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ドル復調でも当面円高リスク優勢 ドル円は100円台前半の攻防へ
http://diamond.jp/articles/-/91692
2016年5月23日 田中泰輔(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー) ダイヤモンド・オンライン
ドル円は2月に下降基調に転じた。数年続いた上昇相場の転換後は、大量に蓄積されたドル買いポジションの処分やヘッジの売りがのし掛かる。日本銀行のマイナス金利導入が円高トリガーとなり、金融政策の信認も一気に後退した。安倍晋三政権は、7月の選挙を控えて円高を何とか抑止したいところだが、米国は日本を為替監視国リストに加えるなど、日本の為替介入に不寛容とみられる。
ドル円は2月に下降基調に転じた。数年続いた上昇相場の転換後は、大量に蓄積されたドル買いポジションの処分やヘッジの売りがのし掛かる。日本銀行のマイナス金利導入が円高トリガーとなり、金融政策の信認も一気に後退した。安倍晋三政権は、7月の選挙を控えて円高を何とか抑止したいところだが、米国は日本を為替監視国リストに加えるなど、日本の為替介入に不寛容とみられる。
海外投機筋は、日本当局の円高抑止手段の欠如を見透かし、弱い米経済指標に促され、ドル円を一時105円台まで売り込んだ。ドル円は明白な弱気材料がそろって思惑的な売りポジションが早々に積み上がり過ぎ、円高もいったん進みあぐねたが、米景気の減速懸念が払拭されない以上、ドル円がこのまま上向くとは期待し難い。
為替市場の基本テーマとして「強いドル」は今も息づいている。米経済独りが自律回復に向かい、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ推進が見込まれた2012〜14年に、ドルは全面高となった。しかし昨年後半以降、米経済は次第に減速し、世界経済は回復へのけん引役を失いかねない事態に直面している。この場合、新興国・資源国通貨は一層脆弱化し、金融緩和の積極化が想定されるユーロなど欧州通貨も下落して、ドルの貿易加重レート(総合為替レート)はまだ上昇しよう。
ただし世界的なリスクオフで、債権国通貨の円はこのドルに対して上伸しがちで、日本は円高・株安・景気停滞の三重苦に見舞われかねない。少なくとも米国の経済成長は第3四半期まで巡航速度以下にとどまり、大統領選前の利上げはないだろう。ただし、今年遅くから来年には2%超の成長ペースに加速し、利上げも複数回行われるとの見方を維持している。
この想定通りなら、ドル高は勢いを鈍らせつつも、まだ続くだろう。ユーロは対ドルで当面足踏みした後、来年には米欧景気・金融政策格差に沿って1.00割れに向かい、欧州通貨全般が対ドルで連れ安となるはずだ。新興国・資源国通貨は、米景気悪化時には脆弱化するし、米見通し好転でドル高でも対米資金流出でやはり脆弱化しよう。
ドルが復調しても、中国の資金流出と通貨切り下げの懸念が再燃すると、円安動意も盛り上がらない。いずれにせよ円は米景気信頼感が回復しない限りは対ドルで上昇しやすい。投機筋は、売り手が混雑するドル円ではなく、他通貨、とりわけ金利差の小さいユーロの対円での売りを選好し始める可能性もある。今後3〜6カ月は、安倍相場の半値押しでもある対ドル100円の節目にとどまるかが重大な岐路になると警戒している。
(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー 田中泰輔)
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