なサービスであるGetaroundは、10年の創業で現在会員20万人。利用方法はBMWのReachNowと似ており、アプリから近くの車を探し、スマホから予約、すぐに利用できる(下のスマホ画面参照)。利用は1時間単位で、1時間5ドル(約550円)となっている。
ほとんどの自家用車は、1日あたり22時間は駐車場に止まったまま使用されていない。C2Cシェアを使うことで、自分が車を使わない時間でお金を稼ぐことができ、毎月のローンや保険にかかる費用を全てまかなってしまうという自動車オーナーも多く出ているという。
Getaroundのスマホ画面
■大手企業とスタートアップ
加速する投資と提携
大手自動車メーカーのなかでも特に活発な動きをみせるGMの本社
(写真・MASATAKA NAMAZU)
大きく変わりつつある自動車業界において、スタートアップ(ベンチャー企業)への投資やパートナーシップの動きも活発になっている。
最近、最も活発な動きを見せているのがGMだ。1月には、ライドシェア大手Lyftに5億ドル(約550億円)の投資を実行。Lyftと共同で、テキサス州オースチンで自動運転車によるライドシェアを開始する計画があることを発表している。
そしてその直後に、サービスを閉鎖したライドシェア企業Sidecarの技術資産と人材を買収。3月には、自動運転技術スタートアップのCruiseを、10億ドル(約1100億円)とも言われる金額で買収することを発表している。
16年に入ってからわずか3カ月の間に、立て続けに3つもの新興企業への投資、買収を行ったことになる。Cruiseの買収にあたっては、設立わずか3年弱のスタートアップの買収のために、社長自らが交渉に乗り出したという噂もあり、その本気度が伺える。
自動運転の開発をめぐり加速する合従連衡 (出所・各種資料をもとに著者作成)
GMがライドシェアに積極的な背景には、Uber、Lyftなどのドライバーは非常に燃費を気にするため、燃費の良い日本車が好まれ、GMの車に乗っているドライバーはあまり見かけないなどの事情もあるかもしれない。燃費のよい自動車でさえも、所有から使用が前提の時代になると、販売シェアは高まるかもしれないが、販売台数は減ることになる。消費者に魅力をわかってもらえなければ、時代から取り残される可能性がある。
自動車メーカーがこうして動き出す以前から、Googleをはじめとするテクノロジー系企業は投資、パートナーシップに積極的に動いていた。Googleは、Uberにとっての初期(13年)の大きな投資家であり、Google Mapsとの連携、ボルボ、フォード、Lyftなどと共同での自動運転推進団体の設立、など活発に動き始めている。マイクロソフトやアマゾンなどもUberに投資を行っている。
また、中国企業も投資に積極的だ。Uberには検索大手の百度(バイドゥ)が、Lyftにはeコマース大手のアリババとゲーム大手のテンセントが出資をしている。最も具体的な動きを見せているのは百度だ。同社は、米国に大きなAI研究所を持っており、自動運転への参入も表明している。
一方で、日本勢の動きは限定的だ。Lyftには楽天が出資しているが、その他目立った動きはない。トヨタが、昨年11月に米国シリコンバレーにAIの研究所を設立し、今後5年間で10億ドル(約1100億円)を投資することを発表しているが、まだ具体的な動きは見えてこない。
最後に、今後自動運転技術が普及する中で大きく変わる4つのビジネス(コンテンツ、コマース、保険、自動車)についてまとめてみたい。
■今後も販売好調と予測する自動車メーカー
1つ目は「コンテンツ」だ。これまで自動車ビジネスにおいてコンテンツというと、あくまで運転を補助するもの、例えば、カーナビにおける地図やカーステレオからの音楽というものに限定されていた。
これが自動運転によって大きく変わると考えられている。当初は自動運転といっても運転手はハンドルに手をかけている必要はあるが、将来的には運転はすべてコンピューターに任せて、ビジネスマンはビデオ会議をしながら、一般の消費者はテレビを見ながら目的地まで行くという時代が来る。
日本では、通勤時間の電車の中で大きなスマホアプリ市場が生まれたと言われているが、今度は自動車の中で様々なアプリ、コンテンツを楽しむ時間が生まれる。
2つ目は「コマース」だ。自動車は、元来旅行や買い物など、消費者の消費行動と紐付いている。これまでは旅行や買い物に行くための移動手段にすぎなかったが、これからはナビに指定された目的地や過去の利用履歴などからパーソナライズされたクーポンが表示されたり、目的地の遊園地の入場券を車の画面から買うなど、新たなコマーススタイルの発生が想像される。VISAは、自動車の中から様々なものが購入できる「車内コマース」のコンセプトを発表している。
3つ目は「保険」だ。現在国内だけで約8兆円の市場規模がある損害保険市場であるが、これは「自動車が事故を起こす」という前提に形成されている市場だ。一般道でテスト走行を続けているGoogleの自動運転車がこれまでに起こした事故はたったの一度(低速でのバスとの接触事故)。
将来的に道路を走る車が全て自動運転車となり、それぞれが通信を行い、協調しながら走行するようになれば、交通事故の数が激減することは間違いない。損害保険市場がいきなりなくなるとは考えにくいが、中長期的には確実に縮小していくことになる。
最後は自動車産業そのものだ。現在日本の自動車メーカーの販売は好調であり、今後も新興国を中心に需要が伸び、販売は順調に成長するという予測をしている会社が多い。果たしてそれは本当だろうか?
自動運転車が普及すると、そもそも所有者が運転をする必要がなくなり、駐車場に止めている間でも、無人の状態で他の消費者の移動手段として使われることになると考えられている。
バークレイズのレポートによれば、こうしたシェアリングの加速により、自動車1台あたりの走行距離が2〜4倍程度に伸び、結果として自動車の世界販売台数は40%程度減少すると予測されている。
「自動運転でない車」との共存が難しいため、自動運転車の普及はなかなか進まないという見方もあるが、まだ自動車の普及が十分でない新興国で一気に普及する可能性が高いと考えている。2000年代に、固定電話が普及していなかった東南アジアやアフリカなどの地域で、インフラの整備が比較的安価に出来る携帯電話が一気に普及したのと同じ構図だ。
1908年のT型フォード発売以来、製造業の中心的存在であり続けてきた自動車産業。「シェアリング」という利用形態の変化と、「自動運転」という技術革新により、その形を大きく変えようとしている。
00年代に同様の変化が起こった携帯電話業界では、ハードウェアを作る携帯端末メーカーからOS/ソフトウェアメーカーへと主導権が移り、アップル、Googleが業界の覇者となった。果たして、10年後の自動車ビジネスの覇権を握るのは、トヨタなどの自動車メーカーか、Googleなどのテクノロジー企業か、はたまたUberなどのスタートアップであろうか。
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